2023.1.2 6:56
室井光広さん『エセ物語』の未発表遺稿に解説を書かせてもらい、自分の論考も書かせてもらいました。
雑誌を通じて関わった皆さんに温かく支えていただき、見守って頂いたおかげで、自分なりの全力を尽くすことが出来ました……
発売は1月20日頃です。
イベントやフェアなどもやる予定ですので、ご注目ください‼
出来るだけ多くの方に心を込めて届けることができれば、と思います。 (川口好美さんのツイッターより)
私たちは今、ヘイトの時代を生きている。
現在の日本社会では、それぞれに異なる歴史や文脈をもつレイシズム(民族差別、在日コリアン差別、移民差別)、性差別(女性差別、ミソジニー、LGBT差別)、障害者差別(優生思想)などが次第に合流し、結びつき、化学変化を起こすようにその攻撃性を日増しに強めている。
さらにデマや陰謀論が飛び交うインターネットの殺伐とした空気、人権と民主主義を軽くみる政治風潮などが相まって、それらの差別や憎悪がすべてを同じ色に塗りつぶしていくかのようである。
こうしたヘイトの時代はきっと長く続くだろう。
SNSや街頭でヘイトスピーチ(差別煽動)を叫ぶ特定の者たち以外に、ヘイト感情や排外主義的な傾向をもった人々がこの国にはすでに広く存在する。私たちはその事実をもはや認めざるをえない。
在外外国人や移民を嫌悪し、社会的弱者を踏みつけにしているのは、日々の暮らしのすぐ隣にいるマジョリティのうちの誰かなのだ。いや、私たちの中で差別加害を行っていないと断言できる者などどこにいるだろう。
本誌『対抗言論』は、ヘイトに対抗するための雑誌である。
(「対抗言論」1号 巻頭言より)
「対抗言論」なんて、ストレートすぎて、ずいぶん大風呂敷な名前かもしれません。でも、許容できないものには反対の意思を示さないと、世の中はあきらめと冷笑で覆い尽くされてしまいます。「敵」をつくり、憎しみを煽り、空虚な優越感でおのれを慰めることで、隣人たちのありのままの姿を見ないで済ませようとする、私たち自身の習慣に「対抗」したいと思いました。
その道の専門家でもない私たちが、「身の丈」をこえて、政治や社会や歴史の問題に何か言うべきなのは、どこにでもいる小さくて不完全な誰それこそが、この国の主権者だからです。同じ星に生まれた隣人たちも、知性と尊厳をそなえた平等な人間なのです。
(「対抗言論」1号 編集後記より)
(「対抗言論」1号 2019年12月25日 法政大学出版局刊)