幻塾庵 てんでんこ

大磯の山陰にひっそり佇むてんでんこじむしょ。 てんでんこじむしょのささやかな文学活動を、幻塾庵てんでんこが担っています。
 
2017/09/10 12:17:08|雑記
読者からのお便り

現代詩手帖9月号の対話「言葉そのものがつくる世界」を読んだ感想が寄せられた。
当庵の前身が一度だけ開催した公開講座にも参加したそうなのだが、
例によって、本人に無断で、その一部のみ紹介したい。


私はとても元気がなかったのですが、文字通り元気をいただきました。特にこんなところに。

多和田 お客様、読者のために書くわけではないけど、作者が自分の思うように書けばいいということでもないんですよね。そうじゃなくて言葉そのものに耳をすましながら、つくっていく。言葉の中にはもう死んでしまった人や忘れられた人の知恵もはいっていますから〉







2017/08/29 12:24:42|雑記
二十年ぶりの対談

「現代詩手帖」9月号に、庵主が多和田葉子さんと四月に行った対話「言葉そのものがつくる世界」が掲載された。

ギョーカイ人失格の庵主が多和田さんと公的な対話をするのは、およそ二十年ぶりとのこと。

いろいろ思い入れがあったみたいだが、とりわけ、さいごのほうの、庵主の運動に対する多和田さんの言葉に涙した、と。

以下はその発言の一部。

「室井さんは震災前から、遅れるということはしっかりやっていましたね。
学校の遠足の時なんかでも、遅れてはじめて風景が見えるようになる、と。遅れるとみんなから離れてしまうけれど、一人になることを恐れない。だから津波が来ても、「キズナ」を強調するのではなく、ばらばらに逃げろ、と言えるんですね。ばらばらに逃げるためにはひとりひとりがかなり強くないとだめだと思うんです。しかしこの強さは、威張っている強さではない。決して上からものを言わない工夫をしている。その工夫のひとつとして、田舎者っていうスタンスがあるんじゃないかと思うんです。これが非常にすばらしくて、自分は田舎者であると言っておいて、都会人みたいな幻想から距離をおき、自分の仕事をするスペースを確保する。そうやって、じっくりとものを考えたり語ったりする条件を自分でつくるんですよね。そうしなければ、人の欲望のテンポに巻き込まれて、ちゃんとした仕事ができませんから。この「田舎者」というスタンスにはちゃんとした歴史的背景があって、たとえば「会津はそう簡単にオカミの言うことをきかない」という室井さんの一言で、私は、ああ、近代は日本を一つの同質なものとしてイメージさせようと私たちを洗脳してきたけれどそれは違うんだと実感しました。でも室井さんは逆に、自分は福島県の人間として発言する、などということも一度もおっしゃったことがない。震災後にはそういう形で、中心だと思われている東京に自分を対置するということも可能だったと思うのですが、そういうことは避けていらっしゃる」







2017/08/10 12:43:18|雑記
空前絶後


『法政文芸』第13号(2017年7月発行)の巻頭に
平田詩織さんの詩と庵主のエッセイが並んで掲載されているというので
庵主は上機嫌。
声を出さずにいると声帯が退化してイザという時に叫ぶこともできなくなるそうなので、籠りきり、黙りがちな日々にあって、歌ったり騒いだり音読したり、くらいがいいのかもしれない。







2017/07/25 12:38:14|雑記
永山則夫の罪と罰

当庵ゆかりの批評家井口時男氏の新著
『永山則夫の罪と罰――せめて二十歳のその日まで』(コールサック社)
が届けられた。

「永山則夫論30年の集成」とある通り、文芸批評家としての氏の仕事のほぼ全期間にわたっている文から成るが、その中には、氏自身の「記録」である以上、除外したくなかったという匿名コラムなども含まれていて興味深い。

永山に対する心情がもっともよく滲んでいると氏自らいう巻頭の俳句と、掉尾を飾るエッセイが「てんでんこ」初出だというので、事務長の低い鼻も少し高くなったような気がしている。

 

……中上健次は「なぜぼくは無数の永山則夫の一人でありながら、唯一者永山則夫でなかったのか」という問いを発していた。それはまた、本書の文章を書きながらつねに私自身の念頭にあった問いでもある。
 人はみな、各自の条件の中に生れ、各自の条件の中で生き、各自の条件の中で死ぬしかない。「少年」永山則夫を「唯一者」たらしめていた諸条件はきわめて過酷なものだった。永山の事件から半世紀近く経過したが、歪んだ諸条件が作り出す「少年殺人者」たちはこれからも跡を絶つまい。だから人は、彼らを指弾する前に、いや、指弾しながらでも、自分自身に問うしかないのだ。自分はいかなる条件によって護られていたのか、と。
《あとがきより》
 







2017/07/03 14:22:03|雑記
森羅


非売の詩誌「森羅」が届く。

第四号は2017年5月9日発行。
同人の粕谷栄市さん、池井昌樹さんに加え、賓客として江代充さんの詩が収められている。

第五号は2017年7月9日発行。
賓客は小池昌代さん。

庵主はこの詩誌を声に出して読むことを愉しみにしている。
「声」も出さずにいると、出にくくなるらしい、と聞いて、ちょっと心配になったのでは?