少年詩2021

少年詩の詩集や同人誌についての紹介と作品への批評などのブログです。
 
2023/02/01 23:11:14|その他
同人誌『さん 35号』の詩編を読む
同人誌『さん 35号』の詩編を読む
              佐藤重男
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児童文学の同人誌『さん 35号』(児童文学「さん」の会 2022.10)が届きました。
いつものように、詩編を中心に見ていくことにします。
 
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うめさと みゆき「夕焼け」「並木道」
作品「夕焼け」を目にした時、夕焼けは、どうしてこうも、わたしたちを魅了してやまないのか、そんなことを考えてしまったのでした。
太陽はそれを直視することは出来ないけれど、夕陽なら可能だ、という発想からさらに、「元祖女性は太陽であった」という平塚らいてうの言説へと跳び、そうか、夕焼けを生み出す太陽への「信仰」に近いものがあって、そこに夕焼けがわたしたちを魅了する力があるのか、ということに思いが至ったのでした。
そして、「いつものことだが/電車は満員だった」で始まる、吉野弘の作品「夕焼け」が目の前に現れるのでした。吉野の「夕焼け」は、あまりにも鮮烈で、はじめて目にした時、どんなに驚いたか、今でも忘れることはできません。
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作品「並木道」は、思春期真っ盛りの中学生の頃の実体験を下敷きにしている作品ではないか、そんな空想をたくましくさせてくれました。
ラスト、「何かが 起こりそうな」のひとことに、そんな思春期の「野望」と「不安」を垣間見た気がします。
 
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なかむら ふう「赤ちゃんのうた」
作品「マイ マイ ベビー」「おひるね あかちゃん」「ジャンケン あかちゃん」「あかちゃんの まほう」の4作品を読みながら、就寝時、同じ布団に横になりながら、子どもと一緒に、二つか三つ、短いお話を読む、そんなことを想像してしまいました。それは、いわゆる読み聞かせということよりも、親が読むおはなしを聞く子どものリアクションが、読んでいる親をもまた、その作品世界に誘引しているのだ、という双方向の関わりを用意しているのでは、と思うのです。
こうして、子どもとの関わりを持つための手段としての「読み聞かせ」がどんなに大切であるかを、「赤ちゃんのうた」は教えてくれている、この4つの作品から、子どもへの真摯な、そして、慈しみにあふれた思いが読み取れる、そう思わずにはいられません。
 
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同人誌『さん 35号』には、詩編の他、4編の創作が収められています。
よく、「ことばの力」ということを聞きますが、創作という文字の中に、そのことが凝縮されている、と思わずにはいられません。同人のみなさんの、創作への取り組みの姿勢のなかに、すでに「ことばの力」は宿っている、といっていいのではないでしょうか。
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また、「編集後記」にもあるように、コロナ禍の中、こうして35号を発行できた、その喜びと労苦のほどが読み取れます。精一杯の声援を送りたいと思います。
 
 
         ― この項 完―
 
いつものことですが、作品の紹介などにあたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたら、ぜひ、お知らせください。
 
 
2023.2.1
 
 
 




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同人誌「さん」35号
この度は、ブログに同人誌「さん」35号の読後の感想を掲載していただきまして、どうもありがとうございました。
お礼のコメントが、とっても遅くなってしまいました。失礼してしまいまして申し訳ありません。
詩編だけではなく、創作への取り組みの事につきましてもコメントいただきまして、感激しました。
作品を丁寧に読んで頂き、感謝しております。私たち、「さん」の同人は、少ないメンバーですが、みんなで「36号に向け、ガンバりましょう!」と声を掛け合い、次号へと動き出そうとしております。
声援に力をいただき、また、次へ…と進んで行きたいと思います。
本当にどうもありがとうございました。

「さん」同人(投稿担当:うめさと みゆき)  (2023/02/14 16:32:15) [コメント削除]

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