近くなのに、遠い場所
誰でも知ってる街なのに、通り過ぎてしまうような忘れさられた街
しかし、人々が忘れてくれたお陰で、時の経過と共に素敵で魅力的な場所として残す事が出来たのかもしれないとも思う。
地図も書けないような迷路のような路地を持つこの場所は、住んでいる人でさえ説明は難しいと言う路地だらけのまち。
国有地で無許可で商売してても、面倒くさいからか?表からは誰も何もいわないような無法地帯を含む街
自然は生き生きと、原生林が続き、何となく車で走るとジュラシックパークのようでもあり…楽しい。
夏も近くなって、このところ木々が生い茂り遠くから観るとまち全体が、ふさふさとふっくらとした感じにみえてきた。
そんな場所に、立ち枯れても尚、雄々しく 精霊が宿るような大木楠木を森の中に見つけた。
私は、木と一体化するが如く 立ち尽くしてしまった。
言葉にできない程、この光景に圧倒されるばかりだった。
鬱蒼とした森は、生き生きとし、大きなブロッコリーが重なり合うような大きな緑が夢のように揺れている。 そんな中で、一本の大木が立ち枯れていた。
その存在感は、矢に刺されてなお立ち尽くしたと言う弁慶をも想像するようだ。
海へと続く毛細管のように張り巡らされた無数の路地と坂道は、草の匂いと日向に花が咲いていた。
その陽のあたる坂道は、行きかう者を、かつて温かく抱かれていた望郷へと誘出す。
…あの画家がこの場所を愛した訳がよくわかる。
…住みたいくらいだが、通えるのでしばらく通う事にした。
…魅力がないと言って人々は通り過ぎていく。 忘れさられた街は、底知れぬ魅力を秘めていた。
あたかも文明が砂に埋もれたように…
私は、この木の精霊に心奪われてしまったのかもしれない。 志は、枯れても死んでも生き生きと生きるものなのかも知れないと思った。 |