幻塾庵 てんでんこ

大磯の山陰にひっそり佇むてんでんこじむしょ。 てんでんこじむしょのささやかな文学活動を、幻塾庵てんでんこが担っています。
 
2019/02/18 12:34:43|雑記
蓮田善明 戦争と文学

井口時男さんの新刊

目次
序章   
いまだ「解禁」されざるもののために――保田與重郎と三島由紀夫と蓮田善明
第一章  文学者の戦争――玉井伍長(日野葦平)と蓮田少尉
第二章  教育者・蓮田善明の「転向」 付・二つの宣長論と二つの公定思想
第三章  文学(一)詩、短歌、俳句――趣味の自己統制
第四章  文学(二)古典論――大津皇子へ 付・キルケゴールと安田與重郎
第五章  内務班 帝国軍隊の理念と現実 付・杉本少佐と村上少尉  
第六章  戦地(一)聖戦の「詩と真実」
第七章  戦地(二)「山上記」または美と崇高と不気味なもの  
第八章  戦地(三)「詩の山」の『古今集』、または古典主義と浪漫主義
第九章  戦地(四)晏家大山と伊藤静雄「わがひとに与ふる哀歌」
第十章  戦地(五)
晏家大山または山巓のニーチェ
第十一章 戦地(六)詩と小説の弁または戦場のポスト・モダン
第十二章 文学(三)表象の危機から小説『有心』へ
第十三章 文学(四)小説『有心』と『鴨長明』、または詩と隠遁
第十四章 文学(五)小説『有心』――生の方へ、温かいものの方へ
第十五章 文学(六)『有心』の三層構造――冷たいもの/温かいもの/熱いもの
第十六章 文学(七)謎解き『有心』――再び「死=詩」の方へ
第十七章 文学(八)「文藝文化」と危機の国学 付・三島由紀夫と保田與重郎
終章   最期の蓮田善明――非転向者の銃口







2018/12/21 14:28:09|文芸誌てんでんこ
大波小波の年の瀬



東京新聞12月17日の匿名コラム「大波小波」で
「てんでんこ」第10号に掲載された川口好美さんの評論

〈内部の人間〉の革命――中野重治再考

が取り上げられた。
金魚さんという新たな謎が……

この評論は「てんでんこ」第11号で完結の予定。
コラム中の「同人誌」→「雑誌」?







2018/11/29 12:49:00|文芸誌てんでんこ
てんでんこ 第10号 「誕生日」完全版


誕生日
                  
平田詩織

何かを残したいと
こわばるあなたの顔に
何を彫ればいいのだろう
もっともしたしいあなたの紙片に
見知らぬひとの背骨を描かなければならない日に

生きていたことの
痕跡のような祈り
花の落ちる速度で
明日へ残りたいと
風を止める手
そびえる身体
言葉を閉ざすべきなのだろうか
何かでありたいのなら

あなたは
南に向いた梢に
こえをかける
声を駆ける
仰のいて舌をねだる
死をねだる
合歓の木の午後
轍のらせんがくるくると
降る、降りてくる
荷の底を抱きかかえ
花の種を噛みながら
足のない風に吹かれる
足のない旅人の手をひいて
草原に埋もれてゆくのは
あれはわたしだ

感情の束が水を吸い上げて
夜毎深い場所でひらかれる
ことばのかたちを、なくしたまま
にじむ青を深くする言葉の
その先を歩く人影に
いまは手を伸ばす

身体の尾根をつたい
おくぶかい光路をさがしてたどる
道なき道のゆきかたを
耳打ちしたその名を

彼は人差し指を伸ばして
わたしの唇の前に立てる
みちしるべのように
愛は示され
そしてためされている

木炭まみれの
黒い指先のひと
ここでひとりのときでも
いつもあなたを思う
光のように

光のように、すべて奪ってくれ
目の高さでゆれる
鈴生りの海
ふるえながら
はじめて咲く花のそば
まだかたちを成さない
やわらかな生きものの背が
やさしい速度で折れ曲がってゆく

こむらがえりをしようか
あなたのために
汗をかいて目をさます
とめどない官能が殴りかかってくるとき
毀壊する炎天から
絶ち消える南国の蝶の気配
赤と青の脈の美しさを鮮明にして
飛ぶように落ちてゆけ
最後の天使のように


 

手違いと行き違いが重なって、「てんでんこ」第10号掲載の
「誕生日」後半部分が欠落してしまいました。
ここに完全版を掲載し、平田詩織さんと「てんでんこ」第10号を手に取ってくださったみなさまにお詫び申し上げます。

「誕生日」完全版は、『現代詩手帖12月号』の「現代詩年鑑2019」
にも採録されています。







2018/10/23 13:53:00|文芸誌てんでんこ
てんでんこ 第10号


老若男女の作品がてんでんこに集う《小さな文芸誌》の第10号が完成しました。

「てんでんこ」第10号の内容は……

亡霊········································································· 粕谷 栄市  2
<帽子病>の四十年――粕谷栄市ノート···························· 室井 光広  6
句帖から 2018年春から夏 付・無用の注釈······················· 井口 時男  14
ヘマを踏む(3)························································ 綱島 啓介  20
北の映像圏へ······························································ 吉田 文憲  28
ドン・キホーテの憑依者たち テリー・ギリアム試論············· 藤田 直哉  34
夜の重力································································· 千葉 みずほ  48
譜代屋敷始末······························································ 角田 悦哉  52
iomante································································· 田中 さとみ  70
自死とユーモア――西部邁の死について··························· 井口 時男  76
郷士歌集(3)··························································· 田中 和生  84
納戸物語···································································· 村松 真理  88
誕生日······································································ 平田 詩織 100
<内部の人間>の革命――中野重治再考···························· 川口 好美 104
T・S・エリオット『詩篇 1920年』(2)························· 佐藤 亨訳 118
エセ物語···························································· エセ物語編纂人 130
 
てんでんこらむ アリギリスの歌/一冊の写真集 (松川好孝)/火星に似合   
        う花(森禮子)/ カフカの遺書/キャバレーニューキャッ
        スル (寺田幹太)/狂女死ぬを待たれ滅多矢鱈の(井口時
        男)/極私的なカブトムシの神話(田中和生)/ 思考する
        自我(山本秀史)/ソウセキの思い出(田中さとみ)/
        TORU写真館 (佐藤亨)/ 虎が石/文は孤ならず(夜鷹市
        蔵)/僕の文学のふるさと(川口好美)


小さな文芸誌「てんでんこ」は七月堂のオンラインショップで入手できます。
バックナンバーも扱っています。
 







2018/08/02 11:54:40|雑記
涼風


食事時間以外は、ひたすら睡眠業務に明け暮れる昨今、
散歩に出て写真を撮ったと、送ってくれた人がいるって!
 
指二本でつかまえて「記念撮影」して放したそうな。
このときに生れた句は、「てんでんこ」第10号に掲載されるらしい。