msn産経ニュースより転載いたしました。
1970年代はじめ、イエスやジェネシスのようにロック音楽に欧州のクラシック音楽やジャズの要素を融合したプログレッシブ・ロックが世界的に大流行した。
日本でも70年代、2001年に米グラミー賞を受賞した喜多郎が在籍したファー・イースト・ファミリー・バンドやフライド・エッグのような個性的なプログレ・バンドが数多く登場した。
そんな中でもマニアの間で特別視されているのが79年にアルバム1枚を出して解散した新月だ。
美しいメロディーと叙情的なシンセサイザーのサウンドを強調した日本では珍しいシンフォニック系のプログレ・バンドなのだが、信じ難い完成度の高さから本場・欧州のプログレ・ファンの間でも有名で、仏ではCDも発売された。
そんな作品が高音質のSHM−CD形式で先月再発売された。
まさに隠れた名盤と呼ぶにふさわしい内容。若い世代にぜひおすすめしたい。
演劇畑で活躍した北山真(ボーカル)と作曲面の要、花本彰(キーボード)らが中心となり77年に東京で結成した5人組。
本作を発表し、能装束をまとったステージが評判を呼ぶがメンバーが脱退し2作目を発売せず解散した。
初期ジェネシスの影響を受けた柔和なシンセや繊細な12弦ギター、フルートなどのサウンドに、大正文学的な歌詞、日本的情緒を絶妙に融合した作風は今も古びない。
演奏技術も極めて高く複雑な展開の楽曲を完璧(かんぺき)にこなす。冒頭の「鬼」と「白唇」は日本のプログレの頂点を極める名曲。冷ややかで耽美(たんび)的な音世界は唯一無二だ。
(岡田敏一/SANKEI EXPRESS)