知財コンサルタントの目でみた知財裏話

他とは違う知財コンサルタントを目指している私が 仕事で出会った面白い話題を私の目で見て書いています。
 
2010/07/19 20:19:30|その他
知財裏話(7)昨日のがっちりマンデーから「セルシード」
日曜日朝7時半からTBS系で放送している「がっちりマンデー」、結構面白いので、毎週かかさず見ています。
これを知財の目でみてみると違った視点があり、更に面白いのです。

7月18日の放送は2009年に上場した会社の紹介、その中から細胞シートの開発をしている「セルシード」に着目して調べてみました。
番組では培養した細胞シートを上手にはがす培養基礎がこの会社の特徴と紹介。まだ売り上げはないだけど、ジャスダックNeoで上場できたというのが番組での紹介でした。

でもそれだけではないよね??
上場に至った経緯、ちょっと調べてみました。

早速特許庁の特許検索サイトで出願人「セルシード」を入力してみてびっくり。
28件の出願があり、うち15件が登録になっています。 でも気になるのがいくつかありました。 
例えば 
番号 再表2006/093151 
名称:培養細胞シート、製造方法及びその利用方法
出願人:株式会社セルシード 他

他ってなんだろう? 西田幸二さん Googleで調べてみると2001年大阪大学講師 2004年大阪大学助教授 2006年東北大学教授 研究テーマ 再生医療・幹細胞生物学
もうちょっと調べてみるとこんな記事もありました。
『細胞シートは、一枚一枚を培養皿で3週間かけてつくられるが、栄養素の補充などで人手がかかるのが現状だ。この手作業を自動化するため、日立製作所と組織再生ロボットの共同開発も始まった。』
この会社には大阪大学(今は東北大学みたい)と日立製作所がついていたんですね。 これは現在売り上げがなくても上場できるわけです。

このように特許調査では、『他』ということ一つから色々なことがわかります。そしてその企業の本当の力が見えてくるのです。


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2010/07/17 22:13:23|その他
知財裏話(6) 特許なので見せられません!?
よくTVである話(特許なのでここからモザイクになります)

いかにも本当らしい話です。 でも本当でしょうか?
特許法では以下のように決まっています。
-----------------------------------------------------------
(特許出願)
第36条
4 前項第3号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合
するものでなければならない。
1. 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における
通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に
記載したものであること。
-----------------------------------------------------------
簡単に言えば同業者が特許の書類(明細書)を見て同じように設計できるレベルまで記載しないといけないという事です。 ここは秘密なので隠しておきましょうなんてことは特許では出来ません。
これは特許法の目的 第1条 にこのような記載があります。
-----------------------------------------------------------
この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
-----------------------------------------------------------
ここには同じような過去になされた発明をベースに新たな発明をすることを奨励しているからなんですね。 だから出願から18ヵ月後には全て公開されます。

正しい言い方は『特許出願して18ヶ月になっていないので、ここからモザイクになります』なんです。

でもTVではそうすると面白くないから(特許なのでここからモザイクになります)と放送しています。 放送が終わってからその会社の名前を入れると結構しっかりと書いてあり、“そうなんだ”ということが多いです。

発明を出願するということは18ヵ月後に一般に公開されるという事、いい加減に記載すれば特許は登録にならないということで特許出願は両刃の刃です。


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2010/07/14 22:43:40|その他
知財裏話・羽のない扇風機(ダイソン)その4
昨日までの、羽のない扇風機の話の続きです。

時代に先行して出願された東芝の特許 この特許は昭和55年(1980年)に出願されています。 
この年にあった主な事を検索してみると

任天堂、初の携帯型ゲーム機「ゲーム&ウォッチ」を発売。
アメリカのセント・ヘレンズ山が大噴火を起こし山体が崩壊。
大平正芳首相急死。内閣総辞職。
鈴木善幸内閣成立。
モスクワオリンピックが開幕。
山口百恵引退。
巨人の長嶋茂雄監督が退任。
巨人の王貞治選手が現役引退。
ジョン・レノン銃殺事件。

その時代に戻って、羽のない扇風機があったら買ったでしょうか?
私は多分Noです。
東芝の発明は時代にあまりに先行していたんですね。

いいアイデアを考えた時に、それを事業化できる見込みがないまま特許出願するとこのように競合相手にいいヒントを与えることになります。
このあたりが特許出願の難しいところです。

これで、ひとまず、羽のない扇風機の話は終わりにします。
さぁ次はどんなトピックスをお話しましょうか?


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2010/07/13 22:00:22|その他
知財裏話・羽のない扇風機(ダイソン)その3
私ならこんなことも調べてみます。

1) 東芝は継続して研究開発をしていたのだろうか?
出願人 (東芝)と発明者の組み合わせで出願があるか検索してみます。
結果このラインはNoだったようです。

2) 発明者は時には会社を辞めてその発明を製品化していることがあるので
発明者だけで出願があるか検索してみます。
結果このラインもNoだったようです。

3) ここからちょっと深い方向に入ります。 Googleの検索基本原理として
他から沢山引用されたWebは重要なWebとして検索ポイントをあげるという
話があります。 同じことが学会論文や特許でもあり、他からの引用が多い
ほど、重要な基本論文、あるいは特許という考え方があります。(サイテーション)
そこでこの東芝の特許が他の出願人特許で引用されたか検索してみます。
結果このラインもNoだったようです。

他にもありますが、このような状況から考えると東芝の特許は単発だったようで、
ダイソンはいいところに目を付けたという事になるのではと私は考えています。



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2010/07/11 21:43:47|その他
知財裏話・羽のない扇風機(ダイソン)その2
今日は、ダイソンが何を発明として出願したのでしょうかという点をみてみます。

特開2009-062986の目的を読むと
『本発明の目的は、使用の際に空気流を送風機の送風出力領域全体にわたりむらの無い量で生じさせる送風機組立体を提供することにある。』とあります。 

請求項を読むと
『空気の流れを生じさせる羽根無し送風機組立体であって、ノズルと、前記ノズルを通る空気流を生じさせる手段とを有し、前記ノズルは、内部通路と、前記内部通路からの前記空気流を受け入れる口と、前記口に隣接して設けられたコアンダ面とを有し、前記口は、前記空気流を前記コアンダ面上に差し向けるよう構成されている、送風機組立体。』

?? コアンダ面ってなんだ ??
Wikepediaで検索してみると『コアンダ効果は航空機の短距離離着陸性能の向上に利用され、日本の実験機「飛鳥」などで実験された。 USB(upper-surface blowing)方式と呼ばれ、翼の上側に設けられたエンジンからの噴出流がフラップに沿って地上へと曲げられ上昇力を得るものである。』

図2を見ると空気を噴出す円形状のノズル1の噴出し口の形状をコアンダ面14にして周辺の空気を巻き込むようにしたのが特許の特徴らしい。

勿論東芝の特許にはそんな記載はないです。

そうなるとこれは完全に東芝特許の改良案でパクリでもなんでもなく、新規のアイデアになります。
あとは特許庁の審査官がこのアイデアが通常のエンジニアでは思いつかないという判断をすれば特許登録になるでしょう。

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