年金関係コンサルタント

「遺族年金」「マクロ経済スライド」など年金に関する問題を解りやすく解説しております。 法改正など、年金に関する最新情報をお届けすると共に、年金に関する基礎知識を提供し、ご来場の皆さまに年金への理解を深めていただきたいと考えています。 また、社会保険労務士を目指して勉強中の皆さまにも、お役に立つ情報をお届けして参りたいと思います。 年金に関するご相談はもとより、労働問題も幅広くご相談を承っております。 どうぞ、左記「さかえ社会保険労務士事務所」宛て、お気軽にご連絡下さい。
 
2014/03/31 22:34:00|社会、法律
平成26年4月から、国民年金保険料の免除・納付猶予などの申請対象期間が拡大されました。
 平成26年4月1日から、国民年金保険料の免除・納付猶予・学生納付特例などの申請対象期間が2年1か月前までさかのぼってできるようになりました。
これは、国民年金保険料の時効が納付期限から2年であることを最大限生かした措置ということができます。
例えば、平成24年8月分の保険料納付期限は平成24年9月30日(土日祝日の場合は翌営業日)です。従って平成26年4月1日以降、平成24年8月分を免除申請できるギリギリの申請可能日は平成26年9月30日(2年1か月後)ということになります。
平成26年3月までは、さかのぼって免除申請ができる期間は、申請時点の直前の7月(学生納付特例の申請は4月)、つまり平成25年7月(学生納付特例は平成25年4月)まででした。

 今現在経済的な理由等で保険料が未納になっておられる方、2年前までさかのぼって免除申請等ができますので、すみやかに申請されることをお勧めいたします。
尚、以下に保険料免除・猶予等の制度と、申請することによるメリットについて記述しておきます。


1.国民年金保険料の免除、納付猶予、学生納付特例制度とは…
日本国内に居住している20歳以上60歳未満の方は、国民年金の被保険者になります。そして、自営業者や学生・アルバイトなど厚生年金や共済組合に加入していない人(第1号被保険者)は毎月15,250円(平成26年度金額)の国民年金保険料を納付しなければなりません。
ところが、所得が少なかったり失業している(注)場合や学生など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な方もおられるため、本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合、本人が申請し承認されることによって保険料の納付を免除したり、猶予する制度があります。

(注)災害や失業等を理由とした免除(特例免除といいます)は、前年所得が多い場合でも所得にかかわらず災害や失業等のあった月の前月から免除が受けられますが、申請時点の前年度4月以降に失業等の事由が発生していることが条件となっています。
また、世帯主や配偶者がいる方は、世帯主や配偶者が所得要件を満たしているか、失業等の特例に該当している必要があります。

<この手続きをすることによるメリット>
・保険料を免除された期間は、老後年金を受け取る際に一部(保険料の国庫負担部分)を受
 け取ることができます。(手続きをしない場合、未納となって年金は受け取れません。)
・保険料免除・納付猶予・学生納付特例を受けた期間中に、ケガや病気で障害や死亡といっ
 た不慮の事態が発生した場合、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。
・保険料免除や納付猶予・学生納付特例を受けた期間は、年金の受給資格期間(25年間)に
 算入されます。ただし、年金額に反映されるのは保険料免除期間のある人だけで、納付猶
 予や学生納付特例期間は年金額には反映されません。
 受給する年金額を増やすには、保険料免除や納付猶予・学生納付特例になった期間の保険
 料を後から納める(追納する)必要があります。

2.制度の種類と内容
(1)保険料免除制度
 @免除対象者(学生を除く)
 ・パート・アルバイトなどで、厚生年金に加入していない下記Aの所得計算式範囲内の人
 ・退職して失業中の人(失業による特例。免除又は猶予がある) 
 ・DV(配偶者の暴力)により加害者と別居している、経済的に保険料納付が困難な人

 A保険料免除の種類
 a)全額免除
  前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
  (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
 b)4分の3免除
  前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
  78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
 c)半額免除
  前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
  118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
 d)4分の1免除
  前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
  158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

 B免除期間中の年金額
 ・保険料免除期間は、保険料の国庫負担部分(1/2)と下記自己負担割合に応じた年金が
  受給できます。
 (例)免除を受けなかった場合に対する、免除種類別受給割合
   全額免除者   自己負担 0/8 + 国庫負担 4/8 = 4/8
   4分の3免除者 自己負担 1/8 + 国庫負担 4/8 = 5/8
   半額免除者   自己負担 2/8 + 国庫負担 4/8 = 6/8
   4分の1免除者 自己負担 3/8 + 国庫負担 4/8 = 7/8
   免除なし    自己負担 4/8 + 国庫負担 4/8 = 8/8
 ※平成21年3月までは国庫負担が3分の1だったため、上記の数値とは異なります。

(2)若年者保険料納付猶予制度
 @対象者(学生を除く)
 ・20歳から30歳未満で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は
  前々年所得)が下記以下の人

  (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

(3)学生納付特例制度
 @対象者
 ・本人の所得(申請者本人のみ)が下記以下の学生。
  なお、家族の所得の多寡は問いません。

  118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

 (注)学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、専修学校及び各
  種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する方で 夜間・定時制課程や通信課程の方
  も含まれますので、ほとんどの学生の方が対象となります。

 A原則的な申請対象期間
  原則として申請日にかかわらず、4月から翌年3月まで(申請日が1月から3月までの場
  合は、前年4月から3月まで)の期間が対象となります。
  ただし、4月に申請する場合に限って、前年4月から前月の3月分までの期間(前サイク
  ル分)についても申請することができます。
  但し今回の改正により、2年1か月前にさかのぼって申請ができるようになりました。


以上、ご不明な点や申請に関する手続については、最寄りの年金事務所にご相談下さい。

 







2013/10/05 15:08:00|社会、法律
離婚と年金について
 「離婚時の厚生年金分割制度」ができて6年半が経過しました。
いつかは取り上げなければならないテーマと思っていましたので、今回じっくりと記述させて頂きます。

ところで「離婚時の厚生年金分割制度」とは、簡単に申し上げれば、離婚に際して互いの財産を分け合うように、年金財産もできるだけ平等に分けていこうとするものです。
ところが、年金は将来発生するものですから、すぐには分けられないという難点があります。
そこでこの法律では「年金額を決定する要素」を分割することにより、目的を達成させるという手法をとりました。
まず序章で、「年金額を決定する要素」について先に記述しておきます。これを理解することにより、本編も容易にご理解頂けることと思います。

尚、法的には『離婚等をした場合における特例(厚生年金保険法第三章の二 → 第七十八条の二〜十二)』『被扶養配偶者である期間についての特例(厚生年金保険法第三章の三 → 第七十八条の十三〜二十一)』といいますが、ここでは「離婚時の厚生年金分割制度」又は略して「離婚分割」と表現して参ります。



〔序章〕

年金額は保険料納付実績によって決まる

あたりまえのことですが、保険料をたくさん納めた人は年金額も多くなります。
厚生年金の保険料額と年金額はどのように決められているのでしょうか。

<保険料額の決定>

保険料は、報酬(毎月の給与や賞与)に一定の保険料率(平成25年9月現在17.120%、事業者と個人が折半)を乗じて算出し、給与や賞与から天引き納付されています。
従って上限はあるものの、報酬の多い人は保険料をたくさん納めることになります。

実務上、毎月の給与(報酬月額)は厚生年金保険料額表(別表1)に基づいて30等級に分類された標準報酬月額に当てはめて報酬額を決定し、賞与については千円未満を切り捨てた額(1回について150万円が上限)としています。(これを標準賞与額といいます)

例えば月給23万円の人の標準報酬月額は24万円(別表1から)となり、賞与200万円をもらった人は、150万円が上限ですので標準賞与額は150万円になります。

標準報酬月額と標準賞与額の記録は、『年金定期便』(35歳・45歳・59歳の節目の年齢に郵送される)のC−5厚の頁をご覧頂きますと「標準報酬月額と保険料納付額の月別状況」という欄がありますので、そこで確認することができます。(月別状況・見本)
また、年金定期便がお手元にない方は、最寄の年金事務所でご相談下さい。

<年金額の決定>

老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は、被保険者期間中の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額(標準報酬総額といいます<注1>)をその被保険者期間月数で除した額(平均標準報酬額といいます)に給付乗率(生年月日に応じて定められた定数)と被保険者期間の月数を乗じて算出します。

老齢厚生年金の額=平均標準報酬額×給付乗率<注2>×被保険者期間の月数

<注1>
厳密には、標準報酬総額は各月の標準報酬月額と標準賞与額に賃金補正のための「再評価率」を乗じて得た額の総額となります。
また、「再評価率」は年金額算出に際しては、平成12年の法改正に伴い、新旧再評価率を用いるなど複雑ですが、年金分割に際しては離婚時点における再評価率で評価します。
見本として24年度再評価率表を掲載しておきます。

<注2>
給付乗率は生年月日によって異なると共に、賞与にも保険料が掛かるようになった平成15年4月1日以後(5.481/1000)と前(7.125/1000)とでは異なり、更に平成12年の法改正で給付乗率が変更になったのですが従前保障という考え方のもと、新旧双方で計算して有利な方を適用するという複雑な計算があります。参考までに給付乗率表を掲載しておきます。


ここでは、年金の額は基本的には保険料を納付するときに用いる「標準報酬月額」と「標準賞与額」、それに「被保険者期間」(保険料納付済期間等)で決まるということを理解しておいてください。

これから記述する「離婚分割」は、この年金額算出の基礎となる「標準報酬総額」のうち、婚姻期間中のものを分割していこうとするものです。
上記の「標準報酬月額」「標準賞与額」「標準報酬総額」「平均標準報酬額」という言葉をしっかり押さえておいて下さい。


1.『離婚時の厚生年金分割制度』とは

本制度の趣旨は、婚姻期間中に夫婦で築き上げた年金財産を離婚により一方に偏ることを防止すること、また、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料は、当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本認識のもと、年金額決定の重要な要素である標準報酬総額(上記ご参照)を多いほうから少ないほうに分割しようとするもので、下記2つの方式があります。
尚、本制度は厚生年金の定額部分(基礎年金部分)には当てはまらず、報酬比例部分のみに適用されますのでご注意下さい。


A.按分割合指定方式

平成19年4月1日以後に離婚等(婚姻の取消など)をした当事者に適用されるもので、離婚等をした当事者間の合意や家庭裁判所によって決められた割合(按分割合といいます)に基づき、 婚姻期間中の「標準報酬総額」を多いほうから少ない方に分割していく方式です。
尚、この方式を選択しても、下記折半方式に該当する期間がある人は折半方式と併用されます。


B.折半方式

平成20年4月1日以後に離婚等をした当事者に適用されるもので、被扶養配偶者(主に妻)が国民年金の第3号被保険者であった期間のうち平成20年4月1日以後の期間について、請求することにより各月ごとの「標準報酬月額・標準賞与額」を自動的に被保険者と折半していく方式です。
相手方の合意は不要です。


それでは、順を追って説明してまいります。

(1)按分割合指定方式

これは、夫婦それぞれの婚姻期間中各月の標準報酬月額・標準賞与額に離婚時点の再評価率を乗じて算出した「標準報酬総額」を、決められた按分割合に従って分割するものです。

@按分割合とは…

按分割合とは、婚姻期間中の夫婦それぞれの標準報酬総額の合計に対する、標準報酬総額の少ない人の割合をいいます。(標準報酬総額の多いほうを第1号改定者、少ないほうを第2号改定者といいます)


例えば、夫(第1号改定者)の標準報酬総額が7,000万円、妻(第2号改定者)の標準報酬総額が3,000万円だった場合の離婚分割前の按分割合は…

3,000万円÷(7,000万円+3,000万円)×100= 30% となります。

A按分割合の決定
 
按分割合の上限は50%です。下限は第2号改定者の分割前の割合(ここでは30%)を超えるものとなります。
また、按分割合は事前に話し合い又は家庭裁判所の審判等で決定しておかなければなりません。
上記事例において、話し合いで按分割合を45%と決定したとしますと、

(7,000万円+3,000万円)×0.45=4,500万円が妻の分割後の標準報酬総額になります。

夫の分割後の標準報酬総額は(7,000万円+3,000万円)×(1−0.45)=5,500万円となります。  

B按分割合に基づき改定した各人の標準報酬総額を、対象期間各月の「標準報酬月額」「標準賞与額」に割り戻す<注3>

按分割合に従って改定した標準報酬総額は、これを対象期間各月の「標準報酬月額」「標準賞与額」に割り戻す必要があります。なぜならば、年金額算出に際しては毎月の標準報酬月額・標準賞与額に再評価率を乗じなければならないためです。そして、再評価率表をご覧頂くと判りますが、再評価率は毎年度変わりますので標準報酬総額のままでは年金額が算出できないからです。

<注3>
この月別割り戻しについては、大変複雑な算式を用いますのでここでは説明を省略させていただき、按分割合に基づいて分割された標準報酬総額をそれぞれの「標準報酬月額」「標準賞与額」に割り戻しすることにより、年金額算出の要素が改定されるため結果的に年金額増減に繋がるということをご理解下さい。
尚、月別割り戻しの計算について気になる方は、後記《参考》をご覧下さい。


C離婚分割(標準報酬改定)の請求手続き

 a) 請求できる人
   ・ 平成19年4月1日以降に離婚又は婚姻の取消をした当事者。
   ・事実上婚姻関係と同様の事情にあった基礎年金(国民年金)の第3号被保険者が
    その資格を喪失し、事実婚が解消したと認められる当事者(同一人と婚姻して事実
    婚が解消する場合を除く)。

 b) 請求するための要件
   ・当事者の合意又は家庭裁判所により按分割合が定まっていること。

 c)請求期限
   ・離婚等をした日の翌日から起算して原則2年。

 d)離婚分割の対象期間
   ・婚姻が成立した日の属する月から離婚が成立した日の属する月の前月まで(平
    成19年4月1日前も含む。年金額は分割請求のあった月の翌月から改定する)  
   ・事実婚の場合は第3号被保険者であった期間。

 e)請求事務
   ・「標準報酬改定請求書」に「按分割合が当事者双方で合意等した内容記載の
    書類、またはそれを明らかにする公正証書」を添付して住所を管轄する年金事
    務所に請求。

D効果
   ・当事者が再婚しても相手が死亡しても、改定した標準報酬は生涯適用される。
   
Eその他
   ・当事者は、年金を受給する年齢に達したとき、自分自身の老齢年金の受給資格
    期間(国民年金の保険料納付済期間、免除期間など合わせて25年以上)を満
    たしていなければ受給できない。(折半方式も同じ)
   ・離婚分割の効力は、請求のあった日から将来に向かってのみ有するため、既に
    受給している年金額が遡って改定になるわけではない。(折半方式も同じ)
   ・離婚前に、離婚を想定しての対象期間の標準報酬総額、按分割合の範囲などの
    情報を、当事者の一方または双方は厚生労働大臣(年金事務所)に請求するこ
    とができる。
   ・不謹慎ながら、第1号改定者となるべく配偶者の死期が迫っている場合、離婚
    せずに我慢することにより、遺族厚生年金(通常、故人が本来貰うべき老齢厚
    生年金の3/4)を貰う方が得になるケースがある。
   
   


(2)折半方式

これは平成20年4月1日以後に離婚した人に適用されるもので、被扶養配偶者(主に妻)の請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中で国民年金第3号被保険者であった期間(特定期間といいます)の各月の「標準報酬月額」と「標準賞与額」を、被保険者(特定被保険者といいます)と被扶養配偶者とで単純に折半するものです。

@請求手続き

 a) 請求できる人
   ・平成20年4月1日以降に離婚又は婚姻の取消をした、国民年金第3号被険者であ
    った期間を有する被扶養配偶者。
   ・事実上婚姻関係と同様の事情にあった国民年金の第3号被保険者がその資格を喪失
    し、事実婚が解消したと認められる被扶養配偶者。(同一人と婚姻して事実婚が解
    消する場合を除く)
 
 b)請求期限
   ・離婚等をした日の翌日から起算して原則2年。

 c)離婚分割の対象期間
   ・平成20年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者であった期間(平成20年
    3月31日以前は含まない)。

 d)請求事務
   ・「標準報酬改定請求書」を住所を管轄する年金事務所に提出。

Aその他
   ・被保険者(主に夫)と按分割合の交渉や、事前の話し合いをする必要がない。
   ・按分割合指定方式で請求した際、対象期間の中に特定期間(折半方式の対象
    期間)がある場合、折半方式の請求があったものとみなし、折半方式で標
    準報酬の改定又は決定を行った後に、按分割合指定方式での標準報酬総額の
    算出を行う。
   ・特定被保険者が障害厚生年金の受給権者の場合、折半方式が行われない場合
    もある。
  


2.離婚等に直面している人の対応

離婚して2年以内でまだ離婚分割請求をしていない人、又は離婚を考えている人

@按分割合指定方式で請求したほうがよい人
 ・婚姻期間が平成20年4月1日より前にある人。
 ・婚姻期間が平成20年4月1日以後だが、国民年金第2号被保険者期間がある、配
  偶者より収入の少ない人。

A折半方式で請求したほうがよい人
 ・平成20年4月1日以後に結婚して、国民年金第3号被保険者のみ(専業主婦・パ
  ートなど)を有する人。


以上ですが、お解かりいただけましたでしょうか。
以下にはご参考までに、按分割合に応じた標準報酬月額・標準賞与額への割戻し計算を記述しておきます。
これも一部省略してありますが、考え方はご理解頂けることと思います。



《参考》

前記事例において、夫から妻へ移動する標準報酬総額は1,500万円であり、夫からみたその減額割合は

1,500万円 ÷ 7,000万円 = 0.2142857

となります。この値は、夫と妻の報酬総額を按分割合に基づいて分け合う率で『改定割合』といいます。


この『改定割合』を用いて逆算すると、

7,000万円×(1−0.2142857)=5,500万円

が改正後の夫の標準報酬総額になります。


妻側から見ますと…

3000万円 + (7,000万円 × 0.2142857)=4,500万円 

となり、改正後の妻の標準報酬総額になります。

この改定割合を使って、上記算式と同じように双方の改定前の対象期間各月の「標準報酬月額」「標準賞与額」に割り戻せば、改定後の「標準報酬月額」「標準賞与額」が算出できます。

つまり、夫においては7000万円の部分を夫の改定前の各月の「標準報酬月額」又は「標準賞与額」に変えれば、改定後の夫の対象期間各月の「標準報酬月額」「標準賞与額」を算出することができます。

妻においては、3000万円の部分を妻の改定前の各月の「標準報酬月額」又は「標準賞与額」に変え、7000万円の部分を妻と同時期の、夫の改定前の標準報酬月額又は標準賞与額に変えれば、改定後の妻の対象期間各月の「標準報酬月額」「標準賞与額」を算出することができます。

従ってここで一番大切なのは、『改定割合』の算出ということになります。
上記を整理して『改定割合』の算出式を示しますと、

改定割合={夫7000万円−(夫7000万円+妻3000万円)×(1−按分割合)}÷夫7000万円

以下、「夫」「妻」表示はいずれも各人の対象期間標準報酬総額の略とします。
            ↓

改定割合={夫−(夫+妻)×(1−按分割合)}
               夫
        
             ↓
改定割合=1−{(1+)×(1−按分割合)}
               夫

            ↓
改定割合=1−{(1−按分割合)+×(1−按分割合)}
                       夫

            ↓
改定割合=1−1+按分割合−×(1−按分割合)
                     夫

            ↓
改定割合=按分割合ー妻÷夫×(1−按分割合)

となり、正確に表現すると

改定割合=按分割合ー(第2号改定者の対象期間標準報酬総額÷第1号改定者の対象期間標準報酬総額)×(1−按分割合)

となります。


さて、この『改定割合』ですが実はもう少し複雑になります。それは、再評価率が生年月日によって異なるためです。
これ以上の説明は画面の関係でできませんので、最終的な算式だけ記述しておきます。

改定割合={按分割合 −(第2号改定者の対象期間標準報酬総額 ÷ 第1号改定者の対象期間標準報酬総額)× (1 − 按分割合)}÷(按分割合ー按分割合×変換率+変換率)

変換率=第2号改定者の再評価率で再評価した第1号改定者の対象期間標準報酬総額÷第1号改定者の対象期間標準報酬総額

となります。

 具体的な数値をご希望の方は、年金事務所にご相談下さい。秘密は厳守してくれます。


《参考文献》
TAC 新・標準テキスト 厚年法








2012/09/06 14:17:04|社会、法律
国民年金法等の一部を改正する法律が公布されました
「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」が、8月22日に公布されました。

主な改正点は下記の通りです。


1.老齢基礎年金の受給資格期間を25年から10年に短縮。(平成27年10月施行)

これは、納付した保険料に応じた給付を行い、将来の無年金者の発生を抑えていくという視点から行われるもので、これに伴い、現在無年金の高齢者に対しても改正後の受給資格期間を満たしていれば、施行日以降、保険料納付済期間等に応じた年金が支給されます。

2.短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大。(平成28年10月施行)

 <対象者>
 @週20時間以上(現行週30時間以上)
 A月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
 B勤務期間1年以上
 C学生は適用除外
 D従業員501人以上の企業

3.産休期間中の厚生年金・健康保険等の保険料を免除する。(2年を超えない範囲で政令で定める日から施行)

現在は育児休業期間中の厚生年金・健康保険の保険料のみ免除されている。

4.遺族基礎年金の父子家庭への支給を行う。(平成28年10月施行)

現在は夫が死亡した場合にのみ、その妻又は子に支給されているが、施行日以降は、支給要件を満たしていた妻が死亡した場合にもその夫又は子に支給される。







2012/09/06 13:55:00|社会、法律
未納の国民年金保険料が、10年間分さかのぼって納付できるようになります。


年金保険料滞納、未納の方に朗報!


期間限定:平成24年10月1日〜平成27年9月30日までの3年間。

10年前までさかのぼって未納保険料が納付(後納)できます。


年金を受け取るための資格要件として、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間(昭和36年4月1日〜昭和61年3月31日間にサラリーマンの妻で保険料を納付していなかった期間など)などを合計して25年以上が必要です。
一方、25年に満たないからと、任意加入して保険料を納付できるのは最高でも70歳までです。そして通常、未納保険料は2年分しかさかのぼって納付できませんので、せっかく20年保険料を納付したのにあと5年足りなくて年金をもらえないという事態が現に発生しています。
そこで今回救済措置として、平成24年10月1日からの3年間期間限定で、10年前までさかのぼって納付可能という特例措置がとられます。
年金の受給資格期間が足りない方、資格はあるが未納期間もあるため年金額が少なく、もっと増やしたいと思っておられる方はぜひ、最寄の年金事務所にご相談下さい。

尚、蛇足ながら「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」が8月22日に公布され、平成27年10月1日(施行日)から受給資格期間が現行の25年から10年に短縮されることになっていましたが、消費税10%への引き上げが29年4月1日に延期されたのに伴い、年金受給資格期間短縮も平成29年4月1日となりました。








2011/06/20 15:23:03|その他
在職老齢年金の算出に係る支給停止基準額が「46万円」に改定されました

在職中の老齢厚生年金は減額(支給停止)される場合があることは周知のとおりですが、23年4月1日から、その算出に係る「支給停止基準額(従来47万円)」が46万円に改定されました。
支給停止基準額のうち「28万円」については変更ありません。

尚、「60歳代前半(65歳未満)」と「60歳代後半(65歳以上)」とでは計算方法が異なりますので、この章では、「60歳代前半の在職老齢年金の減額(支給停止)」について記述させていただき、「60歳代後半(65歳以上)」の分は「その2」をご覧下さい。



在職中の老齢厚生年金は受給できる年金額と現在の報酬との兼ね合いで決まります。

算定の基礎となる数値は下記の二つです。

@基本月額〜特別支給の老齢厚生年金(加給年金は除きます)を12で除した1ヶ月あたりの年金額
A総報酬月額相当額〜その月の標準報酬月額+〔その月 以前1年間の標準賞与額の合計÷12〕


(1)@+Aが28万円以下のとき、年金は全額もらえます(減額はありません)
(2)@が28万円以下の場合で
 (ア)Aが46万円以下の場合
   (A+@-28万円)×1/2 が減額されます
 (イ)Aが46万円超の場合
    (46万円+@-28万円)×1/2+(A−46万円) が減額されます
(3)@が28万円超の場合で
 (ウ)Aが46万円以下の場合
    A×1/2 が減額されます
 (エ)Aが46万円超の場合
    (46万円×1/2)+(A−46万円) が減額されます


やや複雑になりましたので上記の内容を表にしてみました(表1ご参照)。

また、年金額と報酬の兼合いによる減額目安は「早見表」(表2ご参照)でご確認下さい。
尚、早見表における支給停止額は1ヶ月あたりです。