年金関係コンサルタント

「遺族年金」「マクロ経済スライド」など年金に関する問題を解りやすく解説しております。 法改正など、年金に関する最新情報をお届けすると共に、年金に関する基礎知識を提供し、ご来場の皆さまに年金への理解を深めていただきたいと考えています。 また、社会保険労務士を目指して勉強中の皆さまにも、お役に立つ情報をお届けして参りたいと思います。 年金に関するご相談はもとより、労働問題も幅広くご相談を承っております。 どうぞ、左記「さかえ社会保険労務士事務所」宛て、お気軽にご連絡下さい。
 
2015/11/19 15:51:00|社会、法律
必見!! 夫が亡くなった時の遺族年金
今回は遺族年金について記述させていただきます。

特に小さなお子さまを抱えているご家庭や、年金生活に入っているご夫婦においては、配偶者の「死」はその日から生活に直接影響を与える問題でもありますので、その時慌てないためにも今から関心を寄せておいて頂きたいと思います。

尚、当事例においては「夫の死」で進めて参りますが、夫と妻を読み替えて頂くこともできます。
また大前提として、亡くなられた方(年金の被保険者等)は決められた保険料をきちっと納付していた、ということで話を進めて参ります。
それから遺族基礎年金額は平成27年度の額です。



1.遺族年金の種類
遺族年金には<遺族基礎年金(国民年金)><遺族厚生(共済)年金>があります。
また、遺族厚生年金には一定の条件を満たした妻において寡婦加算(中高齢の寡婦加算等)があります。
以下、事例を交えながら解説して参ります。

(1)遺族基礎年金
@受給できる人は次の(イ)〜(ハ)の人です。
国民年金の被保険者等の死亡当時、その死亡された方によって生計を維持されていた
(イ)下記(ロ)又は(ハ)と生計を同じくする配偶者。
(ロ)18歳の誕生日に達する日以後の最初の3月31日(以下、18歳の年度末と表現します)までの間にある子。尚、胎児は生まれたときから子として受給権が発生します。
(ハ)障害等級1・2級に該当する20歳未満の未婚の子。
被保険者とは〜被保険者以外に、被保険者であった人で60歳以上〜65歳未満の日本国内に住所のある人、老齢基礎年金の受給権者などをいいます。

A年金額
(イ)遺族に配偶者がいる場合
 配偶者〜 780,100円+子の加算(親に支給されますので子は支給停止になります)
 ※子の加算額〜・第1子・2子… 各224,500円
        ・第3子以降… 74,800円 
(ロ)遺族が子のみ場合
 第1子〜 780,100円
 第2子〜 224,500円
 第3子以降〜74,800円 を合計し、子の人数で除して各人に同額の遺族基礎年金が支給されます。

<事例1>
自営業一筋できた35歳の夫が交通事故で急死。妻32歳、子5歳・2歳・6か月の3人。妻子は夫に生計を維持されていた。

【遺族基礎年金が支給されます】
  妻〜 780,100円+子の加算
  <子の加算内訳>
  ・第1子〜 224,500円
  ・第2子〜 224,500円
  ・第3子〜  74,800円
  合計 1,303,900円 が遺族基礎年金として妻に支給されます。
子が対象年齢を過ぎたり、死亡・婚姻をした場合などにはその分減額され、子の全員が対象者でなくなった時遺族基礎年金は終了します。

※<その他の給付>
第1号被保険者には遺族基礎年金とは別に、下記独自給付があります。
@寡婦年金
(イ)受給できる人
第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が25年以上である夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けずに死亡した場合で、婚姻期間が10年以上の妻に60歳から64歳までの間、支給されます。
遺族基礎年金を受給した人にも支給されますが、妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受給していると貰えません。
(ロ)年金額
夫が受けられたであろう老齢基礎年金額(第1号被保険者期間に係る額に限る。)の4分の3。

A死亡一時金
年金ではありませんが、死亡した人が36月以上第1号被保険者として保険料納付済み期間等があり、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していない方の遺族(配偶者・子・父母・祖父母・孫・兄弟姉妹)に、一定の要件を満たしていれば「死亡一時金」が支給されます。


(2)遺族厚生年金
遺族厚生年金は、未成年の子供等がいなくても受給できます。
@死亡の要件
死亡した人は、下記(イ)〜(ニ)のいずれかに該当する必要があります。
(イ)厚生年金の被保険者(現役の会社員)の死亡。
(ロ)厚生年金の被保険者であった人が、被保険者の資格喪失後(退職後)に、被保険者であった期間に初診日がある傷病により、その初診日から5年を経過する日前に死亡。
(ハ)障害等級1・2級の障害厚生年金受給権者の死亡。
(ニ)老齢厚生年金の受給権者または、保険料納付済み期間と免除期間を合算して25年以上ある人の死亡。

A受給できる遺族
被保険者等(死亡した人)の配偶者・子・父母・孫又は祖父母で、被保険者等の死亡当時その者によって生計を維持されていた人。
尚、妻以外は下記年齢制限があります。
・夫、父母、祖父母〜55歳以上(ただし、60歳に達するまでは支給されません)。
・子、孫〜被保険者等の死亡当時、18歳の年度末までの間にある、又は障害等級1・2級に該当する20歳未満の結婚をしていない子。
また、優先順位は❶配偶者と子❷父母❸孫❹祖父母で、先順位者が受給権を取得すれば後順位者は受給権者になりません。(但し、遺族共済年金の場合は後順位者に受給権が移ります)

B年金額
(イ)死亡した被保険者等の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額の規定により算出した額の4分の3に相当する額です。

尚、被保険者期間が短い方(若くして亡くなられた方)は被保険者期間を300月として計算します。年金額の計算は保険料納付記録に基づき、複雑に計算されますので、年金事務所でご確認下さい。

(ロ)遺族が65歳以上の、老齢厚生年金その他老齢又は退職を支給事由とする年金の受給権がある配偶者(ここでは妻としておきましょう)の場合、次に掲げるa)+b)を合算した額が(イ)より多い場合こちらを選択することもできます。
a)(イ)の3分の2(=夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の2分の1)
b)遺族である妻自身の老齢厚生年金(報酬比例部分)の2分の1

(ハ)中高齢寡婦加算(これは夫には支給されません)
夫が死亡当時40歳以上65歳未満ので、遺族基礎年金の支給要件となる子がいない場合、又は、遺族基礎年金を受給している妻に遺族基礎年金の支給要件となっている子がいなくなった時に40歳以上65歳未満である妻に、遺族基礎年金の額(780,100円)の4分の3が支給されます。
これは、遺族基礎年金のない中高齢(40歳以上)の寡婦に、老齢基礎年金がもらえる年齢になるまで、遺族基礎年金の4分の3を補おうとするものです。

(ニ)「経過的寡婦加算」(これも夫には支給されません)
・受給条件〜
昭和31年4月1日以前に生まれた妻が65歳に達した時点(中高齢寡婦加算は終了する)で下記いずれかに該当する人。
@「中高齢寡婦加算」を受給していた人。
A65歳を過ぎて遺族厚生年金を受けることになった寡婦。

これは、65歳になって「中高齢寡婦加算」から「老齢基礎年金」に変わったときに、昭和31年4月1日以前生まれの方は国民年金加入期間が短いため減少される方が多いため、それを補うためのものです。
従って金額は、<表1>の通り妻の生年月日によって変わります。

<表1> 経過的寡婦加算の額(平成27年度)
    生 年 月 日          金 額
大正15年4月2日〜昭和 2年4月1日   585,100円
昭和 2年4月2日〜昭和 3年4月1日   555,100円
昭和 3年4月2日〜昭和 4年4月1日   527,300円
        中  間 省 略
昭和28年4月2日〜昭和29年4月1日   58,500円
昭和29年4月2日〜昭和30年4月1日   39,000円
昭和30年4月2日〜昭和31年4月1日   19,500円
昭和31年4月2日〜 0

<事例2>
学校を卒業してからずっとサラリーマン(18年間)でいた40歳の夫が病死。妻(専業主婦)37歳、子10歳・7歳の2人。妻子は夫に生計を維持されていた。

【遺族基礎年金】
  妻〜 780,100円+子の加算
  <子の加算内訳>
  ・第1子〜 224,500円
  ・第2子〜 224,500円
    合計 1,229,100円 が遺族基礎年金として妻に支給されます。

【遺族厚生年金】
 妻〜夫の平均標準報酬月額の300月分で計算した老齢厚生年金額の4分の3(現実の場合、最寄りの年金事務所で算出してくれます)

【中高齢寡婦加算】
妻は、7歳の子が18歳の年度末を過ぎたとき(48歳ぐらい)から65歳に達するまで、
780,100円×3/4 = 585,100円
 遺族厚生年金に加算されます。

<事例3>
夫サラリーマン歴30年、現役中55歳で病死。妻パート52歳、厚生年金加入なし。子供はいずれも成人している。

【遺族基礎年金】 無し。

【遺族厚生年金】 (イ)+(ロ)
妻に支給
  (イ)基本年金
夫の平均標準報酬月額の360月(30年)分で計算した老齢厚生年金額の4分の3(現実の場合、最寄りの年金事務所で算出してくれます)

  (ロ)中高齢寡婦加算(65歳になるまで)
    780,100円×3/4 = 585,100円

因みに、妻は52歳ですので昭和38年生まれくらいですので「経過的寡婦加算」はありません。

<事例4>
夫73歳(サラリーマン歴42年)、妻69歳(昭和21年5月10日生まれ)で、下記年金受給中に夫が死亡した場合。

(夫) 老齢基礎年金  700,000円
    老齢厚生年金 2,000,000円

(妻) 老齢基礎年金  400,000円
    老齢厚生年金   800,000円

夫の老齢基礎年金は消滅します。妻は自分の「老齢基礎年金」+下記@又はAから有利な方を選択することになります。

 @夫の老齢厚生年金の3/4 = 1,500,000円

 A夫の老齢厚生年金の1/2(条文では@の2/3となっています) + 妻の老齢厚生年金(加給年金は除く)の1/2 = 1,400,000円 

この場合@を選択した方が有利ですので、妻は自分の老齢基礎年金400,000円と@を合わせて1,900,000円 の年金を受給することになります。
尚、老齢厚生年金を貰っている65歳以上の遺族厚生年金の受給権者(ここでは妻)は、老齢厚生年金が優先して支給されますので、形式的には遺族厚生年金としては上記@(1,500,000円)と妻の老齢厚生年金(800,000円)の差額(700,000円)が支給されることとなります。

【経過的寡婦加算】
妻は昭和21年5月生まれですので、上記<表1>から195,100円の経過的寡婦加算があります。

<妻の年金内訳>
  老齢基礎年金  400,000円
  老齢厚生年金   800,000円
  遺族厚生年金  700,000円
  経過的寡婦加算  195,100円
    合 計   2,095,100円


 以上、だいぶ長くなってしまいましたが、ご理解頂けましたでしょうか。
とりあえずは、自分の年齢や家族構成に近いものだけご理解いただければ十分です。
あとはこのような年金を貰わなくても良いよう、お互いいたわりあってお過ごし下さい。
そして、その時になったらお近くの年金事務所にご相談ください。








 







2016/02/03 13:44:44|その他
平成28年度、国民年金保険料の前納額について
国民年金保険料は、前もって一定期間まとめて納める(前納)ことにより割引されます。
平成28年度における前納額と割引額は下記の通りです。

預金金利が低迷する中、銀行に預けておくよりは前納する方が断然お得ですので、余裕ある方はご利用されることをお勧め致します。
尚、前納には「口座振替」によるものと「現金納付」によるものがありますが、2年前納については「現金納付」はありません。


1.前納額と割引額
(1)6か月前納(平成28年4月〜平成28年9月分、平成28年10月〜平成29年3月分)
  ・前納しない場合  97,560円(16,260円×6か月)
  ・口座振替     96,450円 (1,110円割引) 
  ・現金納付     96,770円 ( 790円割引)

(2)1年前納(平成28年4月〜平成29年3月分)
  ・前納しない場合  195,120円(16,260円×12か月)
  ・口座振替     191,030円 (4,090円割引) 
  ・現金納付     191,660円 (3,460円割引)

(3)2年前納(平成28年4月〜平成30年4月分)
  ※口座振替のみの取扱いとなります。
  ・前納しない場合 393,000円(16,260円×12か月+16,490円×12か月)
  ・口座振替  377,310円 (15,690円割引)

2.手続き 
口座振替手続きは「2月末」までに預貯金口座をお持ちの金融機関(ゆうちょ銀行を含む)、または年金事務所(郵送も可)へ「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」をご提出ください。(申出書はそれぞれに備え付けてあります)
現金納付の場合は「納付書」持参の上金融機関にお申し出ください。

3.引き落とし日
(1)6か月前納     平成28年5月2日  平成28年10月31日
(2)1年及び2年前納  平成28年5月2日  
 







2015/11/05 11:47:12|社会、法律
年金関係書類にマイナンバーは当面不要です。
2016年1月よりマイナンバー制度がスタートし、税・社会保障・災害対策の行政手続きにマイナンバーが必要となりますが、年金関係につきましては日本年金機構による個人情報漏洩問題が解決していないため、その運営は2017年以降となる予定です。
つきましては、新たに年金を受給する方が「年金裁定請求書」を提出する際に住民票を添付する必要がありますが、「マイナンバーが記載されていない住民票」を市町村に請求してください。
尚、共済組合の年金につきましてはマイナンバーの記載が必要になります。







2015/04/09 13:53:00|社会、法律
年金の「繰上げ」「繰下げ」受給をお考えの方必見!
年金は原則65歳から受給できますが、請求することにより60歳から受給(繰上げ受給)することができます。
また、今は収入があるから66歳以後に受給を先送りし(繰下げ受給)、受給金額を増やしたいという選択もできます。

年金は長生きすればするほど得になるのは周知の通りですが、健康に不安をお持ちの方は「自分は平均寿命ほどにはとても長生きする自信がないから、早く年金を貰いたい」とお考えの方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は「繰上げ受給」・「繰下げ受給」による年金額の増減率を解説し、損益分岐年齢が確認できる『老齢基礎年金「繰上げ」受給・「繰下げ」受給、累計額比較表』を文末に「参考資料」として添付しました。


1.繰上げ受給
年金は、要件を満たした人は原則65歳から受給するのが基本ですが、請求することにより60歳から受給することもできます。ただし早く受給する分、受給額は減額されます。
減額される率は65歳(誕生日の前日が属する月=誕生月)より1か月早く請求するごとに0.5%減額されます。
例えば64歳の誕生月に請求(請求した月から受給開始となります)すると12か月早く受給するわけですから0.5%×12か月=6%減額され、65歳から受給する金額の94%になってしまいます。
60歳の誕生月から受給すれば0.5%×60か月=30%減額されますから、65歳から受給する金額の70%になってしまいます。
そして、減額された年金額は生涯続きます。

2.繰下げ受給
一方、65歳で受給せず66歳以降に受給すると、1か月遅く請求するごとに0.7%増額されます。(66歳前での請求は繰下げにはなりません)
例えば66歳の誕生月に請求すると12か月遅くもらうわけですから0.7%×12か月=8.4%増額され、65歳から受給する金額の108.4%になります。
70歳の誕生月に請求すれば0.7%×60か月=42%増額され、65歳から受給する金額の142%が生涯受取れます。
70歳以降はどんなに遅く貰っても増額率は142%で変わりません。

3.「健康寿命」「平均余命」
「平均寿命」は男性80.21歳、女性は86.61歳(平成25年簡易生命表より、以下同様)とまだまだ伸びていますが、意外と短いのが「健康寿命」です。
「健康寿命」とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と厚労省では定義しており、男性71.19歳、女性は74.21歳です。
「繰上げ」や「繰下げ」受給を考える上で一番気になるのは健康状態です。但し下記4.の通り正解はありませんので、それを承知の上決断することが必要と思います。
「平均余命」は平均寿命より長いことも確認しておいて下さい。

4.「繰上げ受給」のケースバイケース
大病したため体が動くうちに旅行や観劇に行こうと、60歳から年金をもらって行動範囲を広げた結果、友人も増えて80歳を過ぎてもお元気に過ごされている方がおられます。
一方、同様に病弱で自信が無かったため60歳からの「繰上げ受給」を選択したが、幸いにして長命している結果医療費がかさみ、「繰上げ受給」したことを後悔しているという方もいらっしゃいます。

結局、「選択の良し悪しは後にならなければ判らない」というのが結論になってしまいますので、ここでは「繰上げ」または「繰下げ」受給した時の「損得分岐年齢」を知り、ここまでは生きられそうだという目安のもとに「繰上げ」「通常(65歳)」「繰り下げ」のいずれかを選択し、あとは健康で充実した毎日を過ごして頂ければと願っております。
そして、「繰上げ」や「繰下げ」受給した方が分岐年齢を超えて長生きした時、年金額だけを捉えれば「繰下げ」受給した方は万々歳ですし、「繰上げ受給」された方は「繰上げ受給」しなければよかったということになるかも知れませんが、それにも増して両者とも長生きできた幸せに浸ることができます。

「参考資料」として、『老齢基礎年金「繰上げ」受給・「繰下げ」受給、累計額比較表』を添付しました。検討資料としてご活用ください。

 「参考資料」はこちら 




 







2015/03/29 12:57:00|その他
平成27年度の年金額改定と「マクロ経済スライド」について
平成27年度の年金額改定において「マクロ経済スライド」という聞きなれない言葉が出てまいりました。
「マクロ経済スライド」を伴った平成27年度の年金額改定の詳細と、「マクロ経済スライド」について解説して参ります。



【平成27年度の年金額改定】

1.年金額改定ルールの原則
(1)新規に年金を受け取る方(「新規裁定年金」といいますが、実際には既受給者を含む67歳以下(注1)の方をいいます)は「名目手取り賃金変動率」によって変動します。

「名目手取り賃金変動率」(平成27年度は2.3%(注2))は

前年の物価変動率(平成26年度値2.7%)× 2〜4年度前の3年度平均実質賃金変動率(平成23〜25年度の平均▲0.2%)× 可処分所得割合変化率(平成24年度の変化率▲0.2%

で、計算します。

(注1)実質賃金変動率算出に際し3年平均をとっているため、67歳までは65歳以前の実質賃金変動率を採用していることから新規裁定者扱いにしている。

(注2)計算するときは
1.027×0.998×0.998=1.0229で、2.3%となります。


(2)年金を受給中の方は(「既裁定年金」といい、今年度68歳以上の方をいいます)「物価変動率」によって改定します。但し、賃金水準の変動よりも物価水準の変動の方が大きい場合は給付と負担の長期的な均衡を保つなどの観点から「名目手取り賃金改定率」で改定されます(27年度が該当)。

2.平成27年度の年金改定率
(1)名目手取り賃金変動率(2.3%) 物価変動率(2.7%)につき、
上記1.(2)により「新規裁定年金」「既裁定年金」共に「名目手取り賃金変動率」2.3%で改定されます。

(2)次に特例水準の段階的解消のための補正▲0.5%を行います。
これは、本来年金額は物価にスライドして増減させるべきであったところ、平成12年度以降物価が下落していたにもかかわらず年金額を引き下げない状態が続きました(物価スライド特例措置といいます)。
その率は2.5%にのぼり、これを平成25年10月に▲1.0%、26年4月に▲1.0%、27年4月に▲0.5%の3年間で解消することにしたためです。

(3)次が今回のテーマにもある「マクロ経済スライド」によるスライド調整率▲0.9%です。
これについては後段で詳しく説明しますが、以上の結果、

(1)+(2)+(3)=2.3%+▲0.5%+▲0.9%=0.9%

平成27年度の年金額は0.9%の引き上げということになりました。

※厚生年金(報酬比例部分)に関しては、被保険者期間が直近の機関のみの方など、すべての方が0.9%の引き上げになるわけではありません。

3.年金額の計算
 これまでの年金額の計算は、平成16年改正後の年金関係法の規定により計算した年金額(本来水準)が、平成16年改正前の年金関係法の規定により計算した年金額(特例水準)に満たない場合、特例水準の年金額を支給することとしています。
平成27年3月分までの老齢基礎年金満額の場合の年金額は、平成16年改正前の規定に定める額(804,200円)に「政令で定める率(0.961)」を乗じ、772,800円となり、計算式は以下のとおりでした。
【計算式】
<平成27年3月分までの年金額(老齢基礎年金満額)の計算式>
平成16年以前の規定に定める額(804,200円)× 政令で定める率(0.961) ≒ 年金額(772,800円)

平成27年4月分からの改定後の年金額の計算は、上記計算式の「政令で定める率(0.961)」に0.9%(=1.009 上記2.(3))を乗じ、「政令で定める率」を「0.970」と改定して計算します。
老齢基礎年金満額の場合の改定後の年金額は780,100円となり、具体的な計算式は、以下のとおりとなります。
【計算式】
<平成27年4月分からの改定後の年金額(老齢基礎年金満額)の計算式>
平成16年以前の規定に定める額 (804,200円)× 従前の政令で定める率(0.961×1.009=0.970) ≒ 年金額 (780,100円)
※1.計算後50円未満の端数は切り捨て、50円以上100円未満の端数は100円に切り上げます。
※2.これまでの年金額そのものに0.9%(1.009)を乗じても、平成27年4月分からの年金額となりませんのでご留意下さい。


【「マクロ経済スライド」について】

「マクロ経済スライド」は平成16年の年金制度改正において、「給付と負担の見直し」と言う観点から取り入れられた年金額改定のシステムです。
今までの年金制度は、「新規裁定者」の年金額は賃金上昇率に合わせてスライドし、「既裁定者」の年金額は物価上昇率にあわせてスライドしていました。
ところが現役の被保険者が減少する一方で平均余命は伸長して年金受給者が増加していることから、将来の年金財政に支障をきたしかねず、年金の給付水準を調整する必要が出てきました。
これが「マクロ経済スライド」の考え方で、調整する度合いを「スライド調整率」といい、

 公的年金の被保険者数の変動率× 平均余命の伸び率

で算出します。

そして、平成27年度の「スライド調整率」は
「公的年金被保険者変動率」▲0.6%× 「平均余命伸び率」▲0.3%=▲0.9%としています。

尚、「マクロ経済スライド」は@特例水準が解消していない状況下A物価が下落しているデフレ環境下、では実施できないルールがあるため、これまで導入ができませんでした。


参考資料〜厚労省Press Release・日経新聞


 







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