★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。  人は誰しも、ファザコン、マザコンによる願望があり、それを達成する行動をとります。その生まれ、育ちで、パーソナリティが形成されて、その体験が、深層心理やトラウマとなります。  そんな男と女が出逢って、その心の奥底から求め合う≪願い≫、そんな愛の物語を、フィクションで・・。
 
2018/07/19|その他
 ◇言えずじまいの雪 ◇ 男と女の風景・21
 
                                2018年7月19日(木)・更新
 

  ○ 読者の皆様に ○
  ≪お詫び致します≫

 
   今週も、スランプに陥ったままです。

   頭の中はカラッポで、
   ヒロインも、テーマも現れてはくれません。
   読者の皆様には、お詫び致します。
   今回も、バックナンバーでご容赦ください。
                           橘川  拝

 
  − 我が家のベランダ・ガ−デン −
    ○ 羊歯(シダ)類 ○

 最近、我が家のベランダでは、草花の鉢が増殖して、もう300鉢を越えています。
 お蔭でシダたちが隅の日陰に追いやられて、我が家の絶滅危惧種になろうとしています。
 それで、昨年から復活、保護しようと、植え替えをしてきました。その努力が実って、こんなシダたちを紹介できるようになりました。
 
≪写真・左・・ハカタシダ≫
 これは、ご覧のように葉の中央部に黄色い斑が入っているのが特徴で、それが博多織に似ていることから、この名前になったとか。
 この葉は全部今年の新芽ですが、最近出てきた葉は、黄緑色で柔らかくて、初々しいですね。
 
 ≪写真・中・・アラゲクジャクシダ≫
 これは、ご覧の通り孔雀の羽根を広げたように見えることから、この名前に。
 これも皆、今年の新芽ですが、最新の葉は薄茶色のものです。
 
  ≪写真、右・・クジャクデンダ≫
 これは、苗木がかろうじて残っていたもので、まだ形が整ってはいません。
 一本の細い茎に小さな葉が、連綿と生えてきて、その何本かの全体が孔雀の羽根に見えるのです。
 この細い茎は、30センチ以上にも伸びます。
 しかも、その先端部に小さなくびれが出来て、そこから新しい根を生やすのです。これも、増殖の知恵なんでしょう。

 

                               男と女の風景・21
  ◇言えずじまいの雪 ◇
 
「ほう、桐山君、ここはオシャレなお店だね」
「ええ、海野さんはお魚が大好きですから、是非このお店で、と思いまして」
「少し暗くて、落ち着いた感じだね。でも、チョッと怪しい雰囲気かな。まあ、渋谷の街もいいね」
「でしょう」
「少し高級じゃない」
「いえ、会社にお邪魔すると、いつもご馳走になってますから」
「僕が行くのは、いつも普通の居酒屋だよ」
「いいえ。海野さんとお酒を飲むと、とにかく楽しいんです」
「そうかな。普通のバカな話なのに」
――(桐山)
  そうなの、海野さんと一緒だと、本当に気分がウキウキするのよ。
  余計なことを考えないから、美味しいお酒が飲めるんです。
 
「ところでお宅の会社、最近は忙しいの」
「まあまあですけど、でも火の車で、ギリギリですかね」
「社長兼、営業マンでしょう。大変だよね」
「ええ、なんでもやってます」
「でもさ、やり続ける。それしかないよね。まあ、僕もそうだけど」
「ええ、営業企画部長というポストも、大変そうですよね」
「まあしかし、管理職は自己責任、社長は全部責任だから」
「そうなんです。零細の広告会社ですから、日々、消滅の危機なんです。ですから、毎日が、いつも決断と実行の連続なんです。経営者って、孤独なんですよね」
「まあ、そうだろうね。でも、今時のサラリーマンは、みんなそうだよ。仕事があってさ、給料がもらえれば、こんな幸せなことはないって」
「そうですよね。フリーターって昔はカッコ良かったけど、今は可哀想」
――(桐山)
  でもね、社長って、いつも孤独なのよ。
  最後の決断は自分だから、迷って迷って、でも迷い続けるの。
  そんな自分にイライラして、カリカリッと腹が立つのよ。
  時々、『ギャーオ』って叫びたくなる。
  でもね、いい加減な決断をすると、必ず仕事にしっぺ返しされるの。
  だから、トコトンやるしかないのよね。
 
「海野さんから仕事を戴いて、もう15年ですよね」
「そうか、桐山さんは、あの頃は広告代理店を辞めてさ、独立したのが20代の半ばだったっけ」
「ええ。でも、もうそろそろですよ」
「なにが」
「もう、四十路に接近中なんです」
「なにを言うんですか。仕事をバリバリ出来る女性で、しかも可愛らしい」
「ウッフゥ、なにを言うんですか。もうオバサンですよ」
「いやいや、オバサンのイヤミは感じないよ。独身だからかな。まあ、色気というより女らしさがあってさ、貴女とはフランクに付き合えるんですよ」
――(桐山)
  海野さんは、私のこと、どう思ってるんだろう。
  その疑問、ずっと頭から離れないのよね。
  こんな私は、もう中年だし、ちっともセクシーじゃないし・・。
  でも海野さん、私の見てきた男性の中では、最高にいい男なのよ。
  私の見る眼は厳しいから、合格点はあなただけ。
  山形の田舎では、みんなバカマジメだし、
  昔の会社の営業マンは、みんないい加減で。
  派手にお祭り騒ぎをして、明るくて陽気だけど、ただそれだけ。
  相手の気持なんてどうでもよくて、自分は王様だと思い込んでる。
  理想は語るけど、実態は程遠くて、実現性がないのよ。
  仕事が出来なくて、結果として成果が出なくても、軽く無視。
  単にイケイケ・ドンドンで、次の理想を語り出すのだ。
  そう、彼らには反省がないがないのよ。
 
「私、今住んでる街で、ママさんバレーをやってるんですけど、実はセンターを張ってるんです」
「ほう、それはすごいね。痩せてるのにスタミナはあるんだ」
「ええ、少し息切れはしますけど、元気はつらつ」
「では、小さい頃からずっと」
「ええ、小学生の頃はクラシックバレーでしたけど、中・高はバレーボールです」
「ほぅ、そうか。それでスタイルがいいのか。桐山さんはスラットしていて、パンツルックがすごく似合うんだよな」
――(海野)
  小顔な美人で、眼がクリットして可愛らしいしな。
  そうそう、眼の動きが機敏で、知的でもある。
  まぁ、好みのタイプだな。
  人と接しても気配りがあるし、機転が利くんだよね。
  仕事のパートナーとしても、一緒にやると楽しい女性だしな。
  だから連れて歩いても、チョッと自慢げなんだ。
  でも、≪好きなタイプだよ≫とまでは言えても、さ。
  ≪桐山さんが好き≫だとは、言えないよな。
  えっ、そうか。桐山さんも女なんだ。
  でもさぁ、そんなこと今まで意識したことないよ。
――(桐山)
  私、チョッと自己PRしちゃったかな。
  でも褒めてくれるんだから、嫌われてはいないよね。
  そう、脈はあるかも。
 
「でも私、もう山形の田舎に帰ろうかって」
「なにを言ってるの。帰ったって、やることないでしょ」
「いえ、おそば屋さんでも、って」
「えっ、そばが打てるの」

「田舎そばは高校生から、江戸の細切りは、神田で3年前にそば打ち教室に通って
「へえ、そうなんだ」
「ねえ海野さん、やりませんか」
「エッ・・、僕が、そば屋を」
「ええ、一緒に」
「それって、定年後に、だよね」
「あっ、そうか。そうですよね」
「・・・」
「でも、上の山温泉の駅前に土地を持ってるんです。代々伝わる土地が何箇所かにありましてね。そこに昔の古民家を移築して、おそば屋さんを」
「ほぅ、色々と考えてるんだね」
「ええ、そんなノンビリした暮らしもいいかなって。海野さん、メニューとかも考えてくださいよ」
――(海野)
  まさか、でしょう。僕がそば屋とはね。
  たとえ定年後だとしても、さ。
  横浜育ちの僕が、山形で暮らすなんて・・。
  まあ、ほとんど有り得ないよな。
――(桐山)
  あぁあ、本音が出ちゃったな。

  チョッと唐突だった、かもね。
  でも、海野さんといつも一緒にいたいな、って。
  そう、そんな夢を見る時もあるのよ、ね。
  別に結婚しなくても、いいの。一緒に暮らすなら・・。
  でも、それって微妙かもね。
 
「でもさ、君の企画って、いつもいいよね。現場の営業マンからも、評判がいいし」
「はい、ありがとうございます」
「先日の取説、あれは初めて商品を取り扱うお客さんが、どう扱うかがポイントなんだ。それをマンガで簡潔明瞭にしたのは、素人にもわかりやすい」
「マンガと言ったのは部長ですよ」
「そうか。でも、あの提案を纏めるのに、現場を呼び込んでミーティングをしたけど、あれがよかった。あの発想とプロセスがね、現場には説得力があるんだ」
「でも部長、現場ぐるみで組織的に展開したのは、素晴らしいリーダーシップだと、感心しましたよ」
「いやいや。君の作る製品パンフとか取説のチラシ、この表現のセンス、これがまた適度なんだな。過剰でもなく、不足でもない。よく調べてるし、よく考えてる」
「はぁ、そう言って戴けると、とっても嬉しいです」
「ところで、当社のHP、見たことある」
「いいえ」
「今度、見てくれる。なんか野暮臭くって、堅苦しくってさ、お客様にアッピールしないんだ。アッ、そうだ。君の会社、HPの企画、できる」
「ええ。何社かなやったことがありますし、いいスタッフがいますので」
「そう。今度、企画室に言っておくから、検討しておいてよ」
――(桐山)
  ああ、嬉しいな。また仕事がもらえそう。
  でも中身勝負だからね。頑張らないと。
 
「あのぅ、私、ひとつ心配事があるんです」
「えっ、なに」
「ええ、兄の家族のことなんですけど。実は、兄は5年ほど前に離婚してまして・・。奥さんは子供を連れて実家に帰ったんですが、その奥さんが末期の乳ガンなんだそうです。子供も可哀想だし」
――(海野)
  ええっ、こんな話題、なんで今なの。なぜ突然なの。
  おい、オマエはどう応えるんだよ。
  さてさて、趣旨がわからんな。
――(桐山)
  ああ、私ってなんでこんなこと。
  この話は、まずいな。
「海野さん、実は兄、離婚したのも、再婚したのも、父には言ってないんです。ずっと秘密で、母と私も最近知りまして」
「そうですか。人生、他人にはわかってもらえないことが、いっぱいあるんです。誰が正しくて、誰が間違ってるかなんて、他人はなにも言えない」
「そうですね」
「まぁ、夫婦の間、父と息子との間、なにがあったか知りませんが、どちらも正しくて、どちらも間違ってる。だから、どちらも冷静に反省すべきなんです」
「はあ、そうですね。確かに父は、すっごく厳格でしたから」
――(海野)
  もしかしてこの人、ファザコンかもしれない。
  なぜいまだに独身なのか、それは知らないけど、
  でも、男たちを、いつも父親像と比較して眺めてきたんだろう。
  あぁぁ、だとすれば、優しさを求めてるのかも。
――(桐山)
  そうだよね。私、なぜ突然、こんな兄の話を・・。
  なぜかな。
 
「海野さん、ごめんなさい。話題を変えましょう」
「イヤイヤ、あまり気にしないで」
「海野さん、今度、伊豆山に行きませんか。私、小さいんですけど、別荘を持ってるんです」
「ほう、いいですね」
「ええ、ストレスが溜まると、別荘に行くんです。源泉から引いた温泉に入って、夜空の星を眺めながらお酒を飲んで、ええ、ノーンビリとするんです」
「中々リッチですねぇ」
「ええ、そんな独りぼっちの時間も、いいですよ。あの場所は、マンションやオフィスとは違った空間、なんです。ええ、山の中腹で庭付きで、緑に囲まれた自然、もう癒されますよぅ」
「おお、いいですね。では5月の末、連休明けなんか、どうです」
「アッ、いやいや、それは、もう少ししてから」
――(海野)
  えっ、それってどういう意味なんだ。
  行こうって言うから、賛成したのに。
――(桐山)
  いきなり話に乗って、別荘に来るとはさ。
  それって、チョッと危ないでしょ。
  もう少し時間をかけて、話し合わないと。
 
「海野さん、どうしたんですか。なにか考え込んで」
「いえね。今日の会話はさ、なんか中身は深刻なんだけど、次から次へと宙ぶらりんのまんまで、放っとかれてる感じで」
「ああ、そうかもしれませんね」
「今日は初めて聞くことが多いけどさ、なにが言いたいのかイマイチで、よくわからないな」
――(桐山)
  そうよね。本心は言ってないもの。
  別に駆け引きするつもりではないけど・・。
  でも海野さんには、もっと前向きな気持がほしいな。
  そうよ。ズバリ、『好きだ』って、言ってほしいの・・。
  だってさ、女の私からは、やっぱり言えないよね。
――(海野)
  自分にはさ、女房も子供もいるんだよな。
  この女、いい女だから口説きたいけど、
  でも、それはできないしな。
 
「海野さん、私、先週の金曜日、オフィスから雨にかすむ渋谷の街を眺めていたんです。そしたら、ふっと、不安になったんです」
「フゥーン、なにかあったの」
「ええ、なぜか急に寂しくなって、ふと、空しい自分がいるって、気付いたんです」
「しかし、仕事が充実してる。それが最高でしょう」
「ええ・・。でも・・そこに『あなたは、なにをやってるのよ』って、問い詰める自分がいて、しかも、問い詰められてる自分もいたんです」
「独りぼっちの寂しさ、なんだろうな」
「ええ。そうなんです。その時、私は二人の人物を思い出しました。わかりますか」
「いやあ」
「一人は、母なんです。いつでもいいから、早く帰っておいで、って、いつも言ってくれる母です。でも、もう一人の人がいましてね。それって、誰かわ判りますか」
「いや、いっこうに」
「それは、海野さんです」
「へぇ、そうなんだ」
――(海野)
  しかし、それってどういう意味だろう。
  でも、ふと思い出した。単に、それだけだろ。
  だって彼女は、それ以上のこと言っていないし・・。
――(桐山)
  ああ、私の気持、わかってくれそうにないな。 
  今日は、清水の舞台から飛び込む決意、だったのにさ。
  そうよ。
  山形で暮らす母と同じくらい、あなたは大切だと言ってるのにさ。
  私からは、それ以上のことは言えないでしょ。判ってよ。
  鈍いのか、とぼけてるのか。本当はどっちなのよ。
  ああ、答えてほしいな。
 
――(海野)
  『家に寄りませんか』って言うから、遠回りを覚悟で来たのに。
  突然、カフェに入ろう、って。
  なんだよ。駅前で足止めされて、ひと休みとはさ。
  そもそも、独り暮らしの自宅に男を招く、っていうことはだな。
  流れとしては、エッチもありでしょ。
  それを期待したわけではないけど、でも、なぜ今、このカフェなんだ。
  急におじ気づいたのか。
  そうなら、エッチはダメよと言えば、それで済むでしょ。
  お酒の勢いで言ったんなら、ごめんなさいで済むでしょ。
  でもな、なんにも言わなければ、わからないよ。
――(桐山)
  ああ、甘い言葉・・そう『好きだよ』で、いいの。
  海野さん、お願い。そんなひと言がほしいの。
  私は、それでいいの。それで気持が満たされるのよ。
  私、奥さんを奪おうなんて思ってないの。
  ただ、いつも傍にいてほしいだけ。そんなちっぽけなお願いなの。
  そうよ。わかって。
  だって私、今日こそは言おうって、かなり大胆になったわ。
  自分を奮い立たせてね。
  そうよ。あれは、ギリギリの頑張りだったのよ。
  ああ・・いまだに応えてくれないなんて、さ。
  私、さびしい。
  でもさ、この人は一線を越えなんだ。仕事は大胆で豪快なのになあ。
  それとも奥さん、家庭、そっちのほうが大切なの。
 
――(海野)
  アレッ、雪だ。雪が降ってきたよ。
  おぉ、すごいな。大雪だ。
  電車が止まるかも。
  そうか。これは天からの暗示かも。
  純白で清らかに、いさぎよく切り上げて、早めに帰れ、と。
――(桐山)
  ああ、雪が降ってきたよ。天気予報の通りだね。
  やっぱりか。どうりで手足が冷えると思った。
  そう、寒いのよ。
  こんなにも慕っているのに、
  長い沈黙の中で放っとかれて、黙殺されたままの女、
  それって、もっと寒いよね。
――(海野)
  どのくらい時間が経ったかな。もう30分以上だろう。
  同じテーブルに向かい合って、お互いにずっと無言のままだ。
  でも、自分からは、なにも言うことはないな。
  いや、言葉が出てこない。口を封じられてる。
  いや、しゃべる意思を閉じ込められたんだ。
  まるで石、そう、凝り固まった石になってる。
  自分を追い込んで、落ち込んでる自分。
  こんな時、どうすればいいんだ。
  わからん。わからん。
――(桐山)
  あぁぁ、まだ一点を見つめたまま固まってるよ。
  まるで能面のように無表情。
  こんな海野さん、初めて見たな。
  いつも笑顔なのに、取り付く島もないよ。
  どうしよう。ああ・・困ったな。
  なにが悪かったの。教えて。
 
「僕は、帰る」
 突然、海野は宣告すると、キッパリと立ち上がった。
「アッ、そうですか。ハァ・・どうも、今日はありがとうございました」
――(桐山)
  あぁぁ、これで今日は終わったか。
  もう絶望的かも・・。
  でも、まぁいいよ。これで、総てが終わったわけじゃないから・・。
  明日が来るよ。明日ってチャンスが・・。
 
                            ― おしまい ―
 
 
 





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