≪トキメ気≫の[ i BOX] ★ [男と女の風景](短編小説)・・[都会漂流レポート]・

皆さん、これは男と女の愛の形、そのサンプル集です。果たして、それは虚像か、実像か。 人は生まれ、育ちで、パーソナリティが形成されて、その深層心理やトラウマから、様々な恋愛行動を取ります。 そんな男と女の心に潜む≪思い≫を、カミングアウト・・。
 
2017/05/25|その他
 ◇ 鎌 倉 華 族 ◇  [男と女の風景・115] 
 
                          2017年5月25日(木)
 
               
  ー 我が家のベランダ・ガ−デン −

 
   ○ 春の花たち ○
 
皆さん、今回は春に咲き誇る花たちを紹介します。
 
   ≪写真・左・・イグサ≫
 これは畳の表に使われている藺草(イグサ)の花です。
 地味で目立たなかったため、もう植えて10年も経つのに、初めて見たような気がします。
 
   ≪写真・中・・ムサシアブミ≫
 これは葉の高さが40センチ、葉の大きさが30センチもある大物です。
 写真中央の、黒っぽくてボクシングのグローブのようなのが花です。これは仏炎苞と言われ、仏の背中から立ち上る炎の包に似ているからです。
花の外側は全体に緑で白い筋が入り、内側の花弁は焦げ茶で、珍しい花です。

 
   ≪写真・右・・ニワフジ≫
 この庭藤は、日本原産のマメ科のです。
藤と同じようにツル性で、茎が細い若木でも、このような藤に似た花を咲かせます。
 

 
                 [男と女の風景・115]        
        
  ◇ 鎌 倉 華 族 ◇

 高倉光貞は、賑やかなパーティ会場の片隅で、独り控えめに椅子に座っていた。
 手にしたグラス・ワインを飲みながら、笑みを浮かべて、ただ清岡淑子だけを見ていた。
 高倉は、見るからに上品な紳士だった。白髪を短か目に刈り上げて、精悍な顔立ちに清潔感を漂わせている。
 しかも、今日は黒のフォーマル・スーツで決めていた。
 主催者の淑子は、次から次へと来客と挨拶を交わしていて、その振る舞いが華やかに見えた。
 だが、高倉の視線にふと気づいて、笑顔で近づいてきた。
「皆様、お元気そうで、なによりですね」
「そうですな」
 5月の土曜日の午後、窓から差す木漏れ日を受けて、淑子が、嬉しそうに高倉に話しかけた。
 そして、離れ際に「今日は忙しくて、してあげられませんけど、もうしばらくしましたら・・」と耳元でささやいた。
 
 高倉は、ふと、日比谷公園の松本楼を思い出した。
 そこは、いつも淑子とデートをする高級レストランだった。
――ああ、また来週、会えるけど・・。
  でも、今日の晴れ姿、華子に相応しい艶やかさだよ。
 二人のデートは、日比谷公園の入り口で待ち合わせをして、森の小道を寄り添って、ゆっくりと散策するのだ。
 そして、二人は太い木の下で抱擁して、熱い口づけを交わした。月に一回の逢引きを待ち焦がれていた思いが、二人の老人を燃えさせた。
 それから二人は、松本楼の個室に案内されるのだ。
 いつものテーブル席に座り、いつものワインで乾杯して、フランス料理のコースメニューを楽しんでいた。
 そして、その夜、二人は帝国ホテルで一夜を交わしていた。


 もう50年も続く催しで、かつては東京の帝国ホテルで開催していて、近親者が30人も集まる大パーティだった。
 だが、メンバーの高齢化に伴って、今は10数人に減ってしまい、鎌倉の自宅で催されていた。
 
 パーティは1時間も経つと、ワインの酔いも手伝って盛り上がり、宴たけなわになっていった。
 主賓の淑子は、久しぶりに会った来賓たちに、次々と声をかけては、忙しそうに立ち回っていた。
 淑子はもう75歳になっていたが、元気だった。
背が高くて痩せていたし、フリルのついたドレスを着ていたから、上品な貴婦人に見えた。
 確かに、白髪をアップに盛り上げた風貌には、凛とした気品があり、物腰もやわらかだった。
 
 いつもの通り立食パーティだったが、ケータリングのテーブルには、ご指名のシェフによる料理が並び、果物やスイーッが盛られている。
 そこに立ち並ぶのは、ロングドレスを着た50歳になる娘の華子であり、まだ独身で25歳の孫娘の雅子だった。
二人は、笑顔で食べ物や飲み物をサービスしていた。
 東京からの来賓が多かったが、京都の公家の家系にある人達も、何人か来ていた。
 ただ、淑子と同年代のお年寄りが多くて、年毎の再会を懐かしがって、抱擁しては喜び合っていた。
 華子と雅子は、誰がどんな家系なのかを知らないため、ただ笑顔で接待するだけだった。
 だが、この親子は、今日の来賓の顔ぶれを見ながら、確信していた。
 そう、自分たちも由緒ある華族の末裔であり、誇り高い意志を持って生きてきたと。
 
「華子さま、お久しぶりで・・」
「まぁ、久世さま、遠いところをご足労戴きまして・・」
 久世は、京都の公家の家柄で、もう還暦を過ぎた夫人である。
「私、3年ぶりですけど、相変わらず華やかで・・」

 娘の華子が離婚した元の亭主は、久世家の系統にある次男坊で、清岡家に婿入りしてきた。
 だが、その亭主は女癖が悪くて、華子は何度も嫌な目にあってきた。
 相手は、いつも若くて、しかもOLやパートなど、一般的な素人の女性たちばかりだった。
 その何人かの女性が、鎌倉の実家を探し当てて、突然面会に来た。その悲壮感に緊張した女性の顔を、申し訳ない思いで見てきたのだ。
 だから華子は、罪を償い、家を守るためにも、その度に何百万もの慰謝料を払ってきた。
 だがある時、相手を妊娠させてしまって、さすがに我慢出来ずに離婚することにしたのだ。
 今話をしている久世は、そんないきさつを知っている間柄のため、なんとなく疎遠になっていたが、今回は久々に上京してきたのだ。
 
 淑子の父は、旧海軍の青年将校だったから、父の要望で横須賀基地に近い鎌倉に住居を構えた。

 だが、太平洋戦争で戦死をしてしまい、父と娘は顔を合わせることがなかった。だから、淑子は父を知らずに育った。
 そして、淑子はやはり宮家の縁もあって、結婚したが、会社の重役だった夫は50代で病死した。
 その後、なにかと相談に乗って、支援してくれたのが、夫が大学時代の後輩だった高倉光貞である。
 実は、夫は淑子より2年、高倉は1年上の先輩で、皆、学習院乗馬部で競って青春をエンジョイした仲だった。
 当時、高倉も淑子に憧れていたが、先輩の存在には勝てないと、引っ込んでしまった。
 その後、高倉も母系の先代が、清岡家にゆかりがあるとのことで、淑子の夫が華岡会のメンバーに加えたのだ。
 
 しばらくして淑子は、さり気なく高倉にサインを送ると、パーティ会場の食堂を出て行った。
 そして、高倉も、そっと気づかれないように後を追った。
 だが、娘の華子は、そんな二人の隠れた行動を、遠くで見ていた。
――ああ、やっぱり、あのお二人さん、出来ているのよね。
  でも、いいよ。許してあげる。
  母は、きっと青春なのよ。
 二人は、2階への階段を上がって、踊り場からベランダに出たところで見つめ合うと、そっと抱き合った。
 そして、優しい口づけを交わすと、直ぐに激しく求めあった。
 二人は、もう何度も体を交わしているのだろう、落ち着いてお互いの体をまさぐり合い、愛する気持を求め合った。
 だが、もう76歳になろうとする高倉は、性行為はできなかった。それでも、色情の欲望が強くて、淑子の肉体を求めていた。
 淑子も、いつまでも恋する女として、男性を求めていたのだ。
 高倉は、淑子をベランダの丸テーブルに誘って、そうっと這わせた。すると、後ろから尻を両手で優しく撫ぜ回し始めた。
 そして、ロングドレスを捲って、ゆっくりと下着を下していった。
 傾きかけた陽射しに剥き出しになった淑子の尻は、眩しいほどに白かった。
 高倉は、こんな白日の下で女体を見るのは初めてだったから、その強烈な刺激に、高揚感が一気にたかまった。
 高倉は、気持を抑えながら膝で立つと、その白い尻を撫ぜ回していた。
 そして、割れ目にゆっくりと顔を埋めていった。
 淑子は、思わず声を上げたが、舐め回す舌先の感触に、直ぐに悶絶する声に変って行った。
 しばらくして、淑子が絶叫して果てると、つぶやいた。
「ああ、有難うございます。私、邪気が抜けて、晴々としました」
「そう、よかったの・・」
「ええ、とっても・・。あっ、すみません。今日は、これで・・」
 敏子は急いで衣服を整えると、先に自分の部屋に戻っていった。
 鏡に映る自分の上気した顔に、満足げな笑顔を浮かべた。
――ああ、とっても、感じましたよ。
  高倉さん、有難う。
 それから敏子は、唇に口紅を差し直すと、さらに髪を整えた。
 
 それから、高倉が何食わぬ顔で会場に戻り、淑子が別のドアからこっそりと入ってきたのを、華子は黙って見ていた。
――ああ、お二人さん、ご老人とはいえ、男と女なのよね。
  性欲があるのは、元気な証拠よ。
  お互いに信頼してるなら、余生を楽しんで・・。
  ああ、私も恋人が欲しくなったな。
 華子は先日、華道の雑誌で特集の対談をした相手を、ふと思い出した。
 それは、若手でイケメンの歌舞伎役者だった。
 対談の後で食事に誘って、さり気なくアプローチしたのだが、梨園の御曹司だったせいもあって、華子の誘惑には乗ってこなかった。
――そうよ。今度は無名のイケメンを探すのよ。
  でも、どうしたら・・。
  若い頃は、男性が寄ってきたのにね。
 華子は華道の名の通った師範で、公演会の講師もしていたから、和服の着こなしも良くて、日本的な美人だった。
 だが、弟子たちは女性ばかりで、男性に会うことはなかったのだ。
 ホストクラブでとも考えたが、流石にそれは出来なかった。
 時々立ち寄るスナックは、中年ばかりで、話し相手にはなっても対象ではなかったのだ。
 華子は亭主と離婚してから5年の、40歳の頃は、女として絶頂期にあった。
 だから、華道の先代の家元に可愛がられて、先代が大病で入院するまで、愛人の関係にあったのだ。
 その頃は、かなり割り切って大胆にエッチをしてきたが、最近はもう何年も途切れていた。
――でも、男と女の出会いって、偶然でしょ。
  ああ、神様のお引き合わせかも・・。
  お母様のように、もう一回だけ、青春が欲しいな。
  
 そして孫娘の雅子は、来賓に明るく振舞ってはいたが、悩み事が頭から離れなかった。
――あの優斗君、困ったな。
  なぜか最近、積極的なのよね・・。
  私、男性が苦手だし、恋愛関係なんて、もっとイヤよ。
  そう、女子高、女子大は、とっても気楽だったし・・。
 雅子は、現在、ある参議院議員の私設秘書として、永田町の事務所に勤務している。それも、高倉のツテであり、連綿と続く華族の系統にあったのだ。
 その議員は40代と若いが、もう4代目で、その初代は、明治時代の貴族院で華族議員であったし、社会福祉の団体で活躍していた。
 雅子の主な仕事は、議員のスケジュール管理で、ベテラン秘書が担当する経理の補助もしていた。
 もちろん選挙の時は、毎日、宣伝カーに乗ってうぐいす嬢もこなしていた。
 雅子が困惑している優斗とは、公設秘書の葉山優斗で、30歳の野心的でポジティブな男だった。
 
――だって私、男性不信なの・・。
  父が浮気を繰り返して、いつも母は泣いていたのよ。
  きっと甘い言葉で騙して、その気にさせて、
  最後は冷たくあしらって、女性を捨てたのよ。
  そんなの、許せない。
「あら、雅子、なにか浮かない顔をしてるわね。なにかあったの・・」
「ううん、なんにも・・」
 隣に並んで立っていた母の華子に、ふと聞かれて、あいまいな返事をするしかなかった。
 母と娘、そして孫娘の女家族は、それぞれの置かれた状況で、それなりに生きているのである。
 
 雅子が先日、もう一人の議員秘書である鎌田に、さり気なく葉山のことを相談したことがあった。
「アイツはいい男だけど、政治家としてのポリシーとロマンないんだよな」とのことだった。
「それって、具体的には」
「アイツは、出世欲が強すぎてね。お金や女性を平気で転がすし、自分さえ転がしてしまうんだ。危険な男だよ」
 雅子はそう言われても、政治や議員の世界を知らなかったから、優斗の人物像は浮かばなかった。
ただ、≪危険な男≫、そのキーワードだけが、頭に残っていた。
――私、どうしたら逃げられるかな。
  「私お付き合いも、結婚もしませんから」って、
  はっきり言うしかないかも・・。
  それでもダメなら・・、どうしよう。
  アッ、そうだよ。
  鎌田さんと、偽装のデートをすれはいいんだ。
  あの人、優しいから、相談に乗ってくれるかも・・。
 
                   ― つづく ―
 
 

 





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