園試跡地フォーラム 記録:山田則子さん 2007年10月25日(木)10:00〜12:00 二宮町社会福祉センター2C研修室 参加者37名
1.はじめに 村田くに子挨拶 本日は県の岡見氏を招き、園試跡地の経過について説明していただきます。出席の町議からアドバイスを承りたく、また町民の方からも意見をお願いします。 2.県土整備部 住宅課 住宅供給住宅供給公社対策担当課長 岡見弘彦氏より説明 園試跡地はもともと県の土地だったこともあって、県がからんでいましたが、神奈川県住宅供給住宅供給公社(以下「住宅供給公社」)のものになってからは、県は指導監督する立場になりました。県として説明できるのは、以下の2点です。 1)園試跡地についての経緯 もともと県の土地だったので、県が中心に計画を立てました。しかし住宅供給公社の経営が危なくなり、計画は頓挫し、売却を望んでいる状況です。 2)住宅供給公社の経営が厳しく、民営化を進めている現状について 1)については皆さんのほうが詳しいかと思いますが、ご容赦ください。 1)園試跡地についての経緯 園芸試験場は明治41,2年に開設と聞いています。それまで土地の所有者だった方にはお世話になりました。おもに果樹、野菜、花木を栽培しました。 昭和46年に園芸試験場として新機能ができました。 オリンピックの年には天皇皇后両陛下が来て、きっと地元は盛り上がったことと思います。地元に根付いた県の施設でした。 平成元年に、農業総合研究所(平塚)、水産総合研究所(三浦)、林業総合研究所(海老名)を統一する方向になりました。機能を強化し、先端技術の融合をして生産者のニーズに合ったものを提供するためです。このところ、県立高校が統合されていますが、当時はこうした研究所の統合が進められていました。 平成5年には、以下の3つの方向性は決まりました。 (1)二宮の住民に利用してもらう。 (2)フルーツ公園を作る。 (3)住宅供給公社に事業を行なってもらう。 平成6年には具体的な「園試跡地利用検討委員会」が発足しました。 平成7年9月には知事が以下のように答弁しています。 「園試跡地には、1.二宮の生涯学習センターを作る。2.原木を保存する。3.県関係として利用、活用していく。」 当時町は県有施設を望んでいましたが、県ではケア付高齢者住宅を全体ですすめていました。平成8,10,12年には横浜、横須賀、相模に建設しました。二宮は「長寿の里」ということでイメージと計画が合致しました。 平成7年4月、二宮町、県、住宅供給公社の3者で合意しました。(利用計画の概要については、資料P3地図参照)全体で73,800uのうち住宅供給公社が50,000uです。まず課長レベルで合意し(県管財課長、二宮町助役他)、それを受けて12月に知事、町長、住宅供給公社理事長で覚書を交わしました。内容は、図面どおりに1.生涯学習センター、2.高齢者住宅、3.梨、桃木の保存、4.果樹園です。県は町と住宅供給公社に譲渡し、住宅供給公社はケア付高齢者住宅を作るというものでした。 地元から町への反対もありました。他地域のことですが、高齢者住宅が来てもらっては困るという反対を受けて住宅供給公社が断念したことがあります。当時は高齢者住宅のイメージがなかなか伝わらず、老人ホームのようなものを引き受けるのかと反対されたのです。 園試跡地の場合、基本で合意はできたにもかかわらず、かなり厳しくなるだろうと想像されました。そのころ二宮では「湘南二宮パークタウン構想」、「人に優しいまちづくり」といったものがありました。町長は「福祉施設ができると福祉的負担が増えるだろうから」と町への支援を要望しました。 それは、1.町民の優先利用。 2.町民の優先雇用。 3.住宅供給公社が作って町が運営する案があっても、住宅供給公社は独立して作ってほしい。 の3点でした。 また、付随するマイナスを何とかしてほしいということで、以下の3点を要望されました。 1.道路拡幅 2.立体交差の道路 3.エレベーターの設置 しかし協議を重ねるうちに、住宅供給公社の経営が悪化してきました。住宅供給公社は、平成8年以来実質的な赤字です。当時は準備金で赤字を埋めていました。平成14年、このままでは大変だ、とんでもないことになるということになり、翌平成15年、県で「住宅供給公社のあり方懇話会」を開催、どうしようもない、と民営化も視野に入れて経営改善に向かいました。(資料P3「住宅供給公社のあり方懇話会」提言) 平成15年1月、「住宅供給公社の事業・組織に関する方針」を出し、新事業には一切着手しない方針をうけて住宅供給公社はケア付老人住宅建設を断念しました。 町はこれを察知したのでしょうか、平成14年7月、園試跡地は町民最優先と要望しました。平成15年1月、有償で利用することを定めました。 平成16年8月、土地の利用について町に照会をかけています。水面下ではいろいろあったのかもしれませんが、町からはレスポンスがありませんでした。かなり厳しい状況になりました。 平成19年4月、固定資産税(?)を12月で打ち切りたいので、それまでに買うかどうかはっきりしてほしいと町に伝えました。町は、待ってほしい、町で使いたい、いろいろ努力するからというので、交渉が始まりましたが、町の財政力の問題もあり、住宅供給公社の言い値では買えません。しかし住宅供給公社は客観的価格(時価)で売りたい。町の方も苦労なさっていて、10月5日には町長、町議長が県知事、住宅供給公社理事に会いに来ています。 (2)住宅供給公社の経営状況と民営化の取組 T.経営悪化の原因 住宅供給公社の経営がどうなのか、資料P3をご覧ください。 経営の悪化の最大の原因は、平成のバブルがはじけたことです。日本中、特に不動産、住宅産業の経営が厳しくなりました。県の分譲住宅は、売れているころは100倍くらいの競争率でしたが、バブル後は50出して応募がゼロということがありました。(一同驚きの声)そこで価格を下げたら、1,2年前に高い値段で買った人が訴訟を起こすということがありました。住宅供給公社の経営は一気に落下しました。平成8年から14年、実質的赤字になり、何とか見直そうと話し合われました。 もうひとつの経営悪化の原因は、公的住宅は要らないのではないだろうか、ということです。首都圏には物件が不足していて、民間より安く信頼性のあるものを出していましたが、民間も成長し、住宅は安定し「住宅神話」は崩壊しました。住宅金融公庫も国の見直しのために廃止になりました。整理公団も廃止になりました。その流れから、住宅供給公社のあり方そのものは県の制度で守られているけれど、民間と同様に競争するのはアンフェアではないだろうかと。 今後の住宅供給公社の役割は、需要と供給のバランスがもうできていることと、経営に問題があったことを踏まえて、事業を縮小するのではないでしょうか。人員と給与の削減が強力な経営改善でしょう。また、経営を民間にもゆだね、新事業への着手を避け、現存する賃貸住宅は入居者に配慮するべきでしょう。新事業着手を避けるのが、一番大きいでしょう。 U.住宅供給公社の組織について 債務について(資料P5表) 県は住宅供給公社に「民営化しろ」といっていません。努力をするように、民営化も視野に入れるようにと、若干温情があります。新規事業は必ずリスクを伴うので、堅実経営の方向です。 行政としては、資料P3下のカコミのとおりに平成15年1月に方針を出しました。実勢が5000万円になっていますが、270億の含み損になっています。債務超過になると、銀行がどんどん引いていって倒産してしまいますが、それは避けなくてはならないので、関内にある社屋と公園を売ってしのぎました。売り先は「キノチョー(?)」です。緊急避難的解除でした。 10億の黒字を出そうとしました。当時2000億以上借金があったのを、平成18年までに30%減の1600億にしようとしました。「住宅供給公社のあり方懇話会」では「新規着手を避ける」とあったのが平成15年の方針では県は具体的に指導しています。組織も変えました。人員は平成14年の50%を削減しました。給与は、平成14年の55%を削減しました。民営化については、平成18年までに明らかにしようとしました。 P5の表にあるように、住宅供給公社は計画を作って取り組んできました。黒字化したことは表のとおりです。登記では赤字ですが、借金は2090億が1500億に減りました。住宅供給公社も、事業を断念するなど身を切りました。ご迷惑をおかけしましたが、ほぼ達成の見通しです。 平成18年1月に住宅供給公社民営化の基本方針が出ました。もう少し温情ある方針が出るのかと期待して努力したのですが、厳しいものでした。普通、民営化といえば、組織が看板を変えて、国の庇護を離れて民営化するのですが、それは法があるからできることです。住宅供給公社は法がないので解散して民間に買ってもらうしかありません。郵政の民営化とは違う困難があります。住宅供給公社の住宅にすむ人にとっては公社が株式会社になった、で済むかもしれませんが、難しい問題を背負ってしまいました。今後3年間で民営化は無理だとわかっているので、平成29年(10年後)までに民営化する方向性です。いま、民営化に向けた手法、試算、評価を行なっています。民間に買ってもらわないといけないのですが、いくらで買ってもらえるでしょうか。現在1500億の負債があります。余剰金が出るように売りたいものです。そうでないと県が困ります。いつまでに民営化するのか、いつ買ってもらえるかを、3年以内に検討します。 以上が、今までの住宅供給公社の経営についての厳しい状況の説明です。 園試跡地問題は、基本的には土地の売買です。どこで折り合うか、住宅供給公社が誠意を持って対応させてもらっているのではないかと思います。
3.質疑応答村田 資産処分で二宮は12月に出ています。町議会で出していますが、なるべく安く、または現状を継続の要望を出しています。今までにも園試跡地は活用してきたので、これからどうしたいか、皆さんの意見をしっかりお聞きして、今後に役立てていきたいと思います。
K氏 明治41年に県が園芸試験場の土地を取得した価格、今回売った価格をお聞きしたい。
岡見 明治41年の件についてはわかりません。今回の販売価格は37億でした。ラディアンの販売価格についてはわかりません。
原議員 住宅供給公社は経営状況が悪いために新規に高齢者住宅を作らない方針と決めました。二宮では高齢化率が高まり、また現存する住宅は使いづらいので、跡地に高齢者住宅ができれば転居する可能性はあります。県は政策として高齢者住宅は必要ないと考えるのでしょうか。
岡見 そうです。
村田 介護保険が始まってから住宅供給公社は高齢者住宅をやめたけれど需要はあるということでしょうか。
原議員 二宮の公団住宅は使いづらいとみんな行っています。県は住宅供給公社と分離して事業を行なえばいいのでは。
村田 高齢者住宅のリフォームは別のところでやっていただくほうがいいのでは。
原議員 住宅供給公社が二宮と同様に売却を予定している土地はどのくらいありますか。面積と価格を教えてください。
岡見 約10箇所、60haほどです。価格は不明です。
K氏 県が37億で売ったのでまるまる儲けているのに、住宅供給公社は破綻にすりかえている。地元に還元しなくてはならないでしょう。それを地元に買えというのはふざけています。県が身内の会社でキャッチボールをしたのです。こんな恐ろしい話はありません。37億は県に戻して、園試跡地は県立公園にすべきです。
池田議員 川上さんと結果的には同じ意見ですが、法的なことを調べたら、地方自治法の200何条かに、県は住宅供給公社に対して「貸し与えることができる」と明記してあります。県の条例にも取り入れられているはずです。県が住宅供給公社に売ったのは、県も苦しかったのでしょうが、平成7年か8年に県から住宅供給公社に売ったと思いますが、これは違法ではないかと思います。それが、今度二宮が利用するには値段が問題になる。当時住宅供給公社は赤字で苦しかったと思いますが、それならなぜ買ったのでしょうか。
岡見 住宅供給公社が事業を始める場合、通常土地を買って自分のものにしてから展開(建物を建てる)していきます。違法とはいえないのでは。平成8,10,12年にもケア付高齢者住宅を作っています。二宮は平成8年にケア付高齢者住宅を作ることが決まりました。その後経営が厳しくなりましたが、このような事態を想定できればよかったのですが。
K氏 きょう出席している高木さんは、3年前に菜の花祭りを始めました。今年は体調を崩されて、松本篤子さんが主催しましたが(松本さんは、園試跡地に高齢者住宅ができる話が出はじめたとき、県に対して反対運動を起こした人です)。今年、20万人が菜の花祭りに来ました。NHKは3回報道しました。すると、今まで坪35万だった山西の土地が、60万になりました。不動産屋は目をつけています。役場近くのマンションを買いあさっています。臨時駐車場を開放したので車でたくさん来ました。8階建てマンションができるので高度規制もしましたが、不動産屋は3%の手数料が入るので売りたくてたまりません。二宮は人気が上がったのです。 それが、駐車場がなくなれば価値は半減します。あとはJRしかないので老人は来られなくなります。二宮の発展が止まる危険があります。 民間に売っていたら、エスカレーター付の段々マンションを作っているでしょうね。 国税庁は、( )の使途不明金について一切追及しません。変えるには住民が議員といっしょに反対運動をしなくてはならないでしょう。県もやっていますよね、「三浦半島国営公園○○○」。
村田 きょうは園試跡地を利用しているいろいろな方に来ていただいています。民間の学童保育を運営していて、日頃園試跡地を利用している山本さんがいらっしゃいますので、ご意見をお願いします。
Y氏 園試跡地については、つい最近になって大変なことになっていると知りました。私は民間の学童保育をしています。ふだんは外に出かけることは余りありませんが、長期休暇中は散歩がてらふれあい広場へ連れて行くことがあります。何をしてもしかられないので、ボール投げやかけっこをしています。二宮に「子どもの遊び場を考える会」があり、時折開くイベントでは、自由に遊べる原っぱとして園試跡地を活用しています。子どもたちにとって遊び場がなくなるのはさびしいことです。 普段はなかなか空き地で遊ばせてもらえません。おとなの私がついていても、事故があってはいけないと持ち主の方が中に入れてくれません。そんな中で、いつでも自由に遊べる園試跡地はありがたいです。何とか残していただければと、きょうは参加しました。
西山幹男議員 意見書のとおりです。ひとつよろしくお願いします。
村田 期限まであと2ヶ月ですが、この間町長が替わるなど町の態勢も変わっていて、あと半年の猶予をと頼んでいましたが、住宅供給公社は2年前からいっていたことなので12月までにはしっかり考えます。町では今のところ買取の方向です。
住宅供給公社は定款違反の危険があります。定款1条に「〜あわせて市街地の〜」とあります。民事訴訟を起こしても、目的外なら町は違約金を何億も取れます。公共の福祉が一番大切です。「民間に売るつもりだが二宮は買わないか」というのは趣旨に反します。
岡見 基本的に住宅供給公社の経営がポシャると、県としてはもっと大きな負担になります。
K氏 二宮だけで買うと二宮の大きな負担になる。県が買い取ればいいのです。
岡見 目的を達するために住宅供給公社の経営を改善しなくてはなりません。そのための販売です。土地は現在住宅供給公社のものです。
男性 県は37億で買ったものを元の所有者に返すのがスジでしょうが。頓挫した段階で現況復帰にもって行かなくてはなりません。
原議員 県の買い上げの大部分は住宅開発だが、二宮は園芸試験場が目的でした。他の物件を売るのはわかりますが、二宮のを住居に転回するのは感情的に理解できません。民間に売るのでも、今20億とも25億とも言われていますが、ただ住宅供給公社のものだからと買っては変です。
M氏 10年ほど前に世田谷区から越してきました。生まれは文京区です。世田谷区も文京区も土地がきちっとしていて、公園がたくさんありました。子どもたちがダンボールで家を作って遊べました。二宮は空気がいいのですが、広い平らなところがひとつもありません。唯一園試跡地があるだけです。あれを民間に売って建物を建てるのは反対です。
T氏 今、県は城山公園と旧吉田茂邸を国に買ってほしいと要望しています。園試跡地の後ろの山も含めて、いっしょに吾妻山もお願いできないでしょうか。このあたりには県立公園がないので駐車場も位置づけて。そういう方向で何とか残すことを考えてください。吾妻山はテレビで紹介され、1,2月はかなり人が来ました。駐車場もつながるほどでした。吾妻山を管理している方から聞いたのですが、「今中央高速を走っているのですが、吾妻山はどうやって行ったらいいのでしょうか」と問い合わせがあったそうです。さらに北口商店街の収入向上にもつながり、それは町税につながるので、ぜひ公園にしてください。
女性 災害時の逃げ場にも利用できます。遊び場としてだけでなく、多目的に使えます。仮設住宅もすぐに建てられるでしょう。地震で被害が大きいのは国府津と二宮のようですから、重要な土地です。公園プラス災害時の避難場所として残してください。民間に売っては困ります。
村田 住宅供給公社理事長たちははじめからの経緯をよく知っているので、園試跡地がどれだけ大切かもよくわかっています。これから議会でいくらで買うとかも話し合うのでしょうが、私からも文書で出します。きょう、町長と地区長たちは研修のため出席できずに、残念といっています。
K氏 ホールのボランティアをしています。老人たちは自分で車を運転してラディアンにやってきます。昼間バスは一時間に一本くらいしかありません。二宮には有料駐車場がほとんどありません。ラディアンには72台しか駐車できません。園試跡地の駐車場がなくなると、来客が減ります。するとギャラが払えなくなります。そうなるとラディアンで有料のイベントはできなくなります。二宮の図書館は、近隣の中ではとても利用が多いのですが、これは町民の努力で多くの人が来るようになったのです。これが断ち切れてしまいます。知事には、公用車でもいいですから二宮に来てもらって、吾妻山に行くにはどこに止めるのだろうとうろうろしてもらって、赤切符でも切ってもらうといいのです。実感していただきたい。
T氏 長洲知事の時代に横浜が海老名に・・・。(メモ読めず)横浜の跡地は立派になりました。民間に売るのはこれが初めてではないでしょうか。
岡見 社会状況が大きく変わってしまったのです。当時の計画通りにいっていれば問題はなかったのです。
村田 本日はお忙しいところ大ぜいの方々にご出席いただきましてありがとうございました。
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