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2021/03/23 23:23:23|おはなし
おはなし : おもいで  第5-1章 : 川鯛
【おもいで】
第5-1章:川鯛。

 『お〜い、“ひとみ”ここに居るよ。』
“ひとみ”は康夫の声を確認すると、入り口の自動販売機の処に足早にやってきて、
 『お兄ちゃん。』
 『お父さんが呼んでいるから、こっちに来て頂戴。』
“ひとみ”は、晋二郎の方を一度見てから、康夫に向かって、
 『今日は、お父さんと喧嘩しないでよ。』
 『お願いだからね。』
康夫は“ひとみ”の声に反応するように、一言、
 『わかってるよ、“ひとみ”。』
 『今日、俺は喧嘩の続きをしたくて帰って来たんじゃないよ。話をしに来た
  んだから。』
話を聞いた“ひとみ”は、手を掴んで、ユースホステルの中に引っ張って行こうとしたとき、
康夫が、晋二郎に向かって、
 『吉田さん、ご免な。 また後で。』
そう、告げると“ひとみ”と一緒に中へと入って行った。
1人残った晋二郎は、手に持っていた缶の残量を確認するように左右に振ってから、一度路上に置き、煙草を口に銜え火をつけ、
吸い始めた。
 『ふ〜。』
っと、紫煙を吐いた後、路上の缶を手に取り、防波堤へと向かって歩きだした。

晋二郎は、防波堤に座り、煙草を吸っていた時、自分の両親の事が頭に浮かんだ。
 『元気かな?』
 『そうだ、電話してねーな。 電話してみるか。』
そのまま、携帯電話で自宅へと電話を掛けてみた。

 『はい。吉田です。』
受話器を通して、母親の声が聞こえてきた。
晋二郎は、聞こえてきた母親の声に反応するように、
 『もしもし、母さん。』
 『俺だよ。晋二郎だよ。』
母親は晋二郎の声を聞いて、少し間をおいてから、
 『晋二郎、お前は連絡しないでなんだよ。』
 『心配したんだからね。』
 『なにか、有ったのかい?』
 『いいや、なんも無いよ。こっちは順調だよ。』
 『父さんは、元気かい。』
 『あ〜。変わりはないよ。』
 『ところで、お前、今どこに居るんだい?』
晋二郎は、母親の質問に対して、
一瞬、返答に躊躇したが、素直に、
 『今、能登の七尾に居るよ。』
晋二郎の母親は、“ふぇ〜”と言う驚きの声を受話器の向こうで上げていた。
 『晋二郎、お前今いいところにいるんだね〜。』
 『確か、七尾の周辺は温泉が多いんじゃないかい?』
晋二郎は、自分の母親の話を聞きながら、流石、俺の母親だと思った。
 『ああ。 今、七尾が気に入ったので連泊しているんだよ。』
 『ここは、海・魚それに温泉も最高だよ。今度、親父と車で来てみたらどう
  だい。』
 『命の洗濯には持って来いだぜ。』

晋二郎は、そう告げ、また、母親に色々と今後の旅の予定を告げた後携帯電話を切った。
電話を終えた、晋二郎は視線を海に移し、煙草を再度銜え吸い始めた。
 
しばらく、海を眺めながら煙草を吸っていたが、
 『そうだ。 釣りやろう。』
そう、言うと、防波堤を下り、ユースホステルに戻り、吸っていた煙草を受付の灰皿で消してから、“裕”の釣道具を借用して、港へ向かって歩き始めた。

晋二郎は、釣り場へと向かう途中、釣る魚を考えていた。
 『今日も、昨日と同じように、川鯛釣れるといいな〜。“ひとみ”さん喜ぶだ
  ろうな。』
等と、色々考えながら歩いていたら、釣り場に到着した。

釣り場では、昨日一緒に釣りをしていた方が、晋二郎を見つけ、
 『お〜い。 “裕”さんところのバイトの兄ちゃん。』
 『こっちで、昨日と同じように釣りしないか?』
晋二郎は、声のする方を見て、手を振って応えた。

 『こんにちは。 昨日は釣り方を教えていただきありがとうございまし
  た。』
 『昨日は“ひとみ”さんに褒められましたよ!』
晋二郎は、“裕”の知り合いたちに昨日の結果を話していた。
 『バイト君、良かったじゃねーか。』
 『それで、昨日の川鯛は食べたのかい?』
晋二郎は、頭を左右に振ってから、
 『いいえ、まだなんですよ。』
 『自分の考えでは、今夜のおかずで出るかなと思っているんですよ。』
“裕”の知り合いは、笑いながら晋二郎に向かって、
 『バイトの兄ちゃん、考えが当たるといいな!』
晋二郎は、“はい”と頷き、仕掛けを投げ入れた。

 『ぽちゃん。』
海面に、晋二郎の投げ入れた、仕掛けが静かな音をたてながら沈んでいった。
投げ入れてから48秒ほどで、“浮き”が水面に”ぽこ”っと現れた。

“裕”の知り合いが、晋二郎の釣り方を見ながら、
 『兄さん、今日も川鯛狙いかい?』
その、言葉に晋二郎は“浮き”を見ながら頷いて応えた。
 
晋二郎は、“浮き”をしばらく見ていたが、変化があらわれない為、ポケットから煙草を取り出し、火をつけ吸い始めた。
 『ふ〜。』
 『気持ちいいな〜。 天気がいいから眠くなるよ。』
そう、晋二郎が呟いた時、晋二郎の視界から“浮き”が、“ゆら・ゆら”と静かに沈んでいった。
晋二郎は、自分の視界から“浮き”が消えたことにより、“当たり”と判断し、竿を力一杯立て、“合わせ”を行った。
合わせた瞬間、晋二郎の握っている竿に“ずしり”と手応えがあり、
 『なんだよ〜ゴミにでも引っ掛かたか〜。』
 『くそ〜。』
晋二郎が、そんな毒舌を吐いた時、
竿が、水中に引き込まれて行った。
 『真面目(マジ)かよ。』
晋二郎の横に居た、“裕”の知り合いが、
 『兄ちゃん、大(でか)いな。』
 『ばらすなよ。』
晋二郎は、その声に応える余裕などなく、魚の引きに必死に堪えていた。

魚が晋二郎の竿に掛かってから28分が経過した頃、
 『おっ、お〜。』
と、言うどよめきが起き、
 『お〜い、兄ちゃん。 魚が浮いてきたぞ。』
 『兄ちゃん、でけーぞ。』
晋二郎は、周囲の人達の声に励まされ、必死に魚と格闘していた。
 
浮いてきてから10分。
やっと、魚は抵抗を諦め、“裕”の知り合いが“タモ”で確保し、引き上げてくれた。
晋二郎は、
 『ゼェー・ゼェー』
と、肩で息をしながら、“タモ”に入っている、大型の川鯛を確認しながら、
 『俺の黒鯛の最高記録更新!』
と、呟いていた。

川鯛のサイズを確認すると、大きさが約60p弱も有り、何時の間にやら集まった“やじ馬”から、
 『すげーでかいな。』
 『このサイズはここでは初めてじゃねーか?』
等の声を聞きながら晋二郎は1人嬉しそうににやけていた。
 
 『疲れた〜。』
 『腕が、張ってるよ。』
晋二郎は、そう言いながら自分の右腕を揉んでいた。
そんな晋二郎に“裕”の知り合いが、
 『兄ちゃん、凄いじゃないか。』
 『今度、俺に関東での川鯛の釣り方を教えてくれや。』
そう、晋二郎に話掛けながら、缶コーヒーを手渡した。
晋二郎は、頭を下げ、缶コーヒーを受け取りながら、
 『何時でもOKですよ。』
そう、言うと、缶コーヒーのリップを開き一飲みした。
 
その後、晋二郎は小一時間釣りをして鯵(あじ)を10尾釣ってから納竿した。
 『じゃーお先に失礼します。』
と、“裕”の知り合い達に声を掛けてから、60pの川鯛の入ったクーラーボックスを、
 『どっこいしょ。』
と、声を掛けてから肩に担いだ。

ユースホステルに戻った晋二郎は、外に出ていた、“ひとみ”を見つけ、
 『ただいまです。 “ひとみ”さん。』
と、声を掛けた。
晋二郎の声に、“ひとみ”が笑顔を見せながら、
 『おかえりなさい。 吉田さん』
 『今日も釣りですか?』
晋二郎は、笑顔で
 『はい。 “裕”さんの道具借りて行ってきました。』
 『今日の釣果はどうでした?』
晋二郎は“ひとみ”の問いに、胸を張って、
 『驚かないで下さいよ。』
 『今日は自分の記録更新しましたから。』
そう言うと、“よいしょ”っと一言言ってから、右肩に掛けていたクーラーボックスを降ろして、
 『どうぞ、褒めてやってください。』
と、“ひとみ”に告げてから、クーラーボックスを開けて見せた。
クーラーボックスを覗き込んだ“ひとみ”は、
 『吉田さん、凄い!』
 『凄いですよ。この川鯛!』
そう、言いながら、ユースホステルに入って行き、“裕”を連れてきて、
 『お父さん、吉田さん凄いの!』
 『これを見て。』
“ひとみ”に言われ、クーラーボックスを覗くと、
 『ほ〜、こりゃ凄いじゃないか吉田さん。』
晋二郎は、“裕”の言葉に気分を良くして、
 『どうですか、“裕”さん。 この川鯛食べがいが有りますよ。』
“裕”は晋二郎の顔をみながら、
 『ほんと、大したもんだよ吉田さん。』

そう、言うと“裕”はクーラーボックスから川鯛を持ち上げ、
 『吉田さん、写真撮ろうよ。』
 『ここで、川鯛を持ってくれないか。』
晋二郎に、そう告げ、“ひとみ”には、晋二郎のデジタルカメラで写真を撮るように指示を出し。

 『吉田さん。 撮りますよ。』
 『いい顔をしてくださいね。』
そう、言いながら“ひとみ”は写真を4枚も撮っていた。
 『吉田さん、写真に問題が無いか確認して貰っていいですか?』
晋二郎は、頷きながら“ひとみ”が撮ってくれた写真を確認してから、
 『“ひとみ”さん。ありがとうございます。』

その時、“裕”が晋二郎に向かって、
 『吉田さん、お願いが有るんだけどきいてくれないかな。』
晋二郎は、“裕”に向かって笑顔を見せながら、
 『どうしたんですか、“裕”さん。 なんでも言ってくださいよ。』
“裕”は、真面目な顔をしながら、
 『この川鯛を俺に売ってくれないか。』
晋二郎は、“裕”が何を言っているのか分からず、
 『はい?』
と、変な返事をしてしまった。
状況を理解している“ひとみ”が、“裕”に代わって説明を始めた。

 『吉田さん、実は兄さんが来月こっちに戻って来て、新しい養殖の仕事を
  しながら、父の仕事を手伝う事に決まったんです。 それで、今日その
  説明に帰ってきたんです。』
晋二郎も笑顔で、
 『“ひとみ”さん、“裕”さん良かったですね。』
 『俺も、いい日に川鯛釣れて良かったですよ。』
晋二郎の言葉を聞いた、“裕”が、
 『じゃー、吉田さん。』
 『この良型の川鯛を売ってくれるんだね。』
晋二郎の、“裕”の言葉に頭を左右に振って、否定した。
 『“裕”さん、“ひとみ”さん。』
 『この川鯛は、僕から“裕”さん一家へプレゼントさせてください。』

晋二郎の話を聞いた、“裕”が、
 『吉田さん、本当にいいのかよ。』
 『このサイズは滅多に七尾でも上がらないサイズだから、吉田さんが
  考えているよりもいい値段で売れるぜ。』
晋二郎は、“裕”に向かって、
 『“裕”さん。 お金じゃないんですよ。 ここの問題ですから。』
そう、言いながら晋二郎は自分の胸を指で挿して見せた。

3人がユースホステルの前で話していた時、
 『親父、どうしたんだよ。』
 『あれ、吉田さん何処に行ってたんだよ。探していたんだぜ。』
と、康夫が“裕”のサンダルを履きながら、外に出てきた。

 『ほ〜。 良型じゃんこの川鯛。』
 『どうしたんだよ。』
康夫の話を聞きながら晋二郎がニコニコしてると、
 『まさか、吉田さんがこの川鯛釣ったのかい?』
晋二郎は、康夫の言葉に笑顔で大きく頷いて見せた。
康夫は信じられない様に、
 『ほんとかよ。やるね〜吉田さん。』
康夫と晋二郎の会話を、聞いていた“裕”が、“ひとみ”に向かって、何か話をしていた。
“ひとみ”は、時々“裕”の言葉に頷いて見せた。

 『吉田さん。じゃーこの川鯛遠慮なくいただくよ。』
晋二郎は、“裕”に向かって、
 『“裕”さんOKです。 “ひとみ”さん、美味しい料理お願いしますね。』
晋二郎の言葉に“ひとみ”、指でVサインを作って見せた。
 
第5-2章に続く





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