民主党政府は税収不足を補うために消費税の増税を行おうとしている。消費税増税のマイナス効果として、高所得者に優しく低所得者に厳しい増税であることが言われている。たとえば手取り月収15万円の低所得者は、ほぼ全額を消費に使わざるを得ない。消費税が5%なら税金負担は7500円ほど。この場合実質的に商品の購入に使う金額は、15万円-7500円=14万2500円です。消費税10%では税金負担は15000円程度になる。つまり実質消費額は、15万円―1万5千円=13万5千円です。15万円程度の月収でぎりぎりの生活をする低所得者にとって、7500円分の消費を削ることは並大抵のことではない。生活レベルの大幅ダウンにつながる。 一方、手取り月収100万円の人について考えてみます。全額を消費する人も中にはいるかもしれませんが、通常は生活費として60万円ぐらい使い残り40万円は貯蓄するでしょう。消費税率が5%なら60万円の5%で消費税額は3万円、10%では6万円になります。消費税が5%から10%に増えれば税金負担は3万増えますが、この分は貯金を3万円減らせば生活の質を落とさずに済むのです。 消費税増税は、高所得者の生活レベルにほとんど影響しないため、高所得者に優しい税なのです。 手取り収入に対する比率で考えても、消費税が低所得者に厳しく高所得者に優しいことがわかります。手取り収入が15万円の人は消費税5%のときは収入の5%、消費税が10%に増税されれば収入の10%を負担します。ところが手取り収入100万円の人は、収入の全額を消費せず60万円だけ消費するので、消費税5%では消費税額は3万円で収入の3%の負担で済むのです。消費税10%になっても消費税額は6万円で収入の6%で済みます。このような見方からも消費税増税は高所得者優遇であることが分かります。 上に記述した消費税のデメリットは、経済学者やエコノミスト、テレビ・新聞などでよく解説されているものです。 ところで以下に述べるデメリット、すなわち消費税を上げるほど外国製品に対する国内製品の競争力が低下する、つまり国内産業が弱体化し国内の雇用者も減少する恐れについては、いままでまったく論じられていません。 消費税を上げるほど国内産業が弱体化し雇用が減るのは、国内の製品のコストが高いことが原因です。 たとえば1Kg1000円のアメリカ産牛肉と1Kg2000円の国産牛肉について考えます。消費税が5%であればアメリカ産牛肉は1050円です。一方国産牛肉は2100円になります。値段の差を比べると、消費税がない場合はアメリカ産と国内間では1000円の差ですが、5%消費税がかかると価格差は1050円に拡大し、国産の牛肉の競争力が落ちます。さらに10%に消費税が増税されればアメリカ産は1100円、国産は2200円になり価格差は1100円に拡大します。消費税が上がるほど、国産の牛肉の競争力が落ちていきます。 牛肉に限らず、米や野菜・果物などの農産品、豚肉・鶏肉・チーズ・バターなどの酪農品、魚・貝・海草などの海産物、テレビ・パソコン・携帯電話などの電気製品や自動車などの工業製品など国内で消費されるものはほとんどが、同じように国内競争力を落とすのです。競争力が落ちた企業や産業は、国内では生き残れなくなるので廃業するか海外に脱出することになります。つまり国内の雇用が減少するわけです。 海外に脱出した企業の行動も国内の雇用減少を加速することになるかもしれないことは、注意を要します。海外工場で作ったコストの安い製品を国内に持ち込んで、国内でがんばっている同業者を駆逐することになるかもしれません。国内で人気の高いユニクロやしまむらは中国や東南アジアで作った衣料品を国内に持ち込んで巨額の利益を上げています。一方国内の縫製業者はコストで太刀打ちできず次々廃業しているのは周知の事実です。又電気製品にしても、日本メーカー製であっても海外工場で製造し日本国内に逆輸入たものが非常に多くなっています。自動車にしても最近日産がタイで製造した小型の乗用車を月に数千台輸入して販売しています。他の自動車メーカーも対抗上やらざるを得なくなるでしょう。各社は海外に出てどんどん利益を上げますが、国内雇用は減るのです。まさに「一社功なりて万骨(国内雇用)枯る」です。 もちろん企業が海外に進出するのは、円高によりコスト競争力が低下したためで、消費税が原因で海外に出て行くと言っているわけではありません。 ただ、消費税増税はこのような状況を後押しする恐ろしい存在であることを理解しなくてはなりません。単に財政にのみに気をとられて、産業界がコスト競争力に苦しんでいるときに消費税を上げることは、産業界の足元をすくうことになります。金の卵を産む鶏の腹を割いて、一挙に多くの金を取ろうとしたばか者は、鶏を殺してしまいその後金をまったく入手できなくなったというたとえ話もあります。 ユーロ安、ドル安、元安、ウォン安、オーストラリアドル安など今各国の通貨がそれぞれの事情から安くなり、相対的に安心感のある円買いが進んでます。このような状態のときに、ますます円の安定性を強化するような消費税を上げることは、円買いに拍車をかけますます円高に誘導し、国内産業界の国際競争力を削ぐ事にならないか危惧します。 通貨高による国際競争力低下に、さらに後押しするような消費税増税による国内競争力低下で、企業業績をますます悪化させ、雇用を減少させるようなことをするのはやめるべきでしょう。
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