切り餅メーカ対決 結構いいお勉強材料になるのではないかな
シェア2位の「越後製菓」が一位の「佐藤食品工業」 サトウの切り餅は側面の一部に加え上下の面に十字の切り込みを入れたものです。
一方越後製菓は餅を焼いた時に形が崩れないようにと、餅の側面に切り込みを入れたものです。 越後製菓も佐藤食品工業も特許を登録してありますが、先に取得した越後製菓が佐藤食品工業を特許権侵害で訴えたこの事件、東京地裁は、「佐藤食品の切り餅は上下の面に十字の切り込みが設けられていて、越後製菓の発明の技術的範囲には入らない」として、越後製菓の訴えを棄却しました。
新聞の記事ですとこれだけですが、ちょっと特許庁のデータベースを覗いてみました。
多分佐藤食品工業の特許は 特開2005-034079
一方越後製菓の特許は 特開2004-147598
(これ以外にもありますが、多分推定です。)
出願時の越後製菓の特許請求項はこのようになっています。
出願時
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の載置底面ではなく上側表面部に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする餅。
【請求項2】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の平坦頂面や載置底面ではなく上側表面部の側周表面に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載の餅。
【請求項3】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の載置底面ではなく上側表面部に、周方向に連続させてほぼ環状とした若しくは周方向に沿って複数配置してほぼ環状に配置した切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の餅。
【請求項4】
丸餅などの輪郭形状がほぼ円形の小片餅体の上側表面部の周辺傾斜面である側周表面に、この輪郭縁に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項2記載の餅。
【請求項5】
丸餅などの輪郭形状がほぼ円形の小片餅体の上側表面部の周辺傾斜面である側周表面に、この輪郭縁に沿う方向を周方向としてこの周方向に連続させてほぼ丸環状とした若しくは周方向に沿って複数配置してほぼ丸環状に配置した切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項2,3及び4に記載の餅。
【請求項6】
切餅などの輪郭形状がほぼ方形の小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項2記載の餅。
【請求項7】
切餅などの輪郭形状がほぼ方形の小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に連続させてほぼ角環状とした若しくは周方向に沿って複数配置してほぼ角環状に配置した切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項2,3及び6に記載の餅。
【請求項8】
前記切り込み部又は溝部は、周方向に連続させてほぼ環状に設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の餅。
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請求項1だけみるとサトウの切り餅の上部切り込みも請求範囲かなと考えてしまいます。
でも第一回目の特許庁の拒絶理由には以下のように記載されています。
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第1回目の拒絶理由
1.特開平07−250636号公報
しかし、引用文献1に記載された、全周、あるいは小分けした場合に2側面に切り込み部を有する菱餅を全周に切り込み部を有する切餅に適用すること、あるいは周方向に複数配置することは、当業者が容易に想到できるものである。 引用文献1には、焼き餅を容易に均一に焼くことができるという記載はないが、周方向の脆弱部を残して適当に小分けして焼けば、当然に均一に焼くことができることから、本発明が、当業者の予想し得ない程度の効果を奏するとも認められない。
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あれあれ、駄目出しではないですか!!
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そこで越後製菓はこんな反論を試みました。
第一回目の補正、意見書
1回目意見書
本発明は、引用例のように小さく分割可能とするための切り込みではなく、添付致しま
した参考資料A(従来の切餅の焼き上げ具合を示す写真)に示すように、トースタやオー
ブンや電子レンジの焼き網に載せて焼き上げるに際して内部の餅が膨化によって外部へ噴
出して突発的に予測不可能に噴出して焼き網に噴き落ちて餅を取り上げにくくなったり、
焼き網を汚しその洗い落としが厄介となったり、食べづらくなったり、見た目が悪くなっ
たりすることを防止すべく、この噴出力を抑制するために切り込み部や溝部(以下、単に
切り込みという)を切餅や丸餅に形成したものです。
しかも、本発明は、単に切り込みを入れて、突発的でどこから噴出するのか制御不能な
噴出を抑制するに留まるものではなく、噴出力を抑制しつつ切り込み部分が膨れて切り込
みの下側に対して上側が持ち上がる位置に切り込みを設けて、常に噴き出しによる噴き落
ちは一切なく、且つ見た目もきれいで均一に焼き上げることができる画期的な構成とした
ものです。
即ち、単に切餅や丸餅などの小片餅体の平坦上面に垂直面方向に複数の切り込みや十字
状の交差切り込みを入れたのでは、前述のように持ち上がり現象は生じ得ず、切り込みに
よって突発的な噴き出しは抑制できても、この切り込み部が天火によって直に加熱される
ことから切り込み部分は人肌での傷口(刃傷)のように焼き開いて盛り上がり、均一に焼
けないばかりかこの刃傷のような切り口で腫れ上がったような盛り上がりとなるため実に
忌避すべき見た目となってしまうのです。
1回目補正
【請求項1】 角形の切餅や丸形の丸餅などの焼き網に載置して焼き上げて食する小
片餅体の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の側周表面のみに、周
辺縁あるいは輪郭縁に沿う周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を
設け、前記周方向に連続して形成若しくは周方向に沿って複数形成した切り込み部又は溝
部は、少なくとも前記小片餅体の側周表面の互いに対向する位置には存するように構成し
て、焼き上げるに際しての膨化による外部への噴出力を抑制するための前記切り込み部又
は溝部を、前記小片餅体の載置底面及び平坦上面には形成せず、且つ前記切込み部又は溝
部が前記小片餅体の側周表面の対向位置に何ら形成されていないことのないように構成し
たことを特徴とする餅。
【請求項2】 前記切り込み部又は溝部は、周辺縁あるいは輪郭縁に沿う周方向にし
て且つ前記側周表面に沿って直線状に長さを有し、少なくとも前記小片餅体の側周表面の
対向表面位置に夫々存するように構成したことを特徴とする請求項1記載の餅。
【請求項3】 前記切り込み部又は溝部は、前記小片餅体の側周表面の周方向に連続
させてほぼ環状に形成したことを特徴とする請求項1、2いずれか1項に記載の餅。
【請求項4】 丸餅などの輪郭形状がほぼ円形の小片餅体の上側表面部の周辺傾斜面
である側周表面に、この輪郭縁に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若
しくは複数の前記切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか
1項に記載の餅。
【請求項5】 切餅などの輪郭形状がほぼ方形の小片餅体の上側表面部の立直側面で
ある側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若
しくは複数の前記切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか
1項に記載の餅。
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意見書で上に切り込みを入れると焼き上がりが汚くなるだよね、だから上にはいれちゃ駄目なんだよねといい、請求項も小片餅体の上側表面部の側周表面のみと限定して再度審査をお願いしています。
即ち、単に切餅や丸餅などの小片餅体の平坦上面に垂直面方向に複数の切り込みや十字
状の交差切り込みを入れたのでは、前述のように持ち上がり現象は生じ得ず、切り込みに
よって突発的な噴き出しは抑制できても、この切り込み部が天火によって直に加熱される
ことから切り込み部分は人肌での傷口(刃傷)のように焼き開いて盛り上がり、均一に焼
けないばかりかこの刃傷のような切り口で腫れ上がったような盛り上がりとなるため実に
忌避すべき見た目となってしまうのです。
その後再度拒絶理由と拒絶査定を経て、最後に不服審判を起こして、最後の土壇場での補正をしました。それがこれです。
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【請求項1】 焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である
切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表
面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数
の切り込み部又は溝部を設け、この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周
方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表
面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として、焼き上げるに際して前記切り込み
部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板
状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部へ
の噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする餅。
【請求項2】 焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である
切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表
面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状の切り
込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載の餅。
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ここで明確に「切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、」と限定して土壇場で登録となりました。 そうこの特許は上面あるいは底面に溝を入れないでと限定しているですね。 サトウの切り餅はここにも入れたものです。 多分争点は横に溝を入れた事が侵害で上に入れたことは権利範囲だったでしょうが、裁判官の印象は悪かったでしょう。 それが判決結果に出ているように考えます。
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