年金は原則65歳から受給できますが、請求することにより60歳から受給(繰上げ受給)することができます。
また、今は収入があるから66歳以後に受給を先送りし(繰下げ受給)、受給金額を増やしたいという選択もできます。
年金は長生きすればするほど得になるのは周知の通りですが、健康に不安をお持ちの方は「自分は平均寿命ほどにはとても長生きする自信がないから、早く年金を貰いたい」とお考えの方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は「繰上げ受給」・「繰下げ受給」による年金額の増減率を解説し、損益分岐年齢が確認できる『老齢基礎年金「繰上げ」受給・「繰下げ」受給、累計額比較表』を文末に「参考資料」として添付しました。1.繰上げ受給
年金は、要件を満たした人は原則65歳から受給するのが基本ですが、請求することにより60歳から受給することもできます。ただし早く受給する分、受給額は減額されます。
減額される率は65歳(誕生日の前日が属する月=誕生月)より1か月早く請求するごとに0.5%減額されます。
例えば64歳の誕生月に請求(請求した月から受給開始となります)すると12か月早く受給するわけですから0.5%×12か月=6%減額され、65歳から受給する金額の94%になってしまいます。
60歳の誕生月から受給すれば0.5%×60か月=30%減額されますから、65歳から受給する金額の70%になってしまいます。
そして、減額された年金額は生涯続きます。
2.繰下げ受給
一方、65歳で受給せず66歳以降に受給すると、1か月遅く請求するごとに0.7%増額されます。(66歳前での請求は繰下げにはなりません)
例えば66歳の誕生月に請求すると12か月遅くもらうわけですから0.7%×12か月=8.4%増額され、65歳から受給する金額の108.4%になります。
70歳の誕生月に請求すれば0.7%×60か月=42%増額され、65歳から受給する金額の142%が生涯受取れます。
70歳以降はどんなに遅く貰っても増額率は142%で変わりません。
3.
「健康寿命」「平均余命」「平均寿命」は男性80.21歳、女性は86.61歳(平成25年簡易生命表より、以下同様)とまだまだ伸びていますが、意外と短いのが「健康寿命」です。
「健康寿命」とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と厚労省では定義しており、男性71.19歳、女性は74.21歳です。
「繰上げ」や「繰下げ」受給を考える上で一番気になるのは健康状態です。但し下記4.の通り正解はありませんので、それを承知の上決断することが必要と思います。
「平均余命」は平均寿命より長いことも確認しておいて下さい。
4.「繰上げ受給」のケースバイケース
大病したため体が動くうちに旅行や観劇に行こうと、60歳から年金をもらって行動範囲を広げた結果、友人も増えて80歳を過ぎてもお元気に過ごされている方がおられます。
一方、同様に病弱で自信が無かったため60歳からの「繰上げ受給」を選択したが、幸いにして長命している結果医療費がかさみ、「繰上げ受給」したことを後悔しているという方もいらっしゃいます。
結局、「選択の良し悪しは後にならなければ判らない」というのが結論になってしまいますので、ここでは「繰上げ」または「繰下げ」受給した時の「損得分岐年齢」を知り、ここまでは生きられそうだという目安のもとに「繰上げ」「通常(65歳)」「繰り下げ」のいずれかを選択し、あとは健康で充実した毎日を過ごして頂ければと願っております。
そして、「繰上げ」や「繰下げ」受給した方が分岐年齢を超えて長生きした時、年金額だけを捉えれば「繰下げ」受給した方は万々歳ですし、「繰上げ受給」された方は「繰上げ受給」しなければよかったということになるかも知れませんが、それにも増して両者とも長生きできた幸せに浸ることができます。
「参考資料」として、『老齢基礎年金「繰上げ」受給・「繰下げ」受給、累計額比較表』を添付しました。検討資料としてご活用ください。
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