判決内容(前回ブログ)が簡単すぎるという意見メールがありましたので
第3 当裁判所の判断 の2 争点に対する判断を全文追加しました。
ブログの構成上、判決文全文の掲載は無理ですので、
(丁寧に写しましたが脱字、抜けもあるかと思いますので)
出来るだけ原文で確認されるようお願いします。
判決主文
1 第1事件被告(第2事件原告)は、第1事件原告(第2事件被告)に対し、金80万円及びこれに対する平成19年10月19日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
2 第1事件原告(第2事件被告)のその余の請求を棄却する。
3 第1事件被告(第2事件原告)の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、第1事件及び第2事件を通じ、これを10分し、その3を第1事件被告(第2事件原告)の、その余を第1事件原告(第2事件被告)の負担とする。
5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求 (略)
第2事案の概要 (略) (第1事件)(第2事件) (略)
1 当事者間に争いのない事実、(略) 2 争点(略)
第3 当裁判所の判断
1 上記争いのない事実、証拠及び弁論の全趣旨によると以下の事実を認めることができる。(1)〜(19)(略)
2 争点に対する判断
(1)争点(1) (本件チラシの配布が被告に対する名誉棄損となるか。)について
町民の一人が、町議会議員選挙を目前とした時期に、政務調査費を研修旅行に濫用して支出しているとして町議会議員を批判し、論評した内容のチラシを町内に大量に配布したとしても、公共の利害に関する事項について自由に批判したり、論評をすることは、表現の自由の行使として、もとより尊重されるきものであり、とりわけその対象が住民によって選挙された議員たる地位における行動である場合には、民主主義の観点からしても住民の厳しい批判にさらされるべきものであるから、その目的が専ら公益を図るもので、かつ、その前提としている事実が主要な点において事実であることの証明があったときは、これにより当該議員の社会的評価が低下することがあったとしても、人身攻撃に及ぶなどの論評としての域を逸脱したものでない限り、名誉毀損の違法性を欠くものというべきである。
上記認定の事実関係によると、原告は、マスコミの報道に誘発されたとはいえ、自分の住んでいる大磯町議会議員の政務調査費の使途を調査したところ、政務調査費が視察旅行費として濫用されていると感じ、税金の無駄遣いを防ぐため、これを公表して、間近に迫った町議会議員選挙に反映してもらおうと本件各チラシを配布したのでありその目的も専ら公益を図るものであって、批判及び論評の対象は選挙された議員たる地位における行動という公共の利害に関する事実であった。また、原告は、大磯町の情報公開条例に基づいて町議会議員全員の政務調査費にかかる収入及び支出の報告書を取り寄せ、その結果を調査、分析して本件各チラシに掲載したのであって、平成19年5月10日付けチラシは、町議会議員全員について平成14年度から平成18年度までの視察回数う及び宿泊数を記載していたのであり、被告のみを対象にしたものでは無かったこと、また、同日付け及び同月20日付けチラシにおいては、政務調査費の使途として問題があると思われる視察旅行について具体的に掲載したところ、そのほとんどに、被告が『竜馬の会』の町議会議員と一緒に視察した旅行が含まれて居たこと、さらに、平成19年5月29日付けチラシにおいて、最多視察者である被告のみの査察先や日程が個別に記載されているが、これらのチラシに記載された事実は、いずれも、主要な点においてしんじつであったと認められる。また、原告は、これらの視察旅行について、「税金の無駄遣い」、「老人の慰安旅行」等とやや辛口に論評しているものの、これらの論評も論評としての域を逸脱したものではなく、被告に対する人身攻撃とまではいえないというべきである。 してみると、原告は、本件各チラシを配布した行為について、名誉毀損の責めを負うことはないというべきである。
争点(2) (『波もんNo、25』のチラシ配布や『波もんNo、25』及び『波もんNo、26』の本件ホームページ上への書き込みが原告に対する名誉毀損となるか。
町議会議員である被告は、一町民である原告から、本件チラシにおいて、最多の視察者であり、問題視されるべき視察旅行が多いと指摘され、「税金の無駄遣い」、「老人の慰安旅行」等と辛口に論評されたとしても、事実をもって反論すべきであった。 しかるに、上記認定の事実関係によると、被告は、『波もんNo、25』のチラシにおいて、「岡田豊太郎の議会ウオッチング報告」に記載されている内容は、「政務調査費を視察イコール『観光旅行』に歪め、議員活動や視察の目的、内容を無視した、独善的で程度の低いコメントを書き散らした紙の「暴力」「圧力」行為。こんな暴言を許せば、これからもたびたび繰り返し町政を混乱させることは間違いありません。」などと、事実を摘示すルことなしに原告を抽象的に批判し、さらに、「選挙管理委員会や全国議長会、そして弁護士にチラシを送り見解を質したところ、「選挙を意識した山田議員などへの『名誉毀損』に当たる内容であるが、事実を持って反論すべきである」との忠告を得た。」とコメントするも、このコメント部分は、選挙管理委員会や全国議長会からの回答に照らすと、その真実性が疑わしく、真実であると信ずるにつき相当な理由があったと認めるに足りる証拠もない。
また、被告は、本件ホームページ上に書き込まれた『波もんNo、26』において、「5月から4回にわたる「政務調査費ウオッチング」のチラシは、事実をゆがめた内容であり、同時に議会や町政への暴言と断じざるを得ません。町議会選挙を目前とした時期を狙った発行はある意図を持った『謀略』といえます。」と論評するが、『謀略』が真実であったと認める証拠も、真実であると信ずるにつき相当な理由があると認めるに足りる証拠もない。
原告は、『波もんNo、25』の配布や本件ホームページ上への書き込み等により、上記松並木訴訟において協力関係にあった被告から侮辱されたとの思いを抱いかざるを得なかったのみならず、訴外NPO法人「大磯町町内の松並木敷地を大切にする会」理事長への就任断念を余儀なくされたのであるから(原告)、上記『波もん』の配布や本件ホームページ上への書き込みにより原告の社会的評価が毀損されたというべきである。
しかして、これに対する慰謝料としては、被告は、町議会議員として、一住民が本件各チラシで町議会議員の税金の無駄遣いを指摘したことに対して、上記『波もん』において、感情的に反発し、証拠に基づかない事実を前提として、論評していたことなどを総合考慮刷ると、70万円を持って担当とする。 尚、本件各波もんの配布や本件ホームページへの書き込みは、その記載内容が抽象的であることなどに照らすと、本件ホームページ上から本件波もんの該当箇所を削除したり、謝罪広告を本件ホームページ上に掲載したり、配布するまでの必要性や違法性があるとまでは認められないというべきある。
(3)争点(3)及び(5) (本件陳情や本件各監査請求が、被告に対する名誉棄損となるか。)
住民は、地方公共団体に対し、公務員の罷免等について平穏に請願する権利及び税金の不正支出等に対する監査請求をする権利を有しているところ、上記認定の事実関係によると、原告は町議会議員である、被告から名誉を毀損されたとして、平穏な方法で被告の懲罰を求める本件陳情を行い、また、被告の行った視察旅行に政務調査費の不正支出があったとして本件各監査請求をしたのであるから、これらは、いずれも法律に則った請願権の行使、住民監査請求の行使であって、もとより名誉毀損には該当しない。
(4)争点(4)(原告が大磯町議会議員選挙に立候補し、選挙公報に、「議員政務調査費の実態を報告した岡田です」などと記載したり、街頭宣伝活動を行ったことが、被告に対する名誉棄損となるか。)
上記認定の事実関係によると、原告は大磯町議会議員選挙に立候補し選挙公報に、「議員政務調査費の実態を報告した岡田です」などと記載しているが、これをもって被告の名誉を毀損したとは到底認められない。また、原告は、原告が選挙期間中に行った名誉棄損に該当する選挙活動等を具体的に摘示しないから、この点に関する主張は主張自体失当である。
(5)本件と相当因果関係にある弁護士費用相当の損害額は、10万円と認めるのが相当である。
第4 結論
よって、主文のとおり判決する。
横浜地方裁判所小田原支部民事部 裁判官 小 林 康 男
(これは赤倉昭男氏講演会の時に大磯の岡田さんが持って来てくれた判決文全文から抜粋したものです。大磯議会には判決文、資料が置いてあるそうです 。是非、原文で確認される事をお薦めします。)