「木暮実千代 知られざるその素顔」       出版記念特別講演会

戦後、一世を風靡した映画女優「木暮実千代」の評伝が2007年5月にNHK出版から刊行された。これを記念して彼女の甥にあたる著者・黒川鍾信氏が特別講演を行う。場所は東海道線大磯駅前の「海の見えるホール」。入場無料、先着200名まで。
 
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2009/09/12 12:02:47|その他
[木暮実千代 出演の映画を見ながらその半生を追う]

 
舞台演出の妙、満場を魅了
 
文化講演会: 2007年10月7日(日)13:30開演
場所: 東海道線大磯駅前 「海の見えるホール」にて
講師: 黒川鍾信(くろかわあつのぶ)氏 
     (作家、明治大学情報コミュニケーション学部教授)
題目: 「木暮実千代 出演の映画を見ながらその半生を 
         追う」
主催: 明治大学大磯駿台会
後援: 大磯町、大磯町教育委員会
 講演に先立って来賓の大磯町三好町長から「黒川先生には図書館の協議会委員として現在でも活躍してもらっており、今回、NHK出版から刊行された著書(木暮実千代 知られざるその素顔)を一冊図書館に寄贈していただき大変感謝しております」とお礼の言葉があった。
 講演が始まると黒川鍾信氏(写真最上段)が「何故この場所を講演会場に選んだかは最後まで聞くとわかる、映画のクライマックスと同じように最後の一瞬をお楽しみいただきたい」と木暮実千代の話を始めた。
 
 木暮実千代 
    (山口県下関市出身、1918年~1990年)
 世間からみれば木暮は「色っぽい、大人のムードを漂わせている」と言われているが、甥の私からみればまったく普通のおばさんで焼き芋を食べているところが一番よかった。女が家庭に入るのが当たり前の時代、さしすせそ(裁縫、しつけ、炊事、洗濯、掃除)の良妻賢母教育をしているところが多かった中で法律・経済を教える明治大学女子部を進学希望するも一日違いで願書は締め切り。やっとの思いで日大芸術学部に受け付けてもらった。当時日本全国で女子大生は10人しかいなかったから大変貴重な存在である。
 入学後すぐに劇団にはいり江ノ島の野外劇に弁天天女役で出演し、松竹大船の制作部長にスカウトされた。これが木暮実千代の映画人生の始まりだった。このときのスカウトから「ワンカットだけ出演してみないか」といわれて田中絹代と競演したのが昭和13年に撮影された「愛染かつら」だった。(会場に霧島昇の主題歌「旅の夜風」が流れる。)  
 花も嵐も踏み越えて、行くのが男の生きる道                   啼いてくれるなホロホロ鳥よ
 このときの試写の席で松竹大船の幹部の目に留まり、「結婚天気図」への出演とスターダムへの階段を登ってゆく。
 石坂洋次郎原作の「青い山脈」は原節子主演で昭和24年今井正監督により映画化され、これより少し前からヒットしていた西條八十作詞、服部良一作曲の同名主題歌が映画に取り入れられた。戦後間もない昭和24年頃、一番の娯楽は映画館に行くことであった。映画だけでなく冬の寒い日など映画館は唯一のぬくもりの場でもあった。当時「立ち見」は当たり前の時代、おせんにあんぱん・キャラメルを買った後、会場は暗くなりタイトルバックにこの歌が流れると観客がいっせいに立ち上がって合唱、それから映画をみるのが常だった。 ここで小休止。
 会場の片隅から藤山一郎の「青い山脈」の歌声が聞こえてきた。ストレッチを兼ねて全員起立して合唱。「若く明るい歌声に・・・」から4番までのフルコーラス(写真上から2段目,演壇にいるのが黒川氏)、220人満杯の海の見えるホールも割れんばかりの合唱が響いた。
 この映画のワンカット、竜崎一郎と自転車にのるシーンでの木暮実千代の会話。「パンツだかズロースだかあの窮屈なのが大きらいなんですからね」と当時としても驚くほどエッチなセリフをなにげなくさらっと軽妙に言ってのけた木暮の演技を監督・スタッフ一同が絶賛して毎日映画コンクールの助演女優賞を獲得したと黒川氏は満場を笑わせた。         写真上から3段目は会場スクリーンに映し出された「青い山脈」の一場面、竜崎一郎(右)と木暮実千代が自転車に乗る有名な場面。
 ここで戦後の松竹大船で照明技師として日本映画を支え、今日もなお映画の語り部として日々活躍している青木好文さん(平塚在住)が舞台へ呼ばれ、木暮実千代の思い出などを語った。(写真最下段 右は黒川氏)
 この後、木暮出演、青木さん照明担当の「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」の一部、そして木暮実千代の名前を不動のものとした「雪夫人絵図」が映し出されたときは予定時間を30分も超過して午後4時を廻っていた。
 そしていよいよ本日のクライマックス。舞台後ろのカーテンが左右に割られ、ガラスの向こうには快晴に恵まれた大磯海岸が寄せては返す白波に洗われる様子がはっきりと。さらに海の向こうには島がポッカリ浮かんでいる。「おお!江ノ島だ」。なんという巧みな演出。講演の最後は木暮実千代が最初に映画人生のスタートを切った江ノ島が現れた。時間は超過しているのに誰一人席を立つ人もなく、最後まで聞いていてよかったと驚きの声がもれた。
 すばらしきクライマックス。すばらしき「最後の一瞬」だった。最初に黒川氏が「何故講演会場をここ海の見えるホールにしたかは最後の一瞬にわかる」と言ったが、答えはこれだったのだ。
 閉会の挨拶は井上蒲鉾店社長の井上浩吉氏(昭和32年政経学部卒)がつとめ、会場からは惜しみない拍手が黒川鍾信氏に送られた。(文責:佐藤邦康)

第三回 講演会予定

2008年10月13日(月) 13:30開演
場所:海の見えるホール
題目:日本一金儲けが上手かった男
   安田善次郎の生き方
講師:砂川幸雄先生



第四回 講演会予定

日時:2009年10月4日(日) 
開場:13:00開場
開演:13:30~15:00
場所:東海道線大磯駅前
   海の見えるホール
題目:エリザベスサンダースホームと
   ママちゃま澤田美喜

講師:澤田美喜記念館長 鯛茂先生
主催:平塚法人会大磯支部
共催:大磯町商工会、明治大学大磯駿台会
協力:ステパノ学園






2007/08/18 13:20:32|その他
木暮実千代 出版記念特別講演会
演題:「木暮実千代 知られざるその素顔」

講師:黒川鍾信氏
   作家、明治大学教授

日時:平成19年10月7日(日)
会場:東海道線大磯駅前
   ステパノ学園「海の見えるホール」

開場:13:00
開演:13:30
終了:15:30
入場無料、定員200名、先着順

主催:明治大学大磯駿台会
後援:大磯町・大磯町教育委員会

問合せ先:0463-61-3057(荒金) 

タイトル
出版記念特別講演
  『木暮実千代 出演の映画を観ながらその半生を追う』
 
         講師 黒川鍾信 作家・明治大学教授

 話題作『木暮実千代 知られざるその素顔』(NHK出版)の出版を記念して、大磯町東小磯在住の、本書の著者で、モデルとなった木暮実千代さんの甥でもある黒川先生が、木暮さんが主演・特別出演で出演した202本の映画の中から厳選した作品の一部を上映しながら、往年の大スターにまつわるお話をされます。

 〈木暮実千代略歴〉
昭和13年、当時、全国で数人しかいなかった共学の大学で学ぶ女子大生だった木暮は、学内の劇団が片瀬江ノ島で上演した野外劇に弁天天女で出演、そこで松竹大船の製作部長にスカウトされて『愛染かつら』にワンカット出演する。それが試写室で重役たちの目にとまり準備中の『結婚天気図』の主役に抜擢され、一年後には田中絹代、高峰美枝子、桑野通子と並んで松竹を代表するスターになる。が……結婚を選んで満洲へ。夫は、満洲新聞理事長・満洲映画常務理事の従兄。
戦後、九死に一生を得て帰国すると、すぐに銀幕に復帰、フリーとなって、松竹・新東宝・大映・東映・東京映画作品に出演、日本映画の黄金時代に二年連続芸能界第一の多額納税者になるほど活躍した……映画の衰退で舞台に転向、尾上松緑、花柳章太郎、中村勘三郎等の相手役を務める。学校や化粧品会社経営、福祉事業などにも身を投じた。








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