少年詩2021

少年詩の詩集や同人誌についての紹介と作品への批評などのブログです。
 
2026/07/30 22:03:00|その他
少年詩時評『わらう(笑う)』
少年詩時評『わらう(笑う)』 
      佐藤重男

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前回、「なく(泣く)」をテーマに少年詩の作品を見てみましたので、今回は、「わらう(笑う)」をテーマにした作品について考察しようと思います。
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では、いつものように、まず、タイトルに「わらう(笑う)」が使われている作品です。
わらう 内田麟太郎「きんじょのきんぎょ」理論社
わらう   武鹿悦子「ともだち」理論社 06・12
笑う 小林育子「カバになれたら」鳥語社 06・4

3編でした。
 *
続いて、作品のなかに登場する「わらう(笑う)」です。たくさんあります。
赤ちゃん 武鹿悦子「ともだち」理論社 06.12
 かきねの はなが/わらう
ありちゃん あいうえお かこさとし「ありちゃん あいうえお」
               講談社 19.2
 ごりらくん ごねる/わにちゃん
わらうおばあさん 清水たみ子「あまのじゃく」国土社 75.11
 しわのなかで うれしそうにわらうおばあさん。
おべんとう つけて どこいくの 北村蔦子「あかちんらくがき」
                      銀の鈴社 82.12 
 みんながわらう あのこもわらう
父ちゃんの足音 黒柳啓子「父ちゃんの足音」銀の鈴社 95.6
 と 母ちゃんは言う/そしてにこっとわらう
生きてる 小林育子「現代少年詩集 02」銀の鈴社
 笑うことも/ある
いじわる あわのゆりこ「まねっこ」銀の鈴社 19.2
  帰り道 笑う君から逃げた
いもうと 高瀬美代子「仲なおり」銀の鈴社 94.3 
 キュッ キュッと笑うよ
海をながめる親子 小林比呂子「おりおん 3号」織音の会 02.2
 二ッと笑う 女の子
お手玉 馬場与志子「ジャンケンポンでかくれんぼ」銀の鈴社 17.7 
 こそばゆいようと/けらけら笑う
田舎のおばけ 須田慎吾「ぼくのめがかげろうになるとき」てらいんく 07.8
 どろどろ笑う影ぼうし
顔の表情 佐藤一志「自然の不思議」銀の鈴社 18.2 
 おかしいとき/目が笑う/口も笑う
鏡 白石はるみ「エリーゼのために」銀の鈴社 18.7 
 プレゼントの箱に入れる笑顔をつくって笑う
心のなかみ 渡辺恵美子「空をひとりじめ」銀の鈴社 09.10 
 怒る 笑う いろんな気持ちを
ぎんが いちかわゆう「風の詩集 る る る」ぶんしん出版21.2 
 ―それはどうかな/あなたはわらう
くつした 星野良一「星の声、星の子へ」銀の鈴社 22.12 
 くつはクツクツ わらうだけ
こかげ さかのまこと「ひらがなうた」ブィツーソリューション 06.5
 みどりの こかげで/あかんぼうが わらう
コスモス 野呂さかん「あーふたりしずか」かど創房 79.7 
 おんなのこたちは わらう
かお 滝和子「きこえてくるよ」てらいんく 06.12 
 あうと大人のしぐさ/…笑う
がっこのおばん 高丸もと子「はじまりの音」たんぽぽ出版 09.11 
 豪快に笑うがっこのおばんは
さよなら 石井英行「おじいちゃんの友だち」銀の鈴社 94.3 
 顔を見あわせ うれしそうに笑う
竹林のなかで 柏木恵美子「雨のシロホン」銀の鈴社 99.10 
 さらさらと/風がわらうたべるかな
内田麟太郎「きんじょのきんぎょ」理論社 06.9 
 げたは/げたげたわらうかな
誰か 津川みゆき「世界がきらめくまで」コーシン出版 18.11 
 「誰か」を あざ笑う
花天使 日友靖子「花天使を観ましたか」銀の鈴社 91.11 
 赤ちゃんが/笑う/声をたてて
お星さまからの でんわ 小黒恵子「
 子ねこの鈴の音かしら/お花の笑う声かしら
友だち 津川みゆき「世界がきらろくまで」コーシン出版 18.11 
 一緒に いるだけで うれしい/一緒に 笑うと もっと うれしい
ぬくもり 山内弘子「花の旅人」銀の鈴社 07.3 
 にっこり笑う/かあさんの
つり橋 原国子「小鳥のしらせ」銀の鈴社 07.10 
 きらり/わらうよ
はる 木村信子「でていった」銀の鈴社 86.7 
 ふふ ふふ ふふ/かぜが わらう
グランドピアノ  海沼松世「空の入り口」らくだ出版 04.11 
 ふたをあけると/クジラはわらう
返事 鈴木初江「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 21.4 
 ―あいよっ/といって/ほこっとわらう
土偶 野呂さかん「銀の矢ふれふれ」銀の鈴社 93.7 
 おーおーと泣き/おーおーと笑う
ブナ林で 鈴木初江「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 21.4 
 くぐもった山姥の声/雪ん子のくふくふ笑う
声ポケット 小川恵子「空とぶ ふうせん」てらいんく 15.6 
 笑うたびにポケットもズンズンはずんでる
蛍火 山本なおこ「二十四時間恋人でいて」てらいんく 06.3 
 長距離恋愛だと人は笑うけれど
海ほたる 佐野のり子「ミミズのバイオリン」花梨社 16.4 
 いつだってそうだね/笑うと
ドラムかんマーチ 三枝ますみ「ピカソの絵」銀の鈴社 87.12 
 ころげて笑うよ/ドンドコ ドン
未来 津川みゆき「世界が きらめくまで」コーシン出版 18.11 
 笑うような人間には なりたくない
絵本 冨田栄子「にんじん笛」銀の鈴社 95.6 
 おばあちゃんは/しわをかくして 笑う
夕焼け 宍倉さとし「海は青いとはかぎらない」銀の鈴社 94.3 
 笑うとえくぼの/かわいらしかった少女
ゆびきりげんまん 新谷智恵子「とびたいペンギン」銀の鈴社 06.12 
 笑って会おうね/笑う門には 福来たる
うれしい予感 新谷智恵子「とびたいペンギン」銀の鈴社 06.12 
 風か起こるから/木漏れ日が笑うから
私 山内弘子「花の旅人」銀の鈴社 07.3 
 天真爛漫楽しげに笑う
選ばれた私だから 高橋文子「八丈太鼓」銀の鈴社 19.11 
 時には泣くことも/笑うこともあるだろう
ゆれている 柏木恵美子「空の円卓」土曜美術出版 12.11 
 なにも語らず/わらうこともしないで/生きている
 *
以上、46編あります。
「なく(泣く)」が17編でしたから、「わらう(笑う)」の46編はきわめて多い、といえるでしょう。
やはり、泣くというネガティブな行為より、笑うというポジティブな場面が人間としての尊厳にもつながるものとして、少年詩の書き手の気持ちのあり様を反映していると考えられるのではないでしょうか。

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さらに、「わらい(笑い)」「わらった(笑った)」で検索すると、タイトルに登場するものが、次の4編。
笑った   李錦玉「いちど消えたものは」てらいんく 2004.7 
おはながわらった   保富康午「きりとおとうさん」国土社 1976.4くさがわらった いとうゆうこ「おひさまのパレット」てらいんく 06.10
わらい 松谷みよ子「とまり木をください」筑摩書房 1987・6
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付け加えると、作品のなかに「わらい(笑い)」「わらった(笑った)」が登場するものは、なんと、58編もあることがわかりました(詳細略)。 

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では、もう少し「わらう(笑う)について見てみましょう(出典略)
 かきねの はなが/わらう
 くつはクツクツ わらうだけ 
 子ねこの鈴の音かしら/お花の笑う声かしら
 ふふ ふふ ふふ/かぜが わらう
 ふたをあけると/クジラはわらう
 おーおーと泣き/おーおーと笑う
 くぐもった山姥の声/雪ん子のくふくふ笑う声
 風が走るから/木漏れ日が笑うから

このように、笑うのは人間だけではない、それが少年誌の特徴でもあり、醍醐味ではないでしょうか。 
 *
また、「わらう(笑う)」のは、嬉しさの表現ばかりではない、そんな作品もまた少年詩では描かれて言います。 
 帰り道 笑う君から逃げた
 「誰か」を あざ笑う 誰かの不幸せの上で笑うような人間には なりたくな
 い
 なにも語らず/わらうこともしないで

これらもまた、少年詩のなかの「わらう(笑う)」ことである、そのことから目をそらしてはならないでしょう。

 □
言うまでもなく、笑うことは、身体的な健康にいいばかりではなく、心の健康≠ノも関わることはよく知られています。
が、「週刊文春」が報じた、高市早苗首相の中傷動画疑惑≠ネど、笑うしかないゴシップ記事、なんてことで片づけられるものではないほど、なんとも品格に欠けるものであるばかりか、失笑の域を超えて、それこそ胃が痛くなるほどです。
さらに言うと、「国論を二分する」と高らかに宣言した高市早苗首相は、いったい、誰が高笑いし、ほくそ笑むことを意図しているというのでしょう。
7月27日、特別国会が閉会しましたが、その日の夕方の記者会見で高市首相は、なんと次のような発言をしています。

 全ての政府提出を成立せることができた。通常国会とそれに準ずる特別国7
 会で戦後4回目だ。―東京新聞7月28日付「会見要旨」より

さらに、同新聞トップ記事では、 
 強引国会「反省点ない」
と報じています。
「国旗損壊罪法案」「皇室典範改正」などなど、「国論を二分する」法案の成立を果たした今、首相官邸の執務室から、高市早苗首相の高笑いがもれ聞こえてくる、そんな気がしてなりません。
そして、「高笑い」といえば、【円安でホクホク状況】2月2日付東京新聞といった記事が出ていましたが、少年詩の作品の「わらう(笑う)」とはあまりにも異質な、あのつくり=繕い笑いの、なんとも不気味な事でしょう。

 □
では、気を取り直して、少年詩のなかから、「わらう(笑う)」をテーマにした作品を引いて、本論考をとじることにしましょう。



 返事   鈴木初江

ぼくんちの
大ばあちゃん
九十歳こえた

天気のいい日は
お気に入りの椅子に
ちょこんと腰かけて
庭をながめている

―いってきまあす
―ただいまあ
―おやつ 食べよっか

どんなときも
ゆっくりぼくの方をむいて
―あいよっ
といって
ほこっとわらう

―きょう なにしてた?
ってきいたときだけ
―草とりさぁ
と元気な返事

花が大好きなんだ 



           「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 2021.4 



              ― この項 完 ―

いつものことですが、引用あたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。
また、作品「返事」(鈴木初江)、の引用に際しては、著者や出版社などから許諾を得ていませんが、引用先を明示していること、商業目的ではないこと、そして、論考への引用であることをもって、格段のご高配のほどいただければ幸いです(文中、敬称略)。

2026/7/30





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