今週の詩(うた)――詩の音読集より
冬のひまわり 小沢千恵
あんなに輝いていた夏は 遠くに過ぎさり 浜辺で優しかった波の音も 海の向こうに限りない広さがあり 体の中にたくさんの夢を いつか弾けさせて 遠くへ 旅立つ日を夢みていたあの頃
仲間は一人、二人去り 気がつくと 父ちゃんと海に出て 孤独にがんばっているのは僕だけ ボロボロになっても 笑われても 自分は自分と心の中でつぶやいて
裏庭に忘れられた冬のひまわり 黒く醜くなった葉を硬く握り締め 北風に向かって立っている
冬の海が 激しくぶつかってくる 「おれ負けない」つぶやくと じっちゃんが「おう―」と 船板をたたいた
詩の音読集 あさの まほう (社)日本児童文学者協会・付設 少年詩・童謡・詩論研究会 |