少年詩2021

少年詩の詩集や同人誌についての紹介と作品への批評などのブログです。
 
2026/09/07 18:03:12|その他
少年詩時評『からだ その3「あたま 鼻@」』
少年詩時評『からだ その3「あたま 鼻@」』 
               佐藤重男

 □
今回は、「はな(鼻)」をテーマにした作品を見て行こうと思います。
まず、タイトルに登場する「はな(鼻)」です。

象のはな 北村蔦子「あかちんらくがき」銀の鈴社 82.12
象のはな 土屋律子「るすばんカレー」銀の鈴社 05.12
ゾウの はな 小臣富子「わんさか わんさか どうぶつさん」 銀の鈴社 08.6

以上、三つありました。
いずれも、人間の「鼻」ではなく、ゾウ(象)の鼻でした。
 *
では、次に作品のなかに登場する「はな(鼻)」を見て行きましょう。

うしさん うふふ よしだていいち「よあけのこうま」らくだ出版 85.3
  うふふ はなに/ドーナツ ついてる
えくぼ 清水ひさし「空のピアノ」四季の森社 22.3
  ひくいはなは つまんでみたくなる/えくぼは つついてみたくなる
おかあさんの におい  たかはしけいこ「おかあさんの におい」
                 銀の鈴社 92.6
  はなを かむときの さびしい におい
おたまじゃくし かやのたけこ「ゆうだちピアノ」てらいんく 14.4
  ちいさな からだに/め はな くちがついている
木  いちかわゆう「風の詩集 ふ る る」ぶんしん出版 21.2
  くろくぬれたはなで/きりかぶのにおいを/かぐ
きつね  いちかわゆう 〃
  ぼくは/はなさきから
クリスマスカード いちかわゆう「あおいとり」ぶんしん出版 21.12
  ことばを/あかいはなが/さきに
くうき 竹内紘子「スクールゾーン」らくだ出版 05.3
  ゾウははなをのばす
九月  青木明代「ひるとよるのとのかえっこ」てらいんく 04.6
  こいぬがはなで ころがした
けしごむ ねじめ正一「あーちゃん」理論社 06.7
  はなくそは/はなくそらしく
ぞうさんのこもりうた 佐藤雅子「空の牧場」銀の鈴社 07.8
  長いおはなで リズムをとって/ゆらり ゆうらり こもりうた
しかられて すぎもとれいこ「ちょっといいこと あったとき」
                     銀の鈴社 04.7
  しあげはぺちゃんこの はな/かあさんの顔のできあがり
ぞうさん まど・みちお「ぞうさん」国土社 79.11
  ぞうさん/おはなが ながいのね
こぞうの ジャンボー 小黒恵子「赤い鳥青い鳥」銀の鈴社 85.8
  ながーいおはなを ふんじゃって
ちくわのうた 楠木しげお「カワウソの帽子」銀の鈴社 78.11
  しの字に曲げれば ぞうのはな
サイくんのツノ 織江りょう「とりになった」てらいんく 18.11
  はなの うえ/ちょこんと のびた
高尾のてんぐ 池田あきつ「天気雨」銀の鈴社 91.7
  赤いかおして/はなたか/せたか
あたらしい ともだち 木村信子「でていった」銀の鈴社 86.7
  はなを/つまみっこする
ネコはネコのままです 戸田たえ子「夕日は一つたけれど」てらいんく 07.3 
  わたしが ねんどでつくった/ネコちゃんの はな
はだかんぼ かこさとし「ありちゃん あいうえお」講談社 193
  おはなと おはなで/くっちゅんこ
ポケット 垣内磯子「かなしいときには」銀の鈴社 99.5
  はなで はさんで/いれてある
約束 井上良子「太陽の指環」銀の鈴社 12.8
  みみをすます/はなでにおう
ちょっぴり ふった雪 小池知子「おにわいっぱい ぼくのなまえ」
              銀の鈴社
  こいぬの くろい はなを ぬらしただけ

以上、23作品が見つかりました。
 *
続いて、作品に登場する「鼻」です。たくさんあります。

秋  藤井則行「春だから」銀の鈴社 00.4
  鼻歌まじりに皿を並べている
秋がきた 小野寺悦子「小野寺悦子詩集」いしずえ
  まよなかにめざめて/鼻がこえをあげると
もぐらさんのうた 井上灯美子「ちいさい空を ノック ノック」
                  銀の鈴社 05.3
  まどからお花を さがしたら/とんがりお鼻に なりました
ねむたい歌 サトウハチロー「とんとん ともだち」国土社 75.10
  子牛ちび牛/鼻声だした
海  日野生三「雲のスフィンクス」銀の鈴社 86.3
  鼻の頭を陽にやいて/はまは 問いかける
あのとき 鬼だった 林佐知子「空の日」銀の鈴社 18.3
  フン! とあらい 鼻いき
12歳の高原 日友靖子「猫曜日だから」銀の鈴社 87.9
  ――ひがみの魔女はひさしの端に/青い鼻をつつましく伏せ
顔 川崎洋子「森 U・8」00.11
  涙をふき 鼻をかみ/それから
顔 柿本香苗「きんいろの夜」編集工房ノア 07.12
  よく見ると/かわいい鼻だ
顔の表情 佐藤一志「自然の不思議」銀の鈴社 18.2
  口も笑う/でも鼻は笑わない
かくれんぼ 若木良水「光と風の中で」銀の鈴社 02.9
  梅酢と紫蘇の香りが/強く鼻をうつ
風にさそわれて 宮中雲子「どんな音がするでしょうか」銀の鈴社
  黒くぬれた鼻先を/天にむけて
カバ 薩摩忠「まっかな秋」銀の鈴社 85.7
  耳に栓をし/鼻にふたをして
カバのしっぽ ぷるるん 小臣富子「わんさか わんさか どうぶつさん」
                   銀の鈴社
  プシュ―と 鼻から みずしぶき
枯野  はたちよしこ「海がビアノを弾いている」木元省美堂 21.12
  目や鼻をさわって/確かめているのだ
こころ 小泉周二「誕生日の朝」銀の鈴社 94.5
  耳を使う/鼻を使う/目を使う
さくら 下田喜久美「あし草に光る雲の塔」てらいんく 05.10
  鼻の頭に 花びらをのせて
桜 帆草とうか「空をしかくく 切りとった」銀の鈴社 19.11
  鼻の先にも 見上げた空の中にもいっぱいで
三月 青木明代「ひるとよるのとりかえっこ」てらいんく 04.6
  うっとり 大きな鼻で かいだから
じゃがいも 久保田昭二「のはらで さきたい」銀の鈴社 84.8
  あれは鼻よ/かぎわけてるな
ジャングルジムは  山本純子「きつねうどんをたべるとき」
                     ふらんす堂 18.10
  ライオンの鼻息感じたら
石けん 宍倉さとし「海は青いとはかぎらない」銀の鈴社 94.3
  鼻できいてみてください
ゾウ はたちよしこ「海がビアノを弾いている」木元省美堂 21.12
  ゾウは/鼻をゆらしているようですが
ゾウ 杉本深由起「いつだってスタートライン」理論社 07.3
  ちょっとばかり 鼻が長いので
ゾウの時間 檜きみこ「しっぽいっぽん」銀の鈴社 92.5
  長い鼻を時おりゆらしては
象 山本なおこ「さりさりと由紀の降る日」銀の鈴社 96.9
  その瞳で/その鼻で
象 薩摩忠「まっかな秋」銀の鈴社 85.7
  長い鼻から/ユーモアと
ゾウの はな 小臣富子「わんさか わんさか どうぶつさん」
            銀の鈴社
  鼻のさきで つまむのは だーれ?
赤い月と子熊 真田亀久代「まいごのひと」かど創房 92.9
  白い子熊の/鼻ずら
伝言 山本純子「あまのがわ」花神社 04.3
 鼻をつく作業の過程を/克明に描いた詩で
かあさんきじねこ 鈴木レイ子「冬をとぶ蝶」てらいんく 06.12
  ぶたねこ きじねこ 鼻白くろねこ
はじめまして 鈴木初江「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 21.4
  目をつぶり鼻をよせたら/―はじめまして/のにおいがした
踏切 宍倉さとし「海は青いとはかぎらない」銀の鈴社 94.3
  鼻すじの通った顔だち
冬 藤本美智子「心のふうせん」銀の鈴社 13.9
  鼻が高くなれそう(1行詩)
ぼくの場合 木村信子「こっちも むいてよ」かど創房 93.8
  とつぜん!/鼻がのびときた!
魔法使いの素顔 大楠翠「おにいちゃんの紙飛行機」銀の鈴社 16.11
  かぎ鼻でおっかない顔を
めがね 青木明代「ひるとよるのとりかえっこ」てらいんく 04.6
  私の鼻に肩車して
雪だるま 山本純子「チョコレート」四季の森社 21.10
  そりゃ とけちゃったよ/目鼻だった 小石と 小枝と
夢  木島始「ふしぎなともだち」理論社 75
  わがもの顔の天狗の鼻さき
ワニ 海沼松世「かげろうのなか」銀の鈴社 90.12
  水面から目と鼻先だけを出して
雪起こし 小野寺悦子「小野寺悦子詩集」いしずえ
  おばあさんは/鼻水をすすりながら

以上、41編でした。漢字表記の方が多いのは意外でした。

 □
こうしてみると、タイトルもそうでしたが、ゾウ(象)の出番が多いですね。
 タイトル=4/4 作品(ぞう)=4/23 作品(象)=6/41
では、わたしたち人間のはな(鼻)はどうでしょう。作品名(著者)
 はな=えくぼ(清水ひさし)、おかあさんのにおい(たかはしけいこ)、しかられ
 て(すぎもとれいこ)、あたらしい ともだち(木村信子)、はだかんぼ(かこさ
 とし)、約束(井上良子) 6/23 
 鼻=秋(藤井則行)、秋がきた(小野寺悦子)、海(日野生三)、あのとき 鬼だっ
 た(林佐知子)、12歳の高原(日友靖子)、顔(川崎洋子)、顔(柿本香苗)、顔の
 表情(佐藤一志)、かくれんぼ(若木良水)、枯野(はたちよしこ)、こころ(小泉周
 二)、桜(帆草とうか)、石けん(宍倉さとし)、伝言(山本純子)、はじめまして
 (鈴木初江)、踏切(宍倉さとし)、冬(藤本美智子)、ぼくの場合(木村信子)、め
 がね(青木明代)、雪起こし(小野寺悦子) 20/41 

人間のはな(鼻)でも漢字表記が多いのは、「はな」=花、と読み違えられるから? ということもあるでしょうし、もっと言えば、「鼻」と表記することで、読み手に対してある種の「圧」を与える効果を期待している、と考えられるのではないでしょうか。
つまり、「鼻」という字ずらから想起される固定概念へと誘導し、それを共有しようというわけです。
たとえば、鼻は高い、低い、あるいは、筋が通っている、曲がっている、などなど、と。
色でいうと、多くの人が、赤=情熱的、黒=不安、青=冷静、などと想像するように、と言ったらいいかもしれません。

 □
いま、わたしが鼻に対して持っているイメージ、というか問題関心は、次の二つです。
一つは、なぜ、鼻は顔のど真ん中にあるのか。
そして、もう一つは、鼻のもっとも重要な仕事である「臭覚」について、少年詩はどう向き合っているのか、そして、そんな作品があるのか、ないのか。
 *
まず、ど真ん中について。
顔の真ん中に集まった、目、鼻、口、耳の4人。侃侃諤諤の末、臍を折り返しに走って一番先に顔に戻ったものが真ん中、二番手がその下、三番手が一番手の横、そしてビリが両脇に、ということに。さあ、ヨーイドン、で走り出した4人。一番先に顔に戻ってきたのは…。実は、目は双子。仲が悪くいつもケンカばかり。スタートしたあとも、「俺が先、俺が先」と目先だけを考えての兄弟喧嘩。これでは勝てるはずがない。同じく双子の耳も、「耳寄りな噺があるよ」の口の口車に乗せられあちこち道草ばかり。これでは勝てるわけがない。そして、その口ときたら、まんまと一番かと思いきや、「目は口ほどにものをいい」の例え通り、目ににらまれてすくみ上がりやっとのことで二番手に。そんなわけで、ハナを切って顔の真ん中に滑り込んだのは、鼻でした。
 *
というわけで、まったく非科学的な、鼻から出鱈目の耳よりな口上は、これまで…。
閑話休題。

 □
それはそうとして、少年詩には鼻が顔の真ん中にある、そのわけを教えてくれている作品、あるいは、ど真ん中にあることを誇らしくうたっている作品はあるのでしょうか。
先に掲げた一覧を読み直してみましょう。
ありました、が、ずばり「ど真ん中」ではありませんでした。やや長文の作品ですが、全文を引いてみます。


 踏切   宍倉さとし

いつも いつも
朝七時四十五分
登校途中の踏切で
出会う一人の少女

あいさつしたこともない
学校も名前も知らない
髪をポニーテールに結び
いつの間にかおぼえてしまった
鼻すじの通った顔だち

踏切の向うからは左側を少女
こちらからはぼくが右側の端
車の列と人人の群れにまじって
黙黙とすれちがう朝の日課

その少女が
五日も姿を見せていない
満たされない思いで
続けて五回踏切をわたる

六日目の朝
少女が踏切の向うに立っている
なんとなくまぶしい
警報機の点滅する光と音が
胸の鼓動と重なり合う

列車のごう音が去り遮断機があがり
ぼくと少女は
急ぎ足で踏切をすれちがう

ただそれだけのことで
もやもやがすーっと消えて
今日という日のはじまりを決断する  


             「海は青いとはかぎらない」銀の鈴社 94.3


 □
どうして鼻は顔の真ん中にあるのでしょうか。わたしのデータベースに登録されてある作品からはその回答が見つかりませんでした。
もちろん、ネット検索という手はありますが、それでは、コピペに過ぎず、モヤモヤが晴れません。
この件は宿題にさせてもらい、気を取り直して、次の問題関心へと筆を進めることにしましょう。

                  ― この項 続く ―

いつものことですが、詩集名や新聞記事などの引用あたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。
また、作品「踏切」(宍倉さとし)、の引用に際しては、著者や出版社などから事前の許諾を得ていませんが、引用先を明示していること、商業目的ではないこと、そして、論考への引用であることをもって、格段のご高配のほどいただければ幸いです(文中、敬称略)。

2026/9/7





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