少年詩時評『からだ その7「あたま―くち(口)�B』 佐藤重男
□ 今回は、少年詩の中の、「くち(口)」の役割の中でも「ことばを話す」に並んで大切な「食べる」について、見てみようと思います。 いつものようにタイトルに登場する「食べる」です。 * たべるかな 内田麟太郎「きんじょのきんぎょ」理論社 06.9 とらは/とらふぐ たべるかな 食べる 三上緑「いつか会った風に」四季の森社 13.1 しょうゆをかけて/もくもくと 食べる 梨を食べる 原国子「小鳥のしらせ」銀の鈴社 07.10 おかあさんと ふたりで/さりさりと 夢をたべる いとうゆうこ「ほんとのなまえ」てらいんく 21.2 ゆうくんは夢だって/まるごとたべちゃうんだよ/くいしんぼだから 芋を食べる前の演説 小林育子「カバになれたら」鳥語社 06.4 では/食うぞ 以上、5編見つかりました。 □ 続いて、作品の中に登場する「食べ(る)」です。たくさんあります。(たべる、食う、などは省きました) * では、一覧表を掲げます(読み飛ばしても構いません)。 「あー」 土屋律子「るすばんカレー」銀の鈴社 05.12 朝ごはん/もくもく/食べている お兄ちゃん 生きる 紀の崎茜「ちきゅうぼし」らくだ出版 12.11 生きるために/生きものを食べる いちご 小野ルミ「半分かけたお月さま」かど創房 77.8 巨人になって/ぼくが 食べる お山 うめぼし 山本純子「きつねうどんをたべるとき」ふらんす堂 18.10 うめぼしを食べるとき/を/思い浮かべると もったいないおばけ 田沢節子「わき水ぷっくん」銀の鈴社 17.7 おばあちゃんのことばに 弱いぼく/残したおかずを 急いで食べる 青虫 牛尾良子「庭のおしゃべり」銀の鈴社 06.12 あさひをあびて/ごちそう食べた/肥っちょ 肥っちょ 青虫さん 冬の朝 小林雅子「青銅の洗面器」四季の森社 11.12 微生物たちに/食べつくされるだろう アデリア 冨岡みち「かぞえられへん ごせんぞさん」銀の鈴社 03.11 遠くから 二十キロの水を/頭にのせて 三回はこぶ/少しの食べもの もらうため あの日のように 真田亀久代「まいごのひと」かど創房 92.9 太平洋戦争は終わっていた//食べものは少なくて/みんなおなかをすかせ ていたけれど/おだやかな日はかえってきていた 宮沢憲治ノ詩ノヨウニ 星野良一「星のこえ、星の子へ」銀の鈴社 22.12 食ベ過ギ飲ミ過ギソノ後デ/トッテモイイ詩ガ書ケルナラ 生きる 長野貴子「星座の散歩」銀の鈴社 09.12 ぼくの心の中の ずる虫を/みんなみんな 食べちゃって 生きている 林佐知子「この空につなんがる」銀の鈴社 13.6 自分のふとんで眠れる/湯気の立つごはんが食べれる いちごわかれ 鶴岡千代子「白いクジャク」銀の鈴社 84 つぶつぶあまい実 すっぱい実/むちゅうで食べてる 小さい手 いつか 牛尾良子「庭のおしゃべり」銀の鈴社 06.12 いつも 一羽で えさ台の/ひまわりの種 食べている 犬が 小泉周二「こもりうた」銀の鈴社 913 犬が空を食べている/せんべいといっしょに いのしし 秋原秀夫「地球のうた」銀の鈴社 93.7 なんでも食べて/自由に生きています いのちあってこそ 土屋律子「コピーロボット」銀の鈴社 20.5 きれいな お花/見つめてる/おいしいごはん/食べている いのちは元気 人見敬子「方舟地球号」07.11 グレープフルーツ 食べたとき/芽の出た種を 見つけたよ 白い虜 西沢杏子「さくら貝とプリズム」銀の鈴社 21.4 いつも独りでりんごを食べにくる/ツグミの羽根の色だったよ。 とうさんの歌 小松静江「古自転車のバットマン」銀の鈴社 94.3 とうさんはしょうちゅうをのんで/わたしはおでんを食べた 運命 ちよはらまちこ「パリパリサラダ」銀の鈴社 93.7 猫はいい/きのう食べ残したものを思い出さなくていい ある日のおやつ 井上灯美子「ことばのくさり」銀の鈴社 03.7 すわりなおして 正座して/フォークできちんと 食べた! * 悲しみ はたちよしこ「また すぐに会えるから」大日本図書 00.1 食べて ミルクをださなければ/あかんぼうは 生きていけない/けれど カマキリ 井上一枝「銀の半月」てらいんく 12.5 あっ/夕べ、食べちゃった カマキリ 武鹿悦子「星」岩崎書店 13.4 食べて/食べて/恥までも涙までも食べ尽くして 神様 星野良一「星の声、星の子へ」銀の鈴社 神様はおなかがへらないから/ごはんを食べたことがない カメレオン 土田明子「カメレオン、動物たち」かど創房 86.5 みどり色のカメレオン/お月さまを食べたくて/空を見た るすばんカレー 土屋律子「るすばんカレー」銀の鈴社 05.12 るすばんするババと/パパも好きなカレーを食べる 木の芽 すぎもとれいこ「ちょっといいこと あったとき」銀の鈴社 04.7 太陽吸って/風食べて/ぐーんと伸びる 着物 白石はるみ「風のシンフォニー」てらいんく 06.9 戦争で疎開してきて/食べ物に困ったとき 登校拒否 長野貴子「星座の散歩」銀の鈴社 仮病をつかって休んだ/お昼までねて/ごはんを食べていたら キリンの詩 小黒恵子「モンキーパズル」銀の鈴社 86.7 キリンが 食べる/みつめて 食べる 歩く くじら 青戸かいち「小さな さようなら」銀の鈴社 99.9 大きな口で 陸の上/なにを食べて いたのかな 雲の魔術師 鈴木美智子「龍のとぶ村」銀の鈴社 92.12 かもしかたちは/野山で 鈴なりの木の実を食べる 飛行機雲 畑中圭一「木と風と空のうた」鳥語社 03.5 「氷しか食べられないの」/という 最期のうったえが/いまも 耳から はなれない 煙 江崎マス子「幼い日の万華鏡」てらいんく 04.6 疲れたときや おやつを食べたいときには/平たい岩場で休みます 五月の雨になりたい 坂本京子「やわらかなこころ」てらいんく 09.2 みかんの葉を食べる青虫の/みどりの背中をなでてゆきたい はみ出せこころ 谷川俊太郎「すき」理論社 06.5 おいしい今日を/みんなで食べる 帰ってきた心 中村多津子「ジャガイモの恋」てらいんく 11.1 愛情のいっぱい入っているカレーを食べて/自分の心を取り戻した こわい食卓 小野ルミ「ゆきふるるん」銀の鈴社 89.12 食べている手元を/じっと見ている/舌びらめ * ざくろ 鈴木初江「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 21.4 食べても/はじめ/すっぱく サラダ 清野公彦「あした 晴れるといいね」らくだ出版 19.11 ぼくは君と/サラダを食べながら つぼみサラダ 島村木綿子「森のたまご」銀の鈴社 01.4 ほかほかの/つぼみサラダを食べている さんま 中村多津子「ジャガイモの恋」てらいんく 11.1 複雑なパズルを解くように/食べている 時間 木村信子「もうだいじょうぶだから」大日本図書 00.2 あとからあとから/時間が/わたしを食べる しもばしら 林佐知子「春はどどど」銀の鈴社 10.7 かき氷/ざくざく/食べた夏 食事 秋原秀夫「風の記憶」銀の鈴社 85.12 できるだけ長い時間をかけて/食べようとした 処方箋 山本純子「きつねうどんをたべるとき」ふらんす堂 18.10 大人になったら/おやつを/好きなだけ食べよう きみは知ってますか 山内弘子「花の旅人」銀の鈴社 きみに知って欲しい/大切な食べ物のことを/食べられる幸せのことを 進学 修一 石井英行「野原くん」銀の鈴社 15.8 給食も食べない/遊ばない/ どでかい鳥の巣 鈴木初江「はねだしの百合」銀の鈴社 99.4 こうばしいぶなの実を/しごいて食べる 好きってどんな気持ち 楠木しげお「カワウソの帽子」銀の鈴社 78.11 食べにおいでと まっさきに/よんてせあげたくなる…気持ち スプーン 山本純子「チョコレート」四季の森社 21.10 緑色のゼリーを食べながら/ぼおーっ と/スプーンをながめたら 蝉 木下和枝「蓮華草」てらいんく 08.5 まんまるスイカを 冷やして食べる 青銅の洗面器 小林雅子「青銅の洗面器」四季の森社 11.12 地面にまかれたエサを食べていたクンは ぞうの時間 宮入黎子「春のトランペット」銀の鈴社 93.3 ゆっくり 食べた そのあとは/水を ふきあげ/虹を とばして あそん でる 空 山崎るり子「いっぱい生きる」四季の森社 25.5 ムクドリに食べられる前にね * 体重計はないしょ 中村多津子「ジャガイモの恋」てらいんく 11.1 もうお腹いっぱい/遺してごめん/また明日食べるは * 忘れていなかった臭い 白根厚子「青い石」竹林館 21.6 東京大空襲で家族を亡くし 残された子どもたちは、/食べるために盗みを した 日曜日の食卓 日友靖子「猫曜日だから」銀の鈴社 87.9 上のお兄ちゃんが生れたときに植えた/(こどもの夢の木)のそばで食べよ うね ある日曜日 新川和江「星のおしごと」大日本図書 91.4 ピザをいちまい 食べただけ/葉書をいちまい 書いただけ にわとり 成本和子「生まれておいで」銀の鈴社 94.12 くるみ色にやけた/フライドチキンを食べた/給食の時間に 願い 星野良一「星の声、星の子へ」銀の鈴社 22.12 黒い虫たち葉を食べる/君の周りで食べている のはら 山崎るり子「いっぱい生きている」四季の森社 25.5 卵からかえつた/バッタの子どもたち/ぐんぐん育った草を食べる/ワシワ シ ワシワシ * 葉っぱ 牛尾良子「庭のおしゃべり」銀の鈴社 06.12 サンショウの葉を/たくさん食べて大きくなり/やがて/クロアゲハやキアゲ ハになって 春 金錦玉「いちど消えたものは」てらいんく 落葉の中をがさごそ リスが/木の実を食べながら とうもろこしのハーモニカ 土屋律子「まほうのくつ」銀の鈴社 15.6 むしゃ むしゃ/食べていたら/ハーモニカ/ふいているきぶん ひばり 水上不二「ぼくは地球の船長だ」銀の鈴社 06.8 ひはりは天のちりを食べ/日に何千の虫をとる びわの実 大岳美帆「野いちごをさがしに」04.11 だれが食べてもいいように/びわの実をむいたよ/熟れた実を ふと 山本純子「あまのがわ」花神社 04.3 どうしたわけか/あんたりんごあめを食べただろう/と言う おなかへった 林佐知子「天にまっしぐら」銀の鈴社 08.5 ごちそうさま/と いいたいが/食べたんだか/食べないんだか 返事 鈴木初江「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 21.4 ―ただいまあ/―おやつ 食べよっか * 豆 アーサー・ビナード「ゴミの日」理論社 08.7 世界中の人がほおばってもむ/食べきれないくらいの/豆腐の一丁ができ あがるだろう 道 高崎乃理子「妖精の好きな木」かど創房98.12 羊の群れが/ひつじ飼いにおわれて草原をゆく/草を食べ食べ 休みなが ら もしも 秋葉てる代「ハープムーンの夜に」銀の鈴社 87.11 なんでもだせる/ハンカチや/食べてもへらない チョコレート * やまんば 原国子「ゆうべのうちに」銀の鈴社 95.11 口が耳まで さけているいて/旅人を見つけちゃ 食べたとさ ざくろとやまんば 松山真子「だれも 知らない 葉の下のこと」 四季の森社 20.5 旅人をだまして/食べようとしたり 夕暮れ 西沢杏子「ズレる?」てらいんく 05.8 青虫が葉っぱを食べながら・/黒いうんちを一粒落とす・ 夕やけ 江崎マス子「遠い日の万華鏡」てらいんく 04.6 私は 葉っぱの皿に盛りつけていた草花を/「ばあちゃんも食べらは る?」/さしだしました おいしい夕焼け いとうゆうこ「おひさまのパレット」てらいんく 06.10 みんな/食べちゃっていいよ/夕焼けを 夢 みずかみさやか「五月の空のように」銀の鈴社 16.12 冬はくま/おいしいものをいっぱい食べて 春の夜 坂本京子「やわらかなこころ」てらいんく09.12 食卓のまんなかに かざって/夕はごはんを食べた りんご 星野良一「星の声。星の子へ」銀の鈴社 22.12 お仏壇に/供えたりんこせかせ/いつまでたってつても/食べられないのは 福島りんご 鈴木初江「めぐりめぐる水うた」 ―よかったら食べて/放射能検査パスしてるから/って小さな声
□ ご覧のように、「食べ(る)」は、戦争や災害など、極限の状況に追い込まれたときに、もっとも強い言葉として詩編の中に登場するようです。 いくつか、全部を引いてみます。 *
アデリア 冨岡みち
モザンビークのアデリアは わらってる 教室は 空の下の木かげ 砂のノートに 小枝のペンで 勉強するのが すきだから
八歳になるアデリアは 泣きません 遠くから 二十キロの水を 頭にのせて 三回はこぶ 少しの食べもの もらうため
ひとりぼっちのアデリアは ねむってる 戦争で パパもママも死んだ ドアのない小屋 やぶれた毛布 きいろい月が てらしてる
かぞえられへん せんぞさん」銀の鈴社 03・11
あの日のように 真田亀久代
太平洋戦争は終わっていた うち中でいなかの村に住んでいた 食べものは少なくて みんなおなかをすかせていたけれど おだやかな日はかえって来ていた
たかちゃんは五歳 野原をかけながら 耳に小菊の花をさして ちょうちょうを呼ぶのだといっていた
けいちゃんは五年生 折れた「かきつばた」に 「あやめ」のはっぱで ほうたいをしてあげていた
のぶちゃんは四歳 ひるまの空をあおいで 「お星さまのおうちは 空のもっとむこうでしょ? お星さまもごはんをたべるの?」 と、きいていた
ようちゃんは六年生 きょうだいのことをいたわって お母さんに報告する やさしい記者の役目をしていた
ああ、ベトナムの子どもたちにも あんなしずかな日をあげたい 早く戦争を終わらせなければならない
「まいごのひと」かど創房 92.9
悲しみ はたち よしこ
戦争があった国 なにもかも 失った人たちが 食物を求めて 集まってくる映像が 写し出された
あかんぼうを 抱き 小さな男の子の手を引いた母親がいる
分け与えられる わずかな食料から うばい合うようにして 手に入れた一切れのベーコン 母親は とられないように いそいで口に入れた
食べて ミルクをださなければ あかんぼうは 生きていけない
けれど 手を引いていた男の子が くいいるように見ているのに 気づくと 母親は 口からベーコンをだして 男の子に食べさせた
男の子も 母親の目にも 悲しみが あふれていた
映像は 変わり 平和な 風景が流れた
子どもたちの 笑い声が きこえる
「また すぐに会えるから」大日本図書 00・1
きみは知ってますか 山内 弘子
知ってますか きみ お腹をすかしている友を きみと同じ 同じ年齢の この地球に生れた友を
知ってますか きみ 世界のどこかで待っている 食べ物を待っている 悲しい顔をした子どもたちを
きみに知って欲しい きみに知って欲しい 大切な食べ物のことを 食べられる幸せのことを
「花の旅人」銀の鈴社 07.3
忘れていなかった臭い 白根 厚子
戦後75年を経た BS1アーカイブで「戦争孤児」をやっていた 東京大空襲で家族を亡くし残された子どもたちは、 食べるために盗みをした 人間の生は、食べることを欠かせない そんな子どもたちが、浮浪児狩りと、称して 鉄格子の中に入れられた 何故、鉄格子の中に入れられたのだろうか 人の物を盗むことが犯罪としたら、 戦争で、父、母を殺され、家を焼かれ 行き場のない孤児たちは、 何を保障されるのだろうか どこに保護されるのだろうか 狩られた孤児たちは、お腹を空かし 鉄格子の中でふるえている
夜明けの上の駅は、静かだった 浮浪児がいたあたりから あの匂いがしてくる 忘れられない匂いだ 東京は少しずつ復興していたが 臭いは、そのままだった
築地は母の実家、バスで通りかかったとき 華やかだった 歌舞伎座は、焼かれたままだった わたしは、焼け焦げた歌舞伎座を見ながら ここも燃えたんだと思った
ふと、遠くから聞こえてくる 神楽の音赤獅子、白獅子は 頭をふりかざしてやってくる
どんつくどん どんつくどん どんつく どんつく どんつくどん
うなり声をあげ してはならぬ してはならぬ 戦い いくさはしてはならぬのだ 獅子の舞が佳境になるにしたがって 頭をふりまわし ふりまわし 戦 いくさは してはならぬのだ してはならぬのだ と……
「青い石」竹林館 2021.6
福島のりんご 鈴木初江
りんごがきた
毎年やってくる おばちゃんちのりんご 大きいの小さいの 見た目はばらばらだけど どれもつやつやいい香り 味も安心も世界一
今年はちょっとちがった こそっとかたをよせあい 赤いほっぺをうつむけて ―よかったら食べて 放射能検査バスしてるから って小さな声
どうしたの りんご わたし 待っていたよ そんな顔しないで いつものように笑ってよ
きゅっきゅっとみがいて かりりっとかじる
甘い蜜 じゅわっ こんなにおいしいのに ちっとも変わらないのに
おばちゃん りんごの木 切らないで
あのりんご畑に また遊びに行く
「めぐりめぐる水のうた」銀の鈴社 2021.4
□ 鈴木初江「福島りんご」は、食べる側にとっての食べることの尊さ、それを生産する人たちの生活が一瞬にして壊されてしまったことを告発しているのではないでしょうか。それも、原発事故という人災によって。 そういう意味では、戦争も人災であるとするならば、同じ線上にある問題として受け止めていいように思います。 * ところで、「食物連鎖」ということばがあり、それは自然界の摂理なのだ、そして科学的にも正しい、と教えられてきましたが、それに対して、「食物連鎖=自然の摂理」という考えは何かが違う、実はわたしたちに知られてはならない何か、いうところの「不都合な真実」が隠されているのに違いない、そんな問題関心から異議の声をあげているのは、金子みすゞばかりではなく、次の作品などたくさんあります。
生きる 紀の崎茜
生きるために 生きものを食べる
精進料理を食べて いっしょに 生きてゆくという宿命も食べ
だから 冷蔵庫の中は 生きものの心の死骸がいっぱい
「ちきゅうぼし」らくだ出版 12.11
にわとり 成本和子
くるみ色にやけた フライドチキンを食べた 給食の時間に
みんな手に持って食べた だれかの口のなか カリッと骨をかむ音がした
なぜかしら わたしの足が きゅっと痛い
なぜかしら わたしを見つめる にわとりの眼がみえる
にわとりさん だれかに食べられるために 生まれてきたの?
ほんとうは ほこほこほの黒土を足でけって おいしいみみずをさがしたかったの?
ほんとうは ふわふわの胸のなかで かわいい雛を育てたかったの?
わたしは たずねた お皿の上に残った 細い細い骨に
「生まれておいで」銀の鈴社 94.12
□ 「食物連鎖=自然の摂理」の��正体�≠ェなんであるかを見事に言い当てているものもあります。…著者の意図とは別に、ですが。
やまんば 原国子
ストーブ とろとろ燃えていて おかあさんの おばあさん ひいばあさんの おはなしよ
むかし むかし 山奥に こわい山んば住んでいた 口が耳まで さけていて 旅人みつけちゃ 食べたとさ 頭のほうから がぶがぶと
あるとき かしこい旅人が お鍋をかぶって行ったとさ よだれたらたら 山んばは 旅人追いかけ つかまえて がぶりとお鍋に かみついて ひゃあー 前歯が折れたとさ
こわいお話 まだつづく 山んばみたいな ひいばあさん 外はこがらし吹いている
「ゆうべのうちに」銀の鈴社 1995.11
ざくろとやまんば 松山真子
すべすべごそごその皮から まっ赤な実がこぼれそう やまんばのような 大きなぎざぎざの歯……
むかしは ここにもいたやまんばが 岩屋に住んで 子どもを育て 田植えの忙しいときには 人の家の早乙女にまじって手伝いをしたり
ときには 旅人をだまして 食べようとしたり
ざくろのような ぎざぎざの歯で いいことも悪いこともいっぱいしてきた
いま やまんばは ざくろの実になって 木の上から通る人をながめている
「だれも 知らない 葉の下のこと」四季の森社 20.5
「やまんば」は、少年詩に限らずその多くは、人間を襲って食べる��悪役�≠ニして登場します。ここにこそ、「食物連鎖=自然の摂理」の正体が「人間中心」の思考から生まれたものだ、ということが端的に表意されている気がします。松山真子「ざくろとやまんば」の中、 岩屋に住んで 子どもを育て 田植えの忙しいときには 人の家の早乙女にまじって手伝いをしたり
の一節は、その、人間中心の不条理さを皮肉をこめてチクリと一刺ししているのではないでしょうか。
□ その他、少年詩の王道とも言える、名もなき小さな生き物たちへの、慈しみの眼差しが読み取れる作品もたくさんありますが、詳しくは割愛させていただきます。気になる方は、ぜひ、冒頭に掲げた一覧に目を通してみてください。 次回は、「耳」について考察を予定しています。
― この項 続く ―
いつものことですが、詩集名や新聞記事などの引用あたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。 また、作品「アデリア」「あの日のように」「悲しみ」「きみは知ってますか」「忘れていなかった臭い」「ふくは島りんご」、そして「生きる」「にわとり」、やまんば」「ざくろとやまんば」などの全文引用に際しては、著者、発行所などから事前の許諾を得ていませんが、引用先を明示していること、論考への引用であること、そして、商業目的ではないことなどをもって、関係各位の格段のご高配のほどいただければ幸いです。(文中、敬称略)
2026/10/30 |