少年詩時評『きょう8月15日は敗戦の日』 佐藤重男
□ きょう8月15日は敗戦の日です。 「終戦」ではなく、あえて「敗戦」という言葉を使いたいと思います。
□ わたしたち少年詩も、これまでたくさんの戦争に関わる詩を書いてきています。 そして、これからも書き続けて行きます。 きょうは、多くの戦争詩のなかから、次の作品を引くことにします。
海へ 重清良吉 ――八月十五日に――
――敗戦 動員さきの兵器工場から 逃げるような帰郷のとちゅう ふるさとが近くになって 汽車は不通だった
重い荷をかかえて 夜どおし なかまと 海ぞいのがけ道を歩いた
のぼり坂がつづいて とうとうへたばった そしてぼくらは やっと気づいたのだ がけから まっさかさま 戦争のこの荷物をすててしまえば すぐに らくになれるのだと―― けもののさけびといっしょに つぎつぎ とんだ ほえてもほえても たりなかった 声がかれると ――泣いた
トランクやリュックや ぼくらが荷物をすてたように 人間をすてた人もいる ふるさとが遠いから ねているわが子を 異国にそっとおいてきた親がいる 海のむこうふるさとはあまりに遠いから われとわが身を がけからすてた親もいる 子をだいて――
荷物や 人間や戦争を わられは すてた 海は母のように いつも歴史を抱擁する けれど風のつらい晩は かかえているものが重すぎるから 海はうめくのだ 平和にねむる われのら戸の外で… 海はおぼえている 忘れるのは海ではない
『草の上』銀の鈴社 96.7
□ ラストの1行、「忘れるのは海ではない」のひとことの、なんと重いことでしょう。 熊本地震の被災地を機上から眺め、手を合わせる動画を配信する、あの権力者のなんと非礼で、傲慢なことか。 あの人に、「忘れるのは海ではない」の悲痛な思いが届くでしょうか。
― この項 完 ―
いつものことですが、引用あたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。また、作品「海へ」(重清良吉)、の引用に際しては、著者や出版社などから許諾を得ていませんが、引用先を明示していること、商業目的ではないこと、そして、論考への引用であることをもって、格段のご高配のほどいただければ幸いです(文中、敬称略)。
2026/8/15 |