★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2021/10/28|その他
● 天使の溜め息 ● 「男と女の風景 186」
 
             2021年10月28日(木) 00:00時 更新

    草花たちのレポート

 今回も、秋の風情を感じる3枚を紹介します。
 
  ≪写真・左・・コヌカグサ
 この草の毅然として立つ見事さに見惚れて、写真を撮りましたが、名前が不明でした。
 そこで、ふと≪イネ科≫で調べてみたら、≪小糠草≫だと判りました。これは、ヨーロッパ原産のイネ科の雑草だそうです。
 
  写真・中・・不明≫
 これは、この秋という季節に、珍しくも花が咲いた木だと思われます。
 なにしろ初めて見るものであり、この肌色の花枝は新芽だと思われますが、高さの幅が5メートルはあります。
 さて、どんな実が成るのでしょうか。
 
  ≪写真・右・・ツタ
 これは我が家の近くにある廃屋に、ツタが絡まった風景です。屋根のツタは、もう紅葉が始まっているようです。

 かつては、ここに住んだ主がいて、生活をしていたはずです
 世の中、高齢化が進み、少子化が進んで、後を継ぐべき子供達が、生活の拠点を移したのでしょう。
 我が二宮では、もう40年も前に、大規模な団地が開発されました。
 しかし、時の経過と共に高齢化が進んで、子供達の世話を受けるために転居して、今は空室でガラガラだそうです。
 これも、世の移ろいなのですかね。
 

 
                       「男と女の風景 186」
  ● 天使の溜め息 ●
 
「理香子さん、僕の血液型、なにか判りますか」
「多分、AB型ですよ」 
「エッ、ズバリですよ。でも、なぜ判ったの・・」
「ええ、そういう質問をする人は、たいがいAB型なんです」
 岡田雄介は、驚くと同時に、そういうものかと妙に納得した。
――それにしても、この女、切れるな。
 雄介は、理香子と話すのは初めてだったが、改めて見直してしまった。
 
 雄介がこのトンカツの店≪かずカツ≫には、先輩に連れられて1ヶ月前のランチ時に来たのだった。
 店の名前に≪かず≫が付くのは、女将の名前がが≪和美≫だからとのこと。
 そしてその後、先週来た時に、美味しいブタ肉の煮込みと串カツをオツマミにした晩酌セットが、当店自慢のウリだと聞いた。
 しかも、壁の張り紙によれば、それが格安の500円というのを確認して、今夜は勇躍して来店したのだ。
 ランチの時は、お手伝いのオバサンがいたが、今宵は同じエプロン姿とはいえ、実の娘だと言う若い理香子が配膳をしていた。

 そして、その理香子は小顔で、目鼻立ちがスッキリとした美人だった。しかもスラッとしていて、雄介の好みのタイプだった。
 夜は8時の閉店だが、30分前に滑り込んだ雄介は、カウンターの隅に座り込むと、ビールのセットを注文した。
 その席はキャシャ―の前で、担当する理香子が「はい、有難うございます」と注文に応えていた。
 
 店内で働く理香子は、テキパキとして、客とは陽気に笑顔で会話をしながら、世話を焼くようにサービスに務めていた。
 そんな様子を見ていた雄介は、あの陽気で人当たりがいいのは、多分O型だろうと直感した。
 しかし、よく観察していると、客の注文には気配りをしながらも、一歩引いている様子が窺えた。
――あの控え目なのは、Oの入ったA型かも・・。
  女将が多分、明るいOの入ったA型だから・・。
  そういう面では、親子で共通しているのかも・・。
 雄介は、そんなことを自分なりに分析をしていた。
 だから、サービスを終えてひと息入れている理香子に、「君の血液型は、A型でしょう」と言ったのだ。
 すると、「やっぱり、そう見えますか。アタリです」とのことだった。
 それに気を良くして、自分のことを聞いたのだが、それこそズバリAB型だと、理香子は言い当てたのだ。
 AB型は判りづらいはずだがと、祐介は驚きの余り、返す言葉がなかった。
 
 そして、8時を迎える頃には、他の客は帰り、雄介だけが取り残された。
「理香ちゃん、あなたお腹が空いてるんでしょ。暖簾を取り込んだら、岡田さんの隣りで、食事をしたら・・」
「ああ、ビールを一杯、飲みたいな。岡田さん、いいですか」
「ええ、どうぞ。遠慮なく・・。でも、向こうのテーブル席の方が・・」
「アッ、そうですね」
「ママの夕食は、どうするの・・」
「アッ、向こうに移るなら、一緒で・・」
 そんな流れから、三人で同じテーブルを囲むことになった。
 女将が、ビールとにカツライスを出してくると、美香子はさっそくビールをグイッと飲んだ。
「でも、この肉の煮込み、美味しいですね。味付けが薄味で、ブタ肉の甘みと風味がよく出てますよ」
「そうでしょ。ショウガと薄口醤油、それに砂糖の甘みを、少し加えて・・」
「この味だと、飽きがこないですよ」
 雄介は、変な褒め方をしたのではなく、素直な感想を言ったのだ。
 
「ところで、理香子さん、あなたとは、初対面ですよね」
「はい、私、東京まで通う会社員でして・・。今日はお手伝いで・・」
――ああ、OLか・・。
  そうだよな。しっかりしてるし、頭が切れそうだし・・。
「僕の勤め先は、藤沢市役所でね。この店のランチは先輩のお供で・・」
「ああ、クチコミなんですか」
 そんな二人の話を聞きながら、女将が、「これは、お昼の残り物よ」と独り言を言いながら、カツライスを食べ始めた。
 
「でも、当店のカツライスは、確かに美味しいですよ」
 すると、女将が「うちはね、高座ブタを使ってるので・・」と、自慢げに言った。
「ああ、あのブランド肉ですか」
「ええ、私の親戚から、特別に安く仕入れましてね」
「それでか・・。肉質がきめ細かくて、脂肪が上質で、食感がジューシーなんだな」
 雄介は、あくまでも率直な感想を言っていた。
 
 すると雄介は、ジョッキに残ったビールを飲みながら、ふと昔のことを思い出した。
「ところで、女将さん、5年ぐらい前、この店に来たことがあるんですが、あの時は、確かホルモン焼きの店だったような気がするけど・・」
「ええ、そうでしたね」
「あの時は、ご夫婦が並んで焼いてましたよね。ただ、今の女将さんだったか、どうかは、判りませんけど・・」
 するとそれまで陽気だった女将が、ふと顔を曇らせてしまった。
 そんな様子を見て、「僕も、ビールをもうワン・セット欲しいな」と注文した。
「もう、閉店だけど、岡田さんだから、まぁいいか」
 すると理香子が、私が準備するからと、席を立った。
 店内を見回せば、もう他には客がいなくて、身内のアットホームな雰囲気になっていた。
 
「岡田さん、実は、あの当時の主人とは、もう別れたんです」
 それを聞いた岡田は、身を縮めて「アア・・、そうですか。余計なことを言って、すみませんでした」と詫びた。
「いいえ、それを知る常連さんはいるのに、皆さん、その話は避けてくれるんです。それが嬉しいような、寂しいような」
「エッ、寂しいとは・・」
「ええ、私の辛い気持を判って欲しいな、って・・」
「そうですか」
 女将は、小娘のように両手を合わせてシナをつくった。
「僕は、アドバイスは出来ませんけど、寂しさを共有はしますよ」
 女将は、「そう、それですよ」と、ホッとしている。
 そこに、理香子が、ビールのジョッキと串揚げのセットを持ってきた
 
「ええ、実は僕の妹が、結婚直前で破棄されてね、強烈なショックを受けたんです。その時に、父から、黙ったままでもいいから、ずっと傍にいてやれ、って言われました」
「岡田さん、それって、どういう意味ですか」
 母とのやり取りを聞いていた理香子が、遠慮がちに割り込んで来た。
「ウン、父によれば、≪愛は、優しさだ≫って言うんだ。漢字で書くと、優しいという字は、憂いのある人がいて、その左の傍にニンベンが付いてるでしょ。そのニンベンの人が優しいんだ、って・・」
「エッ、そういう意味ですか」
 理香子は、ドキッとして、自分が母親にしてきたことが罪深かったのに気付いた
「ああ・・、私はダメでしたね。ええ、あの事件の時は、内心では、喧嘩両成敗だなんて知らんフリをして・・、ええ、母を突き放して・・」
「理香子、もういいのよ。終わったことだから・・」
「でも、ごめんなさい。私、優しくなります」
 しおらしく、頭を下げる理香子を見て、雄介は気持を楽にさせてあげた。
「マァ、どんな喧嘩でも、両成敗なんだけど、さ。悲しい人の側に立ってやること、それが優しさかもね」
 しかし、そんな話題に振り回されて、結局はオカミの悲しい胸の裡は吐露されないままに終わってしまった。
 
「ああ、美味しかったな。チェックを・・」
 雄介は皆が食べ終わるのを見計らって、そう声を掛けると、小さなバッグを取り出した。
「さぁて、今日は気分がいいから、もう一軒、行くかな・・」
 雄介は、そうつぶやくと、チラッと美香子に目を遣った。
 すると、以心伝心なのか、目と目が合ってしまった。
「アッ、君は、どう・・」
「アア・・、いいですね。週末だから、たまには飲みたいですね・・」
「美華子、後片付けはいいから・・」
 オカミは、雄介に好意を持っていたから、むしろ後押しをしているようだった。
 
 それから、雄介は久々にいつものスナック≪A≫に、美香子を連れて行った。
 店は混んでいなかったが、突然「オー、来た来た。雄介が来たよ」と,男の歓声が上がった。
 見れば、数年前まで、この店でワイワイやっていた仲間の近藤だった。
「オー、久しぶりだな。なに、今日は広島から・・」
「そう、東京に出張したんでね」
 近藤は、ある会社の東京本社にいたが、地元の広島支店を希望して、転勤をしていったのだった。
「でも雄介、こんな美人を連れてるなんて・・」
「アッ、紹介するよ。そこのトンカツの店≪かずカツ≫の娘さん。ママは知ってるでしょ」
「ええ、あの美味しいトンカツのお店でしょ。でも、娘さんがいるとは・・」
「はい私、美香子と言いますが、東京まで通勤してるOLでして・・」
 ママは、納得とばかりに頷きながらも、じっと美香子を見詰めている。
「しかし、すごい美人だよな」
「イヤァ、偶然だよ。その店は今日で3回目だし、初めて夜に行ったら、この美人がいて・・。女将と3人で食事をして、もう一軒行くけど、どうって、誘ったら、OKだったんだ」
「では、女将のお墨付きなんだ」
 そんな流れだったが、美香子は人見知りをするのか、陽気に酔った近藤の勢いに押されて引いてしまっていた。
 雄介は、「さて、水割りでいいかな」と美香子に確かめてから、注文した。
 そして、出来上がると、再会を祝して3人で乾杯をした。
 
「オイ近藤、広島でいい人見つけたか・・」
「イヤァ、こんな美人いないしな。アッ、そうだ。東京土産で、この人を連れて帰るかな」
 かなり真顔で言う近藤を見て、美香子は思わず「プッ」と吹き出すと、慌てて口元を抑えている。
「ほら見ろ、あらぬことを言うから、笑われたぞ」
「イヤァ、半分は本気だったんだ」
「ああ、一目惚れか。実は、オレもそうだったんだ」
 すると二人は、お互いに指を差しながらおどけて、笑い合っている。
 
「ところで、君、大学は・・」
「ええ、横国(ヨココク)の経営です」
 雄介には判ったが、広島出身の近藤には判らずに、首をかしげている。
「はい、正式には横浜国立大で、奨学金をもらって・・」
「ほう、すごいね」
 雄介は、美香子が優秀なのは判ったし、母が働くカツ屋では、奨学金はもっともかなと思った。
「それで、経営学部は、仕事ではどういう面で・・」
「ええ、当社は現在、定年が60才なんです。でも,再雇用をするにあたって、     本人の技能の活用度について、所属の部長からマーケット・リサーチの技法で調査中です」
「マァ、確かに全員が一律で定年延長では、職場も本人にもいいかどうか・・」
「フーン、面白いことをやってるね。では、結婚なんて、先の先だな」
 改めてそう言われて、美香子は、結婚のことなど考えてもいなかったから、予期せぬ問いかけに、「フーン」と考え込んでしまった。
――でも私は、一生結婚しないよ。
  母と一緒に暮らして、最後を見届けるのが、私の使命だから・・。
  ああ・・、でも、お母さんは雄介さんがご推薦なのよね。
  確かに誠実で、明るくて素敵な人柄だし・・、
  そう、好きなタイプだよ。
  さぁて、どうするかな。
 理香子は、一生独身と決めていたが、最近になって気持が揺らいでいた。
 それは、雄介に惚れこんだ母親が、さり気なく誘導したお蔭で、女の幸せを考え始めたからだ。
 
                          ― つづく ―
 
 
 





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