★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2021/10/21|その他
● 孤愁の二人 ●「男と女の風景 185」
 
              2021年10月21日(木) 00:00時 更新

    草花たちのレポート

 今回は、秋の風情を感じる3枚を紹介します。
 
  ≪写真・左・・不明
 秋の青空を背景にして、紅葉が始まった木の様子です。
 多分、この木は、あの天麩羅にしたら美味しい≪タラの芽≫、そのタラの木ではないかと・・。
 
  写真・中・・ススキ≫
 これは、JR東海道の二宮駅に近い土手の斜面に密生していたススキです。
 いかにも秋を感じさせる風景ですよね。
 
  ≪写真・右・・小魚
 この写真では見ずらいのですが、東海大・大磯病院に近い小川の岸辺です。
 実は、この水中に15匹ほどの細身の小魚が群れを成して、日向ぼっこをしているのです。多分、アユではなくて,ハヤだと思います。

 ネットで調べると、≪ハヤは、日本にいるコイ科の淡水魚のうち、中型で細長い体型の魚をさす総称≫とのこと、です。
 
                      「男と女の風景 185」
                   ― つづき・2 ―

    ● 孤愁の二人 ●
 
 その日の夕刻、本田浩一郎と柿沼紗香(サヤカ)は、連絡を取り合って同じ電車で藤沢に行くことにした。
 紗香が長谷駅で乗ってから、10分後に海岸公園駅に着く電車で、二人は合流した。
 終点の改札に近い1号車に乗ると、紗香が運転席を背にして手を振っていた。 
 見れば、足腰にぴったりとした細身のジーンズを履いて、赤いジャンバーを羽織っていた。紗香は長身だけに、足のスリムさが際立って見えた。
 そして、黒の短いブーツを履いて、いかにも軽やかだった。
  二人は近づくと、笑顔で握手を交わした。
「柿沼さん、そのジーンズ・スタイル、カッコいいし、似合ってますよ」
「アラ、あなたもよ」
 浩一郎もジーンズだったが、紺縞のワイシャツにジーンズのベストを着ていて、しかもブルーのジャンバーは腰に巻いていた。
 二人は、共にジーンズの軽装にしようと決めていたのだ。
 
「今日は、先ず焼き鳥屋から案内しますけど・・」
「ええ、今夜は、すべてお任せします。でも、この車窓の景色、懐かしいな」
「ということは、昔、この電車によく乗っていた、ということ・・」
「そう、私、湘南高校だったから・・、この電車で藤沢まで来て、小田急で乗り換えたの・・」
「アア・・、それでは、高校も大学も、私の先輩ですね」
 確かに,大船経由だと乗り換えが面倒だが、江ノ電だと電車一本で往来ができるのだ。
「あなたが、5年前に、当社の会社説明会に来たでしょ。実は私、その時から目をつけていたの・・」
「そう言えば、あの時に、美人が、秘書みたいに社長の隣りにいましたね」
 浩一郎は、どんな人物か深くは知らなかったが、当時から美人の紗香に憧れていたのだ。
「今だから言うけど、あなたは私の後輩だし、真面目そうだから、是非、採用してって、山岡社長にお願いしてね」
「エエッ・・、そうなんですか・・」
「だから、配属先も私の部署に、って・・」
「ああ、有難うございます。では、今夜はそのお礼をしないと・・」

 浩一郎は、紗香が好意を持ってくれているのを知って、益々気分がウキウキとしてきた
 
 小田急ビルの2階にある改札口を抜けると、エレベーターで1階に下りて、駅前広場に出た。
 すると、浩一郎は、右手に歩き、さらに右に折れてファミリー通りに向かった。
 5階建てのビルの階段を地下に降りて、焼き鳥≪鳥九≫の暖簾がかけられた引き戸を開けた。
 見れば、店内はコの字型のカウンターがあって、客はまだ2組しかなく、静かなものだった。
 炭火の前に立って焼いている店長が、「はい、いらっしゃい」と声を掛けてきた。浩一郎は、常連かのように「ご無沙汰してます」と、親しげに手を挙げて挨拶をした。
 そして、白木のカウンターの隅に紗香を案内すると、並んで座った。
「店長、生ビールを大ジョッキで、二つ。それから、例の煮込みも・・」
 紗香は、初めての店であり、店内を見回して清潔感を感じていた。
「でも、先輩、いつもオシャレで、いいセンスしてますね」
「アラ、そうかしら・・」
「そうですよ。見るからにアメリカンで、しかもハイソ。そういう上流階級を、エスタブリッシュメントって、言うんですよね」
「マァ、そうだけど・・、でも、私は普通よ」
 浩一郎は、憧れの紗香と一緒にいることが嬉しくって、褒め言葉が口を突いていた。
 
 直ぐに、大ジョッキとお通しがカウンターに出されて、さっそく二人は笑顔で向かい合うと乾杯した。
「柿沼さん、スマホのオペミスで、こんなラッキーなデートが出来るなんて、今夜は最高です」
「私も、そう・・、ベリー・ハッピーよ」
 そんな会話を交わすと、浩一郎は「店長、焼き鳥の7本セットを2つ。宜しく」と注文した。
「柿沼さん、昨日、MITへの留学の話をした時に、日本にはいたくなかった、って・・」
「ええ、そう・・、あの時はそうだったの・・」
 紗香は、浮かぬ顔をして、焼いている串をひっくり返す店長を、ぼんやりと見つめていた。
「アッ、すみません。変な質問をして・・」
「まぁ、それはいいけど・・」
 紗香は、寂しそうな表情をして、目を虚ろに泳がせていた。
「そうね、実は両親の間で、ゴタゴタがあってね。そんなのは見るのも嫌だったの・・」
「そうでしたか。嫌なことを思い出させて、すみません」
 それからは、紗香はむっつりとしてしまい、二人の会話は途切れてしまった。
 浩一郎も、黙ってビールを飲んでいるしかなかった。
 
 それから、店長が「ハイ、お待ち」と、大皿を2つ、カウンターに出してきた。
 それは、鶏肉を7種の部位別に串にした焼き鳥で、バラエティに富んだ自慢の串焼きだった。
 紗香は、どの串にするか迷ったが、右側から取り出した。
「エッ、こんなに肉質がシッカリしているのは、初めて・・。とっても美味しい」
「これは、東京シャモという高級な銘柄で、しかも朝絞めで、新鮮なものを宅配しているとか。ねえ、店長、そうですよね」
 店長は、そう宣伝されて、嬉しそうに何度も頷いた。
 
 黙々と鶏肉を味わっていた紗香が、2本目の串を食べながら、何気にポツリと言った。
「でも、私、男性にはツキがないの・・」
「エッ、そう、なんですか」
 浩一郎も、焼き鳥を食べながら、予想外の話に、気落ちしてシンミリとして受け止めていた。

「中学での初恋は、遠くから見ていただけの片想いだったし、高校では彼を友達に取られたし、大学でアプローチしてきた男は、ガールフレンドがいっぱいいたし・・」
 浩一郎は戸惑いながらも、紗香をなんとも慰めようがなくて、黙々と焼き鳥を食べているしかなかった。
「パパはね、銀座のクラブの女の子と、出来ていたのよ。しかも、20代の若い子と・・。そう、私のパパが、横取りされたのよ」
 紗香は、親子の親密な信頼関係を壊されて、余程悔しかったのだろう。ここは、キッパリと言い切った。
 そして、その悔しさを噛み砕くように、串を立て続けに2本も食べた。
――私は、パパに可愛がられていたわ。
  小学生の時は一緒にお風呂に入って・・。
  アッ、中学生になっても、ママが温泉旅行に行った時とかも・・。
  湯船に一緒に入って、抱っこしてもらってたの・・。
 
「結局、両親は、離婚したんだけど・・。だから私、あの時代は、実家にはいたくなかったの・・」
 紗香が、寂しそうな顔をして、独り言のように言った。
「それなのに、MITで研究室のイケメン助教授に口説かれてね・・。お蔭様で、ボストンの街中や郊外をよくドライブしたけど・・。でもね、実はその男は、プレイボーイだったのよ」
 紗香は、天を仰いでアメリカの出来事を思い出すと、思わず堪え切れなくなって、ポロッと泪を溢した。
 そして、オシボリをそっと目に当てている。
 前を向いて聞いていた浩一郎は、右目の隅でそんな紗香の様子を、素知らぬ顔で伺っていた。
 しかし、仕事ではテキパキと対応する紗香が、その昼間見せる顔からは想像もつかない心の寂しさを今、表情に表していた。
 浩一郎は、そんな歪んだ紗香の思いを垣間見て、気持が痛んできた。
 
「でも、僕だって、似たようなものですよ。僕は奥手だったから、初恋は高校だったし、大学では、同じクラスの子に二股をかけられたし・・」
 紗香に胸の裡をありのままに告げられて、浩一郎も、自分のことを言うしかなかった。
「だから、もう女性とは付き合わないと決めていたんです。アッ、でも、柿沼さんには、すごく憧れています」
「いいのよ。ムリをしなくても」
「いいえ、本心ですよ。先輩に対しては、偉そうなことは言えませんけど・・。でも、好きなタイプなんです」
「ありがとう。私もね、一途で、クソ真面目で、ウソのない本田君が好きよ。でもね、私はキズ者だから・・」
「エッ、なにが、キズ者ですか。そんなキズなら誰にだってありますよ」
 浩一郎は、思わず声高になってしまった。
 しかし、紗香には、いつも穏やかな本田が、熱っぽく語るのが嬉しかった。
「犯罪の傷は、一生、自分で背負っていくしかありません。でも、心の傷は、お互いに相憐れみながら、癒すことが出来るんです」
 浩一郎は、静かな口調だったが、自分が信じることを、自信を持って語っていた。
「アー・・、そうなのか。そうよね。私、嬉しい」
――ああ、私、キズ者ではないんだ。
  もしかして、諦めていた結婚が、出来るかも・・。
 感極まった紗香は、思わず両手で浩一郎の手を包むと、感動の余り強く握り締めてきた。
 そんな感情の高まりを感じながら、紗香をそっと見ると、泪をボロボロと溢していた。
 浩一郎も、自分の信念が通じた嬉しさで、貰い泣きをしてしまいそうだったが、ジッと我慢していた。
 
「アッ、もう7時だから、次の店に行きましょう」
 腕時計をチェックした浩一郎は、残りの串を摘まむと、紗香にも食べるように促した。
 そして、「店長、お愛想を」と声を掛けて、ポケットから1万円札をカウンターに置いた。
 綾香がポーチを肩にかけて、立ち上がった時、フラフラッとして浩一郎に寄り掛かってきた。
 トッサに振り向いて、受け止めると、「一旦、座りましょう」と声を掛けて、ゆっくりと座らせた。
――確か、お酒には強いはずだけどな。
  話に感動して、体の動きが狂ったのかな。
 
 それから、釣り銭をもらうと、彩香の手を引いて立ち上がらせた。
 そして、歩き出したが、自動ドアを抜けた先の壁に、紗香は酔った体を押しつけている。
「アッ、その奥にエレベーターがありますから」
 店長の声で、その存在を知らなかった浩一郎は、「ああ、どうも」と助かった思いがした。
 紗香の腕を自分の首に巻き付かせて、通路の奥に進み、エレベーターのボタンを押した。
 すると、紗香が「本田さん、有難う。私、とっても嬉しい」と言って、抱きついてきた。
 彩香の華奢な体を受け止めると、背中に両腕を回してそっと抱いてやった。
 暫くの間、二人はそうしていたが、突然、紗香が体を伸び上がらせると、プチュッとキスをしてきた。
 そして、感動の余り、紗香は両手で浩一郎を引き寄せると、夢中で求めるように唇を強く押し付けてきた。
 浩一郎にとっては、ファースト・キスだったし、強烈だったから、紗香にされるままだったが、滑(ヌメ)った厚い唇を感じるだけだった。
 やがて、紗香が体を離すと、恥らうような顔で「ごめんなさい。感情が昂ぶってしまって」と、ペコリと頭を下げた。
 だが、浩一郎は、そう謝られても、どう応えたらいいのか戸惑ってしまって、「イヤ、気にしないで」と言うしかなかった。
――ああ、嬉しかったと言えば、良かったのかな。
  だって、初めてだったし・・。
  でも、艶めかしい、そんな触感だけが残ってるよ。
 
 それから、ビルを出ると、舗道を歩く浩一郎の腕にしがみ付いて、腕を絡めて来た。
そして、可愛い少女のように、首をすくめて、チラッと浩一郎を見た。
――ああ、先輩が、悪戯っ子の乙女になってるよ。
  年上の女で、三十路なのに・・、可愛らしいよ。
 浩一郎には、憧れの紗香が、まるで初恋にときめいている乙女、そんな風に見えていた。
 そして、小田急デパートの前に戻り、さらに道路を渡って、夜の電灯に沈むラスカの裏に回った。
「本田さん、私、浩(コウ)さんて、呼んでいいかな」
「アッ、はい。では僕は、紗香さんで、いいですか」
 そんな、他愛もない会話をしながら、気分は、まるで中学生の少女と少年のようになっていた。
 浩一郎が、熱田ビルに入ろうとすると、「私、このまま歩いていたいな」と紗香が言い出した。
――エッ、どこへ行くんだ。
  二人だけの世界に、か。
  ウーン・・、まるで夢のようだな。
 浩一郎は、初恋が実った少年のように、胸がときめいていた。
「でも、次のスナックに、二人で行くって電話をしてあるから・・」
 
 それから、≪Sound  Cafe Bamboo≫のドアを開けると、女性歌手の細く高い歌声が余韻を引いていた。
 そして、観客の拍手が湧いて、店内は5人程の客が盛り上がっていた。
 二人の顔を見て、ママが出てきて「ここをキープしておいたから」と、高いテーブル席に案内した。
 すると、ギター演奏を終えたマスターが、笑顔で「いらっしゃいませ」と声を掛けてきた。
「アッ、マスター、僕の会社の上司で、紗香さんです」
「本日は、どうも・・。でも、こんな美人が上司だなんて、本田さん、いい仕事が出来るでしょう」
「ええ、もちろんです」
 
 そんな遣り取りを聞いていた紗香が、どうしたものかと考えた末に、おもむろに切り出した。
「アッ、マスター、私も歌いたいんですが・・」
「エッ、ああ、いいですよ。それで・・、なにを、ですか・・」
「ええ、≪テネシーワルツ≫を・・。私、ボストンのジャズ・バーでも歌いました。ええ、いつも、あの振られた女の心境で・・」
「すると、アメリカの・・」
「アッ、マスター、この人はMITに留学してたんです」
「では、パティ・ページの・・」
 綾香は、酔った気分もあって、気怠い顔をすると、黙って頷いた。
 するとママが、本田のキープしたバーボンのボトルを持ってきて、「お飲み物は」と聞いてきたので、本田は「この水割りで」と、答えた。
「アアッ、ブラントンかぁ、懐かしいなぁ。私は、ハイボールで」
 紗香は、そう言うとボトルを優しく撫ぜ回している。
――そうよ。ケンタッキー州バーボン群のあの男の子、
  私にアプローチしてきたのよね。
  でも、付き合ってから、この歌と同じで、
  クラスメイトの女に取られたのよ。
 それから二人は、グラスで乾杯してから、バーボンを飲むと、恋人同士になったように笑顔で見つめ合っていた。
 
 すると、歌手が第2ステージで歌う前に、マスターが紗香の出番をセットしてくれた。
 そして、マイクの前に紗香を手招きすると、ギターを抱えたマスターが、二人で頭出しの音程とリズムを確認し始めた。
「本田さん、この女性シンガーを、皆さんに紹介してくれませんか」
 いきなりそう言われて浩一郎は躊躇したが、仕方なく前に立った。
「エー、皆さん、この女性は、柿沼紗香さんです。あるソフト会社の部長であり、私はその部下です」
 すると「オーイ、ガンバレよ」と、客から声がかかって、「はい、頑張ります」と応えた。
「ただ、この人は、慶応大学の工学部をオールAで卒業して、ボストンのマサチューセッチュ工科大の、ドクターコースを出た優秀なエンジニアです」
「ワァオ、MITとは凄いな。秀才だよ」
 また、客から声がかかって、紗香はテレている。
「しかし、本人の弁によれば、これから歌うテネシー・ワルツのように、彼を友達に奪われたとか。でも、実は私、この人の歌を聞いたことがなくて、歌のうまさは未知数なんで、保証は出来ません」
 そんな浩一郎の紹介に、客から笑い声が上がった。
 
 それから、紗香はマイクを握ると、一礼をした。
 そして、椅子に座ったマスターが、静かにギターを掻き鳴らし始めると、紗香は姿勢を正した
 I  was  dancin’ with  my  darling To  the  Tennessee  Waltz
    (愛しい人と テネシーワルツを踊っていたの・・)
 紗香は、低い声で歌い出すと、いかにも気怠くて、物悲しいペディの歌い方で歌い出した。
 しかし、英語の発音と言い、高音の声の伸びと響きには、かなり歌い込んだ自信が感じられた。
 浩一郎も英語は得意だったから、歌詞の意味を感じながら聞いていた。
    When  an  old  friend  happened  to see
     (そしたら、古い友人に偶然出会ったの・・)
   Introduced  her  to  my  loved  one
    (愛する人に 彼女を紹介したの・・)
   And  wile  they  were  dancin’
    (それから、二人がダンスをしている間に)
   My  friend  stole  my  sweetheart  from  me
    (そうよ、友達が私の愛しい人を奪ったの・・)
   I  remember  the  night  And  the  Tennessee  Waltz
    (今も思い出す。あの夜とテネシーワルツを・・)
  そして、一番が歌い終わると、感動した客たちから嬌声が飛んで、拍手が湧いた。
 マスターも、嬉しくなって何度も頷きながら、神妙に伴奏をしていた。
――ああ、やっぱり、尊敬できる先輩だな。
  もしかして、いい人に出会ってるかも・・。
 
 紗香は歌い終わると、拍手をする客に何度もお辞儀をしている。
「皆さん、有難うございます。でも、私は今、素敵な男性に巡り合っていて、すごく幸せなんです」
 すると、「オーイ、ディレクター」と、一歩引いて聞いていた本田に声がかかって、浩一郎は、はにかみながら「はい」と頭を下げた。
 だが、すかさず紗香が、マイクを握ると、「But I haven’t  got  OK  yet 」と英語で喋った。
 それを聞いて、浩一郎は「I’m  OK of  course  」と応えた。
 すると、「今の二人の遣り取り、意味が判んねぇぞ」と誰かが叫んだ。
「今のはね、彼女は、まだ彼からOK貰ってないのと、言ったんだ。そしたら、彼がもちろんOKですよと、応えたんだ」
 英語の判る客が、そう解説すると、誰かが「ワァオー、上司の部長から、プロポーズをされたんだ。オイ、ガンバレよ」と景気をつけた。
 すると、その場が一気に盛り上がって、店にいる皆から祝福の嬌声と拍手が湧き上がった。
 嬉しくなった浩一郎は、両手を差し出してハグを求めると、紗香も近寄って、二人は湧き上がる感動で肩を叩き合っている。
 そして、紗香が手慣れた軽やかさで、いきなりキスをしてきた。
 目を剥いて驚く浩一郎に、またやんやの喝采が浴びせられた。
 
                    ― おしまい ―
 
 
 





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