普段は家から150m程のところにある公園で遊ぶのに、9月のある休日、街路樹として植えられたマテバシイのドングリを拾いながらだと2歳児の足で25分ぐらいかかる公園まで連れていかされました。
一通りの遊びを終え、公園を出ようとしたとき、かなり大型の黒いアゲハチョウが翔んでいるのが目に入りました。
後羽の斑紋からモンキアゲハだろうと思い、アスファルトの道路で羽を休めていたチャバネセセリに興味をひかれていた子どもたちに、「こっちにもっとおっきなチョウチョがいるよ」と呼びかけました。
そのチョウはしばらく柑橘系の樹の周りを優雅に舞っていました。しかし、どうもモンキアゲハとは趣が違う、見慣れないアゲハチョウでした(関東の市街地にいるチョウで、僕が見慣れないと思うのは滅多にないことです)。
そう気づいた瞬間から、子どもたちを押しのけ、前へ前へと歩み寄り、なんとか鮮明な写真を撮ってやろうと携帯カメラを向けました。
帰り道は、さらにムラサキツバメを捕まえたり、ツユクサやオシロイバナで染め絵をしたり、イヤというほど集めたドングリを再び拾ったりしていたので、45分くらいかかりました。
家に着いてから、娘が図鑑を持ってきて、「パパ、さっきのこれだよ」と指し示しました。
ナガサキアゲハ。
まさか、ナガサキアゲハがいるはずがないと頭では否定しているものの、撮った画像と見比べ、斑紋の特徴、尾状突起がないことなどから、娘の指摘が正しいことを認めざるを得ませんでした。
ナガサキアゲハはその名の通り、長崎県で見つかったチョウで、本来日本の南方に棲むチョウです。
そのナガサキアゲハが平塚で見つかったということは、僕にとって、とても驚くべきことでした。
何を隠そう、「発芽する鉛筆」を作るキッカケとなったのは、2004年に静岡でナガサキアゲハが確認されたという報道を耳にしたからなんです。
温暖化はこのようなところでも、着実に影響を与えているようです。
できれば、この画像が貴重なものとなることを願っています。かつての日本の四季・生態系が保たれるように。
だって、その方がつまらなくないと思うから。