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2020/05/11 8:35:59|その他
上田秀一の独り言(185)>>>経済安全保障と5Gの世界
あらゆるモノがインターネットを介して繋がるIOTの世界とそれを支える次世代通信規格の5GやAIをめぐるアメリカ政府と中国政府との間の攻防劇がNHKのスペシャル番組で取り上げられたが、アメリカ政府による攻撃の先陣にいるのは言うまでもなく、中国企業のHUAWEI(ファーウェイ)であろう。

中国企業のHUAWEI(ファーウェイ)の2018年度次報告書(12月31日が決算日)に含まれる企業ガバナンス報告書によれば、株主は従業員で構成する労働組合(96768人)と任正非という2者で株主総会を構成し、さらに従業員から選ばれた5年任期の代表者115名(なお、18名の予備代表者が同時に選ばれており、代表者に欠員が生じた場合には事前に決められた順番で補充される。)で構成される代表委員会を通じて株主の権利を行使することとされている。

労働組合構成員と共産党とのつながりについてはいかなる言及はないものの、労働組合構成員と共産党や人民解放軍との緊密な個人レベルの関係は重要な要素でありながら、企業経営とは無関係なモノであるとの立場を表明している。

HUAWEI(ファーウェイ)の経営方針等は代表委員会が株主総会で選任した17名の取締役で構成する取締役会で決定され、さらに7名の取締役と1名の持回り議長からなる経営委員会で日々の経営意思決定が行われる。そのほかに、監査委員会と監視役会が設置されており、取締役会の行動を監視する役割を担っている。

HUAWEI(ファーウェイ)のガバナンスは社会主義的枠組みで構成されているが、それはおよそ国際的スタンダードから乖離したものであると言えよう。

HUAWEI(ファーウェイ)は、中国の国内法で設立された非公開の民間企業であり、政府資本は参加していないことを殊更に強調している。しかしながら、中国の国家体制における基本的枠組は、「中国共産党が憲法を始めとする中国法を指導する社会主義国家」であり、1国2制度(政治的には社会主義国家でありながら、部分的に市場経済制度を導入して国家資本に加え外国資本を導入して経済的発展を促進する体制)を採用するものの、共産党による一党独裁を揺るぎのない原則としている。HUAWEI(ファーウェイ)を含むいかなる民間企業もこの原則に抗うことはできず、当然のことながらその経営者には中国政府の命令に従わないという選択肢はない。

HUAWEI(ファーウェイ)を含む民間企業が中国政府の意図する方向で共同して行動するかぎり民間企業の行動は補助金や外交官により支援されるが、中国政府の意図する方向に反する民間企業の行為は厳罰をもって厳しく処罰される。
HUAWEI(ファーウェイ)は、現状中国政府と同じトラック(利害関係)を走っているようである。政治は、経済の上位概念とされており、その逆は賄賂等の個人的動機が関与しているケースという例外以外は存在しえない。

中国政府に対する不信感を背景に、アメリカ政府が自国や同盟国の安全保障上の危惧を抱くのは当然であり、特に次世代通信規格の5GやAIで先行するHUAWEI(ファーウェイ)の機器や製品等がヨーロッパやアジアやアフリカで蔓延すると、中国勢のスパイ活動や国家情報法に基づく中国政府の命令でHUAWEI(ファーウェイ)の機器を通じてNATO等の同盟国との間で遣り取りした機密情報等が漏洩する可能性があるからである。可能性がゼロでないかぎり、そのファーウエイ蔓延状況を阻止する以外に選択肢はない。

HUAWEI(ファーウェイ)は、中国政府から機密情報等の情報提供を命令されたことはないと言い張るが、今までの事実は将来の事実を裏書きしない。今後将来に渡って中国政府の命令に逆らい提出命令された情報を提供しないといえる絶対的な保証はしえないであろう。

政治が経済を支配する共産党独裁国家の本質を認識すればこそ、アメリカ政府がHUAWEI(ファーウェイ)を自由主義経済圏から排除する理由があり、我々日本人も日本政府も日本企業も、IOTや5G機器が国家の安全保障に直結する可能性を理解しなくてはならない。

いまや企業経営は、経営戦略に国家の安全保障を組み込んで考える必要が認められる。このため、IOTや5G通信機器の導入問題は、国家も企業も第一に安全保障の視点から考えるべきであり、ビジネスやコストの問題が優先してはならなであろう。アメリカ政府の対HUAWEI(ファーウェイ)制裁措置は、必然的に日本企業を初め多くの欧米企業に影響を与えるであろう。

新型コロナウイルス感染症が発生した中国武漢から緊急帰還した日本人の多くが、中国企業に対する技術支援や技術開発を指南していた日本人技術者が多数含まれていたことは、日本政府やアメリカ政府等の安全保障の観点から大きな問題となりうる。

日本政府は、高度テクノロジーを保有する我が国企業に対する出資を規制を強化する法的対応を示しているが、この出資規制強化に加え、安全保障に影響を与えうる戦略的に重要な技術を敵対する海外勢力に移転する日本企業の行為に対する規制を強化しなくてはならないであろう。

安全保障に参加する自由主義世界のメンバーは、トランプ大統領の危惧を共有しなくてはならない。我が国の経営者は、国家の安全保障を守るという視点を忘れずに、目の前の短期的経済的利益(例えば、中国からの甘美な投資提案等)に捉われないよう現実を見据えなくてはならない。

上田秀一