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2019/04/17 12:00:00|その他
上田秀一の独り言(152)>>>「いじめ」問題に関するアプローチ

文部科学省による「いじめ防止対策推進法」の概要は以下のとおりであるが、はたしてこの法律が提示する枠組みは「いじめ」を根絶するために有効であろうか?

ここでの問題意識は、「いじめ」の根源的原因は何か?である。

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一 総則

1 「いじめ」を「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校(※)に在籍している等 当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与え る行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となっ た児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義すること。
※小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)
2 いじめの防止等のための対策の基本理念、いじめの禁止、関係者の責務等を定めること。

二 いじめの防止基本方針等

1 国、地方公共団体及び学校の各主体による「いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針」の策定(※)について定めること。
※国及び学校は策定の義務、地方公共団体は策定の努力義務
2 地方公共団体は、関係機関等の連携を図るため、学校、教育委員会、児童相談所、法務局、 警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができること。

三 基本的施策・いじめの防止等に関する措置

1 学校の設置者及び学校が講ずべき基本的施策として(1)道徳教育等の充実、(2)早期発見のための措置、(3)相談体制の整備、(4)インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進を定めるとともに、国及び地方公共団体が講ずべき基本的施策として(5)いじめの防止等の対策に従事する人材の確保等、(6)調査研究の推進、(7)啓発活動について定めること。
2 学校は、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員、心理、福祉等の専門家その他の関係者により構成される組織を置くこと。
3 個別のいじめに対して学校が講ずべき措置として(1)いじめの事実確認、(2)いじめを受けた児童生徒又はその保護者に対する支援、(3)いじめを行った児童生徒に対する指導又はその保護者に対する助言について定めるとともに、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときの所轄警察署との連携について定めること。
4 懲戒、出席停止制度の適切な運用等その他いじめの防止等に関する措置を定めること。

四 重大事態への対処

1 学校の設置者又はその設置する学校は、重大事態に対処し、及び同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、適切な方法により事実関係を明確にするための調査を行うものとすること。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、1の調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童生徒及びその保護者に対し、必要な情報を適切に提供するものとすること。
3 地方公共団体の長等(※)に対する重大事態が発生した旨の報告、地方公共団体の長等に よる1の調査の再調査、再調査の結果を踏まえて措置を講ずること等について定めること。
※公立学校は地方公共団体の長、国立学校は文部科学大臣、私立学校は所轄庁である都道府県知事

五 雑則

学校評価における留意事項及び高等専門学校における措置に関する規定を設けること。(一から五までのいずれも、公布日から起算して三月を経過した日から施行)

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「いじめ」は人間社会のどこでも起きうる事象でありるが、学校という特殊な社会環境のなかで生じる「いじめ」を文部科学省で取り扱うことは一定の合理性が認められる。

「いじめ」が人間の起こす単独のあるいは集団の行為であるとすれば、その根源的な対策には、「いじめ」を起こす人間社会に付着している「いじめ」の発生メカニズムを解明し、心理学や経済学等の知見を駆使して、「いじめ」の根絶にせまるアプローチが不可欠であろう。

近代社会における典型的システムは、個人の自由と人権を保障する特性を有するが、「法の下の平等」は主導されているものの「経済的な平等」は表明されていない。この経済的格差は、資本主義的競争社会では制度的に内在されている。「経済的平等の実現」は共産主義的社会におけるリトマス試験紙として機能するが、行き過ぎた資本主義的競争社会においては経済的格差を緩和しようとして様々な社会保障が準備されている。現代社会でどの程度の経済的格差が許容されるのか(逆の表現でいえば、どの程度の社会保障が求められるのか?)の判断は容易ではないが、一つの考え方は人間的な社会生活を保証する「生活保護」であろう。我が国における「生活保護」が人間的な社会生活を保証するに資するものか否かは定かではないが、母子世帯(東京都)の事例として、下記の 計算事例が見られる。

母子世帯 35歳、8歳の場合

母子世帯 35歳 8歳 1級地-1 3級地-2
生活扶助 147,415 122,252
住宅扶助 69,800 53,200
合計 217,215
175,452
 


生活保護以下の家計が多数存在する現実があるとしても、「いじめ」を行うコストは軽微であると解されるので、経済的格差の存在は「いじめ」に対する高いハードルとはならないであろう。しかし、家計の貧困は人間的生活のゆとりを奪い,「いじめ」の重大な寄与的要因となりうる。「正しいことを正しく行おうとする人間性」に毀損があれば、人間性に反した行為を阻止しえない。このため、正しいことを正しく行おうとする人間性や価値観を涵養し、他者の人間性に反した行為を自分のこととして糾弾する勇気を植え付けることが不可欠であろう。多くの「いじめ」に関する問題は、「いじめ」の実行者だけではなく、その周りにいる傍観者を壊滅させることが肝要であると思われる。「いじめ」は真空においては生じ得ないものであり、「地球という奇跡を共有する人類」というような高いレベルの意識を醸成することが有意義であろう。

なお、「いじめ」ありきで構成されている上記法律の枠組みは一見すると形式美は備えているが、現実の「いじめ」根絶には無力であると考えられる。

上田秀一