少年詩時評『梅雨と田植え、そしてコメ』 佐藤重男
□ きのう、6月10日、関東地方が梅雨入りしました。 * いつものように、タイトルや作品の中に「梅雨(つゆ、以下、同じ)」が登場する少年詩・童謡の詩集はあるかを調べてみました。 ありました。 まず、詩集のタイトルに「梅雨」が登場するものを一覧にしてみます。(作品のタイトル 著者、詩集、発行社、発効年月の順、順不同) * つゆ 黒田勲子「いのちのみちを」銀の鈴社 00.8 つゆは まだ? 宮田滋子「風がふく日のお星さま」銀の鈴社 09.5 梅雨 江間章子「水と風」銀の鈴社 80.10 梅雨 江間章子「絵のような村で」大日本図書 91.3 梅雨 えぐちまき「ぞうのかばん」銀の鈴社 91.2 梅雨 谷川俊太郎「地球へのピクニック」銀の鈴社 80.9 梅雨 小泉周二「太陽へ」銀の鈴社 97.11 梅雨 間中ケイ子「猫町五十四番地」てらいんく 07.2 梅雨 永田喜久男「はんぶんごっこ」銀の鈴社 08.7 梅雨 西田純「森は 生まれ」てらいんく 10.3
□ 続いて、作品の中に「梅雨」が登場する詩集です。(同上) * 蛙によする抒情 吉田瑞穂「オホーツク海の月」銀の鈴社 89.2 かたつむり 紀の崎茜「ちきゅうぼし」らくだ出版 12.11 草 はたちよしこ「また すぐに会えるから」大日本図書 00.1 なめくじ えぐちまき「ぞうのかばん」銀の鈴社 91.2 ふるさと 藤井則行「春だから」銀の鈴社 00.4 ふるん 村瀬保子「すきとおる朝」銀の鈴社 18.7 あじさい 小島禄榔「地球がすきだ」銀の鈴社 92.11 雨 帆草とうか「空をしかくく 切りとつた」銀の鈴社 19.11 雨の日 村瀬保子「窓をひらいて」てらいんく 05.3 海 三谷恵子「つくりわらい」らくだ出版 95.3 化けて出まっせ 林佐知子「きょうという日」銀の鈴社 05.8
□ 今回も、少年詩・童謡・詩論研究会に縁のあるお二方の作品を引くことにします。
つゆは まだ? 宮田滋子
つゆは まだ つゆは いつ あまがえるも そっと 空見てる まだ?
つゆは まだ つゆは いつ あじさいも くちなしの花も じっと 空見てる まだ?
つゆは まだ つゆは いつ 店先で ゴム長ぐつも 傘も 空見てる まだ?
『風がふく日の お星さま』銀の鈴社 2009.5
草 はたちよしこ
草の背中を みた
風に はげしく ゆれ 倒れても 倒れても立ち上がろうとする 草の背中を みた
梅雨あけの まぶしい 夏空の日に
『また すぐに会えるから』大日本図書 2000.1
□ 梅雨を待つ生きものたち、そして、梅雨明けの夏空。期せずして対照的な作品となりました。 * ところで、梅雨といえば田植え。 タイトルや作品に「田植え」が出てくる少年詩・童謡があるかどうか、みてみましょう。 タイトルに「田植え」が登場する作品は1件だけ見つかりました。 少年詩・童謡・詩論研究会に縁のある方のものなので、その作品を引いてみます。
田植えのあと 鈴木初江
こぼこぼ こぼこぼ
取水口から田へ ゆるゆる 流れる くまなく 広がる
こぼこぼ こぼこぼ
青い空 白い雲 水かがみ きらきら
こぼこぼ こぼこぼ
ほそっこい苗 はげましながら めぐりめぐる 水のうた
『めぐりめぐる水のうた』銀の鈴社 2021.4
□ では、続いて、作品の中に「田植え」が登場する詩集です。 * スッポン鳥のこえ…ふしぎな鳥… 吉田瑞穂「はるおのかきの木」 銀の鈴社 91.11 五月―弥生からの幻影 西田純「木の声 水の声」銀の鈴社 02.9 春の鏡 関 今日子「しろかきの季節」新風社 00.2 ざくろとやまんば 松山真子「だれも 知らない 葉の下のこと」 四季の森社 20.5 がっこのおばん 高丸もと子「はじまりの音」たんぽぽ出版 19.11 * 同じく、少年詩・童謡・詩論研究会に縁の方の作品を引きます。
ざくろとやまんば 松山真子
すべすべごそごその皮から まっ赤な実がこぼれそう やまんばのような 大きなぎざぎざの歯……
むかしは ここにもいたやまんばが 岩屋に住んで 子どもを育て 田植えの忙しいときには 人の家の早乙女にまじって手伝いをしたり
ときには旅人をだまして 食べようとしたり
ざくろのような ぎざぎざの歯で いいことも悪いこともいっぱいしてきた
いま やまんばは ざくろの実になって 木の上から通る人をながめている
『だれも 知らない 葉の下のこと』四季の森社 2020.5
□ ところで、各地で、田植えが始まって、今年度産のコメの収穫や価格の事がすでに話題になっていますが、わたしの近所のスーパーの棚には、未だに入札米、随契米のいずれも並んでいません。 それどころか、JAの経営するスーパーでは、つい先日まで並んでいた銘柄米の大半がその姿を消してしまいました。いったい、何が起きているのでしょうか。 * ご存じの方も多いと思いますが、「三方一両損」という、大岡越前の守の名裁きを題材にした落語があります。 拾得物の三両のお金をめぐって、落とし主、拾い主、奉行所の三者が、それぞれ「痛みを分け合う=一両ずつ損をする」ことで丸く収める、というお噺。 * 現在4000〜5000円の銘柄米の価格を、それに倣って決める、というのはどうでしょうか。 たとえば、価格を3000円にする。一方、生産者(農家)に1000円の支援金を、国が出す。 昨年の今ごろの銘柄米の価格は2000円前後でしたから、消費者にとっては1000円の支出増(損)、農家にとっては4000円が3000円では1000円の収入減(損)、そして、国が農家への支援金1000円を出すのは国にとって1000円の財政支出(損)…。これで「三方千円損」が成立。 ただ、この噺が成立するためには、国が生産者への支援金を出すこと、そして、そのお金が直接農家の手に入るという仕組みがあること、が大前提となります。(備蓄米をめぐっては、備蓄米は税金で買い入れ、税金を使って貯蔵している。それを放出と言う名目で国民に購入(消費税込み)させるのは税金の二重取りではないか、という意見もあり、留意すべきでしょう) 果たして、備蓄米のほとんどが放出されて先に、どんな景色が待っていることやら。 閑話休題。
□ 今年の梅雨は、高温多雨、と予想されています。くれぐれも、備えを万全にし、そして、健康第一で過ごしましょう。特に熱中症に注意を!
― この項 完 ―
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2025/6/11 |