少年詩2021

少年詩の詩集や同人誌についての紹介と作品への批評などのブログです。
 
2025/05/18 15:57:26|その他
少年詩時評『雲』
少年詩時評『雲』
   佐藤重男

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きのう、久しぶりに路線バスに乗りました。ちょうどわたしの横に、保育園児ぐらいの小さな男の子が窓際に、そしてその隣にその子の祖母でしょうか、年配の女性が座っていました。
車窓から空を見上げていた子どもが、「ねぇ、バアーバァ。どうして、くもはとけていくの?」と聞きました。年配の女性は、曇り空を見上げながら「あれはね、溶けていくんじゃなくて、風に流れて行ってるんだよ」と答えてあげています。
祖母の説明に納得できないのか、その男の子は、雲を追いながら、「ねえ、どうして、くもはとけていくの?」と、繰り返すのでした。
わたしは、二人の会話を耳にしながら、これは、小さな子に軍配をあげるべきかな、と同じバスに乗り合わせた幸いに感謝するばかりでした。

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はたちよしこの作品から「雲」を引きます。



 雲   はたちよしこ 

一日として 
おなじ雲はないはず
そう おもっているのに
いつか みたことのある雲に
出会うことがある

その雲も
合図を送ってくれるのか
なつかしくて
手を伸ばしたくて
しばらく みている

やがて
雲は
少しずつ かたちを変え
どこかへ去っていく

けれど
あの雲は
また 来てくれるにちがいない
なつかしいひとのように 



        「海がピアノを弾いている」木元省美堂 2021.12



 □
少年詩のなかでは、「くも(雲)」は「かぜ(風)」に続いて、題材に採られることの多い自然現象の一つです。
どちらも、変幻自在、というか、とどまることを知らない、その特性≠ェ文学にとって格好の題材になっているのかもしれません。

                  ― この項 完 ―

いつものことですが、作品の引用にあたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたら、ぜひ、お知らせください

2025/5/18





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