おやじの趣味

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2019/08/12 16:31:03|おはなし
おはなし : 外伝『山崎。』  第2-6章 : ”292941”
外伝 : 『山崎。』
第2-6章:”292941”

しばらくしてから、山崎は煙草を灰皿に捨て、ポケットからタブレットを取り出し、4粒口に投げ入れてから、典子に向かって、
 『典子どうだい?』
 『烝さん・・・・OKです。予約取れましたよ。』
山崎は典子に近寄って、典子のスマフォを覗き込んだ。
 『この、店かい?』
 『そうですけど・・・・駄目?』
山崎は、典子の腕に自分の腕を組ませてから、空いている手の指でOKマークを作って見せた。
 『ところで、ここのお店はなんて読むの???この数字から考えるとお肉屋さんだよね多分?』
 『やっぱり、烝さん読めませんか?』
 『ここのお店は、“292941”て書いて、“にくにくしい”って読むんですよ。』
烝は、再度、スマフォの画面を注視してから、手をパンと叩いて、
 『分かったよ典子。確かにそう読むね。』
 『でしょ、烝さん。』
山崎は、笑顔で頷きかえした。
 『じゃー、行きましょ。』
今度は典子が烝の腕に自分の腕を通して、駐車場とは反対方向に向かって歩き出した。
山崎は慌てて、
 『典子、駐車場とは反対だよ?』
典子は、笑顔で烝に向かって、
 『お店は、8時に予約しましたから、まだ時間に余裕が有りますよね。だから、今から次の場所に移動するんですよ烝さん。』
 『どこに行くの?』
典子は、烝に向かって、
 『あそこですよ。スカイタワーです。』
そう、烝に話しながら、手を引いて歩き出していた。
2人は、スカイタワーの入り口で入場券を見せてから、エレベーターに乗り込み、4階の展望室へと向かった。
エレベーターを降りた2人は、展望室で名古屋の街の灯りを見ながら、
 『烝さん、ここは別名なんて呼ばれているか知っていますか?』
山崎は、顔を左右に振って、“ごめんね、知らないよ”。
 『じゃー、烝さん覚えておいてくださいね、ここは“恋人の聖地”って呼ばれているんですよ。』
 『実は私、昔から好きな人が出来たら、必ずその人と一緒にここに来ようと思っていたんです。烝さん。だから、私もここに来るのは今日が初めてなんです。烝さんと同じですね。』
そう、言いながら典子は山崎と組んでいる手に力を入れた。
山崎は、そんな典子に応えるように、組んでいる腕を解いてから典子のスタイルのいい、腰に腕を廻して自分の方に引き寄せた。
典子が烝に寄り掛かっていた時にポツリと一言、呟いた。
 『本当なら、5年前に来ていた筈なんですよ、烝さん。』
山崎は、驚いた顔を典子に見せて、
 『なんで、行こうって誘ってくれなかったんだい。』
典子は、綺麗な二重の瞳に涙を貯めながら、
 『だって、もう、その時は烝さん貴方は私の前から居なくなっていたから・・・・連絡したくても、携帯は不通になっていたしご実家に電話してもご両親は旅に出ていると言っていたし・・・・。』
山崎は、典子にすまないと言う顔を見せてから、
 『確かに、5年前の俺は“仕事”に諦めがつかなくて、色々と旅をして空の仕事を探していたんだよ。でも、やはり自分の技術に自信が持てなくてね、諦めたんだ。』
 『それから、半年間位何をしても面白くない自堕落な生活をしていたんだけど、親父がね、“お前何もしないなら俺の仕事を手伝え”って怒鳴ってきたんだよ。』
 『そこで、親父・お袋と家族で話をして親父の仕事を手伝うことに決まったんだよ。それが、今の仕事さ!』
 『今の仕事のヒントは、典子君が俺に与えてくれたんだよ。だから俺は後悔していないよ。だってさ、俺の好きな嫌、大好きな典子がヒントをくれた仕事だからね。』
 『ありがとう、典子。』
山崎は、典子の顔をみながら、“ニコリ”と微笑んで見せてから、典子の綺麗な二重の眼に溜まっている涙を自分のハンカチでそっと、拭き取った。
 『ありがとう烝さん。』
 『典子は知っていたかな。実は俺も君の事を探していたんだよ。』
典子は、驚きと嬉しさの混ざり合った顔で山崎の顔を見上げた。
 『どうして、私の事を探したんですか。』
 『当たり前だよ典子。でも、理由は何回も君に伝えてあるから今回は話さないからね。』
山崎は、微笑んでから、典子に向けて、
 『典子、そろそろ7時になるけど行かないか。』
典子も晋二郎の腕時計を見て、頷きながら、
 『はい、私もお腹が空きました。これ以上、時間が経過すると烝さんと同じようにお腹が鳴ってしまいます。』
2人は顔を見合わせてから、ほぼ同時に笑い出していた。
そんな2人を周囲の客が何気に見ていた。
そのまま、2人は上ってきたエレベーターを利用して、1回へと向かい腕を組みながら、ソアラが待っている駐車場へと向かって行った。
駐車場で2人はソアラに乗り込み、典子が予約を入れた、料理屋“292941”へと向かってソアラを走らせた。
”292941”は、東山動植物園から約20分程度で行ける中村区に有った。
“292941”に7時44分に着いた2人は、店内に入ると典子がカウンターで予約番号と氏名を伝え、案内されるのを待っていた。
2人がソファーで8分程度の時間待っていると、2人を担当する係の女性が迎えに来て、
 『川上様、2名様でいらっしゃいますか。』
 『はい、川上です。』
 『お席のお支度が出来ましたので、ご案内させていただきますので、こちらへどうぞ。』
烝と典子は、担当の女性の後について席へと向かった。
席に座った2人に、担当の女性がメニューを渡し、本日のリコメンドメニューを伝えてから奥へと下がった。
 『典子、ここのお店、なんか材料と価格が合ってない気がするんだけど?』
典子は山崎の話に頷きながら、
 『烝さん、ここは量も凄いですよ。驚かないでくださいね。』
2人は、料理について話しながらメニューを決めてから、テーブルに設置されている呼び鈴で、先程の担当の女性を呼び、それぞれ料理を注文した。
 『お待たせいたしました。ご注文はお決まりでしょうか。』
烝は、頷きながら、注文を口にした。
 『僕は、さんかくステーキで、ライスは中盛で、典子どうぞ。』
 『私も、彼と同じでご飯は小でお願いします。』
担当の女性は頷きながら、
 『お飲み物はどうされますか。』
烝は、少し考えながら、
 『ノンアルコールのビール有るかな?』
担当の女性は、すぐさま烝に沖縄のノンアルコールのビールを勧めてくれた。
 『はい、沖縄のクリアフリーならございますが、どうされますか。』
 『はい、お願いします。グラス2つもお願いいたします。あと、彼女にアイスレモンティーをお願いします。それにチーズの盛り合わせなんかありませんか?』
 『はい、ございますが、三種類のチーズの盛り合わせになりますがよろしいでしょうか。』
 『うん、それでお願いします。』
 『かしこまりました。』
担当の女性は、2人に頭を下げてから奥に戻って行った。
山崎は、典子にことわってから、席を発ち、手洗いへと向かったふりをしてから、自分のテーブルの女性を手招きして通路に呼んだ。
 『すいません。実はお願いが有るんですけど、彼女と5年ぶりに再会したので、サプライズをしたいんですけど急ですがお願いできますか?』
担当の女性は即答はせず、確認をしに厨房に戻って行ったが、40秒程度で戻ってきて、指でOKマークを作って山崎に見せた。山崎はあるお願いを書いたメモ紙を彼女に渡してから再度お願いをした。
メモ紙を読んだ彼女は、再度、烝にOKマークで応えて見せた。
 『了解しました。我々にお任せくださいお客様。』
山崎は安堵の顔をしてから、担当の女性、厨房のスタッフに頭を下げてから、典子の待つ席に戻って行った。
 『典子、待たせたね。寂しかった?』
典子は、小さく頷いてから烝の事を見た。
その時、担当の女性が飲み物を2人の居るテーブルに運んできた。
山崎の前には、アクアフリーとグラス。そして、典子の前には、アイスレモンティーとグラスをそれぞれ置いてから、
席の真ん中に、三種類のチーズの盛り合わせを置いてから、
 『お客様、本日初めてのご来店ですので、弊社からプレゼントでございます。』
担当の女性は、山崎に“紅いバラの花束”を渡した。
山崎は、緊張しながら、バラを受け取って、“ありがとうございます”と担当の女性に頭を下げた。
担当の女性は、
 『失礼します』
と、頭を下げてから奥に下がって行った。
山崎は、典子に向かって、
 『乾杯しよ。今日は車だから、これで勘弁してね典子。』
 『はい、分かっています烝さん。』
山崎は典子のグラスにノンアルコールビールを注いでから、自分のグラスに注ごうとした時、
 『待って、烝さん。私が、注ぎますから。』
 『ありがとう、典子。』
典子は、ノンアルコールビールを山崎のグラスに注いでから、2人は乾杯をした。
 『かんぱ〜い。』
典子は、厨房の方を見てから、山崎に向かって、
 『烝さん、恋人の聖地で私の事を探したって話してくれましたよね。』
 『うん、それが何か。』
 『理由をもう一度聞かせていただけませんか。私、忘れちゃったんです。お願いします烝さん。』
山崎は、緊張した面持ちで、尚且つ顔をやや赤くしながら咳ばらいを1回してから、典子に向かって、
 『典子、恥ずかしいけど今から説明するから、もう聞かないでね頼むから。』
そう、話しながら典子に向かって手を合わせていた。
 『典子、じゃー、理由を説明するよ。』
典子は、頷いてから、山崎の左手に自分の手を載せてから、
 『烝さんお願いします。』
 『典子、俺は自分の好きな人・物は一生持っているというポリシーを持っているから、俺の一番好きな君をこの5年の間、仕事の休みを利用して探していたんだよ。』
 『分かったかい典子。簡単に、一言で話したら、好きな君の事を5年の間探していたんだ。』
典子は、山崎の右手を握りながら、自分の頬で頬ずりしながら、手の甲にそっと口づけをしていた。
山崎が、典子への話が終わった時に、料理が運ばれてきた。
それぞれの料理が2人の前に置かれて、担当者の女性が戻って行ってから、2人は、見つめ合ってから、
 『食べようか。』
 『はい。』
 『いただきます。』
2人は、料理に箸をつけて食べ始めた。
 『典子、君は本当に凄い舌を持っているんだね。』
 『烝さん、その誤解されるような言い方は辞めてください。恥ずかしいから。』
山崎は、笑いながら、ごめん、ごめんと典子に謝っていた。
そんな山崎を見ながら、典子もつられて一緒に笑い出していた。
食事をしながらも、2人の会話は弾み、山崎が典子にある質問をした。
 『典子、もしよかったら、今夜君の部屋に泊めて貰う事は出来るかな。』
 『駄目かな?』
典子は、頬を赤らめながらも、“うん”と首を縦に振って山崎の質問に応えていた。
そんな、典子に山崎は、
 『典子、ありがとう。』
 『いいえ、烝さん。私も嬉しいです。』
2人は、今夜の事を眼で会話をしていた。

料理が、食べ終わって山崎はメニューを手にして、デザートのページを見ていた時。山崎の眼が停まった。
 『典子、このデザート懐かしくないかい?』
 『烝さん、カタラーナですね、ほんと懐かしいですね。よく、フランスに行った時に夕ご飯を食べた後に仲良く食べていましたね。』
 『うん、そうだね。じゃー久しぶりにこれ食べてみないか?』
 『はい、烝さん。食べましょう。』
そう、言いながら、典子は呼び鈴を押して、担当の女性を呼んで、デザートを注文した。
 『お呼びでしょうか。』
 『カタラーナを2つお願いできますか。あと、コーヒーとアイスレモンティーをお願いします。』
担当の女性は頭を下げて、
 『かしこまりました。』
そう、話しながら、山崎とアイコンタクトをしていた。
山崎が確認するように担当の女性に再度、
 『デザートお願いしますね。』
と、伝え、それに応えるように、担当の女性も、
 『はい、ありがとうございます。』
と、返事を返した。

山崎と、典子はデザートが来るまでの間、2人で昔話をしていた。
 『烝さん、覚えていますか。』
 『何をだい、典子。』
 『2人が、海外乗務が最初の時何処行きの便だったか覚えていますか?』
山崎は、思い出すような仕草をしながら、
 『典子。サイパンだよね。』
典子は、頷きながら、
 『さすが、機長よく覚えていましたねさすがですね。ほんと、記憶がいいですよね。』
 『だろ。』
山崎が、典子に応えてから、典子にことわって、化粧室へ行くために席を発った。
化粧室の帰りに担当の女性に声を掛けて、簡単な打ち合わせをしてから山崎は席に戻った。
 『典子、お待たせ。』
この時、店内のBGMが洋楽の曲が終了した時、邦楽が流れ始めた。
 『あ、烝さん。この歌を歌っている人のライブ昔一緒に行ったこと有りますよね。覚えてますか?』
 『当たり前だよ、典子。確か君は、この歌手の曲で、“貴方を信じて・・・・”が好きだったよね。』
典子は、山崎の顔を見ながら、“うん”と首を縦に振って見せてから、流れている曲を口ずさみだしながら、山崎に向かって、
 『烝さん、手を見せていただけますか。』
山崎は、頷きながら、手を典子に見せていたが、典子の顔を見ながら、
 『典子、今日が何の日か知っているかい。』
典子は、一瞬ドキリとしたが、山崎に向かって、“うん”と頷いて見せた。
この時、流れている曲が、“貴方を信じて・・・・”に替わったと同時に、
山崎は、典子へ向けての言葉を選ぶふりをしながら、
 『典子、32回目のお誕生日おめでとう。君が昔と変わらずに今も美しいままで居てくれてありがとう。』
 『それから、これ、俺から君へ、逢えなかった時間の5年分を一度に今日の誕生日に送ります。』
典子の眼を見つめながら、山崎は真顔で典子の右手を握り、ポケットから取り出した小箱を典子に渡してから一言、
 『今、開けて見てくれないか典子。』
典子は、驚きながらも無言で首を縦に振ってから、紐をほどいて包みを開けた瞬間、驚きを隠せないようで慌てて口に手を当てて、少し震えるような仕草で山崎の事を見ていた。
山崎を見ている典子の両目が見る見るうちに涙で溢れていた。
気丈にも典子は、山崎に向かって、
 『機長、ありがとうございます。これは、どういう意味でしょうか。』
 『なにが、川上君?』
 『この、指輪の意味です。』
山崎は、“分かってくれよ”と言うような顔を典子に店ながら、顔を目一杯赤くしながら上ずった声で、典子に向かって、一言。
 『川上典子さん。こんな僕ですが、僕と一生添い遂げていただけませんでしょうか。宜しくお願いします。』
典子は、山崎に自分に向かって話して欲しかった言葉を聞いて、一瞬、“まさか”・“聞き間違い”と考えてしまったが、周囲の他の客の動向などから聞き間違いではないと察してから、
 『機長、私でいいんですか?本当にいいんですか。冗談ではないですよね。もし、冗談だったら私、絶対に許しませんから。』
 『はい、私には貴方しかいません。貴方の事が好きなんです。嫌、大好きなんです。』
典子は、山崎の手を握りながら、感無量の声で、
 『はい、こちらこそ、宜しくお願いします。機長。』
と、応えた時、店の中から一斉に、
クラッカーの音と共に、“おめでとう”、“おめでとうございます”、“彼氏、カッコよかったよ!”彼女おめでとー”
等の、声が店内中に響いていた。
山崎は、席から立ち上がり、周囲のお客さんに頭を下げ、歓声に応えていた。
周囲の様子を見ていた、典子は、山崎に向かって、
 『烝さん、何?皆さん、どうしたんですか?』
そんな、典子の様子を伺っていた“292941”のスタッフが、ワゴンを押しながら典子の横に来て、
 『川上典子様、おめでとうございます。こちらは、山崎様と“292941”からのお祝いの品です。』
と、伝えてから典子の前にケーキを置いて見せた。
その置かれたケーキには、白いプレートにチョコで、
 『愛する典子(“てんこ”)へ、誕生日おめでとう。待っていてくれてありがとう。 From:烝。』
と、書かれていた。
典子は、白いプレートに書かれた文字を読みながら、山崎に向かって、
 『烝さん、ありがとう。ほんとに、私、貴方を信じて待っていてよかったは。』
山崎は、横に置いていた、“紅いバラ”を手に取って、
 『典子、これも、俺から君への再会のプレゼントだよ受け取ってくれ。』
 『でも、烝さんこれは、お店から貴方へのプレゼントでは・・・・。』
そこまで、典子が言いかけた時、全てを悟ったように“アッ”と言う声を漏らした。
典子が山崎を見た時、
 『いや〜、買いそびれたからスタッフの子にお願いしたんだよ。』
と、やや大きな独り言を呟きながら照れ隠しの意味で頭を“ポン”と叩いて見せた。
それから、しばらくの間2人は“292941”で楽しい時間を一緒に過ごしてから、店を後にした。

店を出る際、山崎と典子は、“292941”のスタッフに感謝の言葉を口にしていた。
 『今日は、突然の無理なお願いを、快くご承知いただきありがとうございました。』
 『ほんと、買い物までお願いして申し訳なかったです。』
“292941”のスタッフは、気持のいい笑顔で、手を左右に振って見せてから、
 『いいえ、いいんですよ。私たちも今日見たいなお祝いをしてみたかったですよ。今後の参考になりましたのでお店としても大変参考になりました。』
 『ありがとうございましたお客様。これからはお2人で楽しい時間を作って行ってください。』
そう、話しながら山崎と典子の事を見送ってくれた。
ただ、スタッフの1人が山崎に質問をしてきた。
 『すいません、聞いてもいいですか?』
 『はい、なんですか。分かることならお答えしますよ。』
スタッフは、やや遠慮がちに、口を開いた。
 『機長って言葉を先程幾度となく耳にしたんですが、どんな意味があるんですか?差し支えなければ教えていただけませんか?』
山崎は、“うん”と頷いてから、
 『実は、私と、典子は昔、民間の航空会社で働いていたんです。当時は、私がパイロット、彼女はCAでよく海外航路に乗務していたんです。』
 『それで、当時のCAの方で私の事を知っている方は今でも、当時の癖で私の事を機長と呼ばれる方が多いんですよ。だから、典子も緊張した時は、未だに名前ではなく機長と呼ぶんですよ。』
スタッフからは、“おー”、“すげー”等の声が聞こえた。
山崎と典子は、再度、頭を下げてから、駐車場のソアラに向かって腕を組んで歩き出していた。
駐車場に着くと、山崎は助手席に典子を載せてから、自分は運転席に座ってソアラのエンジンを始動させた。
エンジン始動後、山崎は、典子からマンションの住所を教えてもらい、ナビゲーションに登録してから、マンションへとソアラを走らせた。
典子のマンションは、先程2人が合った、コンビニから車で5分圏内にある、14階建てのマンションだった。
山崎はマンションの近所にある、コインパーキングにソアラを駐車してから、典子と一緒にコンビニ立ち寄ってから帰宅したため典子の部屋に着いたのは、11時24分だった。
そのまま、2人は、典子を先頭に部屋に入り、山崎がドアを閉め鍵を掛けた時に典子が振り向きざま、山崎に向かって、
 『烝さん、愛しているは。』
と、言いながら山崎の首に自分の両腕を廻して烝に口づけをした。
山崎も、典子に応えるように、力強く典子を抱きしめていた。
2人は何度も何度もお互いが納得するまで口づけを交わしていた。
お互いに納得して唇を離してからお互いの顔を見つめ合ったときに何故か共に笑い出していた。
 『典子、好きだよ。ありがとうね俺の願いを承諾してくれて。』
典子は、首を横に振ってから、
 『いいえ、烝さん貴方こそ、私の事を5年も探してくれていたなんて本当にありがとう。私は今、凄い幸せよ。』
そのまま、2人は、典子の部屋に上がり、テーブルに座って無言で見つめ合っていた。
その時、部屋の時計が、12時の鐘を12回鳴らした。
山崎はその鐘の音を聴いてから典子に向かって、
 『典子そろそろお風呂に入って寝ようか。』
典子は、顔を赤らめながら、“コクっと”小さく頷いて見せてから、テーブルの席を発って、お風呂場に向かい浴槽を洗い終わってから、浴槽にお湯を貯めだした。
典子は、テーブルに戻ってきてから、山崎に向かって、着替えをしてくる旨を伝えてから自分のベッドルームへと向かった。
少ししてから、典子がラフなTシャツ姿で山崎の前に現れて、
 『烝さん、今日は御免なさいね。お酒飲めなくて。』
 『いや、気にしないでくれよ典子。』
 『ビールじゃないけど、ノンアルコールビール飲んだからさ。それで我慢できたから気にしないで。』
 『ほんとですか、烝さん?』
 『ああっ、本当だよ典子。』
山崎は、そう話しながらポケットの煙草を取り出して、テーブルの上に煙草とライターを置いた。
何気に、典子は山崎がテーブルの上に置いた煙草とライターを見て“ハット”して、山崎の顔を見た。
 『烝さん、このライターまだ使っていてくれたの?』
山崎は無言で典子に向かって笑顔で頷いて質問に応えた。
 『ありがとう。私、今このライターを見るまで忘れていました。』
 『典子、冷たいよ!忘れるなんて!』
 『御免なさい烝さん。』
 『でも、烝さんも忘れているわよね。』
山崎が、“うん”という顔をしながら典子の方を見て、
 『何が?』
典子は少し拗ねた顔をしてから、
 『本当に分からないの烝さん。』
山崎は、いたずら小僧の様な顔を典子に見せてから、
 『典子、今、君が来ているTシャツだよな。昔、俺が君に貸して帰ってきていないものだよね。』
典子は“うん”と頷いてから、
 『やだ、烝さんたら、分かっていたならもっと早く気づいてほしかったは。』
そのまま、典子は、山崎の顔をに頬釣りをしようとした時、浴槽が溜まった音楽がお風呂場から流れて聞こえてきた。
 『典子、お風呂の準備ができたようだよ。君が先に入ってきてくれないかな。』
 『はい、烝さん分かったわ、私が先にお風呂に入ってくるから、TVを見て私の事を待っていてね。』
 『はいよ典子了解だよ!』
と、指でOKマークを作って典子に見せた。
典子は、山崎の指のOKマークを見て微笑んでからお風呂に入りに行った。
山崎は、典子が出てくるまで、スマートフォンを操作しながら、明日、出かける場所を探していた。
 『典子は明日何処に行きたいのかな?久しぶりにソアラでドライブするのもいいかもな!それか、渋い所で博物館巡りもいいかもな、ヨーロッパに行った時はよく、2人で巡っていたよな。』
 『それとも、仲良く名古屋市内で買い物もいいかもしれないな。』
と、1人で色々と明日の予定を考えていた時、典子がお風呂から髪を拭きながら出てきた。
そして、
 『烝さん、お風呂どうぞ。入ってきてください。』
 『ありがとう典子。お風呂入ってくるから寝ないで待っていておくれよ。』
典子は、“コクっと”頷いて応えた。
山崎は、典子の顔を見て、なにか安堵したような顔をしてから、典子に向かって、
 『典子、御免。俺、今日下着持って来なかった。ごめん、今の下着そのまま履くけどいいかな。』
山崎の話を聞いた、典子が、山崎に向かって、笑いながら、
 『お風呂場に行けば分かりますよ烝さん。』
山崎は、典子の話を聞きながら、お風呂場を覗き込んで、自分のサイズに合った下着が置かれていることに気がついて、思わず声を上げてしまった。
 『典子、この下着まさか俺用の下着かい?』
 『そうですよ、烝さん。』
 『ほんと、典子まさか、他の男の下着じゃないよね。』
山崎は、茶化したような話し方で典子に質問をしてみた。
典子は、山崎の話を聞いてから、
 『烝さん、なんでそんな事を聞くの、私には烝さんしかいないのよ好きな人は。それは、貴方が1番分かっている事じゃなくて。』
 『酷いは烝さん。』
そう、言いながら典子は、嗚咽を漏らしながら、泣きだしてしまった。
山崎は、泣いている典子を見ながら、何故か安堵していた。
 『典子、御免よ。でも、なんか俺、今もの凄く嬉しいよ。』
典子は、泣きながら、山崎に聞き返していた。
 『何が、烝さん。』
 『それはね、典子。泣き方もその仕草もみんな前と何ら変わらずにいてくれるところが俺凄く嬉しいんだよ。それに君を泣かしてしまってごめんね。俺も、君に他に好きな人がいるのか怖くて聞けないからふざけた聞き方しかできずに申し訳なかったね。』
 『許してくれるかな典子。』
典子は、涙を拭きながら山崎を見て、
 『烝さん、信じて・・・・、私を信じてくださいね。私は貴方しか好きになれないの分かってくれますか。』
山崎は、典子を抱き寄せ彼女の顔を見ながら、無言で頷いて見せた。
烝は、抱き寄せた典子のおでこに唇を軽く当ててから、再度お風呂へと向かった。
烝は、身体をシャワーで軽く流してから、湯船に入った。
 『ふ〜、気持ちがいいねお風呂は。ほんと、疲れがとれますね。』
山崎は、湯船で足を延ばしながら、天井を見上げて再度息を“ふっ〜っと”吐き出した。
 『ほんと、気持ちがいいね〜。今度、典子と温泉に行ってみたいもんだね。名古屋から、岐阜は近いからな今度誘ってみようかな。』
そんな独り言を呟きながら、湯船に十分に浸かってから、頭を洗うために出てシャワーのレバーを捻った。
 『シャー、シャー』
と、流れ出る、シャワーに頭を入れて、洗いだした。
 『気持ちがいいな〜。』
その後、山崎は身体を洗ってから、湯船のお湯を抜き身体を拭いてから典子が用意してくれた下着に着替えてから、典子の待つベッドルームへと向かった。
ベッドルームでは、既に典子は部屋の灯りを消してベッドに入って山崎の事を待っていた。
 『お待たせ、典子。』
 『烝さん、遅いですよ〜。私、今、寝ちゃうとこでしたよ。ほんと、時間かかりすぎですよ。』
山崎は、典子に向かって、
 『ごめんね、典子。待たせて。』
典子は、山崎の言葉の意味を理解して、
 『ほんと私の事を待たせすぎですよ。』
山崎は、頷きながら、典子の寝ているベッドに自分の身体を滑り込ませて、
 『典子、お待たせ。』
と、耳元で呟いてから、息を“フーっと”吹きかけた。
烝の行為に、反応するように、典子は、
 『キスして・・・・。』
山崎は、典子の要求に応えるように、耳度、首筋へとキスをした。
その時、典子が山崎に向かって、
 『烝さん、私、初めてなの・・・・。』
山崎は、一瞬、驚いた様に典子を見つめてから、一言、
 『典子。ありがとう本当にありがとう。それに、今まで君の事を待たせてしまって御免。』
 『なんで、謝るの烝さん。どうしたのほんと・・・・烝さん。』
山崎は、典子の頭の下に自分の左腕を通して、腕枕した状態から典子を引き寄せ、
 『典子、君の事を疑った自分が恥ずかしいよ。』
そう、呟きながら、典子の唇にキスをした。それも長い時間。まるで、今まで逢えなかった5年分のキスをこの一回に纏めたような長いキスをした。
そのまま、2人は、一つになっていった。
 
第3-1章:TOYOTA博物館 に続く。





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