おやじの趣味

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2019/05/15 22:55:58|おはなし
おはなし : 犬山への旅  第4章 : 4-7 帰宅前に
おはなし : 犬山への旅
第4-7章:帰宅前に
AM5:45
土曜日の朝と同じ晋二郎のお気に入りの曲が流れ始めた。
本当に、疲れていたようで晋二郎のアラームが流れるまで、2人は1度も起きないで寝入っていた。
 『晋二郎さん、寝かせてくれますか。お願いします。』
 『はいよ、了解だよ、“ちえみ”。』
晋二郎は、“ちえみ”に返事をしながらスマフォのアラームを止めてから、自分だけ起き上がり、トイレへと向かった。
トイレを済ませてから、そのまま顔を洗い部屋に戻って、寝る前に用意していた私服に着替えてから、土曜日の朝と同じように煙草とスマフォを持って1階の喫煙室へと向かおうとしたが、念のため、
部屋を出る前に晋二郎は、“ちえみ”に声を掛けた。
 『“ちえみ”、昨日と同じ時間の6時20分に食堂前に集合だよ。』
 『いいかい、分かった。』
晋二郎の声に、“ちえみ”は、
 『はい、晋二郎さん。』
 『おやすみ“ちえみ”。』
そう、声を掛けてから、晋二郎は自分の鞄を持ちながらエレベーター乗り場へと向かった。
晋二郎は、1階でコーヒーを作ってから、喫煙所へと向かい、煙草をに火を付けて気持ち良く吸っていた。
煙を吐き出した時、ズボンのポケットの中のスマフォが音楽を流し始めた。
晋二郎は、慌てて、ポケットからスマフォを取り出して、
 『もしもし、“ちえみ”どうした。』
 『晋二郎さん。今、何処にいます?』
 『今、1階の喫煙室に居るけどどうした。』
“ちえみ”は、少し間を置いてから、
 『私も、1階に行っていいですか?』
 『構わないけど、まだ、ご飯まで30分ぐらい有るけどいいの?』
 『はい、じゃーそこに居てくださいね。今から行きますから。』
 『うん、分かった。じゃー食堂前に居るからね。』
晋二郎は、“ちえみ”にそう伝えてから、煙草を吸い始めた。
晋二郎は、煙草を吸い終わって、コーヒーを持ちながら食堂の前に立って、“ちえみ”の事を待っていた。
しばらくして、“ちえみ”が、淡い藤色のブラウスを着て、晋二郎の前に現れた。
“ちえみ”は、晋二郎に微笑みながら、
 『先輩、おはようございます。』
と、声を掛けた。
晋二郎も、“ちえみ”に向かって、おはよ。
 『今日も可愛いね。“ちえみ”は。』
と、真面目な顔で声を掛けた。
そんな、晋二郎に“ちえみ”は照れながら、
 『晋二郎さん、声が大きいですよ。』
 『晋二郎さんは、本当に声が大きいから、恥ずかしいですよ。』
そんな、会話をしていた時、
“ちえみ”が、
 『晋二郎さんて、なにか呼びにくいので、綽名(あだな)をつけてもいいですか?』
晋二郎は、面白そうなので、
 『いいよ。なんかカッコイイの付けてみてよ。』
“ちえみ”は、真剣に考えながら、幾つかを考えては、晋二郎に聞かせて、確認してみた。
晋二郎は、幾つか聞いたがどれも自分に“しっくり”する綽名(あだな)が無いので、
 『う〜ん』
と、考え込んでしまった。
そんな時、“ちえみ”が、一言、晋二郎に向かって、
 『先輩!』
 『晋二郎さんに一番似合うのは、“先輩”しかないですね。』
“ちえみ”は、晋二郎にそう言いながら、
 『先輩に決めました。』
 『いいですよね、先輩。』
晋二郎は、“ちえみ”に向かって、
 『これが、一番、俺に似合っているよ“ちえみ”。』
 『ありがとうね。』
そう、“ちえみ”に晋二郎は、礼を言っていたら、
ホテルの食堂の扉が開いて、朝食がスタートした。
晋二郎は昨日と同じ場所の窓側の2人掛けのテーブル席を確保した。
“ちえみ”も晋二郎の後をついてくるように椅子に腰かけた。
晋二郎は、“ちえみ”にことわってから、お茶を作りながら、込み具合を確認した。
今日も、昨日と同じように食堂は満席にはならず空席が幾つか見られた。
そのせいも有ってか、今日も晋二郎はゆっくりと朝食を摂ることができ、朝から、大好きな納豆・鮭・卵&漬物でご飯とお粥を合わせて、お茶碗四杯もお代わりしてしまった。
まだ、それでも晋二郎は食べる気満々で次なるおかずを目指して、皿を手にしながら歩き回っていた。
“ちえみ”はと言うと、こちらも、晋二郎に匹敵するような食べっぷりで、既にお粥を茶碗で三杯も食べていた。
席に戻ってきた、晋二郎は、締めに“お粥”を2杯とってきて、流し込むようにアッと言う間に2杯を食べつくしてしまった。
しかし、晋二郎は、まだお腹が満たされていない様で、何気にチラチラと料理の方に目を動かしていた。
そんな晋二郎へ、“ちえみ”が、
 『先輩、どうかしたんですか。』
 『うん、“ちえみ”が昨日作ってくれたフルーツサンドが食べたいと思ってさ。』
 『“ちえみ”、作ってくれるかな?』
 『駄目?俺好きなんだよね、“ちえみ”が作るフルーツサンドがさ。』
晋二郎は、“ちえみ”に哀願するような視線を送った。
そんな、晋二郎の視線に気づいていた“ちえみ”は、
 『しょうがないな、先輩は!』
そう、ぼやきながら食事の手を止めて、デザートの方へ歩いて行った。
“ちえみ”が席に戻って来た時には昨日の朝と同じ、フルーツポンチ、それに、ヨーグルトとパンをトレイに載せて持ってきた。
 『じゃー先輩のお願いですから、私、これから作りますから、少し待っていてくださいね。』
晋二郎は、頷きながら“ちえみ”の作る姿を眺めていた。
“ちえみ”の作業を待つ間に晋二郎はコーヒーを取りに席を発った。
作業を始めてから、約8分で“ちえみ”は手を止めた。
 『先輩、見てください。これ!』
 『“ちえみ”特性のフルーツサンドの完成です。』
晋二郎は、思わず、“ちえみ”を見て、手を叩いて拍手を送った。
 『“ちえみ”凄いよ!本当美味しそうだよ。』
 『先輩、“美味しそうだよ”は失礼ですよ。』
 『美味しいんですよ。“ちえみ”のフルーツサンドは!』
晋二郎は、“ちえみ”に頭を下げてから、“ちえみ”に向かって、
 『いただきます』
と、告げてから、サンドイッチを口に運んだ。
一口、食べてから、晋二郎は、
 『美味しい!』
 『“ちえみ”、本当に美味しいよ。お世辞じゃないからね。』
そう、言いながら、晋二郎はサンドイッチとコーヒーで“ちえみ”お手製のフルーツサンドイッチを頬張った。
晋二郎は、食べ始めてからあっという間にフルーツサンドイッチを食べてしまった。
食べ終わった後に、コーヒーを口に運んで、“ちえみ”に向かって、
 『“ちえみ”、ご馳走様。本当に美味しかった。』
 『ほんと、石原じゃないけど、“ちえみ”はいいお嫁さんになるよ。』
そう、言いながら晋二郎はコーヒーを取りに席を発った。
席に戻った、晋二郎に“ちえみ”が、
 『先輩は、私が、他の人と結婚してもいいんですか?』
晋二郎は、一瞬意味が分からずに、間の抜けた顔をしながら、“ちえみ”に向かって、
 『なんで、“ちえみ”そんなこと言うの。』
 『俺、なにか“ちえみ”の気に障ること言ったかな。』
“ちえみ”は顔を膨らまして、
 『先輩、さっき私に言ったじゃないですか、““ちえみ”はいいお嫁さんになるよって“。』
晋二郎は、頷きながら、しまったと言った顔をした。
 『“ちえみ”、有れは言葉の“綾(あや)”だよ。』
 『それに、他に行かれたら俺がこまるから駄目だよ。』
“ちえみ”は晋二郎の言葉に、
 『はい、先輩。』
 『大丈夫ですから心配しないでくださいね。』
“ちえみ”は、そう、言いながら、
自分の分のフルーツサンドを口に運んだ。
フルーツサンドを食べ終わった“ちえみ”は、オレンジジュースを取りに席を発った。
席に戻ってきて、オレンジジュースを口に運んで一気に飲み干した。
そして、一言。
 『ご馳走さまでした。』
晋二郎の顔を見て、先輩、
 『お待たせしました。』
 『今日も、“ちえみ”は、お腹いっぱいです。』
晋二郎は、“ちえみ”に、
 『なにか、飲み物もってこようか。』
 『どうする、“ちえみ”』
“ちえみ”は、少し考えながら、
 『じゃー先輩、コーヒーお願いできますか。』
晋二郎は、頷きながら、
 『了解。』
そう、言ってから席を発ってドリンクコーナーへ向かった。
晋二郎が、戻って来た時には、トレイの上に、オレンジジュース、コーヒーが載っていた。
 『はい、“ちえみ”。』
 『オレンジジュースとコーヒーそれにお水。』
 『先輩、ありがとうございます。』
そう、言いながら、オレンジジュースを口に運んだ。
 『先輩、美味しいですよ。』
晋二郎は、“ちえみ”の顔を微笑みながら見ていた。
そんな、晋二郎もコーヒーを口に運んでいた。
そのまま、2人は食休みをしてから、席を発って食堂を出て行った。
食堂を出た、晋二郎は“ちえみ”にことわってから、外に煙草を吸いに出た。
晋二郎は、煙草を吸いながら、今日の予定を考えていた。
 『明日は、平日で会社だから遅くても犬山を夜の6時には出ていたいな。』
 『それまでには、双葉刑事と石黒刑事に会って状況説明をしないといけないしな。説明にどの位の時間が必要か分からないしな。』
そう、考えながら晋二郎は、腕時計で今の時間を確認した。
 『そうか、もうじき8時か・・・・。』
 『9時に電話をすれば、双葉刑事と石黒刑事は署に居るだろうし。』
晋二郎は、煙草を灰皿で消してから、“ちえみ”の待つ、ロビーへと向かった。
ロビーで晋二郎は“ちえみ”に向かって、
 『“ちえみ”、お待たせ。部屋に戻ろうか。』
 『はい、先輩』
2人は、エレベーターで8階の自分たちの部屋へと向かった。
部屋へと入った、2人は、帰宅の準備を始めた。
晋二郎が、“ちえみ”に向かって、
 『“ちえみ”、準備が終わったら、今日の予定を説明するから声を掛けてね。』
 『はい、先輩分かりました。もう少し待っていてくださいね。』
晋二郎は、“ちえみ”を待っている間に、洗面所で歯を磨くことにした。
歯を磨き終わって、部屋へと戻ると“ちえみ”がベッドの上に座って晋二郎の事を待っていた。
晋二郎は、“ちえみ”に向かって、
 『ごめん“ちえみ”待った。』
 『いいえ、私もさっき片付けが終わったところですから。』
晋二郎は、“ちえみ”からの一言を聞いて、これからの予定の説明を始めた。
 『“ちえみ”、今日の予定を話したいんだけどいいかな?』
 『お願いします。先輩』
晋二郎は、“ちえみ”の返答に頷いてから、説明を始めた。
 『今日の予定は、初めに、犬山署の双葉刑事と石黒刑事に昨日石原の件について、説明と依頼をするために9時頃に連絡を入れる。但し、何時に終わるかは、不明だけどいいかな。もし、何か急ぎで帰るのであれば、申し訳ないけど新幹線で帰って欲しいんだ。』
 『どうかな、“ちえみ”』
“ちえみ”は、晋二郎の顔を見ながら、
 『先輩、何を言っているんですか、私は、先輩と一緒に居ますよ。それに、この件が解決するまで、私は先輩の傍を離れちゃいけないんですよね。』
 『それに、“莉奈”が心配ですから、恐らく石原さんの件が解決すれば“莉奈”の事も解決できると考えているんですよ先輩。』
晋二郎は、“ちえみ”の話を聞いて、
 『“ちえみ”、俺もそう考えている。だから、どうしても、今日中に双葉刑事と石黒刑事に会って話をしなきゃいけないんだよ。』
 『遅くなったら、帰宅途中で、どこかに泊まろう。“ちえみ”。』
“ちえみ”は、少し照れた顔をして、頷いた。
そんな、“ちえみ”に向かって、晋二郎は、
 『ありがとう、“ちえみ”。』
 『いいえ、先輩いいんです。気にしないでください。』
晋二郎は、腕時計で今の時間を確認した。
腕時計の時刻は、8時28分を表示していた。
晋二郎は、“ちえみ”に、有ることを確認した。
 『“ちえみ”、来週初七日の日は、犬山に行けるかな。予定が入っていればそっちを優先して貰って構わないけど。俺としては、一緒に来て欲しいんだ。犬山に。』
 『どうかな、予定が入っているかい“ちえみ”。』
“ちえみ”は、晋二郎の顔を見ながら、
 『先輩、嬉しいです。』
 『先輩、初めて、私に本心を言ってくれましたね。』
 『ありがとうございます。』
 『来週も当然、犬山に行きます。それも、先輩と一緒に。』
そう、言いながら、晋二郎に大きく頷いて見せた。
そんな、“ちえみ”に晋二郎は、
 『ありがとう、“ちえみ”。』
 『この件を何とか解決して、自分に自信が持てるようにするから、もう少し待っていてくれ。』

晋二郎は、“ちえみ”にそう告げると、自分のスマフォでホテルのホームページに入り、予約状況を確認した。
 『“ちえみ”、来週の金・土の2日間で言いかな予約するの。』
 『そうですね、今回と同じでいいと思います。』
晋二郎は、頷いてから、再度、“ちえみ”に向かい、
 『部屋もツインで予約するけどいいよね。嫌なら、シングルにするけど、どう。』
“ちえみ”は、再び照れながらも、
 『先輩、部屋も同じでお願いします。私、先輩の鼾(いびき)と歯ぎしりには、免疫できましたから。』
そんな、“ちえみ”の言葉に晋二郎は、思わず吹き出してしまった。
 『“ハハッ”、真面目に免疫できちゃったの。』
 『申し訳無い。“ちえみ”。』
そう、晋二郎は、“ちえみ”に向かって返事をしていたが、顔をスマフォの画面を見ながら、来週の予約作業をしていた。
 『“ちえみ”、部屋予約できたよ。』
 『これで来週も、また、犬山だよ。』
 『はい、先輩。了解しました。』
そう、言いながら、指でOKマークを作って晋二郎に見せた。
晋二郎も、頷いて“ちえみ”にOKマークを作って返した。

晋二郎は、スマフォで時間を確認しながら、“ちえみ”に向かって、
 『“ちえみ”、犬山署に電話しよう。』
 『はい、先輩。』
晋二郎は、自分のスマフォで緊張しながらも双葉刑事に電話を入れた。
電話は、犬山署捜査1課に直ぐつながった。
 『はい、犬山署捜査1課。』
 『おはようございます。私、吉田と申しますが、双葉警部補はいらっしゃいますでしょうか。』
 『吉田さんですか、おはようございます石黒です。』
晋二郎は、電話の相手が石黒刑事と分かり、緊張の糸が解けたように、
 『石黒刑事、おはようございます。』
 『今日は、双葉警部補は外出ですか。』
 『いいえ、今、席を外していますが、直ぐに戻って来ると思いますが、どうかしましたか。』
晋二郎は、石黒刑事に、電話した旨を説明して、今から犬山署に訪れることが可能か確認した。
 『今、双葉が戻って来たので確認するので少しお待ちいただけますか。』
石黒は、電話を保留にして双葉警部補に晋二郎の話の説明を始めた。
晋二郎は、4分程度待って、少し苛立ち始めた頃に、電話の保留音が切れて、電話口から石黒刑事の声で、
 『お待たせしました、吉田さん。』
 『今、双葉に確認しました、今日は1日署に居るので来署は構いません。都合の良い時にお願いいたします。』
 『一応、予定時間等があれば来署時間を教えていただけますか。』
晋二郎は、腕時計で時間を確認しながら、
 『10時30分ごろにお伺いします。』
と、石黒刑事に告げた。
 『了解しました。』
 『双葉にも伝えておきますので、気を付けて来署してください。』
 『よろしくお願いいたします。』
晋二郎は、石黒刑事の言葉に、
 『ありがとうございます。私と、仲田の2人でお伺いします。』
 『では、失礼いたします。』
晋二郎は、石黒刑事に礼を伝えてから電話を切り、しばらくしてから“ちえみ”に石黒刑事と話した内容を伝える事にした。
 『“ちえみ”、今日の10時30分に、双葉刑事と石黒刑事に犬山署で会うことに決まったから、ここを10時に出発するから、今日、話す内容の最終確認を今からしよう。』
 『はい、先輩。』
晋二郎は、時計を見ながら、
 『今、9時か・・・・。』
 『確認は、1時間もあれば終わるよね。“ちえみ”。』
晋二郎の問いに“ちえみ”は、少し考えながら、
 『先輩、そうですね、おそらく大丈夫かと思いますが・・・・。とりあえず、確認に入りましょう。』
2人は今日これから、双葉刑事と石黒刑事に話す内容について確認作業を開始した。
確認中、晋二郎が、
 『“ちえみ”、一番大事なICレコーダーの音声データは、消してないよね。』
 『はい、プロテクト掛けてありますから大丈夫です。』
 『念のため、昨日の昼のデータと夜のデータを再生して確認してくれないか。頼むよ。』
“ちえみ”は、晋二郎に向かい、
 『了解です。先輩。』
 『先輩、今日は、どんな感じで説明しますか。』
晋二郎は、“ちえみ”からの質問に応えた。
 『そうだね、“ちえみ”、今日の説明は最初から、双葉刑事と石黒刑事には、石原が双子で、土曜日の午前中の石原と夜の石原が別人の可能性があるということを説明するつもりだよ。』
“ちえみ”は、頷きながら晋二郎に、再度、質問を投げた。
 『先輩、根拠を求められたら、どうしますか。』
晋二郎は、ICレコーダーを指さして、
 『土曜の午前中の音声データと夜の音声データを両刑事に聴いて貰った後に説明するよ。』
 『それに、“ちえみ”。双葉刑事も金曜日の石原と土曜日の午後の石原に対して疑問を感じているみたいだから、説明すれば分かってくれると俺は考えているんだ。』
“ちえみ”は、晋二郎の説明を聞きながら、ICレコーダーに録音した石原の音声データ確認の準備をしていた。
 『先輩、石原さんの音声データの再生始めますから一緒に確認してもらえますか。』
晋二郎は、頷きながら、
 『はい、了解だよ。』
 『じゃー、土曜日の昼間録音分を再生します。』
晋二郎は、土曜日の昼間の音声データを聞きながら、目を閉じて当時の記憶を頭の中で蘇らせていた。
問題の部分では晋二郎は神経を集中させて石原の声を聴いていた。
聞き終わった晋二郎は、問題の部分のタイムコードを、“ちえみ”に控えて貰い、続けて、夜の録音分の再生を依頼した。
 『先輩、夜の録音分再生しますね。』
 『うん、頼むよ。“ちえみ”。』
晋二郎は、続いて土曜日の夜のファミレスでの音声データを聞きながら、先程と同じように目を閉じて当時の記憶を頭の中で蘇らせていた。
聞き終わった晋二郎は、“ちえみ”に自分の疑問を投げてみた。
 『“ちえみ”、俺の疑問に答えてくれないかな。』
 『なにがですか、先輩。』
 『昼間の石原の会話のイントネーションと夜の石原の会話のイントネーションがやはり若干だけど違うように俺には聞こえるんだよ。』
 『夜の石原の方が、神奈川弁に近いイントネーションに聞こえるんだけどな。どう思う“ちえみ”。』
“ちえみ”は、少し考えながら晋二郎に向かって、
 『先輩、私、もう1回聞いてもいいですか。』
 『頼むよ、“ちえみ”。』
“ちえみ”はICレコーダーの録音したデータを聴きなおしていた。
“ちえみ”が、3回目のデータを聴きなおしていた時に、“あっ”と声を漏らした。
そんな、“ちえみ”に向かって晋二郎が、
 『どうした、“ちえみ”。』
“ちえみ”は、晋二郎の声を無視して、録音データを聴きなおしながら、右手でホテルのメモ帳に何かを書いていた。
録音データを聴き終えた、“ちえみ”が、晋二郎に向かって、
 『先輩、分かりました。やはり先輩の言う通り、昼の石原さんと夜の石原さんは恐らく別人の可能性が高いと私は思います。』
晋二郎が、“ちえみ”に向かって、
 『何故、そこまで言えるんだ“ちえみ”。理由を分かり易く説明してくれないかな。』
“ちえみ”は、頷きながら、理由を説明し始めた。
 『昼と夜の石原さんの会話を聞いていると、昼の石原さんは、語尾が少し“おかしく”聞こえます。具体的に言うと意識して語尾を上げない様にしている気がします。名古屋弁(尾張弁)の特徴は、語尾にアクセント付けるのが多いんですよね。でも、神奈川弁では、単語の頭の部分にアクセントを付けるんですよ。』
 『それに対して、夜の石原さんは、神奈川弁の単語の頭の部分にアクセントを付けているんですよ。』
晋二郎は、“ちえみ”の説明をもとに、金曜日にお会いした、石原のお母さんとの会話を頭の中に思い浮かべていた。確かに“ちえみ”の言う通り、石原のお母さんとの会話は、語尾にアクセントが付いていたことを思い出した。
晋二郎は、“ちえみ”を見ながら、大きな声で、
 『“ちえみ”、そうだよ。確かにそうだよ。“ちえみ”の言う通りだよ。』
 『“ちえみ”は凄い!』
 『俺、なんか“ちえみ”に負けそうだよ。』
そう、言いながら、晋二郎は思わず下を向いてしまった。
そんな、晋二郎に“ちえみ”が一言。
 『先輩、そんな事無いですよ。』
 『先輩の一言が無かったら、私は“イントネーション”に気がつきませんでしたから。逆に私の方が先輩の直感力に感服しますよ。』
 『先輩、私にヒントを与えてくれてありがとうございました。』
そう、言いながら“ちえみ”は、晋二郎の左頬に軽く唇を当てた。
びっくりした晋二郎は、
 『“ちえみ”、辞めろよ。』
 『駄目だよ。俺、そういう経験が無いんだから。』
“ちえみ”は、晋二郎に向かって、“ペロ”っと舌を出してから、
 『先輩、ごめんなさい。』
 『だって、先輩、本当に凄いんですもの直感力が。』
 『だから、“ちえみ”にヒントをくれたほんの“お返し”です。』
晋二郎は、照れながら“ちえみ”に質問を投げかけた。
 『“ちえみ”素朴な疑問だけどいいかな。』
 『はい、先輩。何でしょうか。』
 『昼間の会話は、もしかして愛知県民同士の会話じゃないか。そうだったら、石原も名古屋弁が出てもおかしくないんじゃないか。』
晋二郎の質問に“ちえみ”は返す言葉が無く、黙ってしまった。
 『もしかしたら、石原は、愛知弁のイントネーションを忘れている可能性があるかもしれないな。』
 『どう、考える“ちえみ”。』
晋二郎の質問に対して、“ちえみ”は、
 『先輩、ごめんなさい。“ぬか喜び”させてしまって。』
晋二郎は、そんな“ちえみ”に対して、頭を左右に振りながら、
 『“ちえみ”とりあえず時間だから、犬山署に行こう。そこで、双葉刑事と石黒刑事に今回の状況を説明して捜査の役に立ててもらおう。』
 『“ちえみ”、どうかなこの考えは駄目かな。』
“ちえみ”は少し、顔をあげて晋二郎の顔を見ながら、
 『はい、先輩。ありがとうございます。犬山署に行きましょう。』
そう、話しながら、晋二郎と“ちえみ”は、それぞれの荷物を持って部屋を出て、エレベーターに乗りロビーへと向かった。
晋二郎は、フロントで来週の金・土曜日の予約を確認してから、支払いを済ませ、駐車場へと向かい、車の暖気運転を開始してから、“ちえみ”を助手席に座らせ、自分は喫煙所へと向かい胸ポケットから煙草を取り出し火をつけ、吸いながら、頭の中で色々な事を考えていた。
晋二郎は腕時計で、時間を確認したところ9時55分を指していたので、煙草を灰皿で消してから“ちえみ”の待つ車へと向かって歩き出した。
 『“ちえみ”、まったかい。』
“ちえみ”は晋二郎の声に頭を左右に振って無言で応えた。
そんな、“ちえみ”に晋二郎が、耳元で、
 『俺の、大事な“ちえみ”はこんな事では負けない女性だよ。』
 『だから、元気を出して、ね、“ちえみ”』
“ちえみ”は晋二郎の声に、
 『先輩、ありがとうございます。“ちえみ”は、先輩の声を聴いて元気になりましたから。』
 『犬山署に行きましょう。』

 
4-8:情報提供 に続く





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