★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2020/07/16|その他
― クレイジー・キャト ― [男と女の風景・170]  
                  2020年7月9日(木) 00:00時 更新 
                            
   我が家のベランダ・ガーデン

 今回は、斑入りの苗木を3品、紹介します。
 
   ≪写真・左・・ユキヤナギ 
 ご覧のように、葉にはタテに斑が入っています。
 枝が細くて弱いために、全体がしなっていますので、針金で保護しています。
 
  写真・中・・ハクチョウゲ
 これは、生け垣などによく見られる≪白丁花≫の斑入りです。
 花は、可憐で、真っ白です。
 
  写真・右・・不明・どうしても名前が思い出せません
 これは、ツル性のようで、竹やぶなどを突き抜けるほどに、大きく伸びるそうです。
 

                    [男と女の風景・170]                                  
  ― クレイジー・キャト ―
 
 植田洋介は今日、久しぶりに新宿の本社に、午後から出勤してきた。
 コロナ対策のため、事務職員は皆、在宅勤務であり、職場はガランとして人の気配はなかった。
 だが今日は、4、5、6月の第一・四半期決算の締切日であり、各部署からの伝票データを集中処理する日だった。
 これは、いつもの通常処理であり、立ち会う程度で、ほとんど心配はなかった。
 だが、万が一にも問題が起きた時には、原因究明や修正の処理をしなければならないのだ。
 そんな時の司令塔が、一人は必要だったのである。
 植田は、経理課の決算係主任であり、実務の取り纏め責任者だったから、3月の年次決算の時と同様、出勤してきたのだ。
 そして、3時を過ぎた頃には処理が終わり、アウトプットされてきた。
 それから、主となる数字と、各種の指標をチェックすると、やっぱりコロナの影響で、業績はかなり悪化していた。
 植田は、各部署からインプットされた原始データを、もう一度チェックして、経営数値は悪いが、システムは正しく処理されたと判定した。
 そして、決算書を在宅中の経理課長に転送した。
 暫くして、課長からの返答があり、パソコンの画面で意見交換をした。
 課長からは、この決算書を部長に転送するとのことで、今日の仕事はこれで終わった。
 
 植田は、帰り支度をしてオフィスを出ようとした時、ふと、隣の総務部を覗いてみた。
 すると、福利課のデスクに誰かがいるのが見えた。
 ドアを開けて、そこに近づくと、樋口紗江子が熱心に書類を見ていた。
「ああ、樋口さんか、こんな日に出勤なの・・」
「アッ、植田さん・・」
 書類から顔を挙げた紗江子は、難しい顔をしていた。
「ええ、社宅扱いのマンションの契約書を、チェックしてるんです。この原本までは、電子化していませんので・・」
 聞けば、現場のある課長が、急遽辞めることになった。
 そこで、幹部用のマンションを退去するに当たって、その貸主への予告期間とか費用負担を、詳細にチェックしているとのことだった。
「まだ時間、かかるの・・」
「いえ、もうコピーを取りましたから・・。明日、主任と相談して・・」
「では、一緒に帰ろうよ」
 植田は辻堂に住んでいたが、紗江子が藤沢で、同じ通勤電車なのを知っていたから、声を掛けたのだ。
 
 それから、オフィスを出て、エレベーターに向かう所で、植田は目を見張った。
「オオ、今日はフットワークが、よさそうだね」
「ええ、プライベートは、いつもこんな感じで」
 ジーンズに半袖シャツは、よく見る普通の姿だった。だが、濃紺に青筋の入ったスニーカーだったし、背中には小さな皮のバッグを背負っていた。
 紗江子は、スリムな体にピッタリとした服装だったから、今日は、若者らしく軽快な躍動感にあふれていた。
 仕事中は、制服姿で、髪を後ろで束ねて、口紅だけの素顔を丸出しにした戦闘モードであり、そんな紗江子は良く見かけた。
 そのため、今日の紗江子は、職場でいつも見る様子とは、別人のように輝いて見えた。
 長い髪を風になびかせて、薄い紅をさした頬に、生々しい口紅が映えて女の美しさを演出していた。
 
 そして、二人は新宿副都心の超高層ビルから、新宿駅に向かい、湘南新宿ラインに乗った。
 まだ西陽が高い時間帯で乗客は少なかったから、二人は座席が離れていたが、座ることが出来た。
 すると、紗江子は背中のバッグから文庫本を取り出して、読み出した。
――フーン、読みたい本があって、電車の行き帰りで読むとはね。
  まるで、女子大生だよ。若々しくて、いいな。
  ああ、オレにもそんな時代があったよな。
 植田には、学生時代の自分が蘇ってきた。
 その頃は、自分の存在意義を求めて、懸命に探究したが、でも見つけられずに悶々としていたのだ。
 そんな自分を思い出して、まだ自分を高めようとする紗江子が、初々しくて新鮮に見えた。
 それから、電車が大船駅を過ぎた時、植田は紗江子に近寄って、「どう、軽く飲んでいかない」と声を掛けた。
 すると、クリッとした目で見上げながら、「ええ、いいですね」と頷いたので飲むことになった。
 
 植田は、藤沢駅の南口を出ると、直ぐに≪焼きトン≫の看板を見て、その赤提燈に入った。
 さすがにコロナ対策がされていて、透明のシートで区切られていた。しかも、四人掛けのテーブルには、二人が並んで座るシステムになっていた。
 二人がビールのジョッキで乾杯すると、満を持したように、紗江子が喋り出した。
「植田さん、新入社員の、あの時は忘れもしません」
「エッ、なんだっけ」
「ええ、あの経理課長に大声で怒鳴られた時、私を救ってくれたんです」
「ああ、そんなこと、あったね」
「しょんぼり立っていた私の傍に来て、『この樋口さんは、まだ新人ですので、私から良く指導しておきますから』って・・」
 植田は、五年も前のことを思い出して、あれを感謝しているなんてと、感心していた。
「実はあの伝票、私は交際費かと思ったんですが、課長から雑費でと言われましたので・・」
「そうか。経理はね、その点を、厳しくチェックしてるから」
「あの助け舟がなかったら、私は、今の会社、辞めてました」
「えっ、チョッと、オーバーでは・・」
「いいえ、あんな屈辱は、初めてでしたから・・」
――ああ、この子はプライドが高いんだろうな。
  きっと、両親からも、怒られたことがないんだ。
 紗江子の顔は、浅黒い肌をしているのに、薄化粧だった。だが、そのキメの細かい肌は、艶やかな若さを感じさせた。
――この子は、ツンとした澄まし顔だけど、美人だよな。
  しかも、さり気なく気取っているのに、ナチュラルなんだよ。
  そう、このタイプ、オレは好きだな。
  知的だし、このクリッとした目が可愛いし・・。
 そこに、注文したブタの焼肉が届いて、植田は、「さぁ、どうぞ」と食べるよう促した。
 
 それから植田は、ジョッキを掲げながら、その陰から、二年後輩の紗江子をさりげなく見ていた。
「君さぁ、聞いたことがあるんだけど、福利課の飲み会では、絶対に二次会には行かないんだって・・」
「ええ、一件目のお付き合いをするだけです。二軒目からは、各人の好き好みだと思います」
「そうか。そうかもな。ムリして付き合う必要はないよ」
 植田は、紗江子が仕事では正常なのに、仕事を離れると異常になると、そんな噂話を聞いたことがあった。
――ああ、紗江子は、割り切って考えてるのかも・・。
  でも、正常さをなくすのと、異常になるのとは、違うよな。
  だから、常識を無視してるだけで、自分流なんだよ。
 
「なに、君は、家に帰ってからとか、休の日には、なにか趣味でもあるの・・」
「ええ・・、漫画とかを描いてます」
「エエッ、漫画だって・・」
「ええ、ゲゲゲの鬼太郎みたいな、日本の妖怪・・。実は私、女子大ではマンガ・クラブに入ってましたから・・」
「ヘエー、ユニークだね」
 植田は、そんな紗江子に、なんとも言い難い奇妙さを感じた。
「夢に出てくるホラー、その妖怪の挿し絵と短文のコメントです」
「フーン、変った趣味だね」
「ええ、高校生の頃から、なぜか・・、そんな夢を見るようになったんです」
「そうか。でも、なにか切っ掛けがあったんだろうな」
 紗江子には、その原因が判ってはいたが、ビールを飲んで知らぬ振りをしていた。そして、取り皿に取り分けたブタ肉を、また頬ばり始めた。
 
 それからは、共通の話題がなくて、お互いに黙り込んでしまった。
 植田も、焼き豚を黙々と食べていた。
――そうよ。私、パパとエッチをしてたの・・。
  だって、中学生になっても、パパと一緒にお風呂に入っていたから・・。
  パパは仕事で、いつも帰りが遅かったから、お休みの日に・・。
  中学生になる時、ママが『もう一人で入りなさい』って、言ったけど、
  でも、ママには内緒で続けていたの・・。
  そう、ママがお花の実演会で、地方都市に出かけた時なんかに。
  だって、ママは華道の師範だったから・・。
  私、いつの間にか胸が出て来たけど、恥ずかしさはなかったな。
  だって、パパとの交流はお風呂だったし、
  お互いに冗談を言いながら、洗いっこするのが嬉しかったのよ。
  そして、高校生になって、チューをして、乳首を指先でコンコンとね。
  あの軽い刺激、たまらなかったな。
  それだけで、もう有頂天だった。
 紗江子は、またジョッキを掴むと、遠くを見ながら勢いよく飲んでいた。
 だが、脳裡には、幼いころからのお風呂の風景や、セックスを重ねた思い出が浮かんでいた。
――そう、母がいない日、一緒にお風呂に入った時よ。
  父に抱っこされていたら、私をバスユニットの縁に座らせたの・・。
  そうしたら、まだ無毛だったあそこを、ジッと見ていたわ。
  それからは、指で触られて、舌で舐められて、
  子宮を弄くり回されたの・・。
  私は、目をつぶって我慢をしながら、終わるのを待っていたけど、
  いつの間にか、快感になっていたの・・。
  そして、父のあれを口で咥えたわ。
 紗江子は、ふと植田の存在に築いて、フッと含み笑いをした。
 そして、ジョッキを掴むと、渇いたノドを潤している。
――そう、それから何日かして、セックスをしたの・・。
  少し痛かったけど、でも、快感の絶頂に、何度も昇り詰めたんだ。
  その時に、突然、脳裡に怪物たちが現れたのよ。
  その後で、怪物をネットで調べて、画像をチェックしたの・・。
  すごく様々な怪物がいて、でも、全部が妄想からの産物だった。
  そう、妄想の妖怪は、小さい頃に絵本で見た日本のお化けだったの・・。
  どっかに、セックスの願望と、その後ろめたさが、混濁していたんだね。
  そう、異常だったかも・・。
  でも、あの快感から、セックスを求めるようになったのよ。
 
「樋口さん、もう一杯、飲む・・」
 声を掛けられて、ハッと気がつけば、ジョッキの底が見えていた。
 紗江子は、慌てて「アッ、戴きます」と応えた。
 そして、植田は、手を挙げて店員を呼ぶと、ジョッキを追加してもらった。
 すると、紗江子は、またブタ肉を摘まんで、食べ始めた。
 植田は、そんな様子を見ながら、紗江子が仕事以外では異常だという噂を思い出した。
――世間一般には、正常と、非正常には、常識という尺度があるだよ。
  でも、非正常と、異常とは別物なんだ。
  そう、非正常は、正常ではないことを意識して、あえて非正常でいる。
  でも、異常は、異常であることを自覚していないんだ。
  だから、異常者は、自分のしていることが、常に正常だと思っている。
  さて、この子は、両者のどっちなのかな。
  今のところは、やや非正常だけど、でも、常識の範囲内だよな。
  この先、どんな異常の実態を見せるのかな・・。
  なぜか、急に興味が湧いてきたよ。
 植田は、紗江子を、会社の仕事だけで知る女であり、単なる2年後輩の女と見てきた。
 だが、今は、一人の大人の女であり、個性も、感性も、普通の女とはどこかが違うなと、思い始めていた。
 
「君は、ボーイフレンドとか、恋人は、いないの・・」
「ええ、私は結婚する気はないですし、私生活では、男性は邪魔なんです」
「ほぅ、それってマンガ生活をする上で・・」
「ええ、それもありますけど、会話をするのさえ面倒なんです」
「エッ・・、では、今はプライベートだけど・・」
「アッ、植田さんは、あの時助けて戴いたという、親近感がありましてね」
――ああ、あれを親近感と言うのか。
  違うよな・・。
「私、気持を解放出来る人って、少ないんですが、植田さんには親しみがあって、気が楽なんです」
「オオ・・、光栄だね」
――だって私、植田先輩だったら、セックスしてもいいかな、って・・。
  まぁ、これも、ある種の病気だけどね。
  でも、こんな気持になるのは、久しぶりだよね。
  そう、あれは父からのセクハラであり、調教されていたのよ。
  最近、新聞で≪性暴力≫の記事を読んだよ。
  被害者は、それがトラウマとなって、フラッシュバックが起きるの。
  だから、スリットをしたり、幻覚障害を引き起こす、って・・。
 紗江子は、そこまで思い至って、ふと学生時代に親友だった美奈子を思い出した。
――そうよ。あの子も虐待の被害者だったのよ。
  何度も、スリットをした、って・・。
  二人は、マンガ・クラブで意気投合して、仲良しになったの・・。
  アア・・、美奈子か。懐かしいな。
  そう、二人っきりになった時、突然、告白されたの・・。
  実は、男性恐怖症で、男性に近寄られると、それだけで怖いとのこと。
  だから、女子大を選んだ、って・・。
  その時、≪私もそうよ≫って、告白したんだ。
  それから、悲しそうなあの子を、私、ギュッと抱きしめてあげたな。
  だって、私の場合は、愛し合った父とのセックスだった。
  そう、あの優しい刺激に、たまらないほど恍惚としたの・・。
  だから、麻薬を求める狂人のように、私はさらに懇願していったのよ。
  一緒のお風呂が続いたから、優しい皮膚感覚に麻痺していたのかもね。
  お蔭で、私の子宮も神経も過敏症になってしまって、
  その挙句に、あの恐怖の怪物たちが現れたのよ。
  ああ、私は呪われているのかな・・。
  アッ、そうよ。あれ以来、美奈子とはレズっては、慰め合ってたな。
 植田は、紗江子が無意識にブタ肉を食べ続けていて、もう残りが少ないのに気付いた。
 そして、店員を呼ぶと、串焼きの盛合せを注文した。
 
 二人の間には、あまり会話がなかったが、紗江子には、飲んで食べる間合いが丁度良かった。
 植田も、紗江子の本性を見極めたいと思っていたから、敢えて放置しながら観察をしていたのだ。
――私は、子供が産めない女よ。
  でも、それは身体的にではなくて、精神的になの・・
  ええ、プライベートでは正常ではないし、狂った女なんです。
  仕事は、テキパキとこなして、ベテランOLに見えるのにね。
  それにしても、公と私の振舞いが、こうも違うとはね。
  ああ、私は二重人格なのかな。
 紗江子は、会社に出勤する日は、目が覚めると直ぐに戦闘モードになって、出勤の準備に突き動かされるのだ。
 そんな生活面でのギャップを、日々の中で自覚していた。
 そして今、紗江子は、なぜかワクワクするものを感じていた。
――私の子宮は、なぜか、もう疼いているの・・。
  して欲しいな、って・・。
  でも、いきなり懇願しては、いかにも好き者に見えるからさ。
  アナタ、ここは我慢よ。
「私、こんな楽しいお酒、久しぶりです」
「なにが・・」
「ええ、尊敬できる人と一緒だし、適度な会話がいいの・・。こんなお酒、また飲みたいな」
 そう言われた植田の気分は、満更ではなかった。
 だが、紗江子が非正常か異常かの見極めが、まだついていなかったから、黙って聞き流した。
 
 すると、紗江子が前を向いたまま、独り言のようにつぶやいた。
「植田さん、私、あなたとセックスをしたいな、って・・。ええ、そんな気持になってます」
「エッ、なんだと・・」
 横に並んでいた二人は、思わず向かい合って、相手の眼を見詰め会っている。
――ああ・・、私、本音を言っちゃったよ。

  しばらく、セックスをしてないから・・。
「オイ、なんでだ」
「ええ、父と似ているからです」
「エエッ、まさか、お父さんと・・」
「ええ、父はもう他界しましたけど、私の優しい調教師だったんです」
 植田は、紗江子が言わんとしている意味に気がつくと、「エエッ」と目を丸くして驚いた。
そして、平然とそう言う紗江子を、改めてジッと見詰めた。
――なんだ、この女は・・。やっぱり異常だよ。
  いきなり、エッチを求めてきて・・。
  しかも、父親を調教師だって・・。
  ああ、きっと父親とやりまくったんだ。
  でも、自分の異常さを、きっと自覚しているよ。
  ああ・・、そこがまた、超異常かも・・。
 
 植田は、暫くの間、どうしたものかと、複雑な心境で紗江子を睨みつけていた。
 そして、「僕はね、セックスには自信がないから・・」と、あえて申し訳なさそうに応えた。
 それは、先輩である植田にとっては、耐えがたいほどの屈辱だった。
 だが、植田の気持は、少しも動じてはいなかった。
 実は、学生時代に一度、軽い気持でセックスをしたことがあった。
 ところが、その相手の女性に、異常な程、執拗にに付き纏われた、そんな苦い経験があったのだ。
――女には、したたかな計算が隠れているんだ。
  女が誘惑する口車に、気楽に乗ってはいけない。
  それが、あの時の教訓だよ。
 
                             ― おしまい ―
 

 





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