★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2020/05/07|その他
 ○ 背中合わせの二人 ○ [男と女の風景・166]
             2020年5月7日(木) 00:00時 更新 
                            
  ○我が家のベランダ・ガーデン
 
 今回は、今咲いてる花を3品を、紹介します。
 
  ≪写真・左・・シマツルポ
 写真では判りずらいのですが、葉っぱに縦筋のシマ模様が入っています。
 ここ数年、こんな花は見た記憶がありません。
 この他に≪ヒメツルボ≫がありますが、去年購入したもので、これより生育はいいのですが、まだ花は見ていません。
 
  ≪写真・中・・ハナセキショウ≫
 これは、いわゆる≪石菖≫ではなくて、園芸種かと思われます。
 さらに≪ニワセキショウ≫もありますが、その方が石菖に似た葉の生やし方をしています。
 
  ≪写真、右・・不明
 これは5年くらい前に購入しましたが、やっぱり、久しぶりに花を見ました。
 どうも今年は、どこかに異変がありましたね。
 

                  [男と女の風景・166]
 
 ○ 背中合わせの二人 ○
 
 高城純一は、五月の強い陽射しを避けて、大きなパラソルの下で、ロッキングチェアーに全身を預けて、ぼんやりとしていた。
 そして、テーブルに置いたマグカップを手にして、朝食後に自分で淹れたコーヒーを飲んでは、その出来栄えを賞味していた。
 その光景は、悠々自適でのんびりとして、優雅でもあったが、孤独にも見えた。
 純一は、もう五十代半ばのサラリーマンだったが、実は未だに独身だった。
 しかも、純一の父はガンで早死にをして、母は持病の心臓発作で、5年前に突然、この世を去った。
 そして、兄弟もいなかったから、天涯孤独だった。
 
 純一は、休日の午後は、いつもこのロッキングチェアーの指定席に仰け反っていた。
 そして、緑の芝生越しに見える七里ガ浜を眺めては、突き抜ける大自然を満喫していた。
――ああ、オレの人世、様々にあったよなぁ。
  アプローチしてきた女も、色々にいたよ。
  でも、ズッと独り身だからって、なにも後悔はしていないな。
  そう、フリースタイル、それがオレの生き様だから・・。
  誰にも邪魔されない、そんな至福の人世だったよ。
  オレは、しがないサラリーマンだけど、仕事は全力で疾走してきた。
  だから公私ともに、なんの悔いもない。
  仮に、今、即座に死んだとしても、いいんだ。
  それが、天が命じた寿命なら、ね。
 
 ここ最近は、平日でもコロナ騒動で在宅勤務を強いられていた。
 今日も11 時に、出勤している部下の課長から、特別な報告事項はないとの連絡があった。
 あとは、15時にも、連絡が入ることになっていた。
 自宅では、特にやることもなかったから、純一は暇を持て余していた。
 ただ、母は草花が好きだったから、庭の一角にお花畑を作っていたし、鉢植えもかなりあった。
 だから、母が愛した花々をを枯らすまいと、水遣りだけは欠かさなかった。

 そんなこともあって、純一自身も興味を持ち始めて、花屋から鉢を買ってきたりもしていた
 
 それから、15時に異常なしの報告を受けると、純一はスーパーに買い出しに出かけることにした。
 いつものことで、サイクリング用の自転車を使うのだが、後輪の左右に大きな荷物用のバッグをぶら下げていた。
 この近郊にはいくつものスーバがあったが、それぞれに、肉や魚、野菜、弁当などの品揃えに特色があった。
 だから、欲しい食材によって、行き先は違っていた。
 今日は、豚肉と野菜サラダのストックが欲しくなって、江ノ島駅に近いスーバに行くことにした。
 少し陽が傾いた134号線に出ると、先週の渋滞とは違って、かなりクルマはスムースに流れていた。
 
 それから、買い物を済ませて、人との間隔をあけてレジに並んでいた時だった。
 隣の列にいる女性と、何気に目が合った。
――エッ、見たことがあるような気がする。
  あの女、誰だっけ・・。
 女性は、薄いブルーのブラウスにジーパンの軽装だった。

 さらには、長い髪をヘアバンドでびったりと決めて、オデコが丸出しの顔だった。
 しかも、お互いにマスクをしていたから、知り合いのような気がしたが、思いつかなかった。
 それからレジが終わって、荷物台で向かい合った時に、純一郎は、サイクリング用のキャップを挙げて、さり気なくマスクをアゴまで下した。
「アッ、高城さんだぁ」
 そう声を挙げた女性が、マスクを下にずらした。
 しかし、その顔は、口紅だけのスッピンに近い薄化粧だったから、まだ判らなかった。
「私よ。クラブ・ジャガーの美紀(みのり)ですよ」
「オオ、チーママか」
 いつもはカールした長い髪を垂らしているのに、今は髪をアップにしていたから、判らなかったのだ。
「なに、この辺に住んでるの・・」
「そう、そこのタワーマンション」
「オオ、すごいね。でも、見直したな。夜も美人だけど、この素顔の方が、上品でいいよ」
 純一は、美紀がオミズとして夜の仕事でする厚化粧より、昼に見るOL達の素顔の方が好みだった。
 純一は、買った物をビニール袋に入れ、美紀はキャスター付きのバッグに入れている。
 
 それから、二人並んで店を出ると、ベンチが見えて、純一が声を掛けた。
「どう、そこに座って、ビールでも飲まない」
「アア・・、いいですね。実は、私も冷えた缶ビールを買ってきたんです」
 二人は、それぞれ自分のビニール袋から缶ビールを取り出すと、乾杯をして飲みだした。
「高城さん、最近は、お店にお越しにならないですね。ママと心配していたんですよ」
「ああ、コロナ騒動もあるけど、最近は、酔いの回るのが早くてね」
「でも、高城さんは、心が静かでおっとりと構えているでしょ。だから、若い子からも大人気で、トップ・スリーに入るんですよ」
「そうかな。僕は女性を追っかけないから・・。お蔭で、未だに独身だけどね」
「そう、その大らかな自分流、それがいいんですよ」
――でもね、実は、女性には自信がなかったんだ。

  高校も、大学でも、あの青春時代に、女の子とは話せなかった。
  気持だけが昂ぶって、普通の会話が出来なかったんだ。
  仕事の上で、女の子と話せるようになったのは・・、
  会社に入って5年もして、主任時代になってからだよ。
  そう、憧れた女性、片思いの女性、そんな女はいっぱいいたよ。
  オレは、一見、平然として見えるけど、内心では勝手に燃えていたんだ。
  でも、イザとなるとブローチ出来ないんだ。
  どうしても気が弱くてね。
 しかし美紀は、若い女の子をダシにして、自分も純一の穏やかな優しさに魅力を感じていた。
 だが、離婚した前亭とのトラウマがあって、どこか引いていた。
――そうよ。私には、もう男なんて要らない。
  この先どうなるかは知らないけど、でもいいの・・。
  寿命の限り、生きれば・・。
 
「私、最近はコロナでお店が閉鎖だから、片瀬海岸とか江の島をぶらぶらするだけなの・・。だから、ストレスが溜まって・・」
「そうか。だったら、僕の家、七里ガ浜だから、遊びにおいでよ」
「ああ、いいですね」
 純一も同じ心境だったから、話の流れで、そんな提案をしてしまった。
「芝生の庭から海を眺めて、ビールでも飲めば、気分転換になるよ」
「ワァー、面白そう。ねえ、高城さん、今日、行っていいですか」
「アア・・、陽が長くなってるし、箱根の夕陽もいいかも・・」
 美紀は、ひっそりとした独り暮らしに、もう飽き飽きしていたし、純一の独身生活も見てみたかった。
 そして、そんな会話から、買い込んだ食品を自宅に置いてから、江ノ電の七里ガ浜駅で、純一が出迎えることになった。
 ただ、純一は、美紀が酒に強いのをに気づいて、ウイスキーと日本酒を買いに、また店内に戻った。
 
 純一と美紀は、駅に着く時間を連絡し合っていたから、電車が到着すると直ぐに合流できた。
 それから、上り坂を登りながら、改めて美紀を見ると、さっきのブラウスの上に、真っ赤なウインドブレーカを着ていた。
 そして、ジーンズの足首がキュッと締まっているのに、腰回りは意外としっかりとした肉付きなのに気付いた。
――やっぱり、夜の化粧をしたケバイ美紀より、
  そう、素顔の飾らない美紀がいいな。
  いかにも日本女性の気品が溢れているよ。
  もしかして、この女、血統がいいんでは・・。
  ウーン、謎めいているな。
  いつか酒に酔わせて、素性を語らせるか。
 
 純一は、中学、高校時代から、母以外の女性は異性であり、全くコンタクトがなかった.
 だが学生時代に、ある女性からアプローチされて、仲良くなって、その有頂天の時に、フラれてしまった。
 しかし、それまで女性とは没交渉だったために、そのフラれた理由が理解できなかったのだ。
 それ以来、女性を知ろうとして、これまでも様々な女性を、内々に自分の眼で眺めてきた。
 それは、人柄や人間性だけではなかった。
 顔の表情や行動に表現されたものは、その動機となる原因や理由があるはずで、それはなにかと深く考えて、勝手に推測してきた。
 お蔭で、女性を見ると、それなりにキャラクターや行動パターが、直感的に判るようになっていた。
 純一は、クラブで出会い、今日はスーパーで出会い、その時々の偶然から、この美紀の正体を確かめたいと、そんな興味が湧いてきた。
 
 純一は、自宅に着くと、そのまま庭に案内した。
「ワァー、素敵な庭ですね」
 そこには、青々とした緑の芝生が広がっていた。
 美紀には、丸テーブルに立てた大きなパラソルと、ロッキングチェアーが、先ず目についた。
 そんな光景に、歓声を挙げていたのだ。
 見れば、庭を囲む白い柵の上には、ジャスミンとモッコウバラのツルが延びていて、白と黄色の花を咲かせていた。
 さらに進むと、やや高台にあるその庭は、少し南側に傾斜していて、眼下には七里が浜の海岸が広がっていた。
 そして、江の島が間近に見えたし、箱根の山々が連なって見えた。
 話しによれば、冬に晴れていて空気が澄んでいると、伊豆大島まで見えるという。
「こんな庭付きの展望台って、素敵ですね」
 美紀は、海を見下ろしながら、感じ入っていた。
「アア・・、私もこんな家に住んでみたいな」
 自分が住むタワーマンションとは違って、ここには庭の草木や海風の匂いが感じられた。そんな自然の風景の中に溶け込んで、悠然と生活できるなんて羨ましいと思った。
 もう陽は傾きかけていて、浜辺は暗く灰色の中に沈もうとしていた。
 そして、穏やかな海風が、頬に流れていた。
 
 純一が、テーブルに用意した缶ビールを持ってくると、二人は、芝生に敷いたシートに並んで座って、乾杯した。
 ふと振り向いた美紀が、「まぁ、なんと素敵な家なの・・」と声を挙げた。
 純一は、自慢の我が家について語り出した。
 ここの一軒家を建てたのは、父が親からの遺産相続もあって、結婚して間もなくだった、とのこと。
 父は、学生時代にヨーロッパを旅して、クロアチアの白壁に明るい赤の屋根が気に入って、自分で家を設計して、注文したそうだ。
 このオシャレな洋館が自慢で、息子には何度も語っていたし、知人たちを招いていた。
 お蔭で純一郎は、御成小学校から鎌倉高校まで、一貫して江ノ電で鎌倉の学校に通っていた。だから、友達は皆、鎌倉に住んでいた。
 
 やがて、箱根連山に薄くかかった雲が、夕陽に赤く染まっていった。
 それは、単に美しいだけではなくて、なん層にも重なった雲が、陽の当たり具合で、茜色から灰色へと変化していたのだ。
――ああ、この雲の広がりは雄大だよね。
  雲があるから、大空の無限さを感じるね。
  そうよ。私なんて、チッポケなんだ。
  宇宙から見れば、アリみたいなものよ。
  イヤァ、コロナみたいに見えないかも・・。
  私って、これから、どこへ行くのかな。
 美紀は、フイッと感傷的になると、缶ビールを飲み干した。
 それを見た純一は、急いで缶ビールを持ってきて、声を掛けた。
「あとは、ワインも、ウイスキーもあるから、気が済むまで飲んでいいから」
「私、お店では飲むけど、プライベートでは飲まないの・・。酔うから」
「大丈夫だよ。人生の気分転換だから、気が済むまで、どうぞ。酔ったら、タクシーを呼ぶから」
 
 純一は、夕日が箱根に沈み始めると、庭を照らすライトを点灯した。
 そして、美紀をパラソルの中に呼び寄せると、ロッキングチェアーに座らせて、自分は木造りの椅子に腰を下ろした。
「どう・・、のんびりとして、気分もほぐれるでしょ」
「ああ、いいですね。私、こんなの初めて・・」
 だが、暗くなってきた海は、もう美紀の視界から消えていた。
「美紀さん、僕のオヤジは青森だけど、君は、どこなの・・」
「ええ、私は宮崎、ですよ。しかも山奥の村なんです」
 純一は、「そうか。お互いに遠いんだね」と言ったっきり、黙ってしまった。
――まぁ、お互いに、中高年の独身同志だよ。
  しかも、共に、遠い田舎から出てきたんだ。
  そう、そんな偶然で出会った。それだけだけど・・。
  なんか、親しみを感じるんだよね。
「私は今、あのクラブにしがみついていますけど、それは仮の姿なんです」
 美紀が、静かに語り出したけど、純一は黙ったままだった。
「私は生きるために、割り切ってホステスをしています。ええ、生まれ育った故郷へ帰るのは、イヤなんです。とにかく、負け犬にはなりたくない。その意識が、私の今を支えています」
――ああ、プライドの高い女、なんだ。
  まぁ、誰しも過去を引き摺ってるんだ。
  それが,プラスかマイナスかは別として・・。
  そう、オレだって、今が絶頂期で、後は堕ちて行くだけだ。
  でも、両親にも会社にも感謝しているから、マイナスの遺産はないよ。
  だから、オレは幸せだった。
  アッ、でも、学生時代にフラれたよ。
 
 それから、二人の会話は途切れていた。
「でも、もしこの湘南で、誰かと結婚したら、国に帰らなくても・・」
「アア・・、そうですよね。肩肘を張って、そう、ただ突っ張ってるだけですよね。それって、意味のないプライドかも・・」
 美紀は、頭の回転が良かったし、聞き分けが出来る冷静さがあった。
「でも、私は、離婚歴のある女なんです。だから、再婚はムリ・・」
――そうか。それで、この女の根底には、男への不信感があるのか。
  客商売で、お愛想を振りまくけど、本音は違うんだ。
  フーン、仮面をかぶった演技なのか。
  だって、普通なら、そんな自分の素顔を、易々とは曝け出さないよ。
  でも、溜まっている辛い思いを吐露したい、って、そんな時もあるんだ。
「しかも、私は亭主の母と争った挙句に、我が子を跡取り息子として、取られてしまったんです」
――ああ、そうか。それはマイナスの過去だよね。
  自分の腹を痛めた女って、それだけ子供には愛着があるって・・。
 美紀は、込み上げてきた泪を、さり気なく指先で拭った。
「私は、息子を忘れようと、自分に言い聞かせてきました。でも、お酒を飲むと、3歳児のままのあの子を思い出して・・」
 純一は、それを聞いて、雰囲気を変えようとした。
「どう、家の応接間で飲まない。外気も冷えて来たし・・」
 
 それから玄関に回って、応接間に上がると、美紀はレトロ感のある雰囲気を見回しながら、ソファーに座った。
「この部屋の雰囲気は、重厚なカーテンや暖炉もあって、素敵ですね」
「これも、オヤジの趣向でね」
「私、田舎育ちですから、こんな洋風に憧れるんです」
 美紀は、もう気を取り直していた。
「どう、お腹空いてない・・。乾麺のソバがあるから、作るよ」
「ああ、いいですね。でも、私が作りますよ」
 そう言って、二人は立ち上がると、キッチンに入っていった。
「では任せるけど、実はタラの芽の天麩羅を買って来たから・・」
「エエーッ、タラの芽、ですか。子供の頃から、大好物なんです」
「そうか。好みが合ってるよ」
 それから純一は、そんな食材をテーブルに置くと、ドンブリも並べて、後は美紀に任せることにした。
――ああ、気分を治してくれて、よかったよ。
  湿った話を聞くのもいいけど、辛くなるからな。
 
 それから、二人は出来上がったソバと、タラの芽の麩羅を頬張って、懐かしい香りを感じながら笑みを浮かべていた。
――ああ、いいな。このソバの味わいは・・。
  しかも、こんな美人と一緒で、楽しいよ。
  でも、もしかして、この先に、なにかが待ち構えているかも・・。
  エエッ、ヤバイ修羅場かもよ。
 純一は、幸せを感じる時に限って、なにか危険なものを感じるのだ。
 
                       ― つづく ―
 
 





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