★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2019/11/07|その他
★ 三代の女で知った自分 ★  [男と女の風景・154]
 
                         2019年11月7(木) 00:00時 更新 

  ○我が家のベランダ・ガーデン
 
  ≪写真・左・・ヤマラッキョウ
 この≪山ラッキョウ≫は、高さが30センチもあり、山地や草原では50センチにもなります。
 間もなく≪糸ラッキョウ≫も開花しますので、次回辺りに掲載します。
 
  ≪写真・中・・クササンゴ
 これは、確か≪草珊瑚≫として購入したはずですが、これをネットで調べると、≪千両≫の別名だそうです。
 ただ、これは花が地味で、実がこのように濃い橙色に輝きます。
 
  ≪写真、右・・ツメクサ
 この≪爪草≫は、葉が鳥の爪に似ていることから、この名前に。
 実はこれ、秦野の≪じばさんず≫の園芸コーナーで購入したものです。道路の246号沿いにあり、案外と珍品があって、時々出向きます。

 
                          [男と女の風景・154]
                   ― つづき・3 ―

 
  ★ 三代の女で知った自分 ★
 
 それからは、篠原は、真凛のいる店≪紫蘭≫には、週に2、3回行っては、気分のいい夜を過ごしていた。
 そして、日曜日の午後は、遅いランチを二人でするようになった。
 藤沢駅で3時に待ち合わせて、レストランでお互いの存在を意識しながら、食事をするのだ。
 篠原には、遠い青春時代のトキメキが再来していた。
 真凛は、もう祖母には篠原との交際を宣言していたから、そんなデートは公認で許されていた。
 だが、ある時、真凛が「今度の日曜日は、私が、夕食を作りましょうか」と言い出した。
 思わぬ提案に、篠原は驚いたが、「それもいいね」と大歓迎だった。
 
 篠原は、妻が家を出て行ってからは、のんびりと一人暮らしをしていた。
――まぁ、女房とは、ほとんど会話がなかったな。
  平日は、残業があったり、飲んで帰ったり、で、
  女房も子供も、もう寝ていたから・・。
  休日だって、付き合いゴルフや家の中でゴロンとして、
  そう、子供たちとの会話もなくて、子育ては女房任せだった。
  まあ、いい父親ではなかったな。
  もうずっと前から、実態は、家庭内別居だったのかも・・。
 そして篠原は、朝の食事を、従来通りにトーストに、ハムエッグを作り、買い置きの野菜サラダと牛乳で済ませていた。
 しかし、それに飽きた時は、インスタント・ラーメンを食べていた。
 昼食は会社の食堂で済ませ、夜はファースト・フードか、立ち食いソバと、飲み屋のお摘みで、腹を満たしていた。
 そんな日課だったから、土曜日には近くのスーパーに自転車で行って、食材を仕入れていた。
 そして、週の半ばには、コンビニに立ち寄って、惣菜やサラダなど、ナマ物の買い増していたのだ。
 そんな生活も、もう慣れて来ていたし、こういう日常だと思えば気楽なものだった。
 ただ、町内で決められたゴミ出しだけは、慣れるまで戸惑った。
 
 お蔭で、スーパーの出入口にある花屋から、花が咲いている鉢を、もう10鉢以上も買ってきて、ベランダに並べては眺めている。
 以前だったら、そんな草花には目もくれなかったのだ。
だが、その気になれば、なかなかにいい趣味だなと、最近では自分を見直している。
――まぁ,花を眺めて余生を過ごすのもいいか。
  平穏無事だし、癒しにもなるし・・。
  多分、春には植え替えや、肥料やりが、ひと仕事だろうが、
  それは、花屋に聞いたり、ネットで調べれば・・。
  そうだよ。鉢もこれだけ増えれば華やかだし、いい気分転換だな。
 しかし、日々の生活は平坦で変化がなったし、部長職の仕事はもう閑職に回っていた。だから、職場ではのんびりとして緊張感もなかった。
 そこに、真凛のアプローチがあって、日曜日の夕食作りが加わったのだ。
 お蔭で、淡々とした妻との暮らしとは違って、心からワクワクする喜びが、この50代になってから、突如として湧いたのだ。
――まさか、こんな展開があるなんて・・。
  だって、もう家族からは頼られないし、見放されたオヤジだよ。
  最後は、孤独死だろうけどな。
  まぁ、それも仕方がないか・・。
 
 その日曜日の午後13時に、篠原は小田急線・本鵠沼の駅で、真凛と待ち合わせた。
 真凛は、いかにも若者らしく、パステル・カラーのピンクのカーデガンを着て、いつもの細身にピッタリのジーンズで現れた。
 にこやかに手を振って歩いてきた真凛を、篠原は握手で出迎えた。
 さっそく、篠原は駅に近いスーパーに立ち寄って、夕食の食材を買うことにした。
 すると、真凛が「なにか、食べたいものは・・」と聞いてきた。
「そう言えば、最近は、肉を食べてないな」
「アッ、それでは牛肉の赤ワイン煮込みなんて、どうですか」
 そんな話の流れで、肉の売り場に行くと、真凛は和牛の塊りを買い、ついでに牛スジのパックも買った。
「篠さん、牛スジも煮込むと美味しいんです。少し多めに買って、タッバーに小分けにして冷凍すれば、いつでも食べられるし、便利ですよ」
――ああ、そういう手があったか。
  真凛は、独身生活を知ってるな。この気配りがいいんだよ。
  女房には、こんなセンスなかったからな。
 それから、篠原は朝食で食べる定番の食パンや牛乳、ポテトサラダ、惣菜など、自分の1週間分を買い込んだ。
 さらに、パンが飽きた時のために、乾麺やご飯パックも追加した。
 
 篠原の自宅は、駅から近いマンションの1階にあったから、わずかながら狭い緑の庭があった。
 そして、真凛が来るのが判っていたから、部屋は整理して、掃除をしておいた。
 ただ、きれい好きだった妻は、部屋の中を整然として出て行ったから、ほとんど篠原はそのままにしていた。
 そのため、部屋も台所も、生活感のない間の抜けた空間になっていた。
 真凛は玄関を入って、部屋を見るなり、「まぁ、清潔な部屋ですね」と声を挙げた。
 そして、二人はキッチンに入ると、早速買ってきた品々をテーブルに出した。
篠原は分担して、自分の食材を、いつもの通り冷蔵庫や棚に仕舞った。
 そして、真凛は、大きな牛肉の塊りを切り分けて、牛筋も適度に切った。
 牛筋はアク抜きが必要だからと、別の小鍋でお湯を沸かして、火を点けた。
 それから、玉ネギを刻むと、オリーブオイルを深い圧力鍋に垂らして、炒めだした。
 篠原は、そんな様子を見ながら、自分が作る時のお手本を学んでいた。
 そして篠原は、赤ワインの栓を抜いて、二つのワイングラスに注ぐと、真凛に声を掛けた。
 お互いに腕を腰に回すと、嬉しそうに乾杯をしてから、軽くキスをした。
 篠原には、こうしてワインを飲みながら、真凛と一緒にキッチンに立っていることが、嬉しかった。
――ああ、新婚当時を思い出すな。
  あの頃は、晴れがましい気分で、ラブラブだったよ。
  でも、人間は、なぜこうも気持の持ち方が変わるのかな。
  恋人と、逃げた女房、そのギャップ・・。
  改めて考えると、なにが原因なんだ。
  えっ・・、そうか。
  先に、自分が仕事に没頭して、女房に関心を亡くしたのか・・。
  そうだよな、オレは無口で、ぶっきら棒だから・・。
 小鍋が沸騰したところで、真凛は牛スジを投入して、しばらく様子を見ていると、アクが出てきた。
 そこで、牛の赤身と牛スジを、赤ワインで煮ていた圧力鍋に移した。
 
 すると、真凛は、あとは煮えるのを待つだけとばかりに、ワイングラスを持って、居間のソファに座った。
 そこは、いつもテレビを見ている定席なのか、篠原がワインを飲みながら待っていた。
「お疲れさん。アリガト」
 そして、二人は笑顔で向かい合うと、どちらからともなく抱き合って、キスを求めていった。
 だが真凛は、篠原を求める気持が強かったのか、いつもよりネットリとして執拗だった。
 篠原もそれに応えて、真凛の耳元に唇を這わせて息を吹きかけると、首筋にまで唇を押していった。
 すると、敏感な皮膚が感じて、ブルッと震えると、真凛は首筋を伸ばして吐息を吐いた。
「ああ、感じます」
 それを聞いた篠原は、右手を背中から肩にそっと這わせた。
 その軽い刺激にたまらずに、真凛はゾクッ体を震わせると、反射的に背筋を伸ばした。
 そんな反応に、篠原は右手を脇の下から、そっと乳房に這わせた。
 もう全身が男の刺激に過敏になっていたから、硬くなった乳首はそっと触れただけで、ギクッと体が折れた。
 そして、乳房に手の平を這わせ、優しく揉んでやると、吐息を何度も漏らした。
 ふと気になって、篠原がキッチンを見ると、圧力鍋から、水蒸気が噴き出していた。
 真凛もそれに気付いて、慌てて飛び出すと、火加減を調節して、セットをし直した。
 
 二人はもう、気が削がれてしまって、冷静にソファーに座り直した。
 すると、意を決したのか、真凛が神妙な顔で語り出した。
「篠さん、私、実は二年前に、乳ガンをやりまして・・」
「エッ、乳ガンだって・・」
 篠原は、突然の告白に、真凛を見詰めたまま言葉を失った。
「ええ、それで、右の乳房から患部を摘出しまして・・。ええ、実は、右はペッタンコなんです」
「えっ・・、でもそうは見えないよ」
「実は、何枚もパットを入れてまして」
「フーン、そうか・・。それで転移とかは、ないの」
「ええ、半年に1回、チェックしてまして、今のところは・・」
「そうか。再発しないことを、祈るよ」
 篠原は、こんな若い子がガンだなんてと驚いたが、そう言って慰めるのが精一杯だった。
――ああ、触ったのは左だったよな。
  でも、可哀想に・・。再発しないと、いいけど・・。
 
「篠さん、こんな私ですが、いいですか・・」
「なにを言ってるの、君の人格は変わらないよ。立派だと思う」
 すると、真凛は余程嬉しかったのか、両手を差し出してきた。篠原は、それを受け止めると、ギュッと握ってやった。
「あのさ、今の元気を続けることだよ。だって、君より、僕の方が年と共に擦り切れさて、ダメ人間になってるもん」
「いいえ、そんな・・」
「そう、女房には離婚されて、でも、真凛には気持が癒されているよ。そのお蔭で、元気を取り戻したんだ」
 すると突然、真凛が「篠さーん」と叫ぶと、胸に飛び着いてきた。
「おお、いいよ。真凛は可愛い。精一杯、頑張ってる。そう・・、今まで通り、生きていけばいいんだ」
 真凛は、篠原に抱きついたまま、何度も頷いて、その励ましに応えている。
――そうか。父親がいない淋しさと、ガンとの戦いか・・。
  不安におののきながら、戦々恐々と生きてるのかも・・。
  オレが、傍にいてやるしかないか。
  人って、他人に頼られて、自分の存在意義を知るのかも・・。
  正に、社会的動物の証左だよ。
  これって面白いけど、今になって知るなんて、バカだよな。
 篠原は、自分の懐に崩れて身を任せている真凛を見ながら、背中をそっと擦ってやった。
 
「篠さん、実は祖母も乳ガンを患ったんです。私はその話を聞いていましたから、ちょっとした異変で、早期発見が出来たんです」
「そうなのか。身近にいたから、か・・」
「ええ。でも、母だって、子宮頸ガンをやったんです」
「エッ、まさか・・。遺伝してるの・・」
「さぁ・・、それで、私はガンに注意をしていたんですが、やっぱりでした」
――そうか、女系家族に、そんな系譜もあったのか。
  きっと、遺伝子が、代々受け継がれているんだな。
  アッ、オレの遺伝子は・・。
  父は母を追い出したな。オレは、女房に逃げられた。
  さて、祖父は、どうだったのか・・。
  我が家にも、悪い因縁が遺伝してるかも・・。
  息子が、そうでなければいいが・・。
 
 それから、30分程して、テーブルに向かい合った二人の前に、牛肉の煮込みが並んでいた。そして、いかにも美味しそうなフランスパンもあった。
 二人はまたワインで乾杯すると、フォークを取った。
 篠原が食べると、かなり煮込まれた赤身の肉は、味が染み込んでいて柔らかく、肉が縦にほぐれていくようで美味しかった。
 篠原は、その久々に出会った味わいと触感に、思わず親指を突き出した。
「ああ、美味しいよ。これは、三ツ星のプロの味だよ」
「ええ、実はこれ、祖母の得意な定番料理でして・・。時々、祖母が作るのを見よう見まねで、作ってみました」
 それを聞いた篠原は、「そうなら、タッバーに詰めた牛スジ、ひとつ、ママにプレゼントしたら」と提案した。
「まぁ、いいんですか。喜びますよ」
 真凛は、自分の腕前を、牛スジ元祖の祖母に味わってもらえると思うと、嬉しかった。
 
「でも、あの大ママのワザを、シッカリと盗んでいるよ。そうか。そんなことも、脈々と伝承されてるのか・・」
――ああ、オレも、代々引き継がれているものが、あるかもな・・。
  じっくりと点検をしたことはないけど・・。
  そう、オヤジもブスーッとして、無口で、ぶっきら棒だった。
  ウーン、オレもそっくり似てるかも・・。
  真凛の親子、三代を見てきて、我が家の三代が見えるような気がする。
  そう、きっと祖父も、無口で劣等感が強い男だったんだろう。
  実は、子供の頃から、あんなオヤジが大っ嫌いだったし、
  オレは、他者への劣等意識が強過ぎて、誰とも話せなかったんだ。
  懸命に自分と戦って、やっとオレは普通になれた。
  でも、女房が家を出ると言った時、オレは無言でうなずいたし、
  無言で見送った。
  そんな窮地に立つと、黙って通り過ぎるのを待ってるオレがいる。
  そう、それが我が家に三代、引き継がれた系譜かも知れない。
  ああ、社会勉強になるな。

 
                   ― おしまい ―
 
  ≪読者のみなさん≫
 今回の出来栄えは、良くなかったですね。
 テーマと≪つづき3≫の結末が、チグハグになってしまいました。
 お蔭で、タイトルも変えざるを得ませんでした。
 これは、ストーリーも結末もなく書き続けた、その結果です。
 ご容赦の程です。次回は、もっと頑張ります。
                       橘川 拝
 
 
 





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