★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2019/10/10|その他
 ★ A型の女 ★ [男と女の風景・153]
                2019年9月26(木) 00:00時 更新  
 
   我が家のベランダ・ガーデン
 
 現在、平塚の≪花菜ガーデン≫で、我ら山野草の同好会が、10月13日(日)まで展示会を開いています。
 100点を越える展示品や、安価な余剰苗の販売もしており、毎日100名を超える来場者が訪れてくれます。
 皆さんも是非、気分転換でご来場ください。
 今回の写真は、私の展示品を紹介するつもりでしたが、私のデジカメでは暗くてムリでした。
 
  ≪写真・左・・ハコネシダ
 この≪箱根シダ≫は、イノモトソウ科で、アジアンタムと同じ仲間です。
 江戸時代に、オランダ商館のドイツ人医師が、箱根で採取して、この名前にしたとか。産前・産後の特効薬として使われたとか。
 
  ≪写真・中・・タイワンアオネカズラ≫
 この≪台湾青根蔓≫は、絶滅危惧種で、沖縄にも自生していますが、台湾が有名です。
 この緑の葉は、この9月に芽を吹いた新芽ですが、直射の日光で、もう葉焼けをしています。
 実は、この葉の下に、5ミリほどの太くて、薄緑色の根茎が張っているのですが、それが≪青根≫の名前の由来です。
 
  ≪写真、右・・ナキリスゲ
 この≪菜切り菅≫は、この細い葉が固くて、菜が切れそうなことが、名前の由来です。
 スゲ属は、一般に春に開花しますが、これは秋に開花するのが特徴です。
 この鉢はまだ3年物で、あと3年もしたら大きくなり、密生することでしょう。
 


               [男と女の風景・153]
   ≪ 注 ≫
 今回は、前回の作品と同じような状況を設定して、A型の女性だったら、どう反応し、どう行動するか。
 ふと、そんなことに思い至って、書いてみました。

 
  ★ A型の女 ★
 
 ある日の午後、庶務担当の女の子が、支社長室のドアをノックして入ってきた。
「支社長、花岡さんという方から電話がありまして、お邪魔したいのですが、ご都合はどうですか、とのことです」
「そうか。では、電話を僕に回して・・」
 横浜支店長の塩谷は、ふと先週、支店の前で偶然、出会った花岡を思い出した。
 あれは、お客先に挨拶に出かける時で、慌ただしくって取り込んでいた。
 だが、久しぶりだったから、「来週にでも支社に遊びにおいで。必ずだよ」と、念押しをして別れた。
 
 花岡朋美は、塩谷が秘書課長になる前に、人事課採用係の主任をしていた頃に採用して、総務課に配属した女性だった。
 だが、その後は、社内の立食パーティなどで立ち話をする程度で、ほとんど接触はなかった。
 先日来た浜田の話で、初めて知ったのだが、なぜか退職して、今は保険代理店の事務員になっていた。
――そう言えば、浜田君は、来なくなったな。
  B型って、一旦NOとなったら、NOなんだ。

  まぁ、誰もが自分流だけど、
  特にB型は、終わったことは,ケロッと忘れて、振り向かずに、
  平然と、次のターゲット、次のテーマに向かうんだ。
  だから、男にフラれても、泣かないし、なんの気にも留めないんだ。
 
 そして、5時を回った頃、庶務担当に案内されて、花岡が静かにに支社長室にやってきた。
「おお、花岡さんか、元気そうだね」
「ええ、お蔭さまで」
 そんな挨拶代わりの言葉を交わしながら、ソファに案内した。
「先日は、突然出会った時、エッ、見たことがある、って、思ったのよ。君が『花岡です』って、名乗ったから、直ぐに思い出してね。でも、びっくりしたなぁ」
「ええ、私もです。まさか横浜で、とは・・」
「でも、君は相変わらず真面目で、しっかりしてるね」
「いいえ、そんな・・」
 朋美は、いつも控え目で口数は少ないのだが、仕事も接客も丁寧で、信頼できる社員だった。
 二人は懐かしさもあって、お互いに親しみの笑みを浮かべていた。
「あの当時から、もう20年か」
「ええ、もう私も四十路ですから・・」
「そうか、君とは10才、違うんだな。まぁ、いい中年だね」
 
「ところで、君たちは、同期入社の女子会はないの・・」
「ええ、あの年度は、学卒女子の営業職がまだなくて、事務職が5名だけでした。でも、そのうちの2人が、チョッと仲が悪くて・・」
「そうか。まぁ、女同志って、難しいからな」
 見れば、朋美は、薄化粧なのか顔の肌が白くて、艶があった。
 そして、両足を斜めにそろえて、ソファーに座っていた。
――そう、この背筋を伸ばした姿勢なんだよな。
  凛として、水辺に立つ鶴のようだよ。
  このさり気ない振る舞いが、いいんだよな。
「あの時、私は、役員の秘書がやりたかったんです」
「ああ、面接の時に聞いたら、そう言っていたよな。でも、あの時は空きがなかったんだ」
「ええ、残念でした。でも、会社説明会で、塩谷さんに出会ったから、御社に応募したんです」
「エエッ、そうなの・・。じゃあ、僕のファンだったんだ」
「ええ、ずっと・・。今でも・・」
 まさかの発言に、塩谷は黙ってしまって、ただ見つめるしかなかった。
――A型は普通、自分からは、自分の本心を言わないんだよ。
  そう、自分からは告白しないで、ジッと待ってるんだ。
  それなのに、今でもオレのファンだなんて・・。
  まぁ、昔っからのよしみで、友達感覚があるのかもな。
  でも、それって、オープンマインドで、気を許しているのかも・・。
 
「ところで、君はなぜ、会社を辞めたの・・」
「ええ、私、実はノイローゼになったんです」
「ああ、そうなんだ・・」
 塩谷は、軽く聞き流して、朋美の出方を待った。
 こんな時、A型は、本人が言いたくないなら、言わないだろうから、放って置くのが適切なのを知っていた。
「ええ、こんな話は、ご迷惑でしょうから・・」
「アッ、いや、気にしなくていいよ」
「ええ、育児を乗り越えて、娘が小学校に上がって・・、やれやれと気が楽になった時期でした。主人が、主任に昇格して喜んでいたんです。そしたら、なんと毎日、課長に苛められたんです」
――ああ、あの美智代と同じで、弱い亭主という境遇だな。
  でも、花岡はA型で、粘り強く我慢するタイプだから・・。
  きっと、亭主を元気づけようと、一緒に苦しんだんだろう。
「お蔭で、主人は、気が変になってしまって・・。ええ、家に引き籠って、会社に行かなくなったんです」
 朋美は、そんな苦しい状況を思い出したのか、顔を歪めて、哀しい思いを浮かべている。
「私は会社、娘は学校、そんな時でしたので、病院の精神科で看てもらったら、入院を宣告されたんです。でも、主人の親に相談して、実家が近いから面倒を見てもらって・・」
 朋美は、目に涙を浮かべると、思わずバッグからハンカチを取り出して、目頭に当てた。
「すみません。なぜか悲しくて・・」
「いや、気にするな。いいよ。腹に溜まってるものがあるなら、聞いてやるから・・」
「はい。それから、主人の実家を行き来して3年、頑張りました。それで、私がノイローゼに・・」
「そうか。病人がいると、気持が滅入るからな」
「でも、あの人は一向に回復しないんで、私が鬱病になりかかって・・。それを見かねた主人の親が、離婚してもいいと言ってくれまして・・」
「でもさ、君なりに頑張ったんだもの、仕方がないよ」
 ハンカチで拭いた朋美の眼は、もう赤くなっていた。
――降って湧いた災難に、辛かったんだろうな。
  まぁ、様々な巡り合わせで、そんな結末を迎えたんだろうけど・・。
  でも、人生って、不可抗力ってあるよな。
  平穏無事、そんな日常が幸せなのかも・・。
 
「そうしたら、3か月後に上司の総務課長から、応接室に呼び出されて叱られたんです。『君は、離婚したんだって。それは、言ってくれないと』って・・」
「なぜかな。そんなことは、プライベートでしょ」
「でも、『その時は、相談に乗ってやったのに』って・・」
「余計なお世話だよね。しかし、なぜ、バレたの」
「ええ、離婚届と同じに、人事課で私の家族票を旧姓に戻したんです。でも、社内では従来通り、結婚した田中性のままでと、お願いして・・」
「と言うことは、人事課がプライバシーを漏らしたのか。許せんな」
 塩谷は怒った顔で応援したが、朋美は浮かぬ顔をしている。
「それで、その時、課長が慰め会をやろうと言い出して。でも、子供の食事を作るからって、お断りしたんです」
「なんだ、その慰め会って・・」
「ところが、戸塚駅に着いて改札を出た所に、課長がいたんです」
「でも、それって、変だよね」
「それで、下を向いて無視をして歩いていたら、追いかけてきて、強引に居酒屋に引っ張られて、軽く飲んだんです。そして、帰りに強引にキスをされまして・・」
 塩谷は、もう言葉を失っていた。
――なんだ。うちの課長連中は・・。
  セクハラは罪だ、って判ってないのか。許せんな。
  職場の風紀が、乱れすぎだよ。
  でも、うちの支社でも、あり得るかもな。
  専門家にコンプライアンスの講話をしてもらって、注意を促すか。
 
 すると、終業のチャイムが職場に響いてきた。
「アッ、定時だよ。花岡さん、食事でもと思ったけど、どう・・」
 朋美は一瞬、どうしたものかと迷った表情を見せた。
 そんな顔付きを見て、塩谷は、ここは押してはいけないと思った。
「ああ、無理しなくてもいいから。じゃあ、またの機会にしようか」
 すると朋美は、反射的に「はぁ・・」応えてしまった。
 だが、内心では、残念な思いがよぎっていたのだ。
――ああ、返事が遅れたよ。
  私って、一瞬の迷いがダメなのよね。
  そう、絶対に支社に来いよと、って、言ってくれたから・・。
  だから、あえて夕方に来たのに・・。
  なんで、OKだって即答しなかったのかな。
  もっと、色々と話をしたかったな。
 そんな煮え切らない様子を見て、塩谷、ふと朋美がA型なのを思い出して、もう一度声を掛けた。
「君は、これから、なにか用事でもあるの・・」
「アッ、いいえ。特にはありませんけど・・」
「じゃあ、ほんの軽く、どう・・」
 塩谷は内心、「A型って、意思表示をしないから、面倒なんだよな」と思っていた。
 だが、朋美は、もう一度、押してくれて嬉しくなっていた。
 
 それからまた、塩谷は、例の通り総務課長の席に出向いて「今日の現場は、問題ないか」と確認した。
 すると、また「支社長、今日の方も、美人ですね」と、謎かけをしてきた。
「そう、花岡さんは、昔、僕が人事の時に採用して、庶務課に配属した人なんだ。先日、偶然、支社の前で会ってね」
「ヘェー、そうなんですか」
「今は保険代理店のOLらしいけど・・。相談事があるって・・」
 もう最近は来なくなった美智代の時と同様に、庶務担当の女子もさりげなく聞いていたから、もう公認だった。
 二人にとって花岡は、かつての大先輩だったから、敬意を示す気にはなっていた。
 だから、塩谷と花岡が部屋を出る時には、軽く会釈をして見送った。
 
 それから塩谷は、いつも部下達と行く居酒屋に案内した。
 そこは、支社の課長連中とも時々行く店で、店長や女将さんとも顔馴染みであり、塩谷は声を掛けると、隅のテーブル席に座った。
 聞けば、花岡はビールが飲みたいと言うので、ジョッキを頼んだ。
「なに、職場の人たちとは飲むの・・」
「ええ、たまに、ですけど・・。でも、皆さん、自分優先の人が多くて、私は隅っこで細々と・・」
 そこにジョッキが届いて、二人は乾杯した。
 朋美は笑顔を見せたが、塩谷には、なんとも言い難い寂しげな陰を感じた。
――どこかに憂いを感じさせる、そんな心情なのかな・・。
  そういえば、昔、『愛は優しさだ』って、本で読んだことがあるよ。
  そう、学校で荒れる中学生、彼等の心の中には憂いがある。
  その憂いの傍に立つ教師は、人偏のイであり、その心は優しさだって。
  この花岡も、傍にいてあげたい、って、そんな気にさせる女だな。
  しっかり者なのに、寂しがり屋で・・、
  でも、人に甘える、その甘え方を知らない。そんな女・・。
 見れば、制服なのか黒いスーツに白いブラウスを着込んで、地味ながらキッチリと決めていた。
 塩谷は、女性の警察官や乗り物の乗務員たちが制服を着ている姿が、見るからに凛々しくて好きだった。
 だから、目の前にいる朋美の端正な容姿にも、好感を持っていた。
 
「でも、君は、昔から変わらないよね。美人のままだし、控え目で、しっかりしているし・・」
「いいえー、最近は、土曜とか、日曜の夜になると、ふと、寂しくなるんです。ええ、気分が、奈落の底に堕ち込んでいくような」
 塩谷は、それに応えずに、ジョッキを持つと、黙ってビールを飲んでいた。
「私、今は娘が心の支えですけど、でも、もう高校生だし、大人ですから・・。ええ、自分自身がしっかりしないと・・」
 朋美は、虚ろな目で、独り呟いていた。
「そうなんですよね。仕事中は夢中になれるのに、定時に事務所を出ると、さてどこへ行こうかな、って・・。しばらくは、行く宛てもなくて、街を彷徨うんです。私って、変ですよね」
――ああ、重症かも・・。
  もう寂しさを通り越して、孤独な世界に嵌っていのるかも・・。
  このA型のキャラは、何事もいつも真剣に考えて、
  そう、自分を追い込むんだよ。
  でも、少しだけ自覚症状が残っているのが、最後の救いかも・・。
  しかし、この女は、危ないかもよ。
 
「君は、なにか、気分転換をする趣味はないの・・」
「ええ、私、無趣味でして」
「では、お酒なんて飲まないの・・」
「ええ、職場の皆さんとは、たまに・・」
「君は、戸塚だったよね。地元で知ってるスナックなんてないの・・」
 気落ちしたまま首を振る朋美を見て、塩谷も気分が萎えてきた。
――酒を飲んで、鬱積したストレスを発散すればいいのになあ。
  でもまぁ、女性だから、仕方がないか。
  アッ、そう言えば、戸塚には一軒だけあるよ。
  知人に紹介された店で、ママが優しいから時々行くけど・・。
  そう、スナック≪ポエム≫だったら、いいかも・・。
 話をしているうちに、ジョッキのビールもかなり少なくなっていた。
 そんなこともあって、塩谷は声を掛けた。
「君さぁ、戸塚のスナックに案内するけど、どう・・」
「エッ、そんな所、あるんですか」
「うん。そこは月に1回位しか行かないけど、ママが優しくってね。気分転換には、いいかも・・」
 朋美は、塩谷を見る目に生気が戻ってきた。
 
 それからJRに乗って戸塚に着くと、塩谷たちは、駅の西口に出来た大きな商業ビルを抜けた。
 そこは、昔の面影が残る下街で、さらにその裏通りに廻った。
「こんばんは」
 塩谷が、2階にある≪ポエム≫のドアを開けて、声を掛けた。
すると、ママが「アラ、いらっしゃいませ」と、笑顔で迎えてくれた。
 ママは小太りだったが、少し垂れ目で笑うと可愛らしくて、いかにも人が良さそうだった。
 そんな様子を見て、朋美は即座に「ああ、本当に優しそう」と安心した。
 そして、ママは黒いスーツ姿に、利発そうに整った顔付きの朋美を見て、内心「この子は、一級品だね」と直感していた。
 ママが水割りを作るのを見ながら、塩谷は朋美を紹介した。
「この子は、花岡さんで、昔、うちの会社にいた同僚でしてね。ずっと、戸塚に住んでるんだって・・」
「アラ、私は踊場ですよ」
「エッ、私は中田ですから、同じバス路線ですね」
 そんな会話で、朋美はもう気持が楽になって、いいスナックを紹介してくれたなと、嬉しくなった。
「ママね、もしこの花岡さんが来たら、僕のボトルでいいから・・」
「はい。こんな素敵な方なら、是非とも、また来てほしいわ」
「この子はね、かの有名な聖心女子大を出ていて、人柄だけではなくて、いい仕事もするんですよ」
「ええ、一目、見ただけで判りますよ。第一印象で圧倒されたし、一言で言うなら、聡明な人、かな・・」
 塩谷が売り込んでくれて、ママが絶賛してくれたのが、朋美には嬉しかった。
 お蔭で、鬱積していたモヤモヤのストレスを忘れていた。
 
「どう、この店」
「ええ、ママが素敵ですね。いい家柄のお嬢様のようで、心の底から優しい人、そんなことを感じてます」 
 それを聞いた塩谷は、ママが厨房に入ったのを見て、朋美にささやいた。
「これは、僕の推測だよ。ママがね、以前、私は芸者の子、って、言ってたから・・。相手の男性は多分、良家の御曹司の血筋だと思う」
「ああ、そうかも、です。でも、本当にああいう上品な人が、世の中にはいるんですね」
「そう、宮様の末裔みたいでしょ。だから、僕はママを見ながら酒を飲むのが、最高の癒しなんだ」
――ああ、判るな。男性なら、みんな、そうでしょう。
  恋人や妻を越えて、優しい慈母観音、そんな存在ですよ。
「でも、子供の頃は、苦労したって、言ってたよ。しかも、踊りや三味線の修行が厳しかったし、その分、女の子の遊び方を知らない、って・・」
――そうか、世界が違うからね。
  人、それぞれに、いいも悪いも背負ってるのかも・・。
  私だって、あの主人と結婚して、別れて、母と娘と3人暮らし・・。
  そう、そういう運命だったのかも・・。
  あの人のいい主人が、上役のイジメに弱かったのも、仕方のない事・・。
  だから、今を一生懸命に生きるしかないのよ。
  そして、気分転換のお酒、そう、それから趣味よ。
  そうだ。市役所とか区役所で、カルチャー教室を探してみよう。
  なにか、ボランティアでもいいかも・・。
 朋美は、偶然、昔懐かしい塩谷と出会って、こうして今、一緒に飲んで、しかも刺激を貰ってる、それが嬉しかった。
――ああ、神さまが、この偶然を私に下さって、感謝します。
  毎日を寂しく過ごしている私に、頑張りなさいって・・、
  ええ、エールが聞こえました。
「塩谷さん、こんなに楽しいお酒で、私は刺激を貰いました。私は今、嬉しいんです」
「そうか。よかったよ」
 塩谷には、どこが、どう良かったのか判らなかったが、今日見た中で最高の笑顔に,ホッと安心した。
 
――私は、生きてる限り、自分に負けない。
  そう、私は今、私に誓うよ。
  いずれ、娘はお嫁さん、母はあの世、私は独りぼっちになるの・・。
  だから、あと30年は、孤独で生きる。
  その目標で、どう生きるかの計画を立てる。
  それが、今年の宿題かな。
  アア、いいですね。この課題。
  私、ガンバルぞ。
「塩谷さん、私、自分の課題が見えました」
 ずっと、黙々と考え込んでいた朋美が突然、言い出して、塩谷は何事かと面食らった。
「ええ、未来への実行計画を、立案します。それが出来ましたら、報告に上がります。これからもズッと、見守っていてください。私、頑張りますから・・」
「おお、ここに連れて来た甲斐があったな」
 塩谷は、計画の中身は判らなかったが、元気を取り戻したのを見て、溌剌だった新入社員の朋美を思い出していた。
 
 そして、≪ポエム≫を出ると、朋美が壁に寄り掛かって、恥ずかしそうに塩谷を上目使いで見ていた。
「どうしたの・・。そんなに見つめられると、恥ずかしいよ」
 そう言われても、朋美は含み笑いをして、ジッと見ていた。
――なんだよ。この女・・。
  A型なのに、大胆にオレを誘ってるのか・・。
  この子供のような甘え方、なんなんだよ・・。
 塩谷は、端正な顔に輝きを取り戻した朋美を見て、頭が錯乱して、たまらないほどに可愛く見えた。
 咄嗟に手を取ると、抱きしめて、朋美を引き寄せた。そして、吸いつけられるように、口づけをしていった。
 軽く押し付けただけだったが、朋美はそれに応えてくれた。
 それから、二人が顔を見合わせると、朋美は塩谷の顔を見ずに言った。
「塩谷さん、久々に最高の夜でした。私、心から感謝してます」
 
ー―そうなんだよな。A型の女は、慇懃で控え目なんだ。
  しっかりと、自分の意志を持っているのに、それを言わないんだ。
  八方美人だから、イヤな男にでも合わせるけど、
  でも、内心イヤだったら、絶対にイヤなんだ。
  でも一旦惚れると、地獄まで一緒についてくる。
  今の口づけは、OKだし、日陰の女でもいいと、腹を括ったんだ。
  そう、A型の女を惚れさせると、なにをやっても、優しく見守ってくれる。
  ある意味で、日本的な女性で、芯の強さがあるんだ。
  
もし、この女に惚れられちゃったら、
  オレはこの女と、どう付き合えばいいのかな。
  
                       ― おしまい ―
  
  ≪注≫

 なお、≪O型の女≫も、考えてみますが、自信はありませんので、もしダメでしたら悪しからず。
 
 

 





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