★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2019/08/22|その他
☆ カオスのはぐれ者 ☆  [男と女の風景・148]   
 
               2019年8月22(木) 00:00時 更新  
 
  我が家のベランダ・ガーデン
 
 今回は、≪セキショウ≫の3種を紹介します。
 ≪石菖≫はショウブ科で常緑のため、庭石の回りとか、盆栽の前草などとして、好んで使われます。
 
  写真・左・・姫・セキショウ
  ≪写真・中・・黄金・セキショウ≫
  ≪写真、右・・斑入り・セキショウ≫

 
                                  [男と女の風景・148]
                    − つづき・4−
  ☆ カオスのはぐれ者 ☆
 

 あれから真凛は、本社企画室に出勤しては、データの分析に没頭する毎日が続いた。
 だが夏の酷暑と慣れない毎日の電車通勤で、夏バテを起こしていた。
 それでも、真凛は、出勤することを最優先としていたから、しばらくの間は≪Bamboo≫にも立ち寄らずに、真直ぐ家に帰っていた。
 そして、風呂にゆっくりと入って、肩コリをほぐしては、養生に努めていたのだ。
 土曜、日曜の休日も、朝の起床を遅らせて、しかも昼寝をしたりして、疲れを取ることに専念した。
 そんな日々から、父がサラリーマンとして30年以上も勤め続ける勤勉さが、身に染みて判ってきた。
 母は、休日にゴロゴロしている父を非難していたが、それも仕方がない事だと判って、父に詫びたい気持にもなっていた。
 
 それから次の週に、中島主任と小野田と真凛の三人は、首都圏と地方との生活意識の違いについて、ミーティングを持つことになった。
 お互いに、担当テーマを分担していたから、各人の分析結果をコメントやグラフで出し合った。
 その上で、重要なアイテムをピックアップして、その意味づけや、内容の議論をした。
 さらに、データの重要度を評価して、報告書に纏めることになった。
 午後13時に始まった議論は、終業のチャイムが鳴って初めて、皆が4時間もかかったことに気付いたくらい、没頭していた。
――ああ、今日は充実してたな。
  仕事に無我夢中になれるって、素晴らしいよ。
 
 そして次の日、ミーティングで二人から出された資料を、真凛は再度チェックしていた。
 すると、デスクのすぐ横に人の気配を感じて、フッと顔を上げた。
「アッ、支社長」
「おお、真面目にやってるね」
なんと横浜支社長の岡田が、心配そうに見つめていたのだ。

「仕事は、どうなの・・」
「ええ、お蔭さまで、すっごく面白いです」
「そうか。今、梅沢常務に挨拶したら、君は期待できるって・・。中島君、年増だからって遠慮せずに、ビシビシと指導してくれよな」
「いえ、もう本庄さんは積極的だし、分析力もあるし、助かってます」
「そうか、まぁ、宜しく」
 岡田は、真凛を売り込んだ責任もあって、西田課長や中島主任に「宜しく頼む」と、フォローの挨拶に来たのだ。
 オフィスから出ようとする岡田を、真凛は追いかけた。
「支社長、本当に有難うございました。私、やっと自分に目覚めました」
真凛が深々とお辞儀をすると、岡田は、優しく肩を叩いて励ましてくれた。
「まぁ、頑張れよ。君は脱皮するんだ。君だったら、出来る」
――ああ・・、支社長、私、ガンバリマス。
 真凛は、頭を下げたまま、湧き上がる感動を噛みしめながら、涙をこぼしていた。
 
 そして、ミーティングの2日後には、中島主任が、10ページを超える『意識調査報告書』(要旨)を完成させていたのである。
 しかも、調査票やグラフで表示した参考データを、添付別紙で30ページも取り纏めていたのだ。
 パソコンによる編集とは言え、膨大なデータを纏めて、宣伝活動に生かす基本データに纏めるには、相当な頭脳と努力が必要だった。
 真凛が驚いたのは、どうも中島が、議論をしている段階から、報告書の構想を考えていたことだった。
――ああ、この構想力って、すごいな。
  論旨が一貫して展開されているし、説得力があるよ。
  さすが、主任。尊敬しちゃうな。
  いつか私も、こんなレポートが出せるのかな・・。
 そんな中島の姿を見て、真凛は男性に対する優越感が消えていた。
 父親の仕事の中身は知らなかったが、会社で部長である父親に対しても、無意識のうちに尊敬の念が湧いていた。
 そして、報告書は明日、課長に提出して、来週には梅沢常務への報告会が開かれるとの、ことだった。
 
 すると、中島が「今夜、完成祝いをしたいけど。どう」と言い出した。
「アラ、主任、珍しいですね」
「うん、本庄さんの歓迎会も兼ねてね」
 小野田は内心、「もう本庄が来てから3週間も経つのに」と思ったが、そこは黙って飲み込んだ。
 すると小野田が、主任はお酒に弱いから、めったには誘わないし、職場の飲み会もジュースだけだと、真凛にささやいた。
 それからは、小野田が案内役で先頭に立つと、新橋の烏森口にある居酒屋に入った。
 まだ早い時間だったから、混み始めてはいたが、三人はテーブル席に座れた。
 すると「僕は、小のジョッキで、ビールを」と言い出した。
「アラ、主任、大丈夫ですか」
 小野田が心配そうに言うと、はにかみながら頷いている。
 そして、女性二人は大ジョッキを注文して、お摘みは小野田に任せた。
 乾杯をしてからも、中島は無口だっが、笑顔を浮かべて、二人の部下を眺めていた。
「でも、主任、報告書の纏め方は、素晴らしかったですね」
「ええ、私、初めてでしたけど、出来上がりを見て、尊敬しましたよ」
 二人に褒められても、中島は、ただ照れているだけだった。
 
 それから、冷やヤッコやおでん等が来て、摘まんでいる時に真凛が口火を切った。
「主任、私はバツイチで独身ですけど、主任は・・」
「ああ、僕も独身で・・」
「アラ、それではお二人さん、お似合いでは」
「いえ、私は、もう35ですし、結婚してからは束縛感で、息がつまりそうでした。だから、もう・・」
「アッ、僕も、のんびりと、自由でいたいんだな。まあ、女性に弱いのもあるけど・・」
「あら、私は、新婚1年目ですけど、ラブラブでいいですよ」
 小野田が、チョッとおどけて言ったが、二人は黙って見ているだけだった。
 
 見ると、中島が、未だ小ジョッキを半分も飲んでいないのに、もう真っ赤な顔になっていた。
「でも主任、もしかし、ムッツリ助べえでは・・」
「エエッ、まさか、でしょ・・」
 真凛がズバリ切り込むと、小野田は驚いて声を挙げた。
だが、中島はチラッと真凛を見ると、さらに赤い顔をして照れている。
「主任、まさかですよね」
 小野田は信じられぬ思いから、真顔で迫った。
「イヤァ、困ったな。でも、これは秘密だよ。いぃい、約束してくれる・・」
女性達がうなずくのを見て、中島は酔った勢いもあって、恥ずかしそうに言った。
「二人とも既婚者だから言うけど、実はX videoが趣味でね」 
「エッ、主任、それって、もしかしてAVですよね」
 小野田がまともな顔付きで確認すると、中島は真顔でうなずいた。
「ああ、お酒ってヤバイよな。自分で秘密をバラスなんてさ」
「でも主任、中年の男性でしたら、そんなのは普通ですよ」
 助け舟を出したのは、真凛だった。
 先日別れた亭主が、隠れてPCのネットで見ていたのを、真凛は知っていたのだ。
 ある時、なに気に閲覧履歴をチェックしていたら、なんと、かなりの頻度で見ていたのだ。
――ああ、男って、そうなのよね。
  でも、堂々と白状するなんて、立派よ。
  だって、もっとウジウジとして陰気な人って、いるんだもの・・。
 男の助べえな生態を知る真凛には、中島がむしろ白状しただけに、許せる男に見えてきた。
 
「私、もう気取ってる年ではないので、言いますけど、その世界に嵌る男性は多いと思いますし、生理的に異常ではないと思いますよ」
「ああ、そう言ってくれると、気が晴れるよ。嬉しいな」
「でも私、なにか不潔感があって・・」
 すると真凛が、「なにを言ってるの。新婚さんは、夜な夜な、それを求めているのでは・・。だから、普通のことよ」と、サラッと言った。
「まぁ、そうですけど・・」
 戸惑った小野田に、真凛はダメ押しをした。
「あなた、あれをビデオで撮ったら、ああいう顔で昇り詰めるのよ」
「ああ、そうかも・・、でも、恥ずかしいな」
 二人は統計が専門で真面目な連中だったが、突然、露骨なセックスの会話に引きずり込まれて、気分が載ってきた。
 
すると、真凛がまた、大胆に突込んでいった。
「でも主任、セックス経験は少ないんでは・・」
「ウーン・・、実はね、一度もなくてね」
「アラー・・」
 主任は戸惑ったが正直に応えると、また小野田が嬌声を発した。
――ああ、マトモに暴露してるよ。
  この人は、正直者だね。
  そうなの・・、こういう真面目な人は、キャリアがないのよ。
  もしかして、あの茂木さんも、そうかも・・。
  今度、聞いてみよぅ。あの人、なんて応えるかな。
 そんなシモネタで盛り上がると、職場でしかめっ面をしている3人には、親近感が湧いていた。
――ああ、仕事は面白いし、良きメンバーに恵まれたよね。
  そう、横浜支社長に、感謝、感謝だね。
  でも、そうか。
  人生、その気になれば、幸運が巡ってくるのかも・・。
  つい、1ヶ月前までは、モヤモヤのカオスを彷徨って、
  進むべき道が見えなかったのに・・。
  そう、私はカオスのはぐれ者だったのよ。
 真凛は、新橋から電車に乗ると、そんな幸せな気分を噛みしめながら、藤沢に帰ってきた。
 
 そして真凛は、仕事に区切りがついて、3人で祝杯を上げた余勢をかって、いつもの≪Bamboo≫に、久々に立ち寄ることにした。
 すると、いつもの通り茂木がカウンターに座っていた。
「茂木さん、こんばんわ。失礼します」
 真凛は、そう言って、茂木の隣りに座り込んだ。
 相変わらず黙然として、反応もなかったが、真凛はそんな様子にはもう慣れていた。
 ママが作ってくれた水割りで、また勝手にグラスを合わせると、独りで乾杯をした。
――ああ、アナタ、頑張ってるね。褒めてあげるよ。
  でもね、この初心を忘れないことよ。
  ウーン。そうだね。良きメンバーに恵まれてるし・・。
  支社長の応援もあったし・・。
  ああ、ヤル気、モリモリだよね。
 
 暫らくして、ママがトイレに立つと、突然、茂木が話し出した。
「僕は、先日、職場の若い子を食事に誘って、『友達からお付き合いを』って、申し出たんです。でも、『ごめんなさい』って断られました」
「その人には、誰か、いい人がいるんでは・・」
「いや、それはないって、本人が言ってたな・・」
「私は最近、仕事がとっても面白くなりましてね。それに時間を忘れて、没頭してますけど・・、その人も、仕事が面白いんでは・・」
 真凛は、それとなく危険を察知して、予防線を張った。
「ああ、レポート提出は残業では出来ないから、家でやってるとか・・」
「そう、それですよ」
 すると茂木は、「でも、相当な決意で、突進したんだけどな」と嘆いた。
――ああ、それって、いきなりはムリよ。
  もっと、軽い友達感覚でないと・・。
  だって、あなたは、無愛想な堅物って、見られてるはずよ。
  そのレッテルを剥がして、陽気な茂木に転換しないと・・。
  でも、そのキャラは、もう直らないか・・。
 
「では、真凛さん、僕と友達からは、どうですか」
「エッ・・」
 真凛は、まさかと思ったが、やっぱり矛先が自分に向かってきた。
 しかも、珍しく自分から覗きこんでくる茂木は、顔面が蒼白で、真剣だった。
「ええ・・。私、今言った通り、新しい仕事に没頭してまして・・。ええ、お蔭様で、このお店は1か月ぶりなんです」
――ああ、やっぱり私に来たか。
  トライする気になったのは、拍手したいけど、
  でも私、男性は、もういいわ。
「では、僕とはダメですか」
「いえ、今は多忙だし、体調不良で、生活に余裕がないんです」
 真凛は、そんな女性の扱いを知らない茂木を見て、もう達観した気分になっていた。
 そして、ママがカウンターに戻ると、二人の会話は途切れてしまった。
――でも、まだ中島主任の方が、愛すべき人物かも・・。
  ああ・・、しかし、あの地味なエロ中年も、やっぱり不潔だよね。
  いいよ。私は独りで生きていくから、放っておいてよ。
  この先になにが見えるか、そんなことは判らないけど・・、
  今はこの道しかないから、今の仕事で頑張るよ。
  そう、この仕事って、私にはすごい価値があると思うの・・。
  でも、茂木さん、あの強烈なビンタを有難う。
 
                              ― おしまい ―
 
 





     コメントする
タイトル*
コメント*
名前*
MailAddress:
URL:
削除キー:
コメントを削除する時に必要になります
※「*」は必須入力です。