★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2019/08/08|その他
☆ カオスのはぐれ者 ☆  [男と女の風景・148]   
             2019年8月8(木) 00:00時 更新  

   ○我が家のベランダ・ガーデン
 
  写真・左・・サルワタリノキ
 この苗は、確か30年ほど前に購入したのですが、その時に、この≪猿渡の木≫と言う名前だったかと、薄々ながら覚えています。
 でも、この夏の真っ盛りに、こんな奇妙な花を咲かせるなんて、面白いですね。
 
  ≪写真・中・・スイレンボク
 この≪睡蓮木≫は、南アフリカの東岸が原産です。
 この花が睡蓮に似ていることから、この和名になりました。
 写真よりもっと濃いい紫色の花ですが、今年は植え替えたため、花付きが悪いようです。
 
 ≪写真、右・・イトラッキョウ≫
 これは、確か苗から4年物の≪糸ラッキョウ≫ですが、栄養たっぷりなのか、こんなに密生しています。
 秋には、小さな紫色の花が咲いて、今年はその可愛らしさが楽しめそうです。
 原産地は、九州西部だそうです。
 

                          [男と女の風景・148]  
                     ― つづき・2―

 
  ☆ カオスのはぐれ者 ☆
 
 それから、真凛は11時過ぎには帰宅しようと、≪Bamboo≫を出ることにした。
 ただ、茂木には痛恨の思いがあったから、カウンターの席を降りると、背中越しに最敬礼をした。
「茂木さん、本日は、大変失礼を致しました。お詫びいたします」
 真凛は、頭を下げたまま、しばらくはじっとしていた。
 ビンタを張られてから、高慢だった自分に目が覚めて、痛烈な反省をすべきだとの思いが、湧き上がっていた。
 
 だが店を出て、歩きながらも真凛の中に、あの課題が重たく構えていた。
 今後、自分が脱皮するには、なにを手始めにして、どう進めたらいいのか、その道筋が、皆目見当がつかなかったのだ。
――普段は地味で、控え目なのにな。
  そうか、お酒よ。飲み過ぎて、調子に乗り過ぎたのよね。
  酔っ払って、隠れていた悪い自分が、ニョキッと顔を出したの・・。
  男性には意識過剰で、ライバル心から、私は見下していたのよ。
  アンタ、≪禁酒≫よ。出来るの・・。
  ああ、自信はないけど、やる。
  ただし、付き合いで止むを得ない時は、一旦は断るけど、少々は許す。
  でも、ビールはジョッキで1杯、水割りは3杯を限度とする。
  よし、決めた。自分に誓うよ。
 そんなことを、暗い夜道を歩きながら、ぼんやりと考えていた。
 だが、ふと、肝心の亭主と離婚する話を思い出した。
――そうだよ。良樹との離婚だよ。
  アンタ、どうするの・・。本気なの・・。
  そうよね。一緒に暮らす意味がないからね。
  ただ、ダラダラとマンネリで、惰性で同居してるのよ。
  本人に言ったら、なんて言うかな。
  案外と、同意するかも・・。
  そうだ。もっと仕事を貰って、没頭するのがいいかも・・。
 真凛は、アパートに着くと、ぐったりとしてキッチンの椅子に座り込んでしまった。
 
 すると、深夜の最終電車で帰ってきた良樹が、テーブルにうつ伏して眠っている真凛を見つけた。
「真凛さん、ここで寝てはダメですよ」
 いきなりそう声を掛けられたが、ぼんやりとして夢の中だった。
 さらに肩をゆすられて、目を覚ましたが、年下の夫、良樹を虚ろな目で見上げていた。
「ああ、寝ちゃったよ。私、今日も酔っ払ってるの・・」
「僕も飲んできたけど、程々にした方がいいんでは」
「そう、決めたの・・、禁酒をするって・・」
「エエッ、本当に決めたの・・」
「そうよ。私、自分に誓ったの・・」
「ああ、すごいね。決断と実行か。素晴らしい」
「ねえ、お願い。お冷、欲しいんだけど・・」
 良樹は、了解したとばかりに、グラス2つに冷蔵庫のアイスを入れると、ペットボトルの炭酸水を入れた。これは、真凛が好む定番だった。
 良樹は、真凛の横に座ると、珍しく「禁酒に乾杯しよ」と言い出した。
 真凛は、言われるままに背筋を伸ばすと、寄り添ってグラスを合わせた。
 
「アッ、良樹・・、これ、なに、この香り・・」
「エッ、なにが・・」
「あなた、浮気をしたでしょ」
「ナニ、なんだって・・。僕はそんなことしないよ」
 良樹は一瞬、顔を歪めたが、大袈裟に驚くと、あえて大きな声で否定した。
「でも、これは女の香りよ。あまり高級品ではないけどね」
「なにを言ってるの・・。そんなこと、あるわけないでしょ」
 真凛は、暫くの間、考え込むように遠くを見ていた。
「私ね、結婚する時、私が浮気しても咎めないでね、って、お願いしたよね」
 突然、話が替わって、良樹はなんのことかと聞き入った。
「でも私、かつて浮気をしたことはないよ。私はただ、貞節な女と言うレッテルに、縛られたくなかったの・・。それだけよ」
 それでも、良樹には、真凛の言ってる真意が見えなかった。
 だが真凛は、まだ酔いが残っているのか、気怠い言い方だったが、しかし、マトモなことを言っていた。
「でも、いいの。今日はもう、許してやる。だから、本当のことを言って・・」
 だが、良樹は「ない、ない、そんなことない、って」と否定し続けている。
 
「あなたには、いい女が出来たのよ」
「エッ、なんで勝手に決めつけるの・・」
「だって、顔に書いてあるでしょ」
「まさか・・」
「でも、それって、いいことよ。私みたいな年増女から飛び立って、あなたの人生を送るべきよ」
「エエッ、どういう意味ですか」
「そうね。二人は離婚して、別々の道を歩くべきよ」
 良樹は、ドキッとしてその一言に感じ入ったし、考え込んでしまった。
「でも、なぜ離婚なんですか」
「そうね。この3年、一緒にいても、お互いに成長していないでしょ。ただ、お互いに気を使って、制約し合っているだけよ。そう、束縛感が強くって、自由度がないの・・」
 良樹は、真凛の言ってる意味がやっと判ってきた。
 真凛は、浮気を責めているのではなくて、二人が惰性で一緒に暮らしていることを、槍玉に挙げていたのだ。
 
  良樹は、炭酸水を飲みながら、冷静に考えていた。
――確かに、二人は毎日が擦れ違いだし・・。
  仕事のジャンルも違うから、お互いに高め合うなんて、ないし・・。
  一緒でいる意味って、あるのかな。
 良樹は、横浜のあるホテルで店を構えるステーキ屋で、ナンバー2のシェフをしていた。
 だから、休みの日も、寝る時間帯も、二人は違っていたから、顔を合わすことも、言葉を交わすことさえ少なかった。
「だから、離婚しよぅ。私は、これからズット独身でしょうけど、あなたは、もっといい伴侶を見つけて、自分らしい幸せを掴むべきよ」
 良樹も、日頃、そんな倦怠感を感じていたから、なんとなく真凛の意図が判ったし、ここは考え所かもと思った。
「どう・・、離婚しようよ」
「そうだね。まぁ、改めて冷静に考えてみるけど、でも、僕たち、それがいいのかも・・」
「そうよ。お互いにテーマを持っていて、しかも越えるべき壁があるのよ。こんな≪おままごと≫で遊んでるヒマは、ないのよ」
 
 次の週の月曜日の午後、真凛は、横浜支社長の岡田と一緒に、東京の本社オフィスに出かけた。
 それは、社長を初め、全役員と支社長が出席して、50人を超える関係者が集まる≪宣伝戦略会議≫だった。
 この会議には、各支社からは2名が参加できた。
 主な議題は、本社企画室が打ち出した経営方針や今後の戦略であり、それを全社にアナウンスして、意見交換を行うものである。
 いつもなら、支社長と企画課長が出席するのだが、都合がつかないとのことで真凛が代理で出席した。
 真凛は、大会議室に居並ぶそうそうたるメンバーに、圧倒されて、もう気後れしていた。
――エエッ、これが我が社の表舞台なのか。
  こんなにも役者が揃って、なにが始まるのよ。
  ああ、目からウロコ、井の中の蛙だったよね。
 そして、会場を見回して、最前列に上品な女性役員がいるのを見て、その格調の高い品格に憧れを抱いた。
 見れば、机の上のネームプレートには、梅沢常務とあった。
――どうしたら、あの席に座れるのかな。
  私も頑張ったら、重役になれるのかな。
 
 会議が4時半に終わって、5時からは、社員食堂で軽い立食パーティが開かれた。
 社長の乾杯が終わると、岡田は早速、真凛を連れて挨拶に行った。
「社長、横浜支社で若手NO1の大川真凛です」
「おお、そうか。ウーン、仕事が出来そうだね」
 社長からジッと見られて、真凛は恥ずかしそうに謙遜している。
「ええ、頭のキレが良くて、ガンバリ屋で、成長株なんです。この子なら、本社でも使えますよ」
「アラ、素敵な人じゃない」
 傍でジッと見ていた梅沢常務が、何気に割り込んできた。
「ええ、私が推薦するピカ1です。発想がユニークで、しかも提案力がありますし、行動派です」
 岡田は、なぜかマトモに真凛を売り込んでいた。
 すると、他の支社長が割り込んできて、話しは中断してしまった。
 
 岡田によれば、梅沢常務は岡田より1年先輩で、昔一緒の仕事をしていたから、気心が知れてると言う。
 しかも、女性向けの情報誌を出版して、それがバカ売れしたことで抜擢されて、今や女性の出世頭だと言う。
「ワァッ、すごい人なんですね」
「そう、君もあんな素質があるからさ。売り込んでおいたのよ」
「いやぁ、どうですかね」
 真凛は、とぼけて疑問符を付けたが、内心では喜んでいた。
――支社長が、そんなに私を買っていたなんて・・。
  ああ、感謝、感謝で、嬉しいな。
 真凛は、気分上々な自分を噛みしめながら、ビールを飲み、お摘みやサンドイッチを摘まんでいた。
  
 すると、大会議で進行役だった企画部長の亀田が、声を掛けてきた。
「岡田さん、ご無沙汰してます」
「おお、君か。相変わらずいい仕事をしてるな。今日の経営方針や戦略は、最高だったよ」
 岡田は、かつて企画部長として辣腕を振るい、全社の経営戦略を取り纏める、そんな経営の中枢にいた人物だった。
 だがトップは、将来が期待される者こそ、現場の経験を積ませるべきだとして、横浜支社長に転進させたのだ。
 その後任に、部下の課長だった亀田が、部長に昇進したのである。
 だから、同じ古巣にいた先輩・後輩であり、気心の知れた仲だった。
「岡田さん、梅沢常務から聞きましたよ。本社でも使える女性って、この人ですか」
「アッ、私、大川真凛です。でも、とても本社でなんて・・」
「いやいや、岡田さんのピカ1というお墨付きなら・・。どうですか。僕の企画部に来てくれませんか」
「エエッ、まさか・・」
「岡田さん、いいですよね」
「ウン、いいよ。こんな出来る子は、宝の持ち腐れだから・・。そう、本人が良ければ・・」
「では、決まりです。大川君に、来月から、企画部への転勤を命じます」
 そんなお芝居がかった命令口調に、岡田も真凛も、思わず笑ってしまった。
 
 その立食パーティの後で、岡田はかつて行きつけだった焼き鳥屋に、真凛を誘った。
「でも、支社長、あの常務に直訴して、推薦して戴けるなんて、光栄です」
「ウン、まぁ、仕事の出来るヤツを、眠らせて置くのは、ね」
 乾杯が終わると、真凛は早速、岡田に頭を下げてお礼を言った。
「君には潜在能力があるから、磨けばもっと光ると思う」
「はい、頑張ります」
 真凛は、さっき転勤命令を受けて以来、気持が弾んでいた。
 だが、ここは浮かれずに気持を引き締めなければと、自分に言い聞かせていた。
「アッ、支社長、私的なことですが、報告事項が2件、あります。先ずは、禁酒を決意しました」
「エッ、今飲んでるじゃない」
「ええ、これはやむを得ない場合でして、そんな時は、何時もの半分が限度なんです」
「まぁ、君は時々、羽目を外すからな。そうか。自覚が湧いたんだ」
 真凛には、ノリノリの酒が多々あったが、それが、羽目を外したかどうかの自覚はなかった。
 だが、改めてズバリ指摘されると、やっぱりやり過ぎだったのかもと、思い当たることがいくつかあった。
 
「それから、私、離婚しました」
「エッ、ほんとう・・」
「はい、協議離婚で、トラブルはなしです」
「しかし、なにがあったの・・」
「ええ、お互いにマンネリで、惰性で一緒に暮らしていただけでした。はい、精神的には別居でして、亭主も、そう感じてたようです」
「フーン、今の若い人は、結構、割り切って行動するんだね」
 真凛は、夫の良樹と話をした翌日に、離婚届の用紙を手に入れて、その日の晩にサインをさせてしまった。
 良樹は浮気を指摘されながら、それを問い詰められなくてホッとしていた。
 だがそれと同時に、お互いのマンネリ生活にケリをつけるチャンスだと思ったのだ。
 そして真凛は、次の日に手際よく運送会社に荷物を頼んで、さっさと実家に帰ってしまった。
「ところで、どう・・。二人だけの送別会、って・・」
「あら、今して戴いていますけど・・」
「もっと親密にさ」
「エッ・・、支社長、なにを言ってるんですか。私が離婚する前のダブル不倫でしたら、セックス・レスの延長で、OK しましたけど・・」
「もう、遅いか・・」
「ええ、今は仕事に燃え始めましたから、気持の上では、もうムリです」
 真凛は、相手が上司だったが、明確にNOと言い切った。
 
 
岡田は、気まずさをフーンとトボケながらも、それ以上は追及しなかった。

 そして、その帰りに真凛は≪Bamboo≫に立ち寄った。
 支社長のお蔭で本社の転勤が決まったが、変な誘惑をされて、どうにも気分がムシャクシャして吹っ切れなかったのだ。
 すると、案の定、茂木が独りカウンターに座っていた。
 真凛は、あえて茂木の隣に座ると、「先日は、失礼しました」と頭を下げて、挨拶をした。
「茂木さん、報告があります」
 そう言われても、茂木は相変わらず黙然として、前を向いたままだった。
「私、離婚しました」
 その一言に、「エエッ」と驚いたのはママだった。
「それから、偶然の成り行きですが、来月から本社へ転勤になります。お蔭さまで、私は今、人生の転機を迎えています」
 そこで、ママが作ってくれたハイボールのグラスを、勝手にカチンと合わせると、一口飲んだ。
「未熟な私の人間修行も、新しい仕事も、全く未知で、方向さえ分りません。ですけど、広大な原野の中へ蹴飛ばしてくれた茂木さんのお蔭で、今は、解放感を感じますし、ヤル気で燃えています。今後とも、ご指導とご叱責をお願いします」
 真凛が、長々とそう言っても、茂木は黙ったままだった。
 聞いてはいるのだろうが、なにを言ってもノーコメントだった。
 ママも、カウンターの中で黙って聞いていた。
 だが、あのビンタ、一発で、こうまで反省して、しかも『人生の転機を』と言う真凛に、茂木は内心拍手を送っていた。
――茂木さん、返事がなくても、いいのよ。
  感謝を込めて、それなりに頑張る自分の気持が、伝われば・・。
  そう、この人は、優しさと厳しさを使い分けられる人よ。
  そのセルフ・コントロール、それが未熟な私には出来ないの・・。
  だから、尊敬する人よ。
 すると、茂木が向き直ると、いきなり右手を差し出してきた。
 真凛は驚いて、釣られたように右手を出すと、茂木は握手をしてきた。
 そして、ガッチリと力を込めながら「ガンバレよ」と、背中を叩いて励ましてくれた。
 それから二人は、改めてグラスでカチンと乾杯した。
 
 そしてまた、茂木は独り黙々と飲み始めた。
 だが内心では、真凛の評価を考え直そうとしていた。
――そう、前回、この人のキャラは変わらない。
  制御不能のロケットで、カオスで足掻くはぐれ者、って、思ったよ。
  でも、ダメな自分に目覚めて、その殻を破ろうとしてる。
  あのビンタを深刻に受け止めて、真摯に自分と向き合ったんだ。
  ≪自分を変える≫と・・。
  もし、その意志を貫き通したら・・、
  その先には、絶対に、なにかを見つけるだろう。
 茂木は、こんなにも自分に冷静で、率直に眺め直す人間は、真凛が初めてだった。
 人物の器が大きいのか、真髄に迫る意志が強いのか、その両方を兼ね備えているのかもと思ったが、確信は持てなかった。
――でも、僕だって、目標を亡くして、混沌を彷徨うバカ者だよ。
  負けるわけにはいかないよな。
  凜子の面影を越えてこそ、新しい自分に出会える。
  そう、カオスは星雲という人間社会だよ。
  だから仕事の中を突き進んで、自分らしく生きるんだ。
 茂木は、口には出さなかったけれど、自分を追い詰めた、そんな真凛に対してライバル心が湧いていた。
 
「真凛さん、あなたは僕の良きライバルですよ」
「マァ・・、そんな・・」
「だから、僕も自分と戦う。だから、自分を閉じ込めた殻を破る、って、君に誓うよ」
 茂木は、独身の理由が、初恋の真凛の死にあることを言わなかったが、それを乗り越える決心がやっとついた。
 
                     ― つづく、かも・・ ―
 
 





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