★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2019/04/18|その他
○ 揺れる五十路 ○ [男と女の風景・139]
 
               2019年4月18(木) 00:00時 更新
  

  我が家のベランダ・ガーデン
 
 今回は、現在、我が家のベランダで咲いている花たちです。
 
  ≪写真・左・・タツナミソウ≫
 花の姿が、次々と波立つ波頭のようだから、この名前になったとか。
 
  ≪写真・中・・トリアシスミレ≫
 北米が原産のスミレですが、葉が鳥の足のようだから、この名前に。
 
  ≪写真、右・・不明≫
 名札がなくて、当初、キリン草かと思ったのですが、ネットで調べると違うようです。

 
                     [男と女の風景・139]
                      ― つづき・3―

  ○ 揺れる五十路 ○
 
 次の日、朝の食事をしている時に、柳田は妻に言った。
「今度、4月21日から、横浜の子会社に転勤になるから」
「あら、そうですか。では、朝の出勤時間は、少し遅くても・・」
「ウーン、そうだな」
――ああ、やっぱり単なる転勤としか、思ってないよ。
  昨日は、左遷だ、使い捨てだと、絶望的に落ち込んでさ。
  オレがパニック状態になった心境など、判らないんだ。
  長年連れ添った夫婦と言えども、
  しょせん、喜びも悲しみも分かち合うなんて、ムリな話だよな。
  そう、生きている場が違うんだ。
  ああ、サラリーマンなんて、孤独な生き物だよ。
 温かいご飯を食べて、美味しい味噌汁をすすりながら、柳田は、むしろさっぱりとした気分になっていた。
 すると子供たちが起きてきて、朝食でテーブルに並んでせわしなく食事を始めた。
 だが、そんないつもの日常が、いかにも平穏無事で、違った風景に見えてきた。
 いつもなら、会社の上司や仕事の段取りなどが頭に浮かぶのだが、今は目の前の風景を全くありのままに眺めていた。
――これまでは、神経が尖っていたのかも・・。
  子供たちの朝ごはんを、こんなに余裕で見ていなかったよな。
  やっぱり、頭の中には仕事のことが詰まっていたんだ。
  そう、その見えないプレッシャーから、解放されたのかも・・。
  お蔭で、一家団欒が楽しく見えるよ。
 
 柳田は会社に出勤すると、上司である今田営業部長のデスクに向かった。
「部長、昨日、田中常務から、子会社への転出を命じられました」
「アッ、そうかね。まぁ、頑張ってくれよな」
「はい、これまでお世話になり、色々とご指導、ご配慮を戴きまして、有難うございます。心から感謝します」
 今田部長は、柳田が快く受け止めてくれたのに、内心でホッとした。
 実は、今田は、1か月前に常務から転出の打診があったし、昨日の午前中には転出の人事が決定したと聞いていた。
 今田部長は、柳田が辞令を聞いて、頭が真っ白のパニックになったり、辛くて意気消沈してしまうのではないかと、心配していた。
 そんな心境を察したが、ここは本人が覚悟を決めるしかないと、突き放すしかなかった。
 だから、今田は自分が目障りになってはと、午後にお客さん回りと言って外出してしまったのだ。
 
 柳田は、今はもうスッキリした気分になっていた。
 昨日のスナックで、大御所の後藤先輩から、≪何事も天命だ≫と言われていたし、≪捨てる神あれば、拾う神ありだ≫と聞いて、自分の中でケリをつけていたのだ。
 だが、職場の主任や他の者は、柳田の転出をまだ知らないのか、通常通りに仕事をしていた。
 しかし、柳田には、見慣れたオフィスが、いつもと違う景色に見えていた。
――ああ、これまでの30年間、全力疾走で駆け抜けて来たよ。
  やり残したことはあるし、過去には反省もあるよ。
  でも、誓って悔いはない。
  自分の信ずる道を駆けてきたから、それは断言できる。
 
 柳田は、スタンドからホット・コーヒーを買ってきて、デスクで飲みながら、皆が事務を執る光景をぼんやりと眺めていた。
 ふと、頭の奥になにかの光景が浮かんだ。
 それは、とっても懐かしい映像のような気がした。
 もしかして、幼かった頃に見た風景かもと思ったが、思い出そうとしても、それが思い当たらないのだ。
 最近は、なにかの拍子で、時として、チラッと微かに浮かぶのだが、それがなんなのか見えてこないのだ。
 学生時代、大昔のモノクロ映画にかなり嵌って、リバイバル版を観たが、その時に見た場面だったのか・・。
 フランス映画、あの幼気(いたいけ)な≪禁じられた遊び≫にあったのか、それともイタリア映画の≪自転車泥棒≫なのか。
 その光景が、どこかで出会ったはずなのに、もどかしいが、どうしても思い出せないのだ。
――もしかして、小さかった頃に見た母だったのかも・・。
 
「オイ、柳田君」
「アッ、はい・・」
ぼんやりとしていた柳田に、今田部長から声がかかった。
「僕は昨日、上野公園の桜を見てきたけど、あの満開は感動的だったな。君も、たまには、ぶらっとお花見をしてきたら・・」
「ああ・・、はい、有難うございます」
 柳田は、テレビの報道で見たことはあったが、仕事に明け暮れた日々だったから、実際には見たことがなかった。
 今田部長は、横浜へ転属したら、もしかして見納めかと、さり気ない気を使ったのだ。
 柳田は、そんな今田の気配りを、なんとなく肌で感じて嬉しかった。
 しかも、あえて庶務担当の金田美由紀が聞こえるように、部長が公認だからと言ってくれたのだ。
 すると、すかさず金田が、「あっ、部長、私も上野のお客様に用事があるんですけど・・」と言い出した。
「ああ、いいよ。美味しいランチでも食べてきたら」
――なに・・。この気配りの温かさ・・。
  なんだよ。オレはそんなに恵まれていたの・・。
  ああ、オレは仕事バカだったなぁ。
 柳田は、自分がどう見られていたなんか、仕事中では一度も感じたこともなかった。
 ただひたすら、マーケット・リサーチをして、営業展開の状況を見ながら、受注売上の向上策を練ってきたのだ。
 
 まだ午前中の10時を過ぎたばかりだったが、二人は東京駅から山手線に乗って上野に向かった。
「しかし、いいタイミングで、上野の話に割り込んできたね」
「ええ、私もお花見がしたかったし、課長とご一緒、したかったんです」
「ほう・・」
「だって、先ほど子会社への転属、って、聞いてしまったんです。びっくりしましたよ。まさかでしょ、って・・」
「ウーン、もう歳だから、いい潮時かもね。後輩のためにも、ポストを空けないと・・」
 電車の車窓から、晴れた陽射しに映える大手町のビルを眺めながら、そんな会話を交わした。
 柳田は、ふと、金田美由紀がいつもと違う女に見えた。
――ああ、そうか。髪を下したんだ。
  職場では、いつも髪をアップにして、後ろで縛ってるから・・。
  でも、こうするとチョッと色っぽいかも・・。
 
 上野駅に着いて、ホームから階段を上がると、もうかなりの人波が公園を目指していた。
「課長、お弁当を買っていきませんか。どこかで座って、のんびり食べましょう」
 そんな提案に、現地の状況が判らないだけに、柳田も同調して昼食の調達を優先した。
 駅の構内にある商店街を歩き廻って、やっと寿司弁当を見つけて、お茶のペットボトルも買い込んだ。
 それから、公園口の改札に行くと、その内側も外側も、もう人だかりが出来ていた。
 見れば、その先では大勢の人たちが信号待ちをしているのだ。
 
 案内板もあったが、二人は人の流れに沿って、大きな木々の下を潜って進んだ。
 そして、桜並木の通りに出ると、満開の桜が大空を覆い、見渡す限り桜色に染まっていた。
「ああ・・、この光景、すごいな。桜の宇宙だよ」
「ええ、スペースオブチェリー、ですね」
 しかも、桜の天幕の下を、大勢の人の渦が巻いて流れるように、人々が行き交っていた。
「本当にすごいね。平日なのに、この人だかりだよ」
「上野のお山が桜の名所だとは言え、こんなにも、人が集まるんですね」
 二人は、しばらくの間、通りの隅に立ち尽くして、感嘆しながら桜と人の流れを見ていた。
 そこには外国人が目立ったし、欧米系の白人だけではなくて、中国や東南アジアの人々がかなりいた。
 先ずは、見た目で衣装が違うから判るし、顔つきも違っていた。
「ああ、観光日本になったんだな」
「ええ、桜の名所見物とは言え、こんなにも大勢だとは・・」
「僕たちは、オフィスにいて、外歩きをしないから、世の中の変化が判らないんだな」
 確かに、かつては見られなかった外国からの観光客が、大勢見られた。
 二人は、人とぶつからないように気を付けながら、人の流れに沿ってあちらこちらと歩き廻った。
 
 そして、メインの桜通りは混雑し過ぎていたから、裏の小道に入った。
 それでも、はみ出した人たちが桜を見上げながら、ぞろぞろと歩いている。
 すると、なにかの石碑が建つ前側が、チョッとした広場になっていて、石垣で囲まれていた。
「課長、ここに座って、ランチしませんか」
「おお、いいね。適度に桜も見えるし・・」
 柳田は、ビニール袋から寿司弁当とお茶のボトルを取り出して、美由紀に渡した。
 晴れた空の下で、春の陽射しが温もりをくれていた。
「課長、二人っきりで、こんなデートをしたのは初めてですよね」
「おお、そうだね。でもさぁ、人妻とデートだなんて、出来ないでしょ」
「あら、課長」
「オイ、頼むから課長は止めてくれる。ここは、仕事外だから」
「はい、柳田さん、実は私、去年の秋に離婚したんです」
「エッ、まさか・・。ああ、知らなかったなぁ」
 いくらプライベートだとは言え、柳田は、目の前のデスクに座る庶務担当の離婚を、全く知らなかったのだ。
――ああ、仕事バカだよな。
  毎日、一番身近にいる女性なのに・・。
「それで、なにかあったの・・」
「ええ、まぁ・・。主人が、浮気をしましてね。それが何度も・・。もうしない、って、約束したのに・・」
 柳田は、私事に立ち入るのは良くないと、立木の先に見える桜の花に目を向けた。
――ああ、離婚したのか。
  人それぞれに、背負ってるものがあるんだな。
  確かに、女性って不利だよね。
  相手の男性の出来、不出来で、天国から地獄へも堕ちる。
  そう、生き方を、ガラッと変えさせられるんだ。
  オレは並みの男で、浮き沈みがないのが取り柄だから、
  我が家の生活は、平々凡々としてるけど・・。
  でも、だから平和なのかも・・・。
 それからは、なんとなく気まずくなって、柳田は寿司を頬ばると、ボトルのお茶を飲んだ。
 
「でも、柳田さんには、大変お世話になりました」
「そうかな。普通でしょ」
「いえ、違いますよ」
 美由紀は、柳田を覗き込むと、あえて頬を膨らませて、いかにも怒ったフリをみせた。
「新入社員のオリエンテーションの時、営業部門の仕事について、柳田さんが講話をされましたよね。あの時、素敵な紳士だなって、直ぐにファンになりました」
「エエッ、本当なの・・」
「ええ、そうですよ」
――ああ、そうだったのか・・。
  そんなことにも気づかなかったよ。
「私、人事課長から配属の面接を受けた時、営業事務が希望です、って、言ったんです」
「フーン、でも、特に優しくとか、優遇したとかなんて、なかったよね」
「ええ、仕事は常に正しく、って、いつも正攻法で指導されました。でも、会社に来るのが楽しかったんです」
 柳田は、美由紀が自分のファンだったなんて、意識したこともなかった。
――だって、普通にビジネスライクに仕事をしただけだよ。
  でも、そう言われると、嬉しいよな。
「柳田さん、今度、2人だけで送別会をしたいんですけど・・」
「ああ、いいかも・・。でも、水入らずで飲むなんて、初めてだな」
「そうですよ。いつも主任と一緒ですから、割り込めないんです」
「いやぁ、彼とは東海道線の仲間だから・・」
 
――しかし、昨日から今日と、オレは女性にモテてるよな。
  不思議な巡り合わせかも・・。
  もしかして、女難の相が出てるのかな。
  ああ、初めての展開に胸騒ぎがして、揺れるよね。
 こんな孤独なサラリーマンでも、
  ファンがいるし、応援してくれる人がいるのか・・。
 柳田は、営業マンの中から抜擢されて、営業企画やマーケッティングの仕事を任されてきた。
 もうこの担当になって20 年も経つが、ひたすら愚直なほど真面目に取り組んできたのだ。
 だから、女難に胸騒ぎがして、気持が揺れるのは初めてだった。
――そう、芸者だった香澄、あの偶然の出会いから始まったんだ。
  娘の福美の店に行って、香澄に迫られたけど、
  可愛い中年を交わしたら、なんと福美にキスをせがまれて・・。
  まぁ、あれは、父を知らない女の寂しさだろうな。
  いや、母親に対するライバル意識かも・・。
  それから、スナック≪ピエロ≫では、先輩にご指導を戴いたな。
  そしたら、聞いていた浩美が、ボロッと涙を溢して・・。
  そう、ディープキスだったよ。
  でもあれは、リストラ亭主への不満、その捌け口だね。
  そして今、美由紀から、2人だけの送別会だって・・。
  離婚して、心理状態が不安定なのかも・・。
  ああ、想定外の展開で、この先どうなるのかな。
  オレの人生、ここから女に狂うのかも・・。
 
 
    ≪筆者後記≫
  皆さん、ここで≪おしまい≫か、≪つづく≫かで、迷ってます。
  次の展開は、薄っすらとありますが、冗長になるのではと心配です。
  もう少し考えますので、時間を下さい。
                             橘川  拝
 
 
 
 




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人生色々
ペースメーカーの交換手術で10間入院していました。
本日退院しました。
これはこれで「おしまい」でしょう。後は読者一人一人の想像のストーリーの物語にしてみては如何でしょうか?
違った物語になって面白いと思います?

市丸  (2019/04/19 14:47:26) [コメント削除]

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