★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2018/11/08|その他
 ◇フィーリング・カップル◇ [男と女の風景・134]
 
                                     20181108(
                     00:00 更新
− 我が家のベランダ・ガ−デン −

   ○ 秋の草花・3品 ○
 
 今回も、秋真っ盛りの小品を3点、紹介します。
 
     ≪写真・左・・イトラッキョウ≫
 以前にも、何種類かのラッキョウを紹介しましたが、これはイトラッキョウです。こんなに密生させるのには、3年かかっています。
 でも、矮性なだけに可憐で、可愛いですね。
 
  ≪写真・中・・姫タデ (白花)≫
  ≪写真、右・・姫タデ (赤花)≫
 タデも、何種類か紹介してきました。
 ただ、姫と呼ばれる矮性のものは、コケと同じように、他の大きな草や木の下草として、風情を足してくれます。
 そのため、自然造りをしたススキなどの大鉢に、添えられます。
 しかも、これは強くて丈夫であり、寄せ植えに適しています。
 

 
                   [男と女の風景・134]

 ◇フィーリング・カップル◇
 
 小宮山は独り、今日もスナック≪ファンキー≫に行った。
「細貝さん、相変わらずお元気そうですね」
 常連の大先輩が、いつものカウンターの隅で飲んでいたから、ご挨拶をして隣の席に座った。
 細貝は、小宮山より一回りも上のご隠居さんだった。
 ママとは長い付き合いなのか、居心地がいいのか、この店では時々、見かける常連だった。
 小宮山は、ママに作ってもらったウイスキーの水割りを受け取ると、独りでそっと掲げて「乾杯」と内心でつぶやいた。
――今日も何事もなく、終わったな。
  そう、こうしてのんびりと酒が飲めるなんて、至福の時かも・・。
 
 小宮山は、文科省に入省してから53歳になった去年、教育関連の事業をしている会社に、理事として横すべりをしていた。
 今の仕事は、特にやることもない閑職だった。
 そのため、毎日、小宮山の頭は、その日をどう過ごすかに回っていた。
 だから午後になると、時には上野の美術館や演芸場に出かけたり、新宿や浅草の街を散策したりしていた。
 九月に新宿御苑に行って、深い緑を満喫して以来、それではと先日、浜離宮に出かけた。
 そして、なんと船着き場で遊覧船を見かけて、浅草まで隅田川沿いを遡上して、その景色を初めて見たのだ。
 思わぬ偶然だったが、小宮山にとっては東京湾の超高層マンションは新発見であり、感動に満たされたものだった。
 そんな密かな楽しみもあって、独りで時を過ごすことが多々あった。
 社内の会議や、部下からの報告など、仕事はあったが、あえて意見や指導などはしなかった。
 明らかなミス以外は、自分が意見を言うと、それだけで部下の仕事が増えるし、お邪魔虫になるからと、自らの肝に銘じていた。
 
――オレは、本省から離れて、やっとのんびり暮らしてる。
  休日には、江の島を間近かに眺めながら、ベランダでギターを弾いてる。
  まぁ、現職の若い頃からそうしてきたけど、開放感が違うよな。
  80歳を越えたお袋は、脳梗塞の後遺症で、手がかかるけど・・、
  でも、食材の買い出しと、週に2回の洗濯、それがノルマだけで、
  あとは、オレの自由時間だよ。
  時には、バンド仲間とアドリブで演奏したり、
  いつもの飲み屋に行ったりで、自由を満喫しているよ。
 小宮山は以前から母親を連れて、休日にスーパーで煮物や揚げ物、さらにはインスタント食品などを買ってきていた。
 母親は、今は左手が痺れて、少し感覚にも障害があったが、なんとか自分の食事だけは作っていた。
 
 かつて小宮山はは、さる一流の国立大を出て、文科省に入省してから、ずっと霞が関で勤務をしてきた。
 だが、「東大閥が幅を利かせていたから、オレは地味にやってきました」と、細貝先輩に愚痴をこぼしたことがあった。
 すると、先輩が「まぁ、君は僕より優秀だけど、環境条件が悪かったかもね」と慰めた。
 小宮山は、自分でもそう思っていたから、その言葉で納得していた。
 どこの組織においても、同僚との能力差が相対的に評価されるのだ。
 だから、もっと普通の会社に入っていたら、エリートコースを歩いていたはずだった。
「まぁ、それもこれも、みんな宿命だよ。僕なんか、社員300人の小さな会社にやっと入ったんだ」
 細貝は、ふと気になったのか、小宮山の様子を見た。
「でもね、その会社が急成長して、30年後に退職する時は6000人の会社になっていたよ。だから役員になれたんだ。誠にラッキーな古き良き時代だったと、我ながら思ってる」
 小宮山は、確かに人生は結果論かも知れないと思った。
 
「ところで、君は、なんで官僚になったの・・」
「ええ、オヤジが外務省でしたから・・」
――まぁ、その当時は、未来への夢なんてなかったし、
  世間を知っていたのは、オヤジの存在だけだった。
  だらか、官僚になったんだ。
  だけど、まぁ、普通に暮らしてきたよ。
  それでいいんだ。自分で納得してるよ。
  だひとつ、絶望的なのは、未だに独身だってこと・・。
  何度も、チャンスがあったけど、いつも引いてしまったんだ。
 以前、独身だと聞いた細貝が、小宮山に言ったことがあった。
「君はさぁ、多分、マザコンだったんだよ。だから、好かれた女性に目をつぶって、サラッと背を向けてきたんだ」
 そうズバリと言われたが、まともなだけにノーと言えなかった。
 「実は、そうなんですよ。さすがにお見通しで・・」
 小宮山は、胸にグサッとは来たが、それは正論であり、納得して聞くことが出来たから、そう認めるしかなかった。
 それ以来、同じサラリーマンの実情を知っているだけに、自分の思いを判ってくれる細貝に、さらに親しみを感じてしまった。
――そうだよな。オレなりに頑張ってきたよ。
  それでいいじゃない。
  これが、オレの人生だからさ。
 
 小宮山は、同じバンド仲間と、月に何度か鎌倉で演奏会を開いている。
 高校生の頃から、小宮山はクラシック・ギターを弾いていた。
そんなことから、今はトリオを組んでいて、その仲間に園山朋美と言うピアニストがいた。
 その切っ掛けは、小宮山が時々行く鎌倉のスナックのマスターだった。彼には前々から、ピアノの上手な人がいると言れていたのだ。
 聞けば、本人は鎌倉の扇ガ谷に住んでいて、フェリス女子大でピアノを専攻していたと紹介された。
 それで、半年前にその店で会うことになった。
 それではと、飲み仲間でパーカッションの相棒も入れて、ジャズのセッションをしてみた。
 すると、フィーリングはいいし、息もぴったり合ったのだ。三人は感動の余り手を取り合って、今後も続けていこうとなったのだ。
 それ以来、お互いに、その技量とフィーリングを認め合っていたから、人格的にも尊敬し合う仲になっていた。
 しかも、朋美は古い映画音楽やアメリカン・ソウルもこなしたし、譜面を渡せばなんでも即座に演奏できたのだ。
 それからは、土曜日の午後に集まって、練習することになった。
 しかも水曜日には客に披露することになって、そんな演奏する楽しみも増えたのだ。
 ただ解せなかったのは、朋美はもう40歳の半ばを過ぎていたのに、なぜか独身だったことだ。
 小宮山は、その話題に触れてはいけないと意識していた。だから、聞いたことはないし、ただ演奏することだけに専念していた。
 しかし、そんな疑問を持ちながら、常に意識をさせる女だった。
 
 ある日、演奏会の練習で終わって、一緒に夕食を取り、さらにあのスナックで飲む機会があった。
「朋美さんは、OLって聞いたけど・・」
「ええ、県庁に勤めてます」
「ああ、そうなんだ。では、日本大通りの・・」
 小宮山は、あまり私的な話はしなかったし、興味がなかったから、こんな話をするのは初めてだった。
 だが、少しお酒が入ると、朋美は陽気にお喋りを始めた。
 そこには、いつもの澄まし顔とは違った、思わぬ素顔を見せたのだ。
 なんと、朋美は、ジュリアナ東京のお立ち台に上がったと言い出した。
 その時は、友達とお揃いの派手なボディコンを着て、ジュリ扇をかざしながら踊り狂ったとのこと。 
「もし、大学にバレたら、退学だったでしょうね。でも、私たちには社会見学であって、そんな風俗には嵌らないの・・」
「まぁ、確かにディスコ全盛の時代があったよな。では、学生の頃は飛んでる女だったんだ」
「ええ、まぁ・・、でも、元々おしとやかでしたから・・」
 朋美はそう言うと、悪戯っぽい目で、鼻をツンと跳ね上げた。
 その乙女チックでおしゃまな横顔に、小宮山も相棒も、思わず吹き出してしまった。
――朋美って面白いな。
  こんな、子供みたいな可愛らしさを、持ってるんだ。
 しかも小宮山は、こんな上品な今の朋美からは想像もつかないジュリアナの話を聞いて、興味が湧いてきた。
 改めて見れば、ツルンとした顔は少し青くてレモンのようだった。
 そして、なんとも寂しげな眼をしていて、とてもジュリアナで踊ったとは思えなかった。
――やってることの大胆さ、ファンキーさ、って、たまらないよな。
  見た目とは、こんなに違う女なんて。初めてだよ。
  この生まれも育ちもいい女って、素顔はなんだろぅ。
 小宮山は、内心では女性を遠ざけていたから、こんな女性がいるなんてと、そのギャップに興味津々だった。
 
 すると、パーカッションの相棒が、腕時計を見て、「明日はゴルフで早いから、帰る」と言い出して、二人だけになった。
「朋美さんは、案外とお酒強いんですね」
「ええ、職場の先輩に鍛えられましてね。ところで、小宮山さんは、独身の国家公務員と聞きましたけど・・」
「エッ、まぁ・・、そうですけど・・。先日、藤沢のスナックの常連で、大先輩にズバリ言われましたよ。君は多分、マザコンだろ、って」
「アラ、きついお言葉ですね」
「でも、否定は出来ないんだ。だけどね、実はどこの部分がそうなのかは、自覚出来てないんです」
――二人にとって、独身はタブーのはずなのに・・、
  サラッと聞いてきたから、サラッと言っちゃったよ。
  でも、こういう関係が気楽でいいな。
 朋美は、ワインの小瓶を飲み干すと、「マスター、ハイボールをお願い」とまだ飲むつもりでいた。
 
「でも僕はね、中学では、遠くから見ているだけの初恋だったんだ。それから、高校では、相手からはっきりと『ごめんなさい』って断られたよ」
「それで・・」
 朋美は、さり気なく次の話を促した。
「ウン・・、だから大学では、女性と付き合わないことにしたんだ」
「女性に臆病になった」
「そうかも・・。ところが、同じサークルの子にアプローチされて、付き合ったら、なんと彼氏がいたんだ。後で判ったけど、彼が二股かけていたから、その子も、頭に来て二股かけたんだって」
「まぁ、失礼な」
「そう、僕は裏切られたんだ。もうそれ以来、女性は避けてるよ。でも、それって、マザコンではないよね」
「そうですよね。単なるアンラッキーですよ」
――しかし、この人、胸の奥にしまっておいた嫌な思い出を、言ったのよね。
  きっと、ウソではないわ。
  信じられそう・・。
  でも、なぜ、こうも淡々としていられるの。達観したの・・。
 朋美は、飄々とした小宮山の横顔を、自分の頬に感じていた。
 
「小宮山さん、今度は、私が独身である理由を言う番ですよね」
 朋美が意を決してそう言うと、小宮山は確かに言うべき時だと、黙ってうなずいた。
 小宮山が、恐らくは誰にも言ったことがない秘密を吐露した以上、朋美も事実を言うしかなかった。
「私を知る教授は、私を、ある人の愛人と言ってました」
「えっ、なんと・・」
「でも、その人とは一線を越えていません。ええ、ハグはしても、セックスはしてないんです」
「ウン、どういうこと・・」
「私はフェリス時代に、女性ピア二ストの教授に師事していました。その教授の師匠である大先生が時々、指導に来られたんです」
朋美は、グラスを掴むとハイボールでノドを潤した。
「ええ、日本では有名なピアニストで、黒髪にスーッと走る若白髪が素敵でした。しかも演奏を聴いて、私は憧れ以上に、心から尊敬をしていました」
 朋美は、当時を思い出しているのか、遠くを見る目は輝きを増していた。
「そんな私を見て、教授が、大先生が学校に来られた時の秘書役として、ご案内やご接待をするようにと仰せつかったのです」
「その親密さを見て、教授が君を愛人と言ったのか」
「ええ、でも、5年も後に知ったのですが、実は、教授が大先生の愛人だったんです」
「フーン、複雑な心境だったろうな」
「ええ、でもその教授が、県庁の音楽ホールなどを管轄する事務局員として、私の就職を紹介してくれたんです。だから、色々とお世話になりました」
 朱美は、またグラスを掴むとハイボールをグッと飲んで、間を取った。
 
「それで、独身の理由は・・」
「ええ、大先生が都合で来れない時は、その若いお弟子が代わりに来ていまして、実は、その人にかなりアプローチされたんです。でも、教授が、あの人は遊び人だから要注意よ、って・・」
「そういう男って、いるんだよね」
「そうしたら、ある日、彼を追いかけてきた女性が泣き叫ぶのを、彼が大学の玄関でなだめていたんです。その女性が叫ぶには、別の女性と付き合って、私を裏切った、って・・」
「フーン、やっぱりだったんだ」
「その後で、彼が誘って来たんで、『あなたは、何人の女性を悲しませたら、気が済むんですか』って、懲らしめてやりました」
「フーン、厳しいね。でも、それで男性不信か・・」
「ええ、多分・・」
「だったら、僕と同じだよ。アンラッキーなんだ」
 偶然、出会った男と女、それは酒場という舞台と美酒があればこそ、気心が通じ合えるのだ。
 そして皆、心の奥底になにかを秘めながら、平然とした顔で穏やかな日常を過ごしている。
 
「それから職場の上司に、何度も誘われまして、仕方なく食事をしました。でも、妻帯者だったんで、それっきりにしました」
「あなたは美人だから、男性は憧れて声をかけるんですよ」
「小宮山さん、今度、ご一緒に食事でも、どうですか」
「ああ、いいですよ」
 小宮山は軽くそう応えたが、なんとなく違和感を覚えた。
――この人、いつも誘われてるのに、誘って来たよ。
  どういう風の吹き回しかな。
  でも、甘い言葉には、直ぐに食いつかないこと・・。
  仕事でも、さも親しげに近寄ってくる者は、要注意だから・・。
  エッ、それとも、僕はマザコンで、女性から逃げてるの・・。
  ああ、判らないよ。
「でも、僕は賞味期限を過ぎてますよ」
「私だって、もう間もなくです。でも、なにかフィーリング・カップルでいたいなって・・」
「まぁ、共にアンラッキーな独身だし、音感のフィーリングは合ってるし、そんな二人組もいいかもね」
「ええ、私、男性の厚い胸で、熱く燃え上がる夢を見ていたいんです。それが念願の夢なんです」
「エッ、それはまた、どうして・・」
「ええ・・」
 朋美は一瞬、小宮山を見ると、言いにくそうに口をつぐんだ
 そして、どうしたものかと考えた末に、ここは、本音で言うしかないと喋り出した。
「はい、家庭での父は直ぐに怒りだして、気性が荒かったんです。それで、子供の頃から怖かったし、中学生からずっと絶交で、時には軽蔑さえしていました。ですから・・」
――それって、ファザコンだよ。
  こういう女性は、優しくって、年上の男性を求めるんだ。
  ウーン、ここは、男として受け止めるしかないか。
「朋美さん、今度、晴れた日に七里ガ浜でランチでもしようか」
「ああ、いいですね。そう言えば、知ってるいいお店があるんです。日にちが決まったら、予約をしておきますよ」
 
                            ― つづく ―
 
 





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