★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2018/07/12|その他
ー 不倫に疼く女 −
                                   2018年7月12日(木)・0時・更新
 

  ○ 読者の皆様に ○
 
   ≪報告≫

 皆さん、アクセスが70,000件を越えました。
 これも、皆さんの応援と励ましのお蔭です。
 有難うございます。
 今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

 
   ≪お詫び≫
 今週も、スランプに陥ったままです。
 ヒロインも、テーマも現れてはくれません。
 読者の皆様には、お詫び致します。
 今回も、バックナンバーでご容赦ください。
                                
                  橘川  拝

 
 
  − 我が家のベランダ・ガ−デン −
    ○ 風蘭と羊歯類 ○
  
  ≪写真・左・・フウラン≫
 この風蘭は、高い樹木や岩に着生する蘭で、野生種や原種は≪風蘭≫で、園芸種を≪富貴蘭≫と言うそうです。
 特に、このような斑入りは、珍品種で、富貴蘭なのでしょう。
 
  ≪写真・中・・ハマホラシノブ≫
 名前の由来は、洞窟の周りの崖地に生えることからで、特に浜辺の近くに生えるものを≪浜洞忍≫(ハマホラシノブ)というようです。
 私は、葉の細かな編み目の緑が、繊細で好きです。
 
  ≪写真、右・・ヒノキシダ≫
 これは、葉の文様が≪檜≫(ヒノキ)に似ていることから、この名前に。
 葉は深い緑ですが、表面にツヤがあるため、写真では光を反射しています。

 

                               [男と女の風景] 
  ー 不倫に疼く女 −

  中年の女性二人が、小奇麗なスーツを着こなして、東京駅に近い居酒屋で飲んでいた。
「真紀ちゃん、私つらいの・・」
 美沙は、ジョッキのビールを一口飲むと、浮かぬ顔でポツリと言った。
「どうしたの・・」
「私、山田課長に、亭主の浮気のことを相談したらね
あの人、優しく慰めてくれて・・。話を聞いていたら、私、ジ−ンと来ちゃって・・」
――ああ、この人、泣いたんでしょ。
  女は泣いたらダメよ。
  もう、どうなったかは、想像つくよね。
「それで美沙ちゃん、どうなったの・・」
 美沙は、なぜか申し訳なさそうに頭を垂れると、小さな声で「出来ちゃったの」と言った。
――やっぱりだよ。女って、弱いからさ。
  誰かの優しさにすがるのよね。
  でも、不倫はね、会ってる時はいいけど・・、
  独りになると、つらいのよ。
 真紀は、うな垂れる美沙を見かねて、そっと目を逸らした。
――そう、私も、フランス人と不倫をしたの・・。
  背が高くてハンサムで、映画のスターみたいだった。
  しかもフランス・テレビ局の特派員で、知識人だった。
  国へ帰る時、妻や子供が待ってると、初めて聞かされて、
  その瞬間、愕然として、腰から崩れ落ちそうだった。
  ワァーッと大声で泣きたかったのに、グッとこらえたんだ。
  だから、成田には見送りに行かなかった。
  「楽しい時間を、有難う」って思えたのは、3日も後だったよ。
  それほどに、夢の中を漫遊していたんだ。
 
 二人は、ある大手企業のOLで、同期生だった。

 真紀は、秘書課で専務取締役の秘書をしていた。知的な美人であり、機転が利いて気配りもあったから、評判がよかった。
 また、美沙は、見た目がふっくらとして優しさがあり、人当たりも愛想がよくて、福利課厚生係の主任をしていた。

 入社以来、もう20年も仲良く付き合ってきたから、二人にはなにも隠し事がなかった。
「それで・・、どうなったの・・」
 美沙は、顔を上げると、目に涙が浮かべていた。
「私、エッチをしたのって、久々だったから、燃えちゃったの・・。でも、あんなに優しい前戯は初めてだったな」
――あぁあ、ついにドロ沼に嵌ったか・・。
  女って体で感じて、快感が子宮に届いたら、もうダメよ。
  女の業からは、もう抜け出せないの・・。
  さぁて、美沙よ、どうするの・・。
「だって私、ずっとエッチしてなかったの・・」
「あら、今が盛りのご夫婦なのに・・」
「そうなのよ。だってね、最近したのは2年前よ」
「私は、もう15年以上よ」
 美沙は共稼ぎの夫婦だったが、真紀はもう離婚していて、共に中学生の子供がいた。
「だから、箱根の保養所を取ってもらってね、その時、久しぶりにしたの・・」
「あらあら、それではご主人、浮気をするわよ」
「エッ、そうなの・・」
 美沙は、真紀の言っている意味が理解できずに、不思議そうな顔をしていた。
「あなたね、旦那が求めた時に、仕事で疲れてるとか、子供がいるからとか、って、拒んだことがあったでしょ」
「エッ、ウーン・・、あったかも・・」
「それよ。男性はプライドが高いの・・。本人は恥を忍んだつもりで、遠慮がちにアプローチをするのよ。でも拒まれると、もう投げ出すの」
 
 この二人は、長年の間、こうして居酒屋で酒を飲みながら、ざっくばらんに話すことで、悩みやストレスを解消してきた。
 二人は仲がいいだけではなくて、職場の出来事や子育てでも、共通の話題が多かったのだ。
「でもね、私、恋しちゃったの・・。山田課長、仕事は厳しいのに、二人っきりになると優しいの・・。惚れちゃったかも・・」
――ああ、もう重症だね。
  こんなダブル不倫には、対症療法はないのよ。
  行き着くとこまで行くか、本人が目覚めて止めるか、
  そう、本人たちの自覚と、決断よ。
  第三者は、立入り禁止なの・・。
 
 真紀は、ジョッキーに残ったビールを飲み干すと、追加を頼んだ。
 なんとなく二人の会話は止まってしまい、2杯目を飲み始めた時、真紀はふと思い出した。
――そう、昔、山田さんに誘われたことがあったな。
  あれは、離婚して3年後だったかも・・。
  二人っきりで、内緒のデートをして、食事をしたよね。
  ナイト・クルージングに誘われて、さ。
  レインボウ・ブリッジから、東京タワーや高層ビルの夜景を眺めて、
  甘ぁーい時間を過ごしたことがあったよ。
  でも私は、「奥さんのいる方とは、これ以上はムリ」って。
 美沙は、さっき目頭の涙を拭いたのを思い出したのか、手カガミを覗き込んでいる。
――そうか。山田さんは、意外と女性にアプローチするのよ。
  腰が軽くて、浮気性かも・・。
  美沙は、相談した相手が、悪かったんじゃない。
 だが真紀は、いくら仲がいい美沙とはいえ、そこまでは言えなかった。
――さぁて、美沙ちゃん、どうするの・・。
  行き詰った最後の時は、手を貸してあげるよ。
  でも、どうするかはあなたの決断よ。
 
「私、切ないの・・。だって、恋をしたのは初めてだから・・」
「エエッ、この年で・・」
 美沙は、恥ずかしそうに微笑むと、首をすくめた。
「私、胸がキュンと締め付けられる思いなの・・。真紀っ、助けてよ」
「イヤァ、それは無理よ。だって、恋愛はさ、当事者だけの問題でしょ。他人は割って入れないのよ」
「そうかもね」
「でも、本当に困ったら、言ってよね。絶対に助けてやるから・・」
 美沙は安心したのか、頷くとビールをたっぷりと飲んだ。
 真紀は、思い出に浸ってボーッとしている美沙を見て、ふと、思った。
――こんな夜は、独りで飲みたいな。
  だって、他人の恋愛話、ましてや不倫だなんて、
  そんな話を聞いても、楽しくないもん。
  喜怒哀楽が、私の中でごちゃごちゃに暴れまわって、
  狂乱状態になるのよ。
 
 それから二人は、東京駅の改札を入って、東海道線の上り階段で別れた。
 だが真紀は、美沙をしばらく見送ってから、隣の山手線のホームに上がった。
 有楽町で降りると、ビル街を散歩するようにゆったりと歩いていた。
 こんな時は、決まって帝国ホテルのオールド・インペリアル・バーで、独りゴージャスな酒を楽しむのだ。
 そこの仄暗いバーには、シックな雰囲気があり、リッチ感があった。しかも、ヒグマの穴倉のようで、落ち着いた気分にしてくれた。 
 ホテルの入り口を入ったところで、地下のア―ケード街を思い出して、ウインド・ショッピングをすることにした。
 銀座のすずらん通りのように、小粋な店が並んでいた。それぞれが名だたる老舗のショップで、いかにも上質の高級品を品揃えしていた。
「あっ、こんなところに御木本がある。私、パールが好きなのよね」
 そんな独り言を言いながら、真紀はもう店の中に足を踏み入れていた。
――そう、真珠の輝きって、神秘的なのよ。
  アアッ、このシルバーのネックレス、素敵だな。
 商品は思った通り、高価なものばかりで、真紀の手には届かなかったが、見るだけでも気分がリッチになった。
 
 店内を回っていると、コーナーにソファー席があり、若い外国人の男性と店員が話し込んでいた。
 だが、真紀が小耳にはさんだ英語は、どうもアメリカの南部なまりで、店員には聞き取りずらかったようだ。
 真紀はそっと割り込むと、店員に「私が聞いてあげましょうか」と尋ねた。店員が「はい、すみません」と言うので、男性と話し始めた。
 その要点は、こうだ。
 母は55歳で、そのプレゼントでネックレスを買いたいが、真珠は真っ白か、シルバーがいいか、と言う質問だった。
 母のパーティ・ドレスは、真っ赤とコバルト・ブルーだという。
 真紀は、首にかけるものだから、失礼ながら、お母さんの首筋は真っ白か、シルバーっぽいかにもよると、言った。
 すると、真っ白な肌で美しいと言う。
 それでは、私なら真っ白をプレゼントすると、提案した。ソバカスだらけの首筋に、真っ白は似合わないと思ったからだ。
 すると、青年は、真紀の提案通り、真っ白な真珠に決めた。イヤリングもセットにして、さり気なくタグを見れば、30万円もする高級品だった。
――ワァー、若いのに、お金持ちだなぁ。
  しかも、目鼻立ちがスッキリとしたイケメン・・。
  こういう若い子って、タイプなんだよな。
 真紀は、そんなことを思いながら、手を振って店から出ようとした。
 すると、南部なまりで、「チョッと待ってください。もう一つ買うから」と言う。それはガールフレンド用なのか、5万円もするイヤリングだった。
 しかも支払いは、アメックスのブラックカードであり、さすがの真紀も、実物のカードを見るのは初めてだった。
――この若者って、いったい何者なの・・。
  その正体に、興味が湧くよね。
 
 お店を出ると、その若者が「これから、どこへ行くのか」と聞いてきた。
「ウイスキーを飲みたいから、バーラウンジに行くの」
「一緒に行ってもいいか」
「OK、カム・ウィズ・ミー」
 真紀は、その男が好きなタイプだったし、気分転換にはいい話し相手だと思って、少しワクワクしてきた。
 通路を歩きながら、名前を聞くと、ジェームスで、生まれも育ちもテキサスだという。生粋の南部育ちだから、話し方になまりが強かったのだ。
 真紀は、二人が並んだ時、ジェームスが190センチもある長身で、意外と体格がガッチリとしてマッチョなのに驚いた。
 だが、体に比べて、顔は鼻が高くて頬が痩せていて、アンバランスな美しい体型だった。
 真紀が「なにかスポーツを」と聞くと、アメフトの屈指の名門、ダラス・カウボーイズで、司令塔のクォーターバックをしていたという。
「僕は、ビッグ・スターだったんだ」
 彼はそう自慢して、ガッツポーズをとった。
 しかし、3年前にケガで現役を引退して、今は父親の牧場を手伝っている,とのことである。
 
 中二階のバーラウンジに入ると、真紀はいつものカウンターの隅に座った。
 すると、顔見知りのバーテンダーが、「いつものモルトのダブルで、いいですか」と聞いてきた。
 真紀が、ジェームスに尋ねると、彼は「バーボンのブラントンがいい」と言う。真紀は、さすがに地元のバーボンかと感心した。
 そこで、真紀もそれに合わせて、「ブラントンのダブル・ロックを」と頼んだ。
 ところが彼は、「ツーショット」と言った。
 真紀が「アレッ」と疑問符をつけると、バーテンダーは、「アメリカ人は、ウイスキーを氷のロックや水割りでは、飲まない」と教えてくれた。
 二人で乾杯すると直ぐに、彼は「なぜ、そんなに英語がうまいんだ」と聞いてきた。
 真紀は、大学で英文科にいて、ニューヨーク大に2年いたと伝えた。
 その時のガールフレンドがテキサス出身で、南部なまりを聞いてきたから、さっきのパールの話も聞き取れた、と。
 
 するとジェームスは、自己紹介を始めた。
 自分は独身で、27才。
 実家は、地元では名門の牧場で、いずれは4代目を継ぐと言う。
 そこは、ダラスからクルマで2時間程の大草原で、5000頭もの牛を飼っていて、30人のカウボーイを雇ってるとのこと。
 それを聞いて、真紀はさっきのブラックカードの背景が理解できた。日本よりも桁の違う大地主だったのだ。
 今回は、牧場主の団体ツアーで、京都や東京の観光もあったが、松坂牛の飼育を見学するために来たとのこと。確かに霜降り肉は、ミルキィで美味しかったと、日本流の飼育に感心していた。
 他のメンバーは、はとバスのナイトツアーに出かけたが、もう疲れたし、ママへのプレゼントも買いたかったし、独りになりたかったと言った。
 
 話が詰まったところで、真紀は自己紹介するしかなかった。
「私は42才で、日本のある会社に勤めるOLで、離婚したからシングルマザーです。子供は、14歳の娘がいます」
 すると、彼は「あなたは、とてもそんな年齢には見えないよ」と、驚いて両手を広げた。
「しかも、肌が綺麗でエキゾチックな日本女性だ」と、絶賛したのだ。
 そして、「インテリジェントで、エレガントで、僕の理想的な女性だ」と、熱っぽく褒め上げた。
――エエッ、もしかして口説いてるの・・。
  まぁ、確かにこんなタイプの女は、ダラスにはいないよね。
  でも、私はバツ1だし、年の差もあるし・・、
  あなたは、可愛い坊やでいいの・・。
 すると、ジェームスは、残ったバーボンを一気に飲み干すと、追加を頼んだ。
 真紀も、大和ナデシコのプライドを見せようと、一気に飲み干した。
 それを見たジェームスは、拍手をしながら握手を求めてきた。そして、意気投合した二人は、もう一方の手で肩を叩き合っていた。
 
 ジェームスは、威勢をつけるつもりなのか、ダブルショットの2杯目を飲んで、さらに注文した。
 すると、そっと真紀に寄り添うと、彼は耳元で「アイ・ニード・ユ―」とささやいて、背中に腕を回してきた。
 真紀は内心、驚いたが、求婚かとナチュラルに受け止めた。
 だが、彼の振舞いを見ていると、真紀には、アメフトの荒くれ男ではなくて、育ちのいい甘えん坊の紳士に見えた。
 アプローチされた真紀は、「でも、私とは結婚できないよ」と、応えた。
 ジェームスは「ホワィ」と声を荒げたが、真紀は、そんなこと当然でしょうと、微笑みながら小さく首を振った。
 真紀は、明日帰国する彼に、エッチするのはいいけど、それ以上はないと言ったつもりだった。だが、若い坊やには読めなかったのだ。
 
 ジェームスは、真紀を見つめたまま、明らかに苛立っていた。
 真紀の横顔に浮かんでいる謎めいた微笑が、なんとも神秘的で、あの優しいマリア様に見えていた。
 しばらく彼はこらえていたが、意を決して「アイ・ウォンチユー」とささゆいた。
 真紀は前を向いて微笑んだまま、静かに首を振った。すると彼は、押し殺した力強い声で「プリーズ」と、思い願う気持を吐き出した。
「ホワイ・ユー・ウォント・ミー」
「あなたは、僕と結婚できないと言った。でも、僕は結婚したいほどに、魅了されてしまった。だから、欲しいんだ」
 真紀は向き直ると、ジェームスの目を見て「サンキュー」とつぶやいた。そして、そっと握手を求めた。
 
 部屋に入ると、ドアを閉めるなり、ジェームスは真紀を抱き寄せた。
 一度そっと口づけをしたが、直ぐにディープ・キスを求めてきた。そして、それが長い時間、続いて、真紀は息が詰まって、思わず咳込んでしまった。
 すると、彼は急いでスーツとシャツを脱ぎ棄てて、アンダーシャツも慌てて剥ぎ取った。
「チョッと、待って・・」
 また抱こうとする彼の肉体を見て、真紀は思わずストップをかけた。近寄って胸や腹の筋肉を指先で摩って、手の平で撫ぜ回わした。
 ジェームスも自慢の肉体であり、ズボンを脱ぐと、腕や胴体や足腰のあらゆる筋肉に力を入れてポーズをとった
 それはまるで、ボディ・ビルダーのようで、真紀は憧れを見るように、しばし見惚れてしまった。
――ああ、いいな・・。美しいよ。
  いかにも男、って感じ・・。
 真紀は、彼に抱きつくと、乳首にキスをした。そして、見上げると、肉体美を褒めてもらって、自慢げな彼に唇を求めた。
 キスをしてフッと気が付くと、ジェームスのそれはもう勃起していて、真紀のお腹を突いていた。
 
 真紀は窓際に立つと、ブレザーをゆっくりと脱ぎ、じらすようにシャツのボタンも外して、おもむろに黒いブラの姿で白い肌を見せつけた。
 真紀は、自慢のDカップのバストを突き出すと、キュッと締まったウエスト引いて、さり気なくポーズをとった。そこには、日本舞踊の淑やかさを漂わせながら、中年女の色気を発酵させていたのだ。
 ジェームスは、真紀の様子をジッと見ていた。だが我慢できずに、パンツの上から自分のそれを強く握りしめていた。
 それから、真紀はスカートを脱ぐと、彼に両手を差し出して、自分のほうに来るように指先で促した。
 飛び出してきた彼の手を掴むと、真紀は自分のバストにそっと導いた。手荒にではなく、優しく感じたかったのだ。
 彼の大きな手でバストを揉みしだかれて、真紀は感じ始めていた。
――ああ、感じるよ。いい・・。
  この感触は、久しぶりだよ。
 真紀は、背中に手を回してブラを外すと、露わになった胸に、彼はむしゃぶりついてきた。
 するともう我慢できずに、真紀を抱きかかえると、ベッドに連れて行った。
 だが、先に動いたのは真紀だった。
 ジェームスの下着を脱がすと、勃起して固く凝った芯棒を両手で掴んだ。片手では、手に余るのを知っていた。
 真紀が一気にしごき始めると、彼は、その途端に嬌声を上げて呻き、悶え始めた。彼らのセックスは、女性からも攻撃的にファイトすることを、真紀は知っていたのだ。それでこそ、お互いに喜びあえるのだと。
 それから、真紀はベットの上で転がされると、ジェームスはいきなり挿入して、突いてきた。
 頭に突き抜ける強烈な刺激に、もう自意識は飛び散っていった。悶えるのを飛び越して、息も絶え絶えに膣の皮膚感覚だけを感じていた。
 真紀はかなりの時間、何度も昇りつめる度に、腰を踏ん張って耐えてきた。
 そして、ジェームスが腰を浮かした時には、もうぐったりとした満足感に蕩けていた。 
 
 あれから次の週の水曜日、美沙は会社が終わる頃、トイレに行って手早く化粧を直した。
 やや長い髪を、前髪も横も全体を下して、ふっくらした顔を細長くて小さく見せると、口紅も地味な薄いものにした。
 さらに美沙は、パソコン用のメガネをかけた。普段はメガネをめったに使わなかったから、自分でも印象は別人に見えた。
 
 実は、山田とセックスをして以来、もう10日も経っていた。
 その間、美沙は会いたいと3回、メールを送ったが返事はなかった。
 しかも、職場では、山田が美沙を見ることも、声をかけることもなくて、むしろ視線を避けているように思えた。
 それが、美沙には切なくて、耐えられなかった。
 そこで美沙は、思い余って、山田を追いかけることにしたのだ。
――あなた、追いかけたって、何かが起こるわけじゃないのよ。
  でも私、彼をずっと見ていたいの・・。
  だって、プライベートな彼は、私だけのものでしょ。
 そんな思いが募って、決行する日を今日に決めて、服装も上下が黒の地味なものを着てきた。
 
 チャイムが鳴ると、直ぐにオフィスを出て、エレベーターの向かい側にさり気なく立った。
 職場の仲間も続々とオフィスから出てきたが、家路を急ぐのか、誰も美沙には気付かなかった。
 焦れる思いで立っていると、山田は書類整理をしていたのか、15分もしてから出てきた。
 それを見た美沙は、エレベーターの扉の前に並んで、先に乗ると、山田に少し背を向けて立った。
 地下街に通じる扉が開いて、皆が出た後の最後に、美沙は出てきた。
 それから、濃紺の背広を着た山田を、少し距離を置いて追いかけた。
 
 山田は、東京駅の改札を抜けると、人が行き交う通路を抜けて、東海道線のホームに上がり、乗客の列に並んだ。
 美沙は、緊張した面持ちでホームの柱の陰に立つと、山田の後姿を見つめながら電車を待っていた。
――まだ気付かれてはいないよね。
  でもね、本当は気付いてほしいの・・。
  そう。優しい言葉でね。
 電車がホームに入ると乗客の列が動き出し、美沙は山田の後ろから乗って、さり気なく背中を見る位置に立った。
――ああ、山田さん、あなたが好きです。
  この気持、あなたに捧げます。どうか、判って・・。
 山田は、素知らぬ顔で携帯を取り出すと、画面をチェックし始めた。そして、それが川崎駅を過ぎても続いていた。
――ああ、山田さん、抱きつきたいほど好きです。
  ええ、悶々として、体が火照ってきます。
 美沙の切ない女心が、身をよじって悶えていた。だが、悲しさよりも、愛おしさが胸いっぱいを占領していた。
 美沙は今、初恋の真っただ中で思いつめていたのだ。男性に対して、胸が突き上げるほどに感極まったことは、かつてなかった。
 美沙は夢の中で祈るように、ただひたすら山田の後姿を見つめていた。
 
 横浜駅でかなりの乗客が降りて、ごった返すホームで山田を見逃さないように接近した。美沙には初めて降りる駅だったが、ただひたすら山田を追いかけていた。
 ホームの階段を降りて、改札を抜けて通路に出てから、また階段を上がると、広場になり相鉄線の改札が見えた。
 すると、山田がふと立ち止まって、携帯を取り出すと、大きな柱の陰に隠れた。
 美沙は急いで柱を大回りして、その陰で山田を少し離れて見守ることにした。
 だが、電話をする山田と一瞬、目が合った。美沙は、ドキッとして、慌てて体を捻ると、目線を外した。
 
 すると山田は、行き交う人混みを抜けて、大きな橋を渡り飲食街に入っていった。
 赤い暖簾の焼き鳥屋の前に立つと、引き戸を開けて中の様子をうかがった。だが、店内はどこも満席なので諦めた。
 山田が他の店を探そうと、暖簾から顔を出した時だった。
 直ぐ目の前で、メガネの女と顔を鉢合わせした。「あっ、失礼」といって、体を交わすと、歩き出した。
 だが、頭の中で妙に引っかかるものを感じた。
――あれっ、あのメガネ・・、あれは、女だったよな。
  でも、見たことある。えっ、どこでだ。
  ウーン、今日の、どっかで・・。
 そんなことを考えながら、路地の角を曲がろうとして、あの黒い服の女の影を見てしまった。
――エッ、あの女がいる。つけられてるのか・・。
  どっかで、突然消えるんだ。
 山田はあえて平然と歩いていたが、正面にラブホテルが見えてきた。
 すると、その手前に右に抜ける細い路地を見つけた。山田は咄嗟に、さっと入ると、急いで向こうの道に走り抜けた。
 美沙は、遠目で見ていたから、てっきりラブホの前を右に曲がったと思い込んでいた。だが、そこに行くと、山田の姿はなかった。
――エッ、どうしたの・・。どこへいったの・・。
  私の愛が、目の前から消えた。蒸発したの・・。
 美沙には突然、絶望感が襲ってきた。
 気絶したかのように崩れると、裏路地の隅に座り込んでしまった。呆然と自失して、地べたに足を投げ出すと、焦点の定まらない街の風景を呆けたまま見ていた。
 この時、美沙には、もうストーカーに嵌っている自分が、全く見えていなかった。
 
 山田は人通りの多い道に出ると、居酒屋を見つけて入った。
 ジョッキーのビールを飲んでいた時、ハッと思い出した。
――そうだ。さっき携帯をしていた時だよ。
  女房と話していたら、あのメガネを見たんだ。
  エッ、そうなら、あそこから・・。
  いや、もっと前かも・・。
  そうなら、電車の中か・・、東京駅か・・、会社・・。
  エッ、だったら、美沙しかいないよ。
  ああ、あれは変装してたんだ。
 山田は、かすかな記憶を頼りにさかのぼって行って、やっと思い当たる女に辿り着いた。
――ああ、危険な匂いがするな。
 
 次の日の木曜日に、美沙からSOS・今日、付き合ってと、真紀にメールが入った。
――ああ、山田課長とうまくいってないんだ。
  SOSって、沈没寸前の危険信号だよね。
  ウーン、泣かれると困るから、神田の個室焼き鳥にするか。
 真紀は、神田駅の北改札口で、18時に待つと、メールで返事をした。
  そして、時間通りに改札に現れた美沙は、心なしかやつれて、表情も暗く落ち込んでいた。
 笑顔で迎えた真紀は、「さぁ、行こう」とだけ言って、サラリーマンが行き交う街へ繰り出した。
 神田の山手線の西側は飲食店が立ち並んでいて、裏道を何本入っても、小さな居酒屋が軒を連ねている。
 真紀が案内した店は、チョッと小奇麗な作りで、入ると階段で地下と中二階に分かれている。
 地下はオープン・スペースだったが、上は仕切られた個室で、のれんを潜って入ると、4人用のテーブルがしつらえてあった。
 この店は、若い秘書たちの個人的な相談を聞く時に、落ち着いて話ができるので、時々使っていた。
 
 二人は、ビールの中ジョッキーと、焼き鳥セットにししゃもを頼んだ。
 真紀は陽気に手際よく対応していたが、美沙は考え込んだり、目を虚ろにして、いつもの笑顔が消えていた。
「さぁ、飲もう」
 ジョッキーが来て、カチンと合わせたが、それでも美沙の反応は鈍かった。
「美沙、どうしたの・・。聞いてあげるから、言ってごらん」
「ウーン、私、もうあれ以来、相手にされてない、みたい・・」
「なんで判るの・・」
「さり気なくデスクの前に、行くんだけど・・、でも・・、書類を見たまま、声もかけてくれないの・・」
「そう、なのか。でもさ、男の人って、追いかけると、逃げるのよね。まぁ、女もそうだけど」
 二人の会話は、そこで途切れてしまった。
 丁度その時、焼き鳥セットとししゃもが運ばれてきた。
「さぁ、食べよぅ」
 真紀がそう言っても、美沙は深刻そうな顔でフッと見ただけだった。
 
「あなた、なにがあったのよ」
「ウーン、私ね、実は昨日、我慢が出来ずに彼を追いかけたの」
「エッ、まさかでしょ」
 真紀は驚いて、思わず自分の口をふさいでしまった。
「私、オフィスから彼の後をつけて、湘南電車で横浜まで行ったの・・」
「あなた、自宅は三鷹でしょ。まるっきり方向が逆じゃないの」
 真紀は、あえてあっけらかんと言った。
「でもね、彼、西口で降りたら、そのまま繁華街に行ったのよ。裏の路地に入って、ラブホテルの前を曲がったのに、そこに彼の姿はなかったの」
「アー、後をつけられているのを察知したんだ。ストーカーをして、それがバレたのって、益々ヤバイよね」
 
「ねえ、私どうしたらいいのかな」
「あなた、そんなに彼を追いかけて、何を求めてるの・・」
「ああ、判んないよ。彼の愛かな・・」
 美沙は、呆けたようにつぶやいたが、とても分別のある大人の言葉ではなかった。
――それって、不倫の愛でしょ。
  求めてはいけないし、手にしたら毒なのよ。
  ああ、美沙は,もう狂ってる。ヤバイ、かも・・。
「でもさ、山田課長には奥さんも子供もいるでしょ。しかも、不倫がバレたら、離婚とかの大事になるでしょ」
「ああ・・、そうかもね」
 美沙はまるで他人事のように、言い放った。真紀が、これは重大な問題だと深刻に言っているのに、そうは受け止めてはくれなかった。
「あなたさぁ、職場の不倫で風紀を乱したって、山田課長が解雇処分になるかもよ。管理職なのに、って・・」
 だが美沙は、分別がつかない夢遊病者ように自覚を亡くして、虚ろな目を泳がせている。
――ああ、どうしたら、いいのよ。
  私、本当に狂ってるかも・・。
 
「ほら、美沙、もっと飲まなくちゃ。今宵はね、思いっきりヤケ酒を飲んで、酔っぱらうの・・。忘れたいこと、棄てたいこと、色々あるでしょ。ピュアな自分に戻って・・」
「私は今、少女みたいにピュアだよ。そう、憧れを求めているの・・」
 美沙は、お酒に酔っているよりも、自分のナルシズムに酔っていた。
――ああ、本当にヤバイよ。どうしよう。
「あなた、もう子宮に来てるでしょ」
「そう、感じてるの・・。山田さんの優しい前戯に・・」
 美沙は、両手を自分の太股の間に挟み込んで、刺激を与えると、もう性欲が高揚してきて狂い始めていた。
 先日、久々にセックスをして、疼いた子宮が突如として炎上した、あの感覚が忘れられなかったのだ。
 
――ああ、美沙の気持、判るなぁ。
  私だって、あのダラスのカウボーイ、
  そう、マッチョなイケメンとエッチして、燃えたよ。
  子宮から頭に突き抜ける快感、
  理性が蒸発して、ただ絶頂感だけの自分がいた。
  それがたまらなかった・・。
  そう、不倫とは、浮気なのよ。
  男と女のラブ・ゲームなの・・。
  遊び感覚でないと、ダメなのよね。
 ふと見ると、美沙は前かがみになって、頭を垂れていた。そんな様子を見ていると、時折、痙攣したように体をピクピクッとさせている。
――エッ、もしかしてオナニー・・。
  なによ。そんなに子宮が疼いてるのぅ。
  ああ、異常だよ。狂ってる・・。
 真紀は、そうまでする美沙に、事の深刻さを感じた。もう抑えきれない欲情が燃えてきて、皮膚感覚を強烈に刺激していた。
 
「ねえ、美沙、大丈夫・・」
 真紀にそう聞かれて、大きく頷いた。それから、ゆっくり頭を上げると、痴呆のように白い目を剥いて、「私、切ないの」とつぶやいた。
「あの人に振られて、でも、体が火照って、求めているの・・」
――ああ、絶望的だよ。
  そう、一度、子宮で燃えた男には、求め続けるの・・。
  女の業には、女は勝てないのよ。女って、哀れなのよね。
  きっと、ご亭主しか、男性を知らないのかも・・。
  世間知らずで、一途なんだから、もぅ・・。
 
 真紀は、生真面目な美沙の性格から、本心から悩んでいると判っていた。
――あぁぁ、放っておけないよね。
 真紀はゆっくりと席を立つと、美沙の隣に座った。
 そして、美沙を自分のほうに引き寄せると、そっと抱いてやった。
「美沙ちゃん、体が燃えてくる気持、判るよ」
 美沙は、かすれた声で「うれしい」とつぶやいた。
「私、手助けしてあげる」
 真紀は、空いた右の手を、そっと美沙のバストに這わせていった。美沙はビクッとしたが、優しい愛撫を黙って受け止めた。
 美沙の乳房は小さかったが、乳首が感じて固くなっていた。
 そして真紀は、ブラウスのボタンを外すと、ブラの中に手を差し込んで、柔らかい乳房を優しく揉んでやった。
 美沙は、太腿に差し込んだ手を動かし続けていて、時折、体をキッと突っ張らせていた。腰をくねらせては悶えて、体をのけぞらせては吐息をついている。
 そして、ついにガックリと腰を落とすと、深い溜息を吐いた。
「いったの・・」
 美沙は、小さくうなずくと、「ありがとう」とつぶやいた。
 これは、淋しい女同士の秘密の癒しだった。
 
 しばらくの間、真紀は黙ったまま、抱き続けていた。
 すると、美沙は、抑えていた気持に耐えられずに、シクシクと泣き出した。
――ああ、自分の愚かさに、涙してるんだ。
  彼が好きになったのも、あるけど、
  心も体も、寂しいのよね。
  そう、私もそうだったけど、子宮が疼くのよ。
  でも、彼を忘れられるかな。
  美沙は、初恋のように一途だけど・・。
  人は、求めても手に入らない願いを、求め続けるのかも・・。
 
                             ― おしまい ―
   
 
 





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