★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。 我が人生に、夢よ! もう一度・・!  いつまでも、恋も愛も、いっぱい欲しい。 そんなバーチャル・ラブを、どうぞ・・。 
 
2018/07/05|その他
◇ 優しさと、哀れみと ◇ BackNomber
 
                      2018年7月5日(木)・更新
 
  ○ 読者の皆様に ○
 
  (1) 報告

 
この私のブログ『男と女の風景』が、文芸社の文庫本で数か月後に出版されることになりました。
 これまでの130編の内、約10編を選抜しますが、詳細は別途報告します。
これが私には4冊目で、自費出版ですが、アクセス・7万件の記念でもあります。
 ブログを開始して20年、我ながらよくぞ続いたなと思います。
 これも、読者の皆様から絶え間なくアクセスを戴いたからであり、この励ましで頑張れたと、心からお礼を申し上げます。

 
  (2) お詫び

 最近,またスランプに陥りました。
 前回の作品は、最悪の駄作だったと、反省しています。書いていても嫌で、アップするのも嫌でした。
 読者の皆様には、お詫び致します。
 今回も、未だに頭は空白で、立ち上がれないため、バックナンバーでご容赦ください。
 なお、この≪優しさと、憐れみと≫は、文庫本に収録する予定です。

 
 

  − 我が家のベランダ・ガ−デン −
     ○ ヒトツバの変種 ○
 
 今回は、シダ類の仲間でも、≪ヒトツバ≫の変種を紹介します。
 ヒトツバは、2ミリほどの根茎が地面を張って成長します。根茎から細くて黒い根を地中に張り、一つの茎から一つの葉を出すので、この名前になりました。
 
≪写真・左・・ヒトツバ≫
普通に見られるヒトツバの姿は、これです。
しかし、実はこれ、葉が小さくてまだ分岐していませんが、大きくなると葉の先端が雄鶏のトサカのように乱れてきます。
そのため≪鶏冠ヒトツバ≫と言われる変種です。
 
 ≪写真・中・・獅子葉ヒトツバ≫
 これもヒトツバの変種ですが、葉の先端が分岐して丸く縮れています。
別名・獅子頭とも言われ、たて髪が格好いいオス・ライオンに見立ててこの名前になりました。
 
  ≪写真、右・・ノコギリヒトツバ≫
 ご覧のように、細葉の両側がギザギザになっていることから、鋸ヒトツバの名前になりました。
 
 これらの他には、モンゴル・ヒトツバや矢羽根ヒトツバなどが市販されています。それにしても、≪写真・中≫のように密生して育てないとと、反省ています。
 


                           
≪男と女の風景≫
  ◇ 優しさと、哀れみと ◇
 
 私たちが住むのは、部屋が二つしかない狭いアパートだった。
 その日の夜も、襖一枚の向こうで、なにやらワサワサとざわめき始めてきた。
 やがて母のうめき声がして、押し殺したすすり泣きが始まった。しばらくすると、こらえきれずに荒々しく喘ぐ声に変った。
 そんな淫らに乱れる母の様子が、私の想像を掻き立てていた。
 そう、裸になった男と女がまぐわっている、そんな鮮烈な動画が頭に浮かんでいた。
 
 ふと見ると、隣の布団で寝ていた弟が、薄い暗がりの中で、ジッと目を凝らしていた。
 その鋭敏な瞳は、聞きなれぬ声に異様なものを感じていたのだ。
 弟は布団の中で腰を浮かすと、四つんばいに構えた。私はあわてて、布団を跳ね上げた。はっと驚いた弟が、暗がりで私をじっと見ている。
 私は、弟ににじり寄って、そっと耳打ちをした。
『あれはイジメじゃないのよ。夫婦の間では、普通のことなの』

 なにが行われているのか、中学生の弟には理解できなかっただろう
 それからも、かなり長い間、母の喘ぎ声が続いていた。だが弟は、しっかりと聞き耳を立てていた。
 そして、ついに母は息が切れんばかりに甲高く叫ぶと、急に荒々しい息使いは止んだ。
 
 母は浮気性の父と離婚して、もう15年は経つだろう。
 それからは、街の食堂でパートをしていた。そこで調理人と出合って、この狭いアパートで同棲することになった。正式な再婚はしていなかったはずだ。
 でも母は、これまで生きてきて、全くツキがなかった。
 父に女が出来て裏切られただけでなく、父は横暴な態度に豹変して、暴君になってしまった。
 私は止めることもできずに、台所の隅で独り泣くしかなかった。
 しかも父は、お金を家に入れなくなって、残された家族三人が食べていかれなくなった。
 母は働きに出たし、私も高校生からバイトで頑張った。

 
 母は、夜な夜な愚痴をこぼしては、ウジウジと泣いていた。
 私は、そんな母を見ているのが辛かったし、もらい泣きをするしかなかった。
 だから母に新しく好きな人が現れたなら、そして少しでも幸せを感じるなら、是非ともエンジョイしてほしいと思った。
 そう、これまでの降って湧いた不幸を、取り戻してほしかった。
 それで、私が不幸の身代わりになるなら、喜んで引き受けてもいい、と、そんな思いもあった。
 
 とにかく母は、可哀想だった。しおれた母の姿を見ながら、私も泣いていた。
 女の弱さ、女の哀れさ、そう、虐げられても、求めていく女のサガを母に見ていた。
 だから性欲を満たされた時の、あの絶叫、それは神様も許してくれる極地だと、私は内心、拍手喝采をしていた。
 私は『お母さん、自由奔放でいいのよ。ガンバって』って応援していたんだ。
 
 でも、離婚って遺伝するのかな、って、そんなつまらないことを、フッと思ったことがある。
 実は私も今、バツ1で、中学生の娘がいる。
 母親の夫婦生活や、離婚に至る流れは見てきたはずだし、男性の選び方も間違えないようにって、かなり慎重なはずだった。
 でも結局、亭主は浮気性の男で、父と同様、家に給料を入れなくなったのだ。
 
 私は今、食べていくために昼間、ショップで店員のバイトをしている。
 でも、それだけでは苦しいので、スナックで週に3日、働いている。
 仕事は深夜にもなるし、お客さんのおごりでお酒に酔うこともあって、かなりハードでもある。
 タダのお酒を飲めるのは嬉しいが、バッタンキュになると、家の玄関の上がり縁で朝を迎えることも多々ある。
 そんな時、娘からは、軽い軽蔑や冷やかしの言葉が浴びせられる。
 でも、それで精一杯、生きているのだから、仕方がないのだ。
 
 バイト先のスナックは、はかなり繁盛していて、客足は絶えない。
 お客さんはまさに多種多様で、実に様々な人が来る。年長の人も若者もいて、その入り交ざって友達感覚でやり取りする様子が、実に面白い。
 実際、働くだけの日々で、気分転換にはなるし、人生の勉強にもなる。

 皆さんはいい人ばかりで、色々と褒めてくれるし、気分のいいお酒を戴いている。だが、≪甘い言葉には要注意だ≫と、秘かに肝に銘じている。
 
 お客さんの中に、いつも黙って飲んでいて、気が弱そうで、話しかけると下を向いてしまう諸星さんという人がいた。
 あの優しいけど、寂しげな笑顔を見ると、たまらなくて抱きしめてあげたくなる。あんな優しい人なら、いつも一緒にいたいな、と思ってしまう。
 それって、父がいつもオニの形相をして、怒っていたからかも知れない。
 
 ある時、お客さん同士でチョットしたトラブルがあった。
 そうしたら諸星さんが、それはこうすべきではないかと、言い出した。
 すると突然、常連さんの中でも大御所の富田さんが、いきなり大声を張り上げた。
 『オイ、君、この店の船長は、ママだろ。だったらママが決めろよ』
 私はなるほどと思った。
 でも、なぜ温厚な富田さんがそうまで言うのか、不思議だった。いつもは穏やかで、陽気にお酒を飲んでいる人なのに、である。
 
 それから3ヶ月後、突然ママから聞かされた。

だからさ、こうして一緒にいると、すっごく気が休まるんだよね」
 いきなり諸星さんは、トツトツと話し出してきて、終わると淋しげに微笑んだ。そう言ってくれたのは嬉しかったけど、その表情には、言い知れぬ哀れさが浮かんでいた。
その時、ああ、ギュッと抱きしめてあげたいな、と思った。
――でも、なんでそんな顔な『あの諸星さん、自殺したのよ』
 私は「エエッ」って驚いた。まさか。嘘でしょ、と、眼を剥いた。そんなことが、本当だなんて信じられなかった。
「アァァ、かわいそう」
 ふとつぶやいた自分の言葉に、泪が湧いてきた。私は泪がこぼれそうになって、いたたまれずに調理場に逃げ込んだ。
――かわいそう。かわいそう。なんでそうまでして。
 ティシュで泪を拭きながら、何度も繰り返していた。
 
 諸星さんがこのお店に来始めた頃、あれは半年ぐらい前だった。
 早い時間にフラッと来て、二人っきりで話すことがあった。
 独身だと言うので、「いい人がいるんでしょ」と水を向けてみた。
「いやぁ、僕には、オフクロがいるもんだからさ」
「そうなんだ」
「オフクロは、若い頃はガミガミうるさくて、今は病院を行ったり来たりでさ。そんな男に、嫁さんなんて来ないよ」
 ああ、人それぞれに背負ってるものがあるんだな、と思った。だから、あとは、もう黙るしかなかった。

「でもさ、貴女みたいに気配りが良くてさ、根っからの優しい人って、憧れるよなぁ。の。どこか歪んでるよ。
 そう、歪んだガラスを透かして見える表情だよ。
 それってさ、心の歪みが出ているの・・。
 私は、哀れみのある淋しさ、そんな寂しい男に親しみを感じていた。
 
 『海に入水したのよ。私、仕方ないからね、昨日、お葬式を出してきたわよ。だってあの人のお母さん、もう80歳を過ぎて、病院で寝たきりだったの』
私は、それを聞いてまた驚いた。
――なんでお葬式まで出してやるの・・。
  だって、単なるお客さんでしょ。
  そんなことまで、やるなんて・・。
 だが、もしかしてママと二人は、実は男と女の関係だったのかも、って気付いた。それで、あの事件を思い出したのだ。
 諸星さんがトラブルに意見を言って、富田さんが『お店の船長はママだろ』って怒鳴った時のことだ。
 富田さんは、ママと諸星さんが出来ていたのを、きっと知っていたのだろう。
 だから、亭主ヅラして偉そうに言ったことを、咎めていたのである。諸星さんは、それ以来、黙ってしまった。
 私も、お店ではあんな無口な諸星さんが発言して、あんな穏やかな富田さんが怒り出した。そのことが不思議だったのだ。
 
 そして私は、自殺した諸星さんのもろさを思った。
 あの優しそうな微笑みは、実は弱々しくて、なにも抵抗が出来ない人で、攻撃には免疫性がなかったのだと。
 もしかして、気の強いママに叱咤され、激励されて、精神的に窮地に追い込まれてしまった。そして最後は、逃げ場をなくしたのかもしれない。
 なにが問題だったのかは知らないけど、逃げの態度だったのかも・・。
 でも、あのママのことだから『しっかりしなさいよ』と応援して、結果として攻めたのだろう。
 そこに、彼が40半ばでも、独身だった理由があるのかもしれない。
 ああ、あの優しさが、私には愛おしい。
 そんな諸星さんの弱さを、もし付き合うことがあれば抱きしめてあげたかった。
 
 でも、私の元の亭主もそうだった。
 優しかったけど、もろくて、投げやりになって、窮地に追い込まれると、直ぐにキレた。
 ただ、それは結婚してから判ったことだ。
 私は高校を出て、横浜駅に近いケーキ屋に勤めていた。亭主は、その店のケーキ職人だった。
 聞けば、腕のいい職人で、独創性があってユニークな洋菓子を創作するのが得意だった。
 でも私生活はアバウトで、ドタキャンもしばしばだった。
 ある休日に、皆で映画を見に行くことになったが、当日、時間になってもヤツは現れなかった。電話したら、まだ自宅で寝ていた。自分から、この映画を見たいと誘ったのにである。
 だから皆からは相手にされず、休み時間はいつもポツンとしていた。
 
 ある日、お店の裏で、青白い顔をしてしゃがみ込んでいたので、「どうしたの」って聞いたら、朝食を食べていないとのこと。
 私が「なんで」って聞いたら、「昨日スロットで負けて、お金がない」とのことだった。
 私は仕方なく、コンビニでお弁当を買ってきてあげた。彼は照れ笑いをしながらお礼を言った。
 あの時、淋しそうに歪めた顔の表情が、たまらなく痛々しかった。付き合うようになったのは、それからだ。
 彼は寂しさを胸にしまって、私にはとにかく優しかった。ただ、もう少しこらえて頑張ればという場面では、もろかった。そして最後は、投げやりになってしまうのだ。
 そんな時、なにかを言おうものなら、直ぐにキレた。だから、黙って見ているしかなかった。きっと、親から厳しく叱られたことがなかったのだろう。
 それとも、窮地に追い込まれて、キレるのが最後の逃げ場だったのかも・・。
 
 でも、諸星さんも、私の父も、そう、亭主も同じかもしれない。
 いかにも優しくて、いい人なのだ、と、私は思い込んでいた。でも、見た目は優しくても、最後は自分勝手で、キレる男たちだった。
 そう、自殺って、自分にキレた時の最後の逃げ場なんだろう。
 そうか、優しさとか、哀れみの笑顔って、気が弱い性格の裏表だった。
 ああ、40歳を越えたのに、全く見る眼がない自分が、ここにヌケヌケといたよ。だとすればさ、そうだよ。母も同様に優しさを求めていたんだ。
 そうか。そういう意味では、離婚は遺伝するのかもしれないな。きっと私は、優しさを求める女の系譜に乗っているんだ。
 
 お客さんには、もっとカッコいい人もいるし、もっとアプローチしてくる人もいる。
 でも私は、ひたすら優しさだけが願望、なのかもしれない。
 ああ、そんなことを、今やっと悟ったよ。そう、浅はかな自分が今、やっと見えた。こんな私、『アァ・・』って、ため息をつくしかないよね。
 でもさ、こんな私の性格、もう変えられないのよ。そう、こんな自分が愛おしいんだもん。
 ズット、ズット、こんな自分を自分で抱いていくしかないよね。
 
                         ― おしまい ―
 
 





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