★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。  人は誰しも、ファザコン、マザコンによる願望があり、それを達成する行動をとります。その生まれ、育ちで、パーソナリティが形成されて、その体験が、深層心理やトラウマとなります。  そんな男と女が出逢って、その心の奥底から求め合う≪願い≫、そんな愛の物語を、フィクションで・・。
 
2018/05/03 0:07:11|その他
 ◇ 彷 徨 う 子 羊 ◇  [男と女の風景・128]  
                2018年5月3日(木)・更新
 
 − 我が家のベランダ・ガ−デン −

  ○ 5月の山野草たち ○

今回は、五月の草花たちを三品、紹介します。
 
≪写真・左・・ミヤマガラシ≫
 これは深山辛子で、黄色い斑が入っている点が、珍品なのです。
 アブラナ科に属していて、夏に黄色い花が咲く高山植物で、クレソンの仲間だそうです。
 
 ≪写真・中・・ウズラバタンポポ≫
これは、キク科の多年草です。
ヨーロッパが原産で、実はこの葉の柄が、ウズラの羽根ののように黒っぽい斑点があるので、この名前になりました。
この黄色い花が、ツーンと20p以上も伸びているのが、なんとも気高傘を感じさせます。

 
  ≪写真、右・・姫タツナミソウ≫
 この花をネットで調べましたら、喜界島の固有種とありましたが、そこに掲載された花や葉は、これとチョッと違うのです。
 これを購入した時は、この名前でした。
 確かに、花の高さは5―7p程度の矮性であり、姫の名前ですが・・。


 
 ○ 皆さん、≪山野草展≫です ○
 
 私が所属する≪湘南山野草友の会≫では、現在、≪春の山野草展≫を開催しています。
 会場には100鉢以上の珍品が展示されていますので、是非とも、ご観覧ください。
 
 日程 5月3日(木)―5月8日(火)  10時―18時
                  
ただし、最終日は15時まで
 
 場所 平塚市民プラザ 
 
 
                   [男と女の風景・128]
                      ―つづき・3―

    ◇ 彷 徨 う 子 羊  
 
  ≪前回のラスト≫
 
 宗像には、ふと、自分が仮説にしてきたファザコンのパターンが、頭に浮かんだ。
――村瀬は、大学教授の父親とは親しみがなかったから、T型だし、
  この友達は、父とハグして甘々だったから、U型だよ。
  しかも、父と対立した優花は、V型だったんだ。
  ああ、こんな出会いって、なんか出来過ぎだな。
  そうか、オレもそうだけど、みんなも彷徨ってるのかも・・。
  そう、人生の流れの中で、必死にな・・。

 
   ≪今回のトップ≫
 
 次の週の木曜日に、宗像は、珍しく残業もなく、七時過ぎに藤沢に帰ってきた。
 通勤客が改札に向かって流れていき、北と南に別れて行った。
「アラー、宗像さん・・」
 名前を呼ばれて、フッと振り返ると部下の村瀬悦子だった。
「今日は早いですね」
「ウン、今日はね」
 
 村瀬は、先週の土曜、日曜は、ずっと憧れの宗像のことを考えていた。
 そして、出会うチャンスをお膳立てしようと、月曜日の退社から様子を窺っていたのだ。それが四日目でやっと実現して、胸が高鳴っていた。
 だから、宗像が会社を出る時から、東京駅のホームの列に並んでも、ずっと見つからないように、尾行をしていた。
 そして村瀬は、電車に乗っても、藤沢駅の階段に近いドアに乗り込んでいて、ドアが開くと素早く階段を登った。
 そして、改札を出てから宗像を待ち構えていて、偶然出会ったように装ったのだ。
「君は、なにか用事でも・・」
「いいえ、特にはないんで、どうしようかなって・・」
「では、軽く飲むか」
「エッ、いいんですか」

 宗像は、言ってしまってから、先週の出会いのことが頭に浮かんだ。
――そうだよ。この女、『私もディープが欲しい』って、言ったんだ。
  軽い冗談だろうけど・・。
  ああ、まずいことになるかも・・。
  今日は、早々に切り上げないと。
 
 宗像は、時々立ち寄る居酒屋に案内した。
 二人はテーブルに向かい合うと、ビールをジョッキで注文して、焼き鳥とヤッコ豆腐、さらに枝豆を頼んだ。
 乾杯してから、勢いよく飲み込んだビールのノド越しに、宗像は目を剥いてご満悦の様子だった。
 ひと息入れたところで、宗像は気になったことを言った。
「今日の君は、明るくて華やかだね」
「アッ、ええ、先週スナックで会ったお姉さん、ピンクのワンピースを着ていたから、私も持ってる、って、思い出したんです」
「うん。君はスタイルがいいから、似合ってるよ」
 村瀬は、恥ずかしそうに首をすぼめると、軽く会釈をした。
 だが、宗像は、悦子の化粧が今日はやや濃いめであり、まつ毛やアイラインにアクセントをつけたメイクを、何気に指摘したつもりだった。
 今日の化粧は、ケバいほどではないが、頬に薄くピンクを入れて、色っぽさを感じさせた。
 しかも、髪をフワァッとさせて、面長の顔をさらに痩せて見せていた。
――見た目では、こういう女がタイプなんだよな。
  ちょっと知的で、目がクリッとして、笑顔が爽やかな女・・。
  父親が大学教授だから、インテリの家系かも・・。
 
 すると、枝豆とヤッコ豆腐がテーブルに届いて、二人は早速食べ始めた。
「部長、先週のあのスナックで、お店を出てからあの子が、追っ駆けませんでした」
「ウーン、あの時か・・」
 宗像は、あの場面を思い出したのか、食べていた枝豆を飲み込むと、悦子の問いかけに応えた。
「ああ、そうそう、あの時は、オーバを過ぎた所で、遠くから名前を呼ばれたなぁ」
「それで、どうしたんですか」
「彼女は、もっと飲みたそうだったけど、明日が早いからって、駅前で別れたよ」
「本当ですか」
「うん。本当だよ」
 届いた焼き鳥を、宗像が無心で頬ばっていると、悦子は悪戯っぽく覗き込んできた。
「なに・・、疑ってるの・・」
「ええ、怪しいですね。だって、彼女は慌てて会計をして、出て行きましたから・・。部長に、ご執心のようで」
「なにを言ってるんだ。僕には、女房と子供がいるんだよ。しかも、もう四十路の半ば・・。こんなオヤジ、相手にされないし、もうダメでしょ」
「いいえ、女性は、理想的な父親像を求めるんです」
 宗像は予想外のことを言われて、まさかと思ったが、直ぐにそうかもしれないと思った。
 改めて考えてみると、思い当たる女性たちが何人か思い浮かんできた。
 自分の嫁が、父親に似ている自分を選んだのが、結婚した後で判った。
 他にも、女性たちに理想のタイプや結婚相手を聞いてみると、ほぼ父親と対比しているのが判ったのだ。
 それと同時に、自分が母と対比して、好みのタイプの女性を求めているのを自覚したこともあった。
――母は、すっごく優しかったし、可愛がってくれたよ。
  だから、心から優しい女と結婚したんだ。
  だから、ずっと幸せを感じて生きている。
  そんな妻を、オレは裏切れないな。
 宗像は、ジョッキが空いたところで、また生ビールを二杯、注文した。
 
――しかし、若い子と酒を飲むのって、気分がいいな。
  気心が知れてるし、構える必要がなくて、ざっくばらんでさ。
  スナックやクラブの子だと、話題に窮するし、
  そう、相手の顔色を見ないとね。
「宗岡さん、なにを考えているんですか」
「いや、なにも・・。ただ、美人を前にして、いい酒だなって・・」
「アラ・・。私もこんなナイスミドルとご一緒で、気分が爽快です」
 悦子は、また妙なタイミングで首をすぼめた。
――これって、テレてるのかな。
  ああ、女って判らないよ。
 追加のビールが来ると、宗像はいきなりジョッキを鷲掴みにして、威勢よく飲んだ。
「でも、もっと若い主任連中のほうが、いいんじゃないの」
「いえ、私、チャライのはダメなんです」
 悦子は、首をかしげて言葉を探していた。
「ええ、落ち着いていて、心穏やかな雰囲気で飲むお酒、それがいいんです。なにか優しさが漂っていて、お互いに判り合ってる、みたいな・・」
「そうだね。君は、職場で見てると、いつも優しいし、信頼できるし」
「それは、部長こそですよ。先日の、社長以下、全役員が出席した御前会議の報告なんて、聞いていて惚れ惚れとしました」
「いやぁ、あの時は、なにがなんでも提案を通す、って必死だったからさ、緊張しているなんて自覚もなかったよ」
「その一生懸命さが、カッコいいんですよ」
 
「ところで、君には彼氏はいないの・・」
「ええ、ずっと・・」
 二人は目を合わせたが、宗像はさり気なくジョッキを持つと、それ以上は突っ込まなかった。
――これって、セクハラかもな。
  危ない、危ない・・。
「私、ズット、ボーイフレンド以上はいないんです」
「そうなのか・・」
 宗像は、危ない話題だから避けようとして、軽くとぼけて応えた。
「私、好きになった人はいませんし、アプローチされても、どうも好きになれなくて・・」
 宗像は、焼き鳥の串にかぶりつきながら、隣の客席にいる男を見ていた。
 それから、しばらくして宗像が「では、帰るか」と声をかけた。
 すると、「部長、カラオケでも、どうですか」と、このまま別れたくない素振りを見せた。
 宗像は、あまり乗り気ではなかったが、一時間だけと断って、仕方なく付き合うことにした。
 
 カラオケ・ルームに入って、飲み物とおつまみを注文すると、さっそく宗像はリクエストをした。
「村瀬君、君の得意なアメイジング・グレイスを歌って」 
                                                                
「えっ、あれですか」
「そう、君が歌うと、僕は感動するんだな。そうだよ。これを聞きたいから来たんだ」
 村瀬悦子は、職場の飲み会で何度か歌ったことがあった。
 だから宗像は、今日は自分のためだけに、歌って欲しかったのだ。
 悦子は心得たとばかりに、選曲のセットをすると、マイクを持ってスタンバイした。
 そして、歌い始めると、情感を込めて丁寧に歌い出した。
 悦子は、コーラスをやっていただけに、澄み切ったソプラノだったし、音程や抑揚をつけながら歌っていた。
 宗像は、目をつぶると気持を集中し、神経をとがらせて聞いていた。
 それは、正に幼気な天使の歌声であり、心の雑念が洗われていく神聖さがあった。
――ああ、この清純さって、たまらないな。
  そう、子供の頃、母に連れて行かれたのを思い出すよ。
  あのクリスマス・イブに、カトリック教会のミサに行ったのを、さ。
  ああ、あの礼拝堂が懐かしいな。
  あの頃は、単順に純粋無垢だったよ。
  そう、この歌は、今は亡き母への鎮魂歌だ。
 宗像は、在りし日の母を思い出すと、懐かしさが込み上げてきて、感極まっていった。
 気がつけば涙が浮かぶほど、情緒が共鳴して感情的になっていたのだ。
 
 悦子が歌い終わると、宗像は拍手をしていたが、涙が零れそうになって、慌ててオシボリを目頭に当てた。
 悦子は、マイクを置いて振り返った時、その光景を見てしまった。
 怪訝な顔をして席に戻ると、放心して遠くを見つめる宗像を、両手でそっと包んでやった。
「感動して戴いたんですか」
 宗像が黙ってうなずくのを見て、「ワァーッ、嬉しいです」と、飛びつくように抱きついた。
 そして、胸元に顔を埋めると、目を閉じたまま頬摺りをしている。その頬に浮かんだ笑顔は、夢の中を彷徨っているようだった。
「君の歌は、素晴らしい。天国にいる母にも届く、そんなレクイエムだよ」
 宗像は、前を向いたまま、独り言のようにつぶやいた。
 それを聞いた悦子は、宗像が母を慕う心情に共鳴して、思わず抱いていた両手に力を込めた。
 
 そして、悦子はつぶやいた。
「宗岡さん、キスして下さい」
 宗像が振り返ると、目を閉じた悦子は、恥らった顔を向けていた。
 それを見て、宗像は思わず、そっと唇を重ねていった。
 それは、軽く触れただけで感触はなかったが、そうすること自体が愛の儀式であり、心を許し合った瞬間だった。
 そして二人は、お互いが求め合うようにディープなキスに堕ちて行った。
 宗像は、相手が職場の部下であり、それが不倫という妻への裏切りであることなど、もう頭の中では蒸発していた。
 
 そして、二人が顔を見合わせた時、悦子は泣きそうな目になっていた。
「どうしたの・・」
「私・・、男性を知らないんです」
 悦子はそうつぶやくと、涙をポロリと溢した。
「でも・・、それはダメだよ」
「お願いします」
 悦子は、宗像の手首をそっと握ると、自分の胸に引き寄せた。
 宗像は驚いていったん手を引いたが、哀れそうに見上げる悦子の涙目を見て、気が変わった。
 仕方なく手の力を抜いて任せると、指先に触れたそれは、豊かで弾力のある乳房だった。
 そして、手の平を何度かそっと滑らせると、直ぐに乳首が固くなっていくのが判った。
 宗像は左手で悦子を抱き寄せると、右手で胸をまさぐっては、揉みしだいていった。
「ああ、感じます。アア・・、トロケそうです」
 もう燃え上がってきた女の情念が、繊細な皮膚感覚に感染して、鋭敏な感度で受け止めていた。
 やがて悦子は、肩をビクッと震わせて反応すると、吐息を漏らし始めた。
 悦子にとって、それは親密を通り越して、初めて感じる濃密な官能の世界だった。
 乳首に突き刺さってくる刺激が、理性を痺れさせ、全身を燃やして行った。
 悦子は、空っぽになった頭で、ただ目くるめく歓楽に溺れて行った。
 
 宗像は、ふとドアの向こうの廊下で歩く人影を見て、咄嗟に悦子を引き離した。
――そうか。ここはカラオケボックスだったよ。
  見られたかも・・。
 手の動きが止まってしまって、怪訝そうに悦子が顔を挙げた。
「ドアのガラスから、見られたかも・・」
 宗像は、見られるのは気にしなかったが、これ以上は危険と判断して、二人の密着した体を離したのだ。
「どうだった・・。感じたの・・」
「ええ、とっても・・」
 燃えた余韻を引き摺っていた悦子は、放心したまま応えた。
 宗像も,勃起したままの火照る思いは危険だったし、それを鎮静させようとして、間を取った。
 だが、はち切れんばかりに膨らんだ乳房の感触が、手の平に残っていたし、頭の中では妄想のモンスターになっていた。
――ああ、たまらないな。
  若い女、こんな日常にはない場面、久々に燃えたよ。
  なんか、女房にはない新鮮な感覚って、いいよ。
  そう、ギリギリで止めた余韻もな。
 宗像はそんなことを考えながら、熱くなった思いが冷めるまで、しばらく時間を取った。
 そして、静かに「さて、もう遅いから、帰るとするか」と言った。
 だが悦子は、なんとも不思議そうな顔を見せながら、黙って身支度を整えている。
――ああ、私、身を曝け出してしまったな。
  でも、それを受け止めてくれる人がいたの・・。
  そう、二人は本心から求め合ったのよ。
  だから私、気持は充分に満たされたよ。
  それって、父親に求めても満たされなかった優しさかな・・。
  それとも、本心では対峙できなかった心の空白かも・・。
  そう、今は、それを埋めた満足感があるよ。
 男性との付き合いがなかった悦子には、これ以上を求めてはいけないのかと、勝手に思いこんでいた。
 だが、不安になった悦子は、切なそうな顔で「部長、また会ってくれますか」と迫ってきた。
「ああ、また、美味しい酒を飲もうよ」
 宗像はそうはぐらかせたが、いずれ女のサガとしてセックスを求めてくるのは判っていた。
――彷徨う者って、やっぱり不安の中で流されているんだな。
  オレは仕事にしがみついて、家庭にしがみついているよ。
  でも、俗世間に放りだされたら、流されるままかも・・。
  そう、不確かな自分が、時々顔を見せるんだ。
 
 
 
 
 





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