★ ≪トキメ気≫の[iBOX] ★ [男と女の風景] (短編小説集)

これは、大人のラブストーリーです。  人は誰しも、ファザコン、マザコンによる願望があり、それを達成する行動をとります。その生まれ、育ちで、パーソナリティが形成されて、その体験が、深層心理やトラウマとなります。  そんな男と女が出逢って、その心の奥底から求め合う≪願い≫、そんな愛の物語を、フィクションで・・。
 
2018/04/26|その他
 ◇ 彷 徨 う 子 羊 ◇  [男と女の風景・128]   
             2018年4月26日(木)・更新
 
− 我が家のベランダ・ガ−デン −

  ○ 4月の山野草たち ○
 
 ≪写真・左・・姫ウラシマソウ≫
ここにきて、思わぬ鉢から姫性(小型・矮性)のウラシマソウが生えてきて、花を咲かせました。ひとつの葉に一輪の花のようです。
花は、茶系の黒で、縞模様があり、花の中から釣り竿が伸びています。
 
 ≪写真・中・・アリドオシ≫
 昨年の10月に青い実を点けましたが、この春になっても熟した実がいっぱいついています。
 また、普通は5月に咲く白い花が、もう咲いています。
 以前にも書きましたが、これは千両、万両と並んで、通称≪一両≫です。
 
  ≪写真、右・・不明≫
 この花は飛び込みの苗のため、名前は不明です。
 でも、どこか≪コアラ≫に似ていませんか。
 
                      [男と女の風景・128]
                        ーつづき・2ー

    ◇ 彷 徨 う 子 羊  
 
   ≪前回のラスト≫
 
「宗像さん、腕を組んでいいですか」
「えっ・・」
 いきなり、優花が大胆なことを耳元でささやいたので、宗像は驚いた。
 見れば優花は、嬉しそうに微笑んでいる。
「ああ、いいよ」
「嬉しい」
 優花は右の腕を後ろから絡めてくると、抱きつくようにギュッと力を入れた。
 そして、首をかしげると宗像の肩に頭を寄せてきた。
 そんな二人の姿を後ろから見れば、恋人同士に見えたことだろう。
「アラー、優花ちゃんは、甘えちゃってー」
 マスターがおどけて冷やかすと、優花はあえて頭を押し付けてきた。
「だって、こんなの初めてなんだもん」
 宗像もマスターも、優花が酔っているのを知っていたから、酒の上の振舞いだと大目に見ていた。

――ウーン、また父親の代わりか
  まぁ、嬉しいけどな。
 宗像には子供の二人が男だったし、女の子から、こんな風に甘えられたことはなかったから、天にも昇る夢心地だった。
 もう何杯目かの水割りをぼんやりと飲んでいたが、ふと、二の腕に当たる弾力を感じた。
――エッ、これってバストだよな。
  なぜか、あえて押し付けてるよな。  
  いゃぁ、ヤバイかも・・。
  でも、ここはトボケるしかないか。
 しばらくして、優花はうっとりとした目を向けると、つぶやいた。
「宗像さん、私、変な気持になって・・」
「ウン、どうしたの」
「感じてきたの・・」
「エッ、そうなの・・。でも、ダメだよ」
「どうして、ですかぁ」
「だって、僕はお父さんの代理だから・・」

 
                      ― つづく ―

 
 ≪今回のトップ≫
 
 宗像は、これ以上、優花と密着しているのは危険だと感知していた。
 ふと思いついて、「チョッと、トイレ」と、おもむろに優花の腕を振りほどくと、立ち上がった。
 すると、テーブル席にいた女性二人組の一人が、宗像の横顔を見て、思わず口をふさいで驚いている。
 宗像とは、顔見知りのようで、まさかここで会うとはと、びっくりした様子だった。
 そして、宗像が、トイレのドアを開けようとした時だった。
 赤いワンピースを着た女が、マスターと陽気に話をしていたが、宗像の気配を感じて振り向いた。
 すると、いきなり「アラー、素敵な紳士」と声をかけてきた。
 見ると、見たこともない女だったから、宗像はそのままドアのノブに手をかけた。
 突然女が席を立つと、突進するように宗像をドアに押し付けてきた。
 あまりにも突然だったので、宗像が驚いていると、いきなり頬にプチュッとキスをしてきた。
 そして、さらに宗像の首に手を回すと、唇に押し付けてきたのだ。
 その女の激しい動きに翻弄されて、されるままになっていた。
 やっと女が離れると、宗像は何事が起きたのかと、呆然としていた。
 するとマスターが、「この女性は、酔っ払うと悪い癖が出るんですよ」と、本人に代わって弁解した。
 改めて見ると、美人の顔立ちをしているし、スリムな体型に赤い薄手のワンピースが似合っていた。
 水商売の女性とは違って、三十才ぐらいで、きっちりとしたOLのように見えた。
 だが、宗像の後姿を眼で追っていた優花は、そんな騒動の様子を見てしまって、やきもきしていた。
 すると、いきなり情念が湧き上がってきて、思わず「私も欲しい」と独り言でつぶやいた。
 
 宗像は、洗面台で手を洗いながら、今、強引にキスをしてきた女のことを思った。
――あんなに美人だから、男はいっぱいいるだろうに・・。
  でも、酒癖が悪いから、逃げられるんだろうな。
  なにかに欲求不満だから、酔っ払うと爆発してしまうんだ。
  そうなら、その原因は・・、なんだ。
  ある種のファザコンかも・・。
  あの年になっても、亡霊に憑りつかれて、彷徨っているのかも・・。
 宗像は、トイレから出ると、素知らぬ顔で女の背中を通り過ぎた。
 
 すると、テーブル席に座っていた顔見知りの女が、ささやくように「部長」と声をかけた。
「エッ、なに・・。おお、成瀬か・・」
 成瀬は、目が合うと、屈託のない笑顔を振り撒いていた。
「おい、悦ッちゃん、なぜ、ここに」
「この子は、高校の同級生です」
 見れば、同席していたその子は、確かにこの店で何度か顔を見たことがあるから、常連客なのだろう。
 もう名前は忘れたが、軽い会話をしたことを思い出した。。
「でも部長、モテますね」
「エッ、ああ、あのこと・・。イヤイヤ、あの子はね、今日が初対面だよ。そう、単なる酔っ払いだって」
「でも、妬けますね」
「なにが・・」
「だって、あんなにディーブだなんて」
「ああ、なにを言ってるんだ。降って湧いたハプニングだし、僕が被害者なんだから・・」
 会社の部下である成瀬も、もう酔っているのか、昼間の職場でのきっちりした受け応えから、気安い話し言葉になっていた。
「私も、ディープ、欲しいですね」
「なんだと・・。会社の部下とは、不倫なんて出来ないよ」
「アラー」
 成瀬が満開の笑顔で、大袈裟におどけて見せた。
「部長、一緒に飲みませんか」
「おお、いいね」
 宗像は、優花がカウンターからそっと見ているのが見えて、「アッ、チョッと待ってて・・」と、いったん断った。
 
「宗像さん、あの方もお知り合いですか」
「エッ、チョッと待ってくれ。今、説明するから・・」
 宗像が、席に着くなり、優花が問い詰めてきた。
「あのね、さっき抱きついてきた女性は、今日が初対面で、酔っぱらいのハプニング」
「エエッ、本当ですか」

「本当だよ。それからテーブル席にいる女の子は、会社の部下で、偶然ここで会ったの・・。その前に座っている女性が、この店の常連客で、高校の同級性だって・・。以上だよ」
 宗像は弁解するのも面倒だったが、誤解されないように説明した。
「でも、やっぱりモテますね」
「いやいや、今日は女難の日なんだよ。こんなの、人生で初めてだな」
「宗像さん、私もキスしていいですか」
「なんだって・・。ダメだよ。部下が見てるし・・」
 だが、優花は体を伸び上がらせると、いきなり宗像に首っ丈になって、頬にキスをしてきた。
 そして、抱きついたまま、宗像の首筋に顔を埋めている。
――おおい、勘弁してよ。
  部下が見てるんだから・・、会社でヤバイたろ。
しかし、優花はうっとりとして、抱きついたままだった。
――ああ、この女も、欲求不満なんだ。
  オレって、そんなにフェロモンを出しているのかな。
  それとも、取っつき易いのかな。
  だって、もう40を越えたオジサンだよ。
  それなのに、若い娘たちが寄って、たかって・・。
  そうか、酒って、隠れた素顔を現わすんだ。
  そう、本性を、剥き出しで見せるのかも・・。
 
――ああ、でも、この先、どうすればいいんだよ。
 宗像は、あのテーブル席の部下からも誘われていたから、もう気持は身動きが取れなくなっていた。
――ああ、ベロベロに酔っ払うしかないか・・。
  酒に溺れて、意識朦朧になるしかな。
  そうか。目くるめく幻想の世界を漂うか。
  今日は、女たちの奔流に流されてさぁ。
 宗像は、前後の見境もなくして、酔っ払った勢いで、爆走するしかないと覚悟を決めた。そして、あえて火中の栗を拾いに行く気になったのだ。
「あのさぁ、優花ちゃん、あの部下のいる席に行こうよ」
 優花は、「エッ、まさかあり得ない」と思って、一瞬戸惑うと、おもむろに女たち二人を見遣った。
 だが宗像は、椅子を降りて、優花の手を強引に引っ張ると、テーブル席によろけながら座った。
 すると二人はにこやかに拍手で迎えて、宗像に握手を求めてきた。
「あのね、この子は優花ちゃんで−す」
優花を紹介すると、女たちはお互いに握手を求め合った。
「この子とはね、今日、初めて出会ってさ。話し込んでたら、フィーリングが共鳴しちゃってね。バーチャルで突然、父親と娘になったんだ」
「ワァオ、羨ましい・・」
 あえて大声で叫んだのは、部下の成瀬悦子だった。
 
「いえ、違うんです」
優花は、ふと怯えたように顔を曇らせた。
「私って、実は男性恐怖症なんです」
「エッ、あなたが・・。そうは見えないけど・・」
「ええ、父が厳格で、口うるさかったので、男性拒否から恐怖症になってしまったんです」
「まぁ、なんと・・」
 成瀬は、この利発そうに見える優花が、そんなことを言う背景が理解できなかった。
「それで私、宗像さんになんとなくそんな話をして仕舞って、慰めてもらったんです。だから、その優しさに、つい・・」
「そうか・・。判るな。部長は、優しいからな」
「オイ、誤解するなよ。僕は口説いてないからな」
「判ってますよ。バーチャルな父と娘でしょ」
 成瀬は陽気な笑顔のまま、あえて茶化すように言った。
 
「でも、私の父は無口だったから、父との会話はなかったな」
 成瀬が、遠くを見ながらポツリとこぼした。
「父は大学の教授をしてたし、人格者だったから、尊敬はしてたよ。でも、親しみはなかったな。その点、美麗は違うでしょ」
 成瀬が、同級生の美麗に話を振った。
「そうねぇ。私、中学生になっても、パパと一緒にお風呂に入っていたし、なにかあるとハグをしたし、そう、ほっぺにチューはよくあったね。だから、すごく可愛がられていたよ」
「ほらね、違うでしょ。だから美麗は、こんな甘えん坊になったのよ」
「そう、付き合う彼からは、いつもチヤホヤされて、気にかけて欲しいの・・。浮気なんかは、絶対に許さない」
 すると、いつも笑顔の成瀬が、喋りたくなったのか真顔になって割り込んできた。
「私はね、10才以上も年上の人がいいな。しかも優しくて、温ったか味のある人。まあ、学歴は大卒かな」
「君たちはさぁ、もう28だろ。男に対して求める注文が、自分本位なんだよな」
「エッ、どういうことですか」
「思春期に、父親との関係で満足したり、不満足だったりで、その観点から、伴侶を選別しているんだ。だから、それに適う相手が見つからない」
「まぁ、そうですけど・・」
「実は、男だって、母親との比較で、求める女性像が違うんだよ」
「アッ、アア・・、そうですよね。お互い様なんだ。すると、それが相性ですかね」
「まぁ、そうとも言えるけど、お互いのマザコンとファザコンを、理解し合うことだよ」
 
 すると、背中越しにテーブル席の会話を聞いていた、赤いワンピースのキス魔が振り向いて、声をかけてきた。
「なにか、面白そうな話ですね」
 そう言うと、自分のグラスを持って椅子から降りて、近寄って来た。
 そして、隣のテーブルから椅子を引っ張り出すと、宗像たちの席に加わってきた。
「私は、一美(かずみ)です。この方に、私を判定して戴きたくて・・。失礼ですが、お邪魔しました」
 女たち三人は、キス魔の突然の出現に、イヤそうに顔をしかめた。
「確か、宗像さんですよね。どうですか。こんな私ですが・・」
「ウーン、いきなりそう言われてもさ・・、難しいよ」
「でも、なにかコメントを・・」
 宗像は、どうしたものかと迷ってしまった。
――直感的には、ファザコンだと判るけど。
  プライドが高くて、気が強そうだし・・。
  もしかして、「アナタ、どれだけ私が見えるの」って、
  オレを挑発してるのかも。
 
「ではさ、これはあくまでも僕の直観だけど、思ったままを言っていいかな。君、怒るなよ」
 宗像は、余裕ありげに微笑んでいる一美を、じっと見据えると、感じたままの直感を頼りに語り出した。
「さっきから、父と娘の関係を話していたから、その範疇で言うとね、君は父親をバカにしていなかった」
「エッ・・」
 予想もしないまさかの一言に、一美の目に動揺が走って、哀しそうに顔を歪めた。
「もしかして、軽蔑さえ、していたんでは・・」
 宗像はそう言うと、一美がどう反論して来るのか、その様子を見ようと、一呼吸、間を置いた。
 だが、一美はズバリと核心を突かれてしまって、黙ったまま宗像を見詰めるだけだった。
「だからさ、君から見ると、世の男たちは、みんなダメ人間なんだよ。それで、カチンと頭にきた男には、喧嘩腰で攻め立てるんだ」
「アッ・・、ハァ、その通りかも・・」
「そのくせ、仕事が出来る男とか、カッコいい中年のイケメンに出会うとさ、自意識が過剰になって、もうメロメロに圧倒されてしまうんだ」
「ハァ・・」
 一美は、心の裡を見透かされてしまって、反論する言葉を亡くしていた。
 
 宗像は、さらに追及するかどうか迷ったが、こういうタイプの女には、きっちり判らせる必要がある、と思った。
「君さぁ、お母さんが、お父さんを軽蔑してたよね」
「エッ、なんで・・、なんで判るの・・」
「君は父親に同情して、心の中では応援をしていたよ。だけど、母の方が正論だと認めてきたんだ」
 時折、カーッと見開く眼は、俯き加減で自分の手元をじっと見ていた。
 一美は、娘から見ても、自分勝手で不甲斐ない父親を、イヤそうに思い浮かべていた。
「まぁ、君はさ、そんな不幸な環境に置かれたから、仕方がないんだけど・・」        だが、そう言われても、一美は口を真一文字に結んで、一点を見つめたままだった。
「だから、僕は、可哀想だって君に同情するよ。でもさぁ、直さないと・・」
 すると、感極まったのか、一美の大きな目から泪が溢れ出してきて、手の甲に落ちて行った。
 しかし、勝気な一美は、涙を拭わなかった。
 同席する女たちは、そんな一美の表情をジッと覗き込んでいる。
 今の一美は、さっき宗像にいきなり抱きついて、強烈なキスを何度も繰り返していた女には見えなかった。
 
「でも、君はさぁ、そんな自分がダメ人間だと、自覚をしているよね」
 一美は、虚ろな目で自分の心を見つめながら、小さく頷いた。
「ところが、突然、そのキャラが出てしまって、そんなイヤな自分が見えてしまうんだ。そうだよね」
 また、一美は無意識のままで何度も頷いた。
 あの大胆で、粗暴とも見えたキス魔が、なんとも哀れだったし、可哀想に見えた。
「だから、もう何度も自分と戦って、自己否定をしてきたよね。実は僕だって、イヤな自分が見えた時、何度も反省をしたよ。でも、もうそのキャラは変えられないかも・・」
 最後の宣告をされて、思わず一美は両手で顔を覆うと、テーブルに打つ伏してしまった。。
――ああ、チョッと言い過ぎたかな。
  でも、それでも悪い癖は治らないかも・・。
  そんな子供からの業を、ずっと引き摺ってきたんだ。
  そう、家庭環境がもたらした悲劇だよ。
  この女、可哀想に・・。
 テーブルを囲んでいる女性たちは、それぞれに自分と対比しながら、自分のことを深刻に考えていた。
 
「さぁ、飲み直すか」
 宗像は、一美の肩を優しく叩きながら、声をかけた。
 それから、立ち上がって自分のボトルを持ってくると、皆のグラスに注いでやった。
――ああ、なんという展開なんだ。
  まさか、この女が割り込むなんてな。
  でも、ファザコンのW型は、ズバリ、読み筋通りだったな。
  エッ、そうか・・。
 宗像には、ふと、自分が仮説にしてきたファザコンのパターンが、頭に浮かんだ。
――村瀬は、大学教授の父親とは親しみがなかったから、T型だし、
  この友達は、父とハグして甘々だったから、U型だよ。
  しかも、父と対立した優花は、V型だったんだ。
  ああ、こんな出会いって、なんか出来過ぎだな。
  そうか、オレもそうだけど、みんなも彷徨ってるのかも・・。
  そう、人生の流れの中で、必死にな・・。
 
                        ー つづく ー ・・かも・・
 

 ≪ご参考≫
 皆さん、ファザコンのT、U、V、Wの分類って、判りませんよね。
 実は、この小説の最後を書きながら、ふと次のレポートを思い出したのです。
 これは、もう10年ほども前に、このブログにアップしたものです。 
 私はもう50年も、クラブやスナックで酒を飲んできましたが、自分と女性に対しては興味を持って、じっくりと冷静に眺めてきました。
 その観察と分析の成果が、次のレポートなので、ご参考までに再掲します。

 
  ファイル・406

[仮説]
 誰にでもある 『 ファザコン・マザコン 』 
                
 人は誰しも、自分の父親とか母親には、≪複雑な特別の思い≫があります。
 感謝や尊敬、親愛の情もあるし、時には反抗や軽蔑、拒絶もあり、様々な思いが複雑に錯綜しています。
 これが、親に対する” complex ” (観念複合)であり、単なる「劣等感」と解釈しないことです。
 
 親は、自分を育ててくれた最初の教育者です。
 だから親の影響は、自分では気づかないほど、自分の中に浸透し、定着しています。
 例えば、人柄が陽気で外交的で、面倒見がいい親子がいます。逆に、家族の皆が、地味で温和で、控えめなキャラクターの一家もあります。
 そして実は、自分の中に≪親の嫌な部分≫もあります。
 自分がそれを嫌悪するほどに、実は、イヤな親のクセや生き様と、そっくり似ていることがあるのです。
 そんな自己矛盾に気づいて、私は愕然としたことがあります。
 
 私は小説や随想で、若い女の子を主人公にして、様々な心の空白を描いてきました。それは、若い女の子を知ろうとして、様々にアプローチし、分析してきた結果でもあります。
 テーマは、その人の生い立ちとパーソナリティの因果関係です。
 人の人格形成には、家庭環境や家族構成、交友関係など、どんな要因が、どの程度の影響を与えているのか。
 そしてその結果、社会的な対人関係において、どんな発想をして、どんな行動傾向が見られるのか。
 その主とする要因は、思春期の心の満足度にあると仮定しました。
 そして様々な行動を分類し、因果関係を推定して、インタビューや観察から検証してきました。
 
 ≪ ファザコン/マザコン = 思春期の心の中の空白 ≫
 この定義は、自分自身の行動を眺め、分析・評価して、そんな自己分析から導き出された≪仮説≫であります。
 自分の生き様に、苦々しくも辛い思いを感じながら、です。
 でも、夜の飲み屋で様々に見てきた女の子たちには、その特徴や、傾向が強く出ていたのです。
 なぜなら彼女たちは、特に父親の愛情に恵まれなかった生い立ちであり、多くの事例で、これが≪実証≫できたのです。
 
 スナックで、これはと感じた女性に向かって、何人にも、次のような質問をしてきました。
 『貴女が10代の後半の頃、お父さんを一言でコメントしたら』って。
 多くの人が、質問の唐突さに驚いて、コメントの内容に戸惑ってしまいます。
 でも、『例えば、優しかったとか、尊敬できたとか、怖かったとか、なんでもいいよ』と、プッシュしました。
 その追いかけた問いに、彼女たちはそれぞれに応えてくれました。
 でも、質問の狙いは、直感的に心が空白だと思われる人、その人の本音です。
 そんな時、例えば、私はこう応じます。
 『そうか。私には、貴女の思春期には、お父さんの存在感がなかったと思うんだけど。どう・・』
 実際に父親が不在(単身赴任・死亡・離婚等)のケースもあれば、父親を嫌悪し、拒絶してきたケースもあります。
 これが≪心の中の空白≫です。
 父親からいつも見守られていて、いつも温かみを感じられる、そんな家庭が普通のはずです。
 でも、そうではなかった娘たちには、父親の温かさが欠如しているのです。
 そして、彼女たちには共通して、≪凛として涼しげな顔≫が見られるのです。 
 ファザコン/マザコンは、パターンの違いと程度の差はあるにせよ、誰にでもある≪心の現象≫だと思います。
 ただし、円満な家庭、信頼し合える親子の場合は、このコンプレックスがかなり希薄になります。そういう子供たちは素直に育っていて、心に歪みがなく、心身ともに健全なのです。
 

  (1) コンプレックスのフレーム
 
 次に提示するフレームは、私が人間観察をする時の≪仮説≫です。
 人と話したり、接する時に、この仮説に合致するか、どうかを無言で検証しながら、人を観察してきたマップです。
 社会心理学の専門書は知りませんが、実社会ではかなり的中するし、実証されました。
 皆さん、≪自分でも知らなかった自分≫を、今になって、発見するかもしれません。
 あるいは、≪実は、そうだったのか≫って、納得できるかもしれません。
 
 さて、図の見方を解説します                 
 1、
これは、≪娘から見た父親像≫、または≪息子から見た母親像≫です。
 2、本人が中学か高校時代の[思春期]に、父/母を見て、感じた印象です。
   既に成人の方は、自分の思春期を振り返って、思い出して下さい。
   女性は14-18歳くらい、男性は15-20歳くらいの時代です。

 3、X軸は、自分から見て父か母が≪優しかったか≫、どうかです。
   Y軸は、自分から見て父か母が≪尊敬できたか≫、どうかです。
 4、両軸には、強・弱の目盛りと、+(プラス)、-(マイナス)があります。
  
 数値は、目安として記載したもので、「約、その程度」と理解して下さい。
   また、数値の大小は、単に特徴の大小であり、
   善・悪の評価ではありません。
 
 5、中央のグレイのゾーンは、恵まれた家庭環境で、心身ともに健康で、
    温和に育った普通の人で、大多数の人が当てはまります。


 6、 図表の4隅にある、T、U、V、W、のゾーンが、≪極端ゾーン≫です。
 
      コンプレックス・フレーム

  [怖い]              Y軸              [厳しい]
                  尊敬できる
 
  V    
 Y 6
      T
     Y 5      
 
優しくない
 
 
   
 Y 3      
 Y 2
  Y 1
 
 
 
0
 
 
 
優しい
  X-6 X
-5
  X  X  X
1  2  3
X  5
 X6
 
     Y-5      
  W    Y-6
 
 
 
    U
 
 
 
  
 
          
 

 X軸        
                 







                尊敬できない
  [だらしない]        Y軸              [甘い]
  

(2 ) 極端ゾーンの特徴
  ≪子供は、親を見て育つ≫と言いますが、各極端ゾーン(図表の4隅)の子供は、[思春期]に親をどう感じて、大人に成長してきたのでしょう。
 強烈な個性の親、やり過ぎの親から、どんな影響を受けたのでしょう。
 そして、その子供が大人になって求める異性のタイプは、どんな人物像なのでしょうか。
 実は、本人は無意識ながらも、意外な相手を選んでいるのです。
 
 わかり易くするために、ゾーン別の特徴を、極端な言い方で表現します。
 しかも、この極端ゾーンの人は全体の5%未満で、大多数の人は通常の社会人です。
 ただ実際には、人によって受け止め方に軽重や強弱の差があります。
 そして、このコンプレックスは、誰にでもあることを承知して、あまり悲観的にならないで下さい。

 
[ゾーン・T]  厳しく冷たい親
    ・・子供は、優しい心や思いやり、人情の深さに欠ける
 ・心の奥底は優しい親だが、子供の教育やしつけが厳しかった。
 ・教師や医者など、社会的な地位や名誉があり、
  子供から見ても尊敬でき.る親だった。
 ・だが、威厳があり過ぎて、とっつきにくく、
  遠い存在としての距離感を感じていた。
 ・親と子の心のふれあい、温かみのあるスキンシップがなかった。
  誕生日やクリスマスのパーティなど、家族の団欒がなかった。
 ・異性との会話、付き合いは、どうしたらいいのか、
  相手との距離感が掴めずに、オドオドして消極的になってしまう。

 
  [本人が求める異性像]
 ・心から優しい人柄で、その優しさを言葉とか態度で示してくれる人を
  求める。
 ・温かい「ぬくもり」をスキンシップで感じさせてくれる人がいい。
  優しさで包み込んでくれて、時には甘えさせてくれる人。
 ・ガミガミ怒ったり、強制的に指示されると、生理的に拒む。
 ・ただし、相手は社会的にも認められ、尊敬されるような、
  ある程度のグレードが必須である。
  これは、常に親と比較しており、異性を親に認められたいから。
 ・中年の独身男性は、母親の存在感が大きいマザコンで、
  この[ゾーン・T]の人が多い。
  また、[ゾーン・U]との中間ぐらいまでの人もいます。

 
[ゾーン・U] 子供に甘い親
  ・・子供は、自我意識や独立心が欠如して、依存型になる
 ・親は明るく陽気だが、子供の言いなりで、子育てを甘やかし過ぎた。

 ・さらに、溺愛をして、子供に自立心や自発性を持たせなかった親もいる。
 ・子供はわがままに育ったが、結局は、親の言いなりに育った。
 ・また親の都合(例・夫婦が共働き)で、放置、放任されたため、
  その見返りで子供を甘やかした。 
     (注・離婚等の不在は、別の現象が出る)
 ・親は、子育てに責任感がなく、良識を持つべきしつけもなく、
  親に叱られずに育った。
 
  
 [本人が求める異性像]
≪Aパターン≫
      ・・溺愛されて自立心のない子供の場合
 ・甘やかされたまま育ったため、親と同様に甘やかしてくれる
  異性を求める。
 ・したがって、甘やかしてくれないと、不満となり、別れてしまう。
 ・自立心がなく依存型で、自分をリードしてくれる、親みたいな人を  好む。
 
≪Bパターン≫
      ・・甘やかす親に対する嫌悪感・拒絶感を持った子供の場合
 ・大人の異性に対する嫌悪感が強く、拒絶反応を起こして、
  不信感さえ持つ。
 ・従って、当分の間、異性は求めないし、自分勝手な行動をする。
 ・異性として求める時は、放っといてくれて、自由にさせてくれる人。
 ・年上で、見て見ないフリをしてくれて、困った時に優しく相談に
  乗ってくれる人。
 

[ゾーン・V] 厳格で怖い親
     ・・子供は、反抗心が強く自分勝手で、相手の気持を理解しない
・親の心根が意地悪で、子供の気持などは考慮せずに、命令し強制する。
 その厳格さが、子供には≪怖い存在≫だった。
・ある面ではカッコいいのだが、個性もやることも強烈過ぎて、
 子供としては許せなくなり、反発したり、反抗してしまった。
・外出・門限のチェックや、礼儀作法にもうるさく言う。
 親は、うざい存在。
・時には、ビンタが飛んでくる。親が腕力、暴力で従わせる。
・子供の意見が通らず、黙って服従するため、親への拒絶感が陰気な怨念にもなってしまう。
 
  
 [本人が求める異性像]
・とにかく優しくて、自分の存在を認めてくれて、褒めてくれる人を好む。
・優しければ、見た目に関係なく、例えば、身を持ち崩したヤクザな
 異性でもよい。

 (過去の欲求不満を充足する行動に出る=相手を冷静に見る眼がない)
・心から優しい人と、口説くために優しくする人とを、混同してしまい、
 見分けることが出来ない。
 これは、優しさを知らない寂しさに、フッと魔がさして、安らぎを求めるため
 である。
 

[ゾーン・W] だらしないダメな親
     ・・@ 絶対に親のようにはならないと努力する。
       A カッコよくなろうとするが、口先だけになる。

・親は、地味で陰気で、人柄は優しくないし、人が悪い。
・ひがんだ性格で、やる事も自分勝手で、だらしがない。
・親として尊敬も出来ないし、カッコ悪くて、『サイテー』と軽蔑さえした。 
・「濡れ落ち葉」的で、掃いてもへばりついて地べたから離れない。
  そんなジメジメ、ウジウジした陰湿な性格。
 
  
 [本人が求める異性像] 
 
・とにかく、オレについて来い式の≪カッコいい人≫、≪強い人≫に、
 憧れてしまう。

・誇張やウソでも、見た目がスターとか、金持とか、カッコいいなら、
 拍手喝采をして、賞賛の目でうっとりと見てしまう。 
・顔とかスタイル、性格や生活態度などは、どうでも良く、
 なんど失敗しても繰り返して、このタイプが好きになる。
 
 もう、おわかりでしょう。
 この≪極端ゾーン≫では、なんと、父とか母に憧れながらも、反対のタイプを好み、選んでしまうのです。
 これが、≪思春期に満たされなかった空白≫であり、これは誰しも、大なり小なり持っているコンプレックスです。
 このフレームで、自分を、もう一度、眺めたら、どう見えますか。
 
 この極端ゾーンの事例は、本人にはかなり強い『トラウマ』となります。
 トラウマ(trauma)とは、「精神的外傷」であり、心理学者・フロイトが精神分析で論じたものです。
 具体的には、「過去の強い心理的な傷が、その後も精神的な障害をもたらす」とのことです。
 もし過去に、耐え難い嫌なことがあったら、忘れることです。
 それが悪夢として自分を束縛するのなら、負けないよう自分と戦うことです。
 それは、可愛い自分を守り、正常な世界で普通に生きていくためにです。
 
 また、自分の性格、キャラクターを変えることは、実は非常に難しいことです。
 しかし、自分の欠点や、嫌な部分を再発見して、自分を叱って、それで何度でも直すことです。
 それでも直らない時は、欠点や、嫌な自分を出さないように努力することです。
 
 最近、『家庭内暴力』や『幼児虐待』が、大きな社会問題となっています。
 これは、自分が幼児期とか、少年・少女の時代に受けた『トラウマ』が影響していると、言われています。
 かつて、自分が被害者だったのに、わが子に対しては加害者に変貌してしまうのです。
 ある母親は、「それがわかっていながら、子供に手が出てしまう」と告白しています。
 親子の世代を超えて、≪暴力の連鎖≫が繋がっているのです。
――どうか、あなたの代で、鎖を断ち切ってください。
  自分が嫌だったことは、人にしてはいけないのです。

 
 (3) 親の存在感がない子供

         
    ≪ 後略 ≫・・・字数がオーバーのため

                             −おしまい−

 
 
 
 





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